『漁港の肉子ちゃん』原作者が示した“唯一の条件”とは!? 監督が明かす「収録は緊張しました」

第34回東京国際映画祭のジャパニーズ・アニメーション部門で11月7日(日)、明石家さんまが企画・プロデュースを務めた劇場アニメ映画『漁港の肉子ちゃん』が上映され、トークショーに声優の石井いづみと渡辺歩監督が登壇しました。この映画で声優デビューを飾った15歳の石井は、初々しさを感じさせながらも、客席のファンに向けて、作品に対する思いや、撮影中のさんまとのエピソードを披露しました。

出典: FANY マガジン

今回の作品の原作は、直木賞作家・西加奈子の小説『漁港の肉子ちゃん』。これを読んだ明石家さんまがすっかりほれ込み、著者である西加奈子に映画化を直談判して、自身で企画・プロデュースも務めた長編アニメ映画です。

作品は、漁港の船に住む、訳あり母娘・肉子ちゃんとキクコの親子愛を描いたハートフルコメディ。スコットランドのアニメ映画祭『スコットランド・ラブズ・アニメーション』で最高賞となるJury Awardを受賞するなどの快挙も成し遂げています。

オーディションで選ばれたハマり役

石井は、1673人が応募したオーディションで、主人公キクコの同級生・マリア役を勝ち取った群馬県出身の15歳。もともと『進撃の巨人』『らき☆すた』『撲殺天使ドクロちゃん』などが好きなアニメ少女だったそう。今回の応募の経緯について、こう話します。

「ずっと水瀬いのりさんや、花澤香菜さんのような声優に憧れていました。それで、いいオーディションを探していたところ、『肉子ちゃん』のオーディションがあったので、挑戦しました」

出典: FANY マガジン

主人公の友人役の声優を決めるのに、なぜオーディションが行われたのか――司会から受けたこの質問に、渡辺監督は、原作者の西加奈子から“ある要望”があったことを明かします。

「さんまさんが映像化の許諾を西さんに申し入れたときに、許諾の唯一の条件が『この作品を映像化するにあたって、新しい才能に光を当ててもらえると嬉しい』ということでした。たいへん広い心で、条件というより、すごく素敵な課題をいただきました」

そこでオーディションを実施。見事、この重要な役をつかんだのが石井だったと振り返ります。

出典: FANY マガジン

渡辺監督は、初めて石井との収録に臨んだときのことをこう明かします。

「緊張しました。1600人以上の中から選んで、もしハマらなかったらどうしようかと(笑)。でも、いざアフレコでマイクの前に立ってもらい、彼女の第一声を聞いたときに、この人を選んでよかったと思いました」

「この映画はさんまさんの純度が高い作品」

トークは、企画とプロデュースを務めたさんまの話に及びます。

石井は、アフレコ現場でさんまから出された指示について、思い出し笑いをしながら、「『鼻歌を入れて』とか、いろいろ言われました」と振り返ります。そして、「テレビと変わらなく、優しい人だなあと思いました」と、初めて生のさんまを見た感想を語りました。

出典: FANY マガジン

渡辺監督は、さんまがプロデュースだけでなく、実作業にも関わっていたことを説明。「シナリオチェックからコンテチェック、そしてほとんどのキャラクターの収録に立ち会って、多彩なアレンジを施していただきました。プロデューサーというよりは若干、ディレクション……若干どころではないですね(笑)」

会場から笑いがこぼれると、渡辺監督は続けて「そういう部分では、非常にさんまさんの純度が高いと思う。これは自信を持って言えることです」と、さんまのエッセンスが詰まった映画であることを力強くアピールしました。

出典: FANY マガジン

西加奈子との「約束」に確信

石井は、アフレコで苦労した点について「叫ぶシーンと笑うシーン」を挙げ、「声が続かなくて、練習しました」と語ります。それでも完成した映画には「すごく恥ずかしかったんですけど、アドバイスをいただいたこともあって、オーディションのときより上手くできたのかな」と、自身の成長を感じた様子。今後の目標については、「いつか、好きな声優さんと共演できたら嬉しいです」と夢を膨らませました。

渡辺監督は、そんな石井の姿に「(この映画は)新しい才能に間違いなく光が当たっているものと確信しております」と嬉しそうな表情。

出典: FANY マガジン

最後に石井が「今日は、お話を聞いてくださってありがとうございました。楽しんで『漁港の肉子ちゃん』を見てください」と、しっかりと映画をアピール。その堂々とした姿に、観客からは万雷の拍手が。新しい才能への期待が高まるトークショーとなりました。