5年目の無名芸人「福田健悟」が小説の執筆に挑んだ理由と連載を勝ち取ったわけ、そして伝えたいこと

福田健悟————ほぼ無名に近い若手芸人ですが、なんと10月から小説の連載をWebマガジンで開始することになりました。作品のタイトルは「45」。出版社のワニブックスが運営する「ニュースクランチ」で毎週、更新していく予定で、反響次第では書籍化も検討されるとのことで、異例の抜擢といえます。

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東京NSC22期生の福田は卒業した2016年以降、3年間はルードボーイズ、2年間はガネーシャというコンビを組み、5年間、漫才に励んできました。ですが、この9月にガネーシャは目立つ結果を残せないまま解散し、現在はピン芸人です。M-1優勝を夢見ていた5年目の新人が、どうして小説の執筆に挑んだのでしょうか。なぜ出版社のメディアで連載を勝ち得たのでしょうか。自身を題材にしたという自伝的小説を通じ、何を表現し、伝えたいと思ったのでしょうか。

連載のメインビジュアルの撮影セッションに挑む福田。プロのカメラマンに撮られるのはもちろん初めてとのこと。出典: FANY マガジン

福田には人には言えない過去がありました。この小説は、いままでは目を背けてきたその過去と向き合う形で生まれたと言います。いよいよスタートする連載を控え、本人から届いた執筆と連載に至るいきさつと意気込みをお送りします。


どうも。元ガネーシャの福田健悟です。「誰だよ!」。分かります。皆さんの頭の中には、まずこの言葉が浮かんだはず。「元」と言われても「ガネーシャ」を知らないでしょうし。そう! 僕は芸歴5年目の知名度0芸人。ツイッターのフォロワーもバイト先の高校生の方が多い始末です。先日、2年間続けてきたガネーシャというコンビを解散したばかりで、その前のNSC卒業後3年間はルードボーイズというコンビを組んでいました。どちらのコンビでも目立つ結果は残せませんでした。そんな僕がいま、ここで文章を書いているのには理由があります。

それは約半年前に行われた吉本の「作家育成プロジェクト」でオーディションに合格したからです。このオーディションはベストセラー作家を世に送り出した編集者の授業を受けて、課題をクリアした者が勝ち上がるというシステム。この授業ではこう言われました。

「無名こそ武器になる」。それだけではありません。「クズ時代を書きなさい」。ちょっと待ってくれ。これは自分のためのプロジェクトなんじゃないか?  そう勘違いしたほどです。それもそのはず。何を隠そう未成年の頃の僕はクズでした。「そんなこと言って、言うほどクズじゃないでしょ〜」なんて思われるかもしれませんが、いいえ。正真正銘のクズです。チーム同士の喧嘩で警察に捕まってしまいました。こんなコンプライアンスの厳しい時代に頭のおかしい発表をしていると思われても仕方がありません。

福田自身「クズ時代」と話す17歳のころの写真。出典: FANY マガジン

正直、最初は迷っていました。これを世の中に出したら、世間から叩かれるのではないだろうか。だから非行少年の更生とか、その保護者の人達の助けになるような本を書こうと思っていました。でも僕は、お笑い芸人。今回、書いた小説はフィクションですが、僕に関する物語のベースは事実です。嘘をつくつもりはありません。真面目な更生本は専門の人達が書いています。嘘をつくつもりなら自分の過去を本にするようなことはしません。

芸歴は5年と言いましたが、お笑い自体は10年前からやっています。ただ10年と言ってもギュッとしたら2年くらい。その頃の僕はまだクズ時代の名残りが残っていました。自分本位で生きていたので、相方にも高圧的で、ろくにバイトもせず母親からの仕送りで生活していました。このあと解散をして、お笑いからは一時離脱。まずはバイト中にキレたりせず、辛抱強く続けることを目標にしました。当時は20代前半。20代前半にしてバイト中にキレないを学びました。5年間バイトを続けて、ようやく自立。以後、上京をして今に至ります。30歳までに売れなかったら辞める。最初はそう思っていたのに、今はもう34歳。この先、僕がお笑いの世界から身を引いても就職先はないと思います。このタイミングで連載の話が決まったのは幸運でした。

クズ時代の僕は、堂々とした生き方ができていませんでした。人に言えないことがある生き方をしていれば無理もありません。今は、こうして全てをさらけ出しているし、人に言えないことは何もしていないので胸を張って生きています。

連載開始に向けては、出版社の担当編集者と幾度となく打ち合わせを重ねてきた。出典: FANY マガジン

この文章を書いている現在の僕は、借金を返すために週6で夜勤バイトをして、昼はライブとネタ合わせとネタ作りをしています。週に2.3日は徹夜の状態。でも楽しく生きています。バイト先のお客さんや仲間達からは「あのお兄さん大好き」「接客のプロ」そう言ってもらえるようになりました。過去の過ちを反省し続けて、うつむきながら生きることもできましが、暗い顔をして生きていたら周りも笑顔になっていなかったと思います。自分を責める方法で罪を償っていた時期もありましたが、これからは少しでも多くの人達に笑いを与える方法で償っていきます。

どうか、僕の小説が皆さんの笑顔を引き出すきっかけになりますように。

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吉本興業所属の芸人。1986年10月24日生まれ。岐阜県出身。NSC東京22期生。出典: FANY マガジン