アナログな映像器と楽器を駆使し、映像と音楽で豊かな世界を描くクリエイターユニット・usaginingenが銭湯でパフォーマンス!

10月17日(日)、「usaginingen『沖縄の子供たちと紡ぐ物語』in 京都国際映画祭」が京都 玉の湯にて開催されました。

出典: FANY マガジン

usaginingen(ウサギニンゲン)とは、香川県・豊島を拠点に自作の映像機と楽器を使用する夫婦パフォーマンスユニット。夫のShinichi Hiraiが音楽を、妻のEmi Hiraiが映像を担い、夫婦で活動しています。

玉の湯では、沖縄で開催される地域芸術祭「やんばるアートフェスティバル」で地域の子供たちから「おきなわ」をテーマにした物語を募集し、選ばれた物語をパフォーマンスとして一緒に作り上げた作品「きせきのデイゴ」と、現在はアートの島としても知られる豊島で起こった産業廃棄物不法投棄事件をモチーフにした作品を上演しました。

出典: FANY マガジン

usaginingenのパフォーマンスの前には、京都国際映画祭にてクリエイターズ・ファクトリー審査員も務めるフォトアーティスト・澤田知子とのスペシャルトークを実施。「usaginingen×澤田知子 スペシャルトーク『リアリティ – Reality -』と題し、まずはお互いの活動について紹介し、同じクリエイターだからこそ共感できる『リアリティ』について対話を重ねました。

変装というスタイルで、約2000人の”いそうな誰か”に扮してセルフポートレート作品を生み出している澤田に、その原動力をShinichiが尋ねると「人間が好きなんだと思います。人間って何だろう、人はどういうふうに人を見ているのか。外見と内面の関係性など考えます」とコメント。また、「コロナ禍という予期せぬ事態に直面し、その前と後では活動に変化があったのか?」との問いには、「オンラインで200人とかと繋がっていても、部屋に一人でいることに変わりない。そういう意味では、人がいた方がよかった」とリアルな空間で顔を合わせることの大事さを語ります。

usaginingenのライブパフォーマンスも同様で、「同じ作品でも場所によって違うし、時間帯、お客さんによっても感じ方が変わってくる」とEmi。Shinichiも「僕は上演した後にいただく拍手が気持ち良くてやめられないところがあって。まさにこうして対面することがリアルなんだと改めて思う」と話しました。

出典: FANY マガジン

そして本公演へ。「きせきのデイゴ」は、沖縄・名護市に住む小学1年生の女の子すずちゃんから聞いた「戦争で校舎も焼けたけど、2本のデイゴの木だけは焼けなかった」というエピソードを基に制作しました。産業廃棄物不法投棄事件を基に制作した「トンビ 魂の鼓動」でも、瀬戸内海に浮かぶ小さな島の豊かな自然、脅かされる人々の生活などを描いていきます。

出典: FANY マガジン

映像は玉の湯の壁と天井に投影。映像と音楽にはセリフや具体的な情景描写などない、その多くは抽象的な表現ですが、2作品とも、その島で何が起こっていたのか、その状況が手に取るように伝わってきます。また、風に揺れる木々や、大空を舞う鳥たち、寄せては返す波など、自然いっぱいの光景も目の前に広がっているよう。観る側の想像力もどこまでもふくらみ、観客も一緒になって二人の世界へと没入しました。

出典: FANY マガジン

銭湯とあってパフォーマンスは男湯で、観客は洗い場で風呂椅子に座って鑑賞します。開演前のBGMも営業中のお風呂場の音、また洗い場の気温も若干高めとあって、その状況もまたリアルです。二人のパフォーマンス・スペースは湯船の中で、「銭湯での公演では、湯船に入ってやりたかったんです」と笑顔を見せるShinichi、夢が叶ってうれしそうです。

出典: FANY マガジン

3段になったアクリル板の上で様々な小道具を使い、アニメーションのようにして見せる映像。レイヤーが重なり、立体的に見えるので3Dのような面白さもあります。事前に録音をした音楽と、様々な楽器を駆使する音楽が彩りを加え、より奥行が増していきます。アナログとデジタルが融合した二人の作品は、いつまでも変わらない人の手の温もりと、無限に広がる未来を表しているようでした。

「いつもは夫婦で作品を作っているので、すずちゃんをはじめいろんな人と一緒に作品を作ることができてうれしかったです」と「きせきのデイゴ」上演後に話すShinichi。コロナ禍の影響で沖縄での公演実現に至っていないそうですが、12月に初上演ができそうとのことです。

また、「『トンビ 魂の鼓動』は、見てくださった皆さんが豊島の空気を吸って初めて完成します。落ち着いたらぜひ、豊島に遊びに来てください」と、豊かな自然を取り戻した豊島へ誘いました。