ハチミツ二郎「コロナ重症」で8日間昏睡…いま伝えたいことは「あなたが重症者を作るかもしれない」

新型コロナウイルスに感染して、一時は危篤状態になったことを公表したお笑いコンビ・東京ダイナマイトのハチミツ二郎。約1カ月間の入院から復帰し、自身が体験したコロナの危険性や医療現場の現実を、さまざまメディアを通じて発信しています。ファニマガでは、そんな彼がいま何を思うのか、そしてなにを本当に伝えたいのか、改めてリモートインタビューを行いました。

出典: FANY マガジン

ハチミツが発症したのは昨年12月14日(月)。39度を超える高熱が出て、「パルスオキシメーター」(血液中の酸素濃度を計測する医療機器)の数値も低下したことから救急車を呼び、大学病院に緊急搬送されました。その時点ですでにかなり危険な状態にあり、そのまま集中治療室に。昏睡状態から目覚めたのは、8日後の22日(火)のことでした。

28日(月)には症状が安定し、一般のコロナ病棟に移ったと言いますが、その後もPCR検査で陰性が出ず、入院は約1カ月後の1月15日(金)まで続くことに。「いまも左手がしびれている」と言います。

ハチミツは1月21日(木)にTwitterで新型コロナに感染していたことを公表。同日、東京ダイナマイトの公式YouTubeチャンネルで、発症から退院までの約1カ月間の経緯を赤裸々に語りました。「本当に現場は戦時中の病院みたいでした」という言葉が、現場のひっ迫した状況を物語っています。

出典: FANY マガジン

背中を押したサンド伊達の言葉

――1月15日(金)に退院後、どういった思いでコロナ感染を公表したんですか?

ちょっと迷うところもあって。「このまま発表をやめようか」とマネージャーとやりとりしたこともありました。ただ、入院中にリハビリの先生から「ぜひ、二郎さんから発信してください。そうすれば僕だけじゃなくて、全国の医療従事者も勇気づけられますから」とお願いされましたし、相方(松田大輔)から事情を聞いていたサンドウィッチマンの伊達(みきお)ちゃんからも言われました。

サンドウィッチマンは、東日本大震災で被災して津波に飲み込まれていく街を目の前で見た時、「伝えなきゃいけないと思った」って言っていたんですけど、伊達ちゃん曰く、「二郎さんは集中治療室まで行って戻ってきた人。(タレントで)コロナにかかった人はいっぱいいるけど、重症になって帰ってきた人はなかなかいないから、伝えるべきです」と。この2点は大きかったですね。

――ハチミツさんのYouTubeやTwitterを見ましたが、院内の「COVID-19病棟 入院患者対応中のため通行禁止」という張り紙や、誰もいない廊下を車椅子で移動する動画など、非常にショッキングでした。世間の人々も、新型コロナの危機がより身近にあるものだと再認識したと思います。

(昨年3月に新型コロナによる肺炎で)志村けんさんが亡くなって、みんなギュッと引き締まったはずなんですけど、その後、「コロナになったけど何もなかった」とか「若い人はちょっと熱が出るくらいだ」など、コロナに感染しても大したことがないという声が増えすぎたと思います。でも、やっぱり“死ぬ感染症なんだぞ”と。無症状の人はいるかもしれないけど、それで移してしまって亡くなる人がいるかもしれないですから。それを伝えなきゃなって思いました。

出典: FANY マガジン

――ハチミツさんをはじめとした芸人たちが発信することで、気を引き締めようと考える人もいると思います。

医療従事者の人が、芸人が発信するもの(動画やSNSなど)を見たとき、私たちのことを言ってくれているのかなって、少しでもプラスの気持ちになってもらえればと思います。

自分なんて劇場メイン(の活動)でしたから、1日でも早く満席になってほしいですけど、それをするためには、自粛期間中だけでも、みんなに家にいてもらわなきゃいけない。そのために自分にできることは何かと考えたとき、YouTubeを撮り溜めて、いっぱいアップして、30分でも1時間でも家にいてもらえるようにすることかなって。

――入院から復帰して、ルミネtheよしもとの舞台に立ったときは感慨深いものがあったのではないでしょうか。

いちばんの喜びです。あそこに立っている10分間が何よりいいですね。

出典: FANY マガジン

これだけ徹底しても防げない

――自分が感染してみて、いちばんに感じたことはなんですか。

自分は2018年に急性心不全と肺炎を起こしていますし、血糖値も高めなので、主治医から「二郎さんは、コロナにかかったら絶対に重症化しますから」と言われていたんですよ。だから、人より徹底して、手洗い、うがい、マスクはもちろん、「密」にならないようにしていたし、そもそも出かけないし、コロナ禍になってからは一度しか電車に乗っていない。それくらい徹底したのに、どこかでかかってしまったという。これだけ徹底しても防げないところまできたんだな、というのが正直な思いです。

――そこまで徹底していて、感染経路も分かりにくそうですね……。

(コロナ陽性が発覚した際)感染経路を聞くためにも、保健所からウチの奥さんに電話あったらしいんですよ。昨年12月14日(月)に発熱したのであれば、(感染したのは)だいたい5日前の9日(水)あたりだろうって言うんですけど、その日は一歩も家から出ていないですし、その前後だとしても出かけていない。家にいるときは、コンビニに行くこともないし、出かけたときでも、仕事帰りにスーパーやコンビニで必要なものを買うくらいで。だから、どこで感染したのか……。もちろん店に入るときはマスクをしていますし、行きも帰りも消毒をするんですけど、それでもコロナにかかってますから。防ぎようがないというか。

――ただ、自分たちでリスクを減らすことはできますよね。

小学2年生の娘を迎えに行くとき、通学路にスーパーがあるんですけど、その近くで待っていると、よく見かけるおじいさんやおばさんが、買い物袋に2品くらいだけ入れて毎日喋っているんですよ。それもいいんですけど、「1回で3日分の買い物をすれば、単純にリスクが3分の1になるのにな」と思って見ていました。若い人だろうが、高齢者だろうが、自分のリスクを下げることに集中しないといけないと思います。

出典: FANY マガジン

最後は自分の免疫力

――入院中、医師や看護師から「こういうことをすれば感染予防になる」と対策を教えてもらうことはありましたか?

コロナの病床っていうのは、そんな余裕がないんですよ。先生はコロナ患者の前には現れず、ぜんぶiPadで必要最小限の話をしてくれるんです。その代わり、決して多くはない看護師さんたちが、あっち行ったりこっち行ったりしてくれています。

ただ、入院最後の1週間は、微量の(ウイルスによる)陽性が続いたんですけど、点滴や注射などの治療もなにもなく、そのときに話をした先生からは「最後は自分の免疫力で跳ね返すしかない」と言われました。自分なりに見たり聞いたりした中で「睡眠時間の確保」と「ストレスを溜めない」ということが大事だと感じていたので、しっかり寝て、必要以上にうがいをしたら、その4日後くらいに陰性になって帰ることができました。

――コロナになっていなくても、感染対策を講じた上で、しっかり寝ることが重要なんですね。

病院だから体力も使わないし、眠れないんですよ。21時消灯なんですけど、僕が入院していた病棟は、消灯後にテレビを見てよかったので、夜中まで起きていることもありました。朝の6時に検温と血圧測定があるので、強制的に起きるんですけど、そのときの睡眠時間は5時間くらい。陽性が続いてからは、できるだけ8時間連続で寝ようとしました。ただ、“睡眠が効いた”というのは、あくまで自分の中での体験談ですけどね。

1回目と違う緊急事態宣言の“空気感”

――いまも、さまざまなメディアでコロナ関連のニュースが流れていますが、どう感じていますか。

入院中、ワイドショーやニュースを見ていましたけど、やっぱり1秒でも長くやってくれたほうがいいなって思いました。たとえば、「1回目の緊急事態宣言のときより、渋谷の人手が◯◯倍です。歌舞伎町は◯◯倍です」といった報道がありますけど、外に出ている人はそんな数字を知らない。だけど、データを見ると“そんなにいるんだ”って気を引き締めるかもしれないじゃないですか。だから少しでも多くのニュースや情報が出たほうがいいなと思います。

出典: FANY マガジン

――今回の緊急事態宣言は、1回目のときの緊迫した雰囲気と少し違うように感じます。

昨年12月に入院して今年1月15日(金)に退院したとき、2回目の緊急事態宣言が出たばかりだったんですけど、車で迎えに来てもらって帰る道中で、「あれ? ぜんぜん変わってないじゃん」って思ったんですよ。歩道を歩いている人も交通量も、駅のまわりの人たちも、明らかに減っている感じがなかったのは印象的でした。

昨年、IT会社に就職して3日目で緊急事態宣言になったとき、会社にパソコンを取りに行ったことがあったんですけど、明らかにオフィス街は人が減っていましたし、道中の車の数も少なかった。あのとき感じた景色はもうなかったですね。

――ちょっとした“心の隙”がある人が多くなっているのかもしれません。

少しくらい外に出ても大丈夫だろう、という気持ちの幅が自然と広がっちゃっているのかなって思います。

妻から「真面目になった」と言われた

――コロナ感染を防ぐことも大事ですが、万が一、家族・友人・知人がコロナにかかってしまった場合、周囲のフォローも大事ですよね。

そうですね。ウチの奥さんは家族や友人とは毎日話していたんですけど、芸人の知り合いが1人もいないんですよ。伊達ちゃんは昔から知り合いで、ウチにもよく来ていたんですけど、人の奥さんと連絡取り合っている人って滅多にいないと思うので(笑)。それでウチの相方から連絡があったときに、伊達ちゃんが察してくれて「奥さんの連絡先を教えてください」と。(入院中)俺が目を覚まさない間、伊達ちゃんがうちの奥さんに「大丈夫ですから」って毎日メッセージをくれたみたいです。

出典: FANY マガジン

――コロナに感染したことで、人生観に変化はありましたか?

奥さんからは「真面目になった」って言われました。毎日、「ありがとう」ってメッセージを送ったんですよ。「そんなこと言われたことなかった。人が変わったようだ」って返ってきたから、「人が変わったんだよ」って(笑)。家族、相方、伊達ちゃんみたいな友だちを大切にして生きていこうと思いました。

――大変な思いをしたハチミツさんだから語れることがあると思います。最後に何をいちばん伝えたいですか。 

あなたは大丈夫でも、あなたが重症者を作るかもしれないって思ってほしいです。

ハチミツ二郎が語る発症から退院までの詳しい経緯はYouTube『東京ダイナマイト公式チャンネル』で視聴できます。