ダイノジが地元・九州に戻った理由とは…「福岡よしもと」移籍で「ゼロから一所懸命やる!」

お笑いコンビ・ダイノジ(大地洋輔、大谷ノブ彦)が、この4月から「福岡よしもと」に移籍し、活動の拠点を福岡に移しました。じつは2人とも大分県佐伯市出身ということで、九州はいわば地元。これから地元・九州を舞台に、どのような活動をスタートさせるのか――。漫才師としてはもちろん、DJダイノジとして音楽フェスに出演するなど活動の場を広げているダイノジの2人に、移籍を決めたきっかけや、芸人として目指す今後について、じっくり話を聞きました!

出典: FANY マガジン
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自分たちの“得意なこと”を考えた

――東京で活動して20年、思い返して感じていることはありますか?

大谷 やはりとても華やかな場所です。注目を浴びてきたときは有頂天にもなりましたね(笑)。人気のテレビ番組やラジオ番組に出演するなど、たくさんの経験をさせていただきました。東京のお笑いシーンの皆さんに育てていただいたという気持ちです。ただ、若いときは「東京でやる」ということを強く意識していましたが、歳を重ねるごとに、その考えも変わってきたり、自分たちのできることを考えるようになってきて。
この変化をよくバイキングにたとえるんですが、朝食バイキングに行くと、若いときはぜんぶ食べたい! と思いますよね。でも、いま50歳になって、ぜんぶ食べるとお腹いっぱいになっちゃうんで“引き算”から始めるんです。これはいらない、せっかくだからこれは食べておきたいとか、そういう感覚に少し似ているような気がします。
だから、僕たちが得意なことで喜んでもらえたらうれしいし、得意なことをやっていきたいという思いがあります。

出典: FANY マガジン
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――この4月から福岡よしもとに移籍しましたが、どういうきっかけで決意したんですか?

大谷 コロナ禍になって、離れていてもリモートでできるようになった、ということもあります。
それに劇場も少しずつ世代交代しているんです。若い世代が躍進しているし、賞レースも若い人たちがメインです。吉本はデジタル化が進んでいるので、配信が増えてきたなかで改めて僕たちは何ができるんだろう? 何をこの会社でやりたいんだろうと考えるようになりました。そのとき、吉本が力を入れている「地域創生」で何かお手伝いできるんじゃないかと思ったのがきっかけですね。
僕たちが活動できるのはあと何年あるのか、あと何年生きられるのか、それも引き算の考え方なんです。これから何十年かの活動があるとして、僕らがやりたいこと、やれること、本来やりたかったことをもう一度考えて、地元に戻ることにしました。
これまでは先のことはあまり考えず、その時々で一所懸命やっていましたが、身体はやがて動かなくなるし、そう考えたときに残りの10年、15年を九州の地域創生のために自分たちの芸を使えたらいいなと思ったのが最初のきっかけでした。

大地 僕も、九州にはいつかは帰るだろうなと考えたりしていたので。

大谷 「いつか帰るだろう」って言う人は絶対、帰らないからね(笑)。大地さんの「いつか」って絶対ないですから!

出典: FANY マガジン
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大地 でも誰かが言ってくれたら、動くんですよ。だから僕はついていくだけですね(笑)。そう言うと、大谷さんに引っ張られて来たのかと思われるかもしれないですが、僕自身もそこに抵抗はまったくなくて、東京にこだわることもなかったです。

――そうなんですね。やはり東京のほうが知名度も上がるし、何をやるにも動きやすいのかなと思っていました。でも一方で、コロナ禍で多くの人がネットを使う方法を身につけました。

大谷 そういうことも含めて、いまはどこにいても関係ない時代になってきたと思います。オンラインの使い方次第で、直接お客さんと繋がる術をたくさんの人が知るようになりましたし。実際にやっている若い人たちも多いですからね。「知名度」というものは大きな武器としてほしいですが、ありがたいことに僕たちにはそれがある程度あるので(笑)。
そのうえで、一人ひとりと向き合うほうが僕らには向いているんだと思います。ヒザとヒザをつき合わせて、地方のお祭りの実行委員の人と一緒にお酒飲んで、一緒にお祭りをつくっちゃう。そういうことが僕らには合っているんじゃないかと思います。

――実際、九州に帰ってきてどうですか?

大谷 なにもツテがないまま来てしまったので、どうなんだろう? 着いてみて初めて不安に襲われました(笑)。あれ? 来たのはいいけど、なにも考えてなかったなって。なんもねーぞ、オレたち。と思っているところですね(笑)。

大地 ただワクワクしているだけっていう。でも、だんだん不安のほうが大きくなってるところです(笑)。

大谷 その不安を打ち消すために、ワクワクしてるんじゃないかって(笑)。

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まずは大分の音楽フェスを成功させる!

――今後、九州でどんなことをやっていきたいですか?

大谷 ひとつは、大分県の音楽フェスです。来年の3月16、17日に「ジゴロック2024 ~大分 “地獄極楽” ROCK FESTIVAL~」という大型野外音楽フェスが初開催されることが決まっているんですが、これにかかわります。とにかくいまは、これを成功させたい、そして10年続けて若い人にバトンタッチしていきたい、というのが僕らのひとつの夢ですね。
大分県には野外フェスがないんです。これまでも、やったらいいのにと思っていたんですが、今回、いい感じで話が進んだので成功させたいと思っています。これを続けるために、というのも九州に帰ってきた理由のひとつです。

――大分には歴史のある湯布院映画祭もあるし、これに音楽フェスも加わると、大分のエンターテインメントシーンは盛り上がりそうですね。

大谷 夜までお客さんにいてもらってこそ、フェスの成功であり、地域が潤うんです。大分に宿泊してもらって、大分を堪能してもらいたいんです。それで街が潤えば、街の困っている人たちにもちゃんとおカネがまわっていくと思うので。地域の人たちが、そして九州全体が儲かって、潤って……もうエンタメカツアゲですね(笑)。

――ご自身のふだんの活動としては、どんなことをやっていきたいですか?

大谷 全部です! やれることは全部やります。これから先の時間が限られているなら、やれることば全部やります。それが漫才なのかコントなのか、それ以外でも、その場の人を喜ばせられることなら何でもやります。終わったあとの打ち上げの飲み会にも行くし(笑)、全部やりますよ。そういう気持ちじゃないと、地方の芸人は勝てないと思います。

出典: FANY マガジン
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――そういうふうに考え方に変わったのはいつからですか?

大谷 「地域創生」を意識するようになったというのもありますが、それが、僕らがいちばん得意なことだと気づいたからでもあります。僕ら、DJイベントで1万7000人集まったんですよ。でも、次の日のトークライブは6人だった。あれ? みたいな(笑)。
でも、そういうDJとしての新しいエンターテインメントがつくれる、そして勝てるのであれば、それもやっていいじゃないかと。

――これからのダイノジさんは、地域創生のためにいろいろなことにチャレンジしていくんですね。

大地 漫才をしてほしいと言われればやりますし、コントをやってほしいと言われれば、もちろんやります。DJもね(笑)。その場をどう楽しんでもらえるか、です。
やり始めたころは「DJやるの?」という見方もありました。でも、たくさんお客さんが来てくれて、皆さんが楽しんでもらえるなら、なにをやってもいいんだなと考えるようになりましたね。

大谷 僕らのDJを見て、面白いからうちでもやってよと声をかけてもらったり、そういうことで繋がっていけるのは本当にうれしいです。それを九州中心にやっていきたいと考えているんです。

九州にはポテンシャルがある!

――九州・福岡はアジアに近い地域でもありますが、海外も視野に入れていますか?

大谷 もちろんです。DJの活動はやると決めているので、大地さんにはまだどこに行くかは教えないですけどね。ギリギリまで教えないです。何カ所か行く場所は決めています。

大地 それをギリギリに言われて、僕が焦る顔を見たいんですよ(笑)。

出典: FANY マガジン
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――インバウンドもアウトバウンドも九州だとやりやすいですよね。

大谷 九州はやるべきです。九州にはそのポテンシャルもあるし、だからこそ福岡に胸を張って帰って来たので。むかしの感覚では、「地方に行くことは都落ち」みたいな感じがあったかもしれませんが、そんな気持ちは僕らにはまったくなくて、九州にしか可能性はないと思って来ているので「見てろよ!」という気持ちですね。
でも、いざ来てみたら、なんのツテもなかったという(笑)。すごい強気で来たのに、あれ? 誰も知り合いがいないぞ、レギュラーもないぞって(笑)。また一からやり直しです。

――九州の人たちは、ダイノジさんが帰って来てくれて喜んでいると思います。ぜひ皆が来たくなる九州に、一緒に盛り上げてほしいです!

大谷 僕らは芸歴が、来年30年を迎えるんです。正直、このまま東京にいても“お荷物”なんですよ。いまの吉本で考えると僕らは芸歴が長くて、劇場は若い人たちに世代交代している。芸歴が長いぶん、香盤表でいうと(出番は)最後のほうになるんですけど、来てくれているお客さんは中盤くらいに出ている芸人たちを観に来ていて、僕たち、ネタはしっかりできるけど、それほどお客さんを呼べるわけではなくて。
そこにぶら下がって生きていくこともいいんですけど、そのプライドが邪魔なんですよ。東京にいて、立場は上だけど出番は少なくて、でもオレたち(の出番は)最後じゃないと、と言ってるような、そんなプライドが邪魔で。そのいらないプライドをなくしてしまうには、違う場所でゼロから、いまやれることを一所懸命やったほうがいいなと思っていたのも事実です。

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――プライドを捨ててゼロからというのは、言葉にすることはできても実際にやれる人は少ないと思います。その一歩を踏み出せることが、素敵なことだなと感じました。

大谷 舞台に立っても、イベントに参加するにしても、僕たちは目の前にいるお客さんが楽しいと思ってもらえることが、いちばんやりたいことなんだと改めて思いました。そっちのほうに大きなプライドがあるんです。とにかくウケたいし、喜んでもらいたい。それがいちばんです。

――ぜひ九州でエンターテインメントを盛り上げていってください! 改めて、これから新たな一歩を踏み出す意気込みをお願いします。

大地 九州にダイノジが帰って来ました。これからどうぞよろしくお願いします! おマッチしてます!

大谷 30年、こんなに長くやれるとは思っていなかったです。東京のお笑いシーンのスタッフの皆さん、吉本の皆さん、そして何よりも芸人仲間のおかげだと思っています。本当に感謝しています。皆さんからいただいたものは、これから九州で炸裂させて死にたいなと思っています(笑)。どうか九州の皆さん、よろしくお願いします。

取材・文:筒井あや

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