天津・向清太朗が企画、構成、キャスティングを行い、出演もするニコニコチャンネル『ムカイワークス』が、5月27日(土)に開設3周年を迎えます。アニメ関連の仕事が年300本を超えるという向が、さまざまな声優をゲストに迎え、トークやライブを配信するこの番組。いまや「声優×芸人」のリアルイベントにも発展し、評判を呼んでいます。そこで今回は、「これをライフワークにしていきたい」とまで注力する向に、これまでの3年間を振り返りつつ、今後の展望などを語ってもらいました。
「地獄」のような立ち上げ時のスピード感
――まず『ムカイワークス』立ち上げの経緯から聞かせてください。
新型コロナの緊急事態宣言が出た2020年4月、これを機に活動がグッと配信に寄ることになると思ったので、それができるチャンネルをつくろうと考えたのがきっかけです。いろいろな人が一気に自分のチャンネルを立ち上げることが予想されたので、「これはスピード勝負だ」と当時のマネージャーやスタッフに「めちゃくちゃ急いでくれ」とお願いしました。
当時のマネージャーが、そのときの状況をダイイングメッセージみたいに「地獄……」と書いていて……たぶん心の声が漏れちゃったんでしょうね(笑)。
――緊急事態宣言下で「どうしよう」という戸惑いのなか、すぐに行動を起こしたのはすごいですね。
いつ劇場が再開できるのかまったくメドが立たず、「この状況がどこまで続くんかな」という不安はあった気がします。ただ、そういう状況だからこそ、なにかしらかのエンタメを生む必要は出てくるだろうなと思っていたし、自分自身で仕事をつくる必要もあったので、自分が好きな「アニメ」「声優さん」に寄った内容にしようとなりました。幸い、YouTubeで生配信できるような準備は整えていたので、配信に関して知識や経験がゼロからではなかった。それは運がよかったなと思います。
――それからの3年間で印象に残っている回や「転機になったな」という回はありますか?
『1時間空きました』というタイトルで、いろんな方にゲストに来ていただくという企画があります。これは収録と収録の間が1時間空いたからフリートークをしましょうというコンセプトなので、事前の質問事項すらなく撮っています。
これまで155人ぐらいのゲストに来ていただいていて、どの方にも思い出があるんですけど、三森すずこさん(紅白歌合戦にも出場したμ’sのメンバー)という、もうレジェンド級に人気の高い声優さんが来てくださったときは、自分のなかで「あ、これは大丈夫かもな」と思いました。三森さんが来てくださるということは、「ムカイワークスにうちの三森を出していいだろう」と、先方の事務所に判断してもらったということなんです。
この番組に関して言えば、キャスティングも含めてすべて僕がやっているので、番組の価値=自分自身の価値です。それを認めてもらったというか、価値を見出してもらえたんだろうなと感じた瞬間でしたね。
――業界的にも存在感が増しているのですね。
それと、種崎敦美さん(アニメ『SPY×FAMILY』でアーニャの声を担当)が来てくれたときは悩み相談みたいな内容になって、僕がカウンセラーのようにアドバイスをする感じだったんです。
でも、その種崎さんも、いまや声優アワードで主演と助演を同時受賞という快挙をなし遂げられるぐらいにものすごい。マネージャーさん曰く、「M-1優勝直後の錦鯉さんくらい忙しい状態」らしくて(笑)。自分がそんなすごい方の悩み相談にのっていたっていうのは、いま考えると、ちょっとすごいなって思います。
転機はレイザーラモンRGの存在
――企画から構成から出演から、ぜんぶ向さんが手掛けているというのが、『ムカイワークス』の最大の特徴ですよね。
それまでは企画だけ出したり、キャスティングだけしたりということはあったんです。でも、それをぜんぶ合体させたのが、この『ムカイワークス』。「これまでのいろんなことを組み合わせたらこうなる」っていう形です。
だから、自分自身の「集大成」に近い。やってきたことをぜんぶ集めて、自分もいろいろな役割でかかわっている。いろいろな方に助けていただきながら進んでいる。本当は、これが死ぬまで続いたら最高だろうなと思います。
――『ムカイワークス』のココがスゴイというところは?
ほかの番組では絶対にできないことをやっていると思うんです。質問事項すらないし、5分後に何を聞いているかわからない。これは僕が演者、プロデューサー、作家と、ぜんぶやるからこそ成立していることです。
さっきお話した『1時間空きました』っていう企画は、ゲストで来てくださった声優さんが驚くくらいに、台本も何もありません。まさに、雑談力が試される企画なんです。何を喋るかわからないっていうのを売りにしているので、ひとつも予定調和がない。それが大きな特徴だと思います。けっこうそれでゲストの方も驚かれるし、ドキドキされていたりもする。
――声優さんの意外な表情やエピソードが引き出せそうですね。
そうなんです。ゲストに来ていただいた方に、どこかで「え、もう終わりですか?」と思わせないといけない。つまり、僕がしゃべらないと成立しない企画なので、そこは楽しいし、鍛えられていると思っています。ワーっとしゃべりながら、「ここ、広げられるな」とか、「ここはポンポンと行こう」とか、そんなことを3年もやってきたので、考えながら喋ることができるようになりました。
じつは、むかしの動画を見ると、明らかに「次は何を喋ろう」と考えている表情も映っているんですよ(笑)。そんなときは、声優さんが喋ってくれている内容も上の空で聞いてしまっている部分もあったり。でも、いまはもう、真摯にマジの雑談として、ものすごく自然に話ができるようになりました(笑)。たとえば、「おにぎりの具、何が好きですか?」っていう話だけでもいいのかなと。
――軸は芸人でありつつ、根本にある「アニメが好きだ」という熱意を『ムカイワークス』のように自分で形にして、それを仕事にしていく力がすごいですね。
いちばん最初は、相方(木村卓寛)がエロ詩吟で売れて、「じゃあ、俺は何すんねん」というのはありました。でも転機としては、(レイザーラモン)RGさんの存在が大きかった。RGさんには自分のやりたいことがあって、それを一緒にやってくれる仲間がいます。そしてそれと同時に、RGさんは、お笑いのまっすぐな部分を突き進んでいる方でもあります。そういうふうになりたいな、という思いがあったんです。
RGさんとは大阪時代、個人ビデオ屋みたいなところで僕がバイトをしていたとき、RGさんが雇われ店長だったという時期があったりして、すごく近しい間柄だったんです。
ベストはライフワーク的に続けていくこと
――3周年を迎えて、いまの心境はどうですか?
コロナも5類になって、チャンネルを始めたときからは、いろいろ変わってきました。同様に『ムカイワークス』も、今後は「どう変えていくか」というターンに入っているんじゃないかなと感じています。ベストは、これをライフワーク的に続けていくことなんですが、それがどこまでできるのか。ムカイワークスを持続可能にするために、流れをよくする必要はあるし、そのために何かを変えるべきなのか、いま考えています。
――今後、こんなことをやってみたいということはありますか?
いま配信で見てもらうだけでなく、吉本の強みを生かして、リアル劇場でもイベント(『山崎はるかのネタがやりたいin有楽町』)をやらせてもらっているので、それがうまくリンクするような企画をやっていきたいですね。リアルのお客さんも、配信を見る人もどんどん増えるものが、新たにつくれたらいいなと思ってます。そして、もっとオリジナリティを出していって、「これはムカイワークスでしかできないよね」みたいなものをつくっていければいいなと思います。
――「声優×芸人」のイベントは双方に刺激になりそうですよね。
そうなんです。「ムカイワークス」で何をしたいのって言われたら、「声優さんと芸人が絡むと面白くなるよね」っていうことを伝えたいんですよね。だから、今後は自分が演者として出ないで、芸人×声優さんという番組をつくるというのもアリかなと思います。アニメ好きな芸人も多いし、その接点をうまくつないでいきたいですね。
吉本では、僕に来た仕事をほかに振れないんです。それはものすごい機会損失ですよね。アニメの知識があって、同じようなことをやれるとしたらR藤本か(こりゃめでてーな・伊藤)こう大なんですけど、あのふたりはMCをやろうと思うタイプではないのでね(笑)。
――では、最後にメッセージをお願いします!
いつもありがとうございます。3周年を迎えて、とにかく感謝しかないです。まだまだ仕掛けていきたいという気持ちはずっとあって、それをよりいい形でみなさんに届けられるようにやっていきたいなと思っています!
ニコニコチャンネル『ムカイワークス』はこちらから。
公演概要
『山崎はるかのネタがやりたいin有楽町4』
日時:6月17日(土)
第一部 開場14:30/開演15:00/終演16:30
第二部 開場17:30/開演18:00/終演19:30
場所:よしもと有楽町シアター
出演:山崎はるか(アーツビジョン)/天津 向/【ゲスト】南早紀(81プロデュース)
第一部:ネイチャーバーガー/第二部:世間知らズ
チケット:前売3,800円 当日4,300円
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