「第9回 上方落語若手噺家グランプリ」優勝は桂そうば! 「これで肩書を書けると思うと嬉しい」

上方落語の若手噺家の登竜門『第9回 上方落語若手噺家グランプリ2023』の決勝戦が、6月20日(火)に大阪・天満天神繁昌亭で開かれ、ラストイヤーの桂そうばが優勝、林家染吉が準優勝となりました。上方落語協会に所属する入門4年目から18年未満の噺家が対象のコンテストで、今回はエントリーした36人のなかから決勝に進出した9人がネタを競いました。

出典: FANY マガジン
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創作あり、古典あり…若手らしい熱演が魅せる!

トップバッターは笑福亭笑利で「神に誓って」。「賞レースは緊張すると」と引っ越し先の近くにある神社へ願掛けをしにいったとマクラで笑わせます。そして、外国人の牧師も登場する創作落語で笑いを誘いました。

月亭天使はオレンジと青が鮮やかな浴衣で登場し、「オネガイ」を演じます。冬の夜に現れた先妻の霊を生き生きと演じる天使。怪談をモチーフにした滑稽噺で場を盛り上げました。

桂慶治朗が演じたのは「いらち俥」。登場するなり、「安心してください、古典ですよ!」と声を張ります。せっかちな客と、のんびりとした車屋との対比をくっきりと描きだしました。

桂文五郎はにこにこしながら高座へ上がって「青菜」を。植木屋が仕事先で目にした旦那とその妻のやり取りを長屋に帰って再現する噺を表情豊かに熱演します。汗びっしょりで、まさに夏の噺の臨場感も体現しました。

中トリは露の眞で「こぶ弁慶」。はかま姿の眞ははきはきとした声色で、観客を噺の世界へいざないます。そして歌舞伎の要素も取り入れながら、奇想天外な物語を目の前に立ち上げました。

出典: FANY マガジン
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拍子木を打ち鳴らして酔っ払いに変身

中入り後は林家染吉の「権助芝居」からスタートです。マクラで歌舞伎教室に行っているエピソードを披露。芝居好きの権助が代役で舞台に立つというネタを表情豊かに、また舞台から飛び出しそうなほどのリアクションで生き生きと。クライマックスでは、歌舞伎の見得も登場しました。

続いて同じく林家一門から染八が「くっしゃみ講釈」。染八はお囃子の笛を吹きながら登場し、さっそく本題へ。元気よく、そしてスピーディーな展開で観客を乗せ、講釈師を描く場面は威厳たっぷりに、扇子と拍子木を駆使して講談を披露しました。

桂そうばは「上燗屋」を。見台に拍子木をひとつ打ち鳴らして、酔っ払いに変身。気に入らないことがあると人が変わったように凄み、その変わり身の早さが鮮やかです。あの手この手を尽くしてタダで店の食べ物を食べようとする酔っ払いに、最後は拍手と笑いが起こりました。

そして今年の決勝戦の大トリを飾ったのは、桂ぽんぽ娘。演じるのは「シングルデブ」。「クリスマスの話におつきあいください」と本題へ。時事ネタをふんだんに盛り込んで笑いを誘います。途中、大胆な芸風のぽんぽ娘らしい描写もありつつ、ほんのり切ない噺で聴かせました。

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10回で終了予定のグランプリ、延長が決定!

熱いネタ披露を終えて、審査発表へ。審査員には在阪テレビ局、ラジオ局の関係者の姿もあります。審査はいずれも甲乙つけがたかったというなか、桂そうばが優勝、林家染吉が準優勝。それぞれ賞金20万と5万円を手にしました。

「上方落語若手噺家ブランプリ」は当初、10回まで実施する予定で始まりましたが、その10回が目前まで迫ってきた今年、「11回目以降も継続が確定しました!」と上方落語協会会長の笑福亭仁智が嬉しそうな表情で報告します。

さらに「物価高騰の折、今年から賞金がそれぞれ2倍に、また決勝進出者にも賞金を贈ります」と声を弾ませました。

出典: FANY マガジン
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優勝のそうばが喜びを語りました。

「ラストイヤーだったので、取れて嬉しいなと。東京と比べると大阪は落語の賞自体が少ないので、東京の子と一緒に落語会をやると、向こうの受賞歴が多くて、位負けしてるみたいなところがありました。ようやく肩書きを書けると思って嬉しいです」

準優勝の染吉は、「もちろん優勝できなくて悔しいです。でも今日以上の落語ができるかと言ったらできないです。完全な実力不足なので、もう一度、出直してまいります。本当、折れない心をつくらなあかんなと思いました。そして実力もつけて、来年こそは優勝します。もう私が予約しておきます!」と早くも決意を固めていました。

仁智は、若手たちの熱演を振り返ってこう総括しました。

出典: FANY マガジン
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「それぞれ力をつけてきて、『噺家グランプリ』用の演出や脚色を工夫していました。そうばくんは今回、ラストチャレンジで大成功をやったんですけど、準優勝以下、まだまだチャンスがあるので、ぜひとも自分なりの工夫をして、どんな順番でもアピールできるような落語で勝負していただきたいと思っております。なんと言いましても賞金が倍になりましたので、これは力が入るよ、本当に」