実力派コント師の本気演劇ユニット「メトロンズ」最新作は「いままででいちばん難しい!」【公演直前SP座談会】

しずる(KAƵMA、村上純​​)、ライス(関町知弘、田所仁)、​​サルゴリラ(児玉智洋、赤羽健壱)​という実力派コント師3組に、作家・演出家の中村元樹を加えた7人組の演劇ユニット「メトロンズ」。これまでも、その熱量の高い“本気の芝居”で話題を呼んできた彼らの第5回公演『ホームルール』が、7月19日(水)〜23日(日)に東京・赤坂RED/THEATER​​で開催されます。今回は、本番直前の稽古場にFANYマガジンが潜入し、7人の作品への思いを語ってもらいました。

出典: FANY マガジン
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“笑い”と“真剣”が入り混じる直前稽古

中村が演出、しずる・KAƵMAが脚本を務めた本作は、ある男の家に職場の同僚やサバイバルゲームで知り合った友人が集まるところからスタート。複雑な関係性のなかで、価値観の違いが浮き彫りになって……という物語です。

この日は午前中から集合した7人。稽古前は、青春時代にブレイクしていたアーティストのモノマネをしたり、懐かしい話をしたりと笑いが絶えません。

まずは、ラジオ体操と発声練習から。こちらも笑顔を見せながら、体を動かし、声を出し、徐々に役者モードへと切り替えていきました。

その後、通し稽古がスタート。先ほどの和やかな空気とは一転、それぞれが役をまっとうします。ある一室で巻き起こる6人のやりとりは、徐々に熱を帯びていきました。

出典: FANY マガジン
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「芝居」をやったら怒られる

稽古終了後、インタビューを実施。演劇とコントの違いや本作への思いなど、ざっくばらんに語ってもらいました。

――稽古中の雰囲気や、これまでの4作との違いを教えてください。

しずる・KAƵMA 今回、演技力が必要なんですよ。

ライス・田所 確かに。いまこうやって喋っているような“日常の感じ”を出す演技をしなきゃいけないから、いままででいちばん難しい! (『ホームルール​​』は)「芝居」なのに芝居をやったら(演出の)元樹が怒るんですよ(笑)。

中村 みんな、いままで20年ぐらい(舞台上から)お客さんに向けてやっていたので、そのクセがどうしても出てしまうんです。今回、舞台は部屋なので、客席側は壁という設定。目の前にお客さんがいる感覚で演じちゃうと、お芝居っぽくなるんで、そこを消す作業が難しいなと思います。

出典: FANY マガジン
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しずる・村上 テーマが「演劇っぽくしない」だから、ゆるく見えすぎちゃうのも違うしね。(中村から見ていて)誰がお客さんのほう、意識しがち?

中村 今日で言うと……関町かな。

一同爆笑

サルゴリラ・赤羽 「今日で言うと」だから。気にしないで!

ライス・関町 このインタビューは記事になるからね〜。オレを名指しするのが、いちばんいいか……受け止めましょう!

――(笑)

関町 でも、まったくその実感がなかったし、(インタビュー時点の)本番1週間前に言われて、だいぶテンパってます(笑)。これでまた「前を向かないようにしよう」って意識しちゃうとダメだし、難しい!

――この稽古期間中、メンバーとのやりとりで印象に残ったことは?

赤羽 6人とも稽古場に入る前に台詞を(頭に)入れてきていたんですけど、最初のころ、僕が台詞を忘れたら、田所が「○○だよ」と教えてくれて……。みんな「自分以外の台詞も入ってんの!?」ってめちゃくちゃ驚いてました。

田所 自分の1コ前の台詞も頭に入っていて、それを教えてあげたんですけど、そのあと、自分の台詞が飛んじゃいました。

出典: FANY マガジン
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赤羽 「……で、オレの台詞なんだっけ?」ってね。まず、てめえの台詞を頭に入れろよっていう(笑)。

田所 あと、もともと十分な稽古スケジュールが組まれていたんですけど、今回、稽古場入りの前に、みんなで3、4回集まって自主練をしました。

サルゴリラ・児玉 それだけやったぶん、台詞が飛んだりするとショック。危機感を感じますね。

ふだんのコントが“ドリフの動き”に…

――演劇とコントはまったく違うものだと思いますが、メトロンズをやってきて、コンビに還元できているなと思うことはありますか?

村上 ネタによっては、コントの間(ま)が変わっているかもしれないですね。

児玉 コントのネタ合わせをしているときも、(役の)「気持ち」の話をするようになりました(笑)。

赤羽 確かに、気持ちが乗っているほうがコントもウケやすいというか。お客さんが共有しやすいのかなと思います。

田所 僕は「(メトロンズでは)コントっぽい動きをやめてくれ」と言われるので、フラストレーションが溜まって……。最近、コンビでコントしていると、反動でドリフぐらい大きな動きになっちゃいます。

――(笑)

関町 ネタ終わったあとに何度か「前にこんな動きしてたっけ?」って聞きました(笑)。

出典: FANY マガジン
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KAƵMA 確かに出てるわ〜! メトロンズをやり始めてから、(田所の)その動きが目に余るようになりましたもん。でも、正直、(田所は)顔が大きくて、手足短いんで、どんどん面白くなってくるんですよ。

赤羽 ライスは『キングオブコント』のチャンピオンだし、シュールな世界観のコント師だと思っていたんですけど、メトロンズ始めてから、5GAPさんみたいになってきましたね。

関町 (笑)。(田所は)ツッコミのほうなのに、その動きするからね。

KAƵMA 前回、前々回は、まだそういう動きを出してもよかったんですけど、今回はマジでダメだから、田所に「(コントの動きが)出ちゃってるよ」って、いちばん言ったかもしれないです。

児玉 今回、めちゃくちゃ溜まってんだ?

田所 だいぶだね〜! オレ、溜まりすぎて、家でも「シェー!」とかやるからね。

村上 それは違う問題だよ。

――(笑)

田所 だからこそ、今回は「リアルな芝居」「抑えた演技」に注目してほしいですね。

出典: FANY マガジン
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観る人によって感じ方が変わる結末

――中村さんは、メトロンズの成長をどう感じていますか?

中村 当初は、僕も含めてみんな子どもだったなと思います。第0回公演『KASAMATSU』(2019年)と、今回の冒頭シーンがちょっと似ていて。あのころは普通の芝居に我慢できずに、途中からプロレスを入れちゃったんですけど、今回はそのまま走り抜けています。等身大のお芝居をちゃんとやり抜くようになれたのは、成長かなと思います。

――今回の脚本は、過去3作品に引き続き、KAƵMAさんが担当しています。それぞれの複雑な関係性、価値観の違いなど、興味深い人間模様が描かれていますね。

KAƵMA 「誰かに感情移入してほしい」とまではいかないですけど、(観劇後)家に帰ったときに「あれ? 突き詰めたら、私、あれのミクロのようなことやってない?」と感じてもらえるような気がします。

村上 みんなの中でのルールやマナーもあるし、自分の中では「これが当たり前だ」と思っていたらじつは……みたいなこともあるし。持ち帰って、いろいろ考えてみてもいいかもしれないですね。

KAƵMA 終わり方(結末)については、「面白い」と思う人もいるとは思うんですけど、もしかしたら、「すごく残酷だな」と感じる人もいるかもしれないですね。

村上 『世にも奇妙な物語』みたいな雰囲気もなくはないかなあ。

KAƵMA ……それはないですね。これはちゃんと言っておきます。『世にも奇妙な物語』みたいな雰囲気はまったくないです!

村上 (自分自身も)言いながらピンときてなかったよ(笑)。ジャーナリズム精神があるなら、このコメントは書かないでください。

出典: FANY マガジン
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――(笑)。最後に本作への意気込みやメッセージをお願いします。

中村 いままで4回やってきて、そこで身につけてきた力、演技力、そういうものをこの第5回公演『ホームルール』でぶつけたいなと思っています。

KAƵMA 主役はあなたが決めてください。もしかしたら、あなた自身が主役かもしれません。

赤羽 これまででいちばんリアルな設定だと思いますし、身近に感じられると思うので、何かしら持って帰ってもらいたいです。

関町 いままでの公演でいちばん稽古をやっているので、来てほしいですね。1人でも「観ればよかった!」と後悔する人を減らしたいです。

児玉 空気感を楽しんでもらいたいです。ずっとニヤニヤしてていただければ、って感じですね。あと、お客さんがちょっとずつ増えてきているので、あともう1コ上にいきたいです。特に今回は、何回でも楽しめる作品だと思います。

出典: FANY マガジン
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KAƵMA (2回目以降)たぶん見え方が変わるよね。配信観てから劇場に来ていただくのもいいかもしれない。

村上 これからも10回、20回とメトロンズをやっていきたいと思っているんですけど、 振り返ったときに、この第5回公演は、分岐点となる作品になるような気がしています。自信があるので、ぜひ舞台版『世にも奇妙な物語』に来てください。

赤羽 違うから!(笑)

田所 今回は、お芝居の特性上、僕の大好きなコントや漫画のようなキャラクターづくりはいっさ排除しています。「リアルな人間の演技」をお見せするヅラ。シェー!

KAƵMA おい……(笑)。(そのまとめ方は)もう『世にも』レベルじゃん。

村上 どういう意味?

――(笑)

関町 「ヅラ」と「シェー」って、『ドカベン』の殿馬と『おそ松くん』のイヤミが入ってるし。

田所 いまのうちに、(溜まりすぎた)“毒素”を抜いておかないと(笑)。

メトロンズ『ホームルール』公式サイトはこちらから。

公演概要

メトロンズ第5回公演「ホームルール」

日程:
7月19日(水)19:00開演 ※配信有り
7月20日(木)19:00開演 
7月21日(金)19:00開演
7月22日(土)13:00開演/17:00開演 ※撮影有り
7月23日(日)13:00開演/17:00開演
場所:赤坂RED/THEATER
出演:赤羽健壱、KAƵMA、児玉智洋、関町知弘、田所仁、村上純
脚本:KAƵMA
演出:中村元樹
チケット:前売・当日5,000円 配信1,000円(全体が見やすい1カメラ映像の初日生配信) 配信2,500円(じっくり観れるカット割り映像配信)

FANYチケット(会場)はこちらから。
FANYオンラインチケット(配信)はこちらから。

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