いまをときめく芸人たち……周囲から一目置かれる存在になった彼らにも、かつて「こんなふうになりたい!」という憧れの存在があったはず。そんな売れっ子たちに、芸人を志したきっかけや憧れた芸人、そして芸人になるまでの道のりなどを語ってもらうインタビューシリーズ『あなたは誰に憧れ芸人に?』。今回は、『キングオブコント2022』王者、摩訶不思議なコントで別世界へいざなってくれる、ビスケットブラザーズ(きん、原田泰雅)の登場です!
TSUTAYAの棚の端から端まで
――まず、おふたりは誰に憧れて芸人になろうと思ったのでしょう?
原田 子どものころは母親の影響が大きくて、最初の憧れは映画『ネバーエンディング・ストーリー』(1984年)とか、そっちかもしれないです。あと、漫画家にも憧れていて、藤田和日郎さんの『からくりサーカス』とか好きでした。そこに乗っかって、『笑う犬の冒険』(1999~2001年、フジテレビ系)……。
だから、ざっくりと「このお笑い芸人さんに憧れて」というよりは、いろんなものを見ては憧れて、「ビッグになりたい」と思っていました。それで最終的に、高校生のときに千原兄弟さんのDVD『プロペラを止めた、僕の声を聞くために。』を見て、「お笑い、やってみようかな」に着地しました。だから、ブレブレかもしれないです(笑)。
——いろいろな刺激から、原田さんのセンスが育まれていったんですね。NSC(吉本総合芸能学院)大阪校33期に入学した動機はなんですか?
原田 僕、高校が芸能文化科で、令和喜多みな実の野村(尚平)さんとかロッチのコカド(ケンタロウ)さん、宇都宮まきさん、ネコニスズのヤマゲンさんが卒業されていたから、なんとなくお笑いのルートがあったんです。で、僕の学年の1個下にヤマゲンさんの弟がいて、双子なんですけど、それが映画監督の(山元)駿と(山元)環で、「お笑い、やってみたら?」と言われたんです。
そのときに「こんな世界もあるで」って見せてくれたのが、千原兄弟さんのDVDやったんです。それで、「こんな世界があるんか!」とNSCに入ることにしました。
——お笑いのルートが、すぐそばにあったんですね。きんさんが憧れた芸人さんは?
きん 僕、めっちゃ芸人さんが好きなんですけど、NSC(大阪)8期くらいから13期生くらいの方々に、かなり影響を受けてるんです。FUJIWARAさん、宮川大輔さんくらいの世代から、ブラックマヨネーズさん、チュートリアルさん、野性爆弾さん、次長課長さん、東京ダイナマイトさんに憧れてました。でも、いちばんでっかいのは、ダウンタウンさんかもしれないです。
——きんさんは出身が香川県ですが、どんなテレビ番組を見て影響を受けましたか?
きん テレビ番組というより、基本はTSUTAYAで借りていろいろな芸人さんのDVDを見ました。高校生のときはもう、DVDの棚の端から端まで借りてめっちゃ見ましたよ。『緊急特別 DVD 追悼ケンドーコバヤシさん』は異質やったので、よく覚えてます。
——お笑い熱がすごかったんですね。NSCに入学しようと思ったきっかけは?
きん 僕はもう小学生くらいから「芸人になりたい」と言ってました。香川県でも新喜劇は放送していて、寡黙な親父が新喜劇だけは笑ってたんですよ。それを見て、小学3年生には芸人になろうと決めてましたね。で、高校を卒業してすぐにNSCに入学しました。
原田 僕は高校自体が芸能系の学科やったから、まわりも落語家を目指す人もいれば、音楽関係とか芸能方面に進む人が多くて、僕もあまり抵抗なくNSCに入学したけど、きんの場合は香川から出てきたっていうのが結構な感じやな、と。
きん まわりは大学に進学するし、僕はNSCにって感じです。NSCも学校感があるし。
原田 そのときって、「無理やったら……」みたいな可能性ってよぎってるの?
きん 「無理なら無理でしゃーない。いま行きたいんやから行こう」ていう感じかな。
ニッポンの社長・辻の言葉に救われた
——NSC入学後に、芸風などで影響を受けた人はいますか?
原田 僕は、同期で、いまはYouTubeラジオ(『ビスケットブラザーズのバースデースーツラジオ』)とかで作家をやっていて、14年くらい一緒に住んでるニキ(ケイシ)ですかね。それと、ニキとトリオを組んでいた新喜劇の小西(武蔵)さん。小西さんは年齢が僕らの10歳上なんですけど、NSCのときから「お前らは若いし才能があるから」とめっちゃ映画を観せられたんです。
きん 小西さんはNSCに入る前に靴屋の店長さんをしていて、ファッション関係の広告をつくる方々とめちゃ仲良かったので、「いき切った人はこういう映画を見るんや」って18歳の僕らに映画をいっぱい観せてくたんですよ。
原田 「お前らは、とにかくセンスを磨け」って、カルト映画とか、ただただ音が薄~く流れる映像とか……。
きん ヘンな映画をめっちゃ観せられました。そこから僕は(小西と)8年くらい一緒に住むことになるんですけど、当時から僕らのことを「いちばんおもしろい」ってめっちゃ買ってくれてたんです。いま考えたらスゴイなと思います。まったく何も完成してないのに。
原田 ニキはニキで、特殊な音楽とか、めちゃ知っていて。だから当時は部屋ではお笑いのDVDをニキと一緒に観るか、映画観てるか、音楽を聴いてるか。そんなんをずっとやってましたね。
きん あと、先輩では(ニッポンの社長)辻さんにはすごいお世話になりました。当時、辻さんは5人くらいでルームシェアをしてて、そこに呼んでもらってデカい鍋を全員で囲むっていう。
原田 僕らがまだ、ネタが全然ウケない、演技も設定も小道具も荒くて、「見てられるか!」って言われてるようなときに、辻さんが舞台袖で「お前らおもろい」って言ってくれて。
きん 辻さんって、原石を見抜くのがすごいんですよ。まだ整っていなくても、ウケてるとか、誰に評価されているとか関係なく見てくれる。辻さんの言葉で救われた芸人は、めっちゃ多いと思います。
野性爆弾・くっきー!の泣けるくらい“芸人らしい”優しさ
——いまやバラエティ番組や舞台でも活躍する機会が増えましたが、「すごい」と思った芸人さんはいますか?
きん 僕は、ずっと憧れていた(野性爆弾の)くっきー!さんが、ほんまに優しい方やなって。泣けるくらい優しいです。
原田 まだ『キングオブコント』を獲る前、「お前ら、大阪でなんか賞獲ってたよな? 世も末やな」と声かけられたり、なんかすごいチェックしてくれてる。
きん 一緒の舞台に立たせてもらったときも、絶対に僕ら若手がスベらないようにしてくれはって。こんなこと言うと営業妨害かもしれないですけど(笑)、“芸人さんのやさしさ”やなぁと思いましたね。かっこいいです。
原田 僕は、トータルテンボスの大村(朋宏)さんです。去年の『キングオブコント』で決勝進出したときに、大村さんが僕らをインタビューしてくださったんですけど、しゃべり方なのかわからないんですけど、なんか部屋全体がエロい雰囲気になったんですよ。エッチというか色気? ムーディーなエロい空気に包まれて「このぶっとそうな感じ、なんや!?」と思いましたね。鼻血が出そうになりました。
——ちなみに学生時代、芸人になる前に憧れていた芸人さんたちには会えましたか?
きん 僕はほとんどの方に会うことができました。
——きんさんは、憧れの芸人さんがたくさんいましたが、緊張しませんでしたか?
きん 逆にしゃべりやすかったです。なんせずっと見てたし、その人たちに育ててもらった笑いなので。それに、僕が見てきたまんまやから、しゃべりやすいのかもしれません。(宮川)大輔さんもめっちゃ優しく話しかけてくださったんですけど、僕が着替えだしたら「なんやねん、その体型!」って。別にカメラが回ってないのに、まんまじゃないですか(笑)。それがうれしかったです。
原田 僕も千原兄弟さんに会えてます。ジュニアさんに初めてお会いしたのは飲みの席やったんですけど、人生で初めてくらい、カチンカチンになってしまいました。会えていないのは、『笑う犬』で見ていたネプチューンの原田泰造さんかなぁ。僕、“原田泰”まで一緒なんで、早くお会いしたいですね。
公演概要
『僕たちの好きなコント5~旬のコント師が今、大好きなネタを披露~』
日時:8月11日(金) 開場15:45 開演16:15
場所:COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール
出演:ジェラードン(アタック西本・かみちぃ)、男性ブランコ、ビスケットブラザーズ、コットン、レインボー、かが屋(マセキ芸能社)
チケット:配信2,000円
※劇場チケットは完売
FANYオンラインチケット(配信)はこちらから。
イベント概要
「真夏のラフフェス in 森ノ宮2023」
開催日:8月9日(水)~8月15日(火)
会場:COOL JAPAN PARK OSAKA
公式サイトはこちらから。