福岡よしもと(吉本興業福岡支社)の芸歴5年以下の若手芸人8組によるユニット「福岡ネクストエイト」で、エース的存在としてメンバーを牽引するのがとらんじっと(あらた、原ノコシ)の2人です。今年1月に開催された大型お笑いフェス「LIVE STAND 22-23 FUKUOKA」では、福岡よしもと代表としてステージに立つなど存在感が際立っています。今回はそんな2人に、その活躍ぶりや、刺激を受けているという東京・大阪の先輩芸人たちとの交流について聞きました。
「LIVE STAND」出演はデカい経験
——「福岡ネクストエイト」が結成されて10カ月がたちましたが変化はありましたか。
あらた タイトルに“ネクストエイト”と付いたライブを開催してもらう機会が増えたので、寄席以外のライブが増えたのはありがたいです。スポットを当ててもらいやすくはなりましたが、「福岡ネクストエイト」といってもまだ知名度は高くないし、余計に「がんばらないといけない」と思っています。
こないだも、マンゲキ(よしもと漫才劇場)と森ノ宮(森ノ宮よしもと漫才劇場)、祇園花月の舞台に立たせてもらったんですけど、ネクストエイトのなかで行かせてもらえたのが3~4組で……。ネクストエイトに入れても、選ばれてからのほうが何倍もがんばらないといけない、という気持ちが強いです。
原 (吉本興業の)社員さんたちの「福岡ネクストエイトで、福岡の劇場を盛り上げていってほしい」という気持ちが伝わってくるのでプレッシャーも感じます。でも、シンプルに“ネクストエイト”とつくイベントが増えたことや、大阪や東京の舞台に立たせてもらえるのは、経験が積めるのでありがたいですね。
——経験といえば、おふたりは「LIVE STAND 22-23 FUKUOKA」に福岡よしもと代表としてステージに立ちましたね。
あらた 正直、あれがなかったら、この1年の9割がなかったことと一緒。2023年はぜんぜん違った1年になっていたと思うくらいデカい経験でしたし、圧倒的なインパクトでした。出番直前に僕らを紹介してもらうとき、大画面に「福岡ネクストエイト」という字幕が出たんですけども、お客さんたちが「何それ?」ってなっていたのが個人的におもしろかったです。まだまったく広まっていない状態で……(笑)。ライブスタンドでユニット名を出せたのも、ネクストエイトにとってめちゃくちゃよかったんじゃないかなっていう。
原 福岡初開催で出演できたのが、僕ら的にも大きかったです。それに、めちゃくちゃ緊張しました。およそ8000人のお客さんの前でネタをやらせてもらえるっていう。でも、ライブスタンドを境に、大舞台でも緊張はしても悪い緊張はしなくなったのは、経験値としてちゃんと蓄えていけているんだなと感じました。それに、ライブスタンドで僕らを見て劇場に足を運んでくださるお客さんも多くいたので、「福岡に、こんなにたくさんお笑い好きの人がいるんだ!」と知られてうれしかったです。シンプルに影響力がすごいです。
レギュラー番組8本でも「まだもの足りない」!!
——とらんじっとは、いまや地元のテレビ・ラジオのレギュラー番組が8本と、九州での知名度はかなり上がっているんじゃないですか。
原 いや、全然です。思っている以上に広まっていなくて……。
あらた 正直なところ、まったくもの足りないです。「毎週、毎日お前らが必要」と思われるようになりたい。もちろんレギュラー番組が増えたことは単純にうれしいですけど、そこをいったん味わってしまうと「まだまだ上へ」となるのが人間で、いままさにその段階です。
原 今年4月からレギュラー番組が増えて、スケジュールこそ埋まっているけど空き時間がけっこうあるんです。毎日何かをやっているけど、夕方のラジオ1つだけ、とかの日もある。そうなると、ほかの時間で何かできるな、と考えることがあります。結果、いろいろやらせてもらっているけれど、知名度でいうと上がったという実感はまだないです。それこそもっと、「福岡といったら、とらんじっと」というくらいのイメージをつけたいけど、まだとどろいていない、というか……。それこそ劇場でも、「とらんじっとが出てるから劇場に観にきた」というお客さんが増えないと、実感できないのかもしれません。
あらた 1回来ていただけたら2回目、3回目と続くと思うんですけど、その1度目が難しいです。劇場にまだ来たことがない人に来てもらうためには、営業だったり、テレビ・ラジオ出演だと思うんです。そこで知名度を付けて劇場に来ていただく。「とらんじっとのネタを見てみたい」と観に来てくれた人に「福岡よしもとっておもしろいな、ほかの人も見てみたいな」と思ってもらうことがいちばん。それが、ネクストエイトに入れてもらったり、NSC(吉本総合芸能学院)のころからミキさんやかまいたちさんという、超一線級の芸人さんと同じ舞台に立たせてくれた吉本への恩返しだと思います。
——いま、どういう気持ちで仕事に臨んでいますか。
あらた 福岡でも、九州でも、全国でも「絶対に売れてやる」という気持ちは誰にも負けないです。でも、ここまで形になっているのは、本当にまわりの皆さんのおかげ。超恵まれていると思います。仕事をいただいて、いまから真価を問われる。「本当に力があるのか」というのをここ1~2年で見られているので、勝負だなと思います。
こないだの『UNDER5 AWARD 2023』(芸歴5年以内の芸人による賞レース)でも3回戦まで行けたのは、シンプルにうれしかったですが、3回戦で負けて「いまはここまでだろうな」という自分たちの実力もよくわかりました。絶対にネタが強くないと、なにか光るものがないとテレビやラジオには出られないと思いますし、ネタが強い方々がいまのテレビやラジオを席巻していますし。
——やはりネタの強さがカギになると。
あらた はい、ネタもしっかりやっていかないと。それこそ最近でいうと、コットンさんとか、男性ブランコさんとか、劇場でしっかり力を付けてテレビでとてつもない活躍をされている先輩がたくさんいるから、やっぱりネタのウェイトは大きいです。
本当にかわいがってもらって…
——福岡ネクストエイトのメンバーは“武者修行”として東京や大阪の劇場にも出演していますね。
あらた 東京は2~3回、大阪は4回ほど、祇園花月も1回。こんなに寄席出番をいただけて、香盤でも興奮するくらいの方々と同じ舞台に立たせてもらえるようなチャンスをいただいているのは、本当に感謝しかないです。それに、僕らを一度も見たことないお客さんの前でネタをやらせてもらうことが、ふだんあまりないので新鮮だし、「ここのボケは弱いのかな」「このボケは意外と伝わるな」って細部までわかり、楽しいしすごく勉強になります。
原 東京・大阪で、劇場メンバーになるためにネタバトルで戦っている人たちからすると、“突然4年目の福岡の若手が出番もらって”って、本当にムカつくと思うんです。それも福岡でやっているメリットというか、芸人数も少ないなかでネクストエイトに入れてもらい、そのなかから売り出してもらっているので、本当に感謝、感謝で……ありがとうございます。
あらた それに、東京・大阪の芸人さんとお話させてもらう機会にもなるので、僕的にはそれもかなり大きいです。
——どんな交流が生まれていますか?
あらた 申し訳なくなるくらい、本当にかわいがってもらっています。からし蓮根の伊織さんは、僕が大阪に行くと自宅に呼んでくださって朝まで飲んだりしますし、あとは銀シャリ・鰻(和弘)さん、インディアンス・きむさん、蛙亭・イワクラさん、ラニーノーズ・山田(健人)さん、令和ロマンの(髙比良)くるまさん、オダウエダさん……お名前を挙げたらキリがないくらい、本当にたくさんの方にかわいがっていただいています。
“福岡の芸人”というかわいがりかたではなくて、同じ後輩としてかわいがってくださるので、すごく救われています。舞台でのふるまいとか、ネタ作り、テレビやラジオの話とか、お酒の席でしか聞けない話がたくさんあるのでありがたいです。
原 それに僕らのことをめちゃ見てくださっていて、同じ舞台に立っている芸人としてアドバイスをくれるので、本当にうれしいです。芸人の道を教えてくれる、ありがたい存在です。
——えっと、いま気が付いたんですが……あらたさん、もしかしてずっと空気イスですか!?
……気を取り直して、8月13日(日)には、よしもと福岡ダイワファンドラップ劇場で「マンゲキ×フクゲキ 西日本グランプリ~Under-5~」が開催されます。大阪のマンゲキから、黒帯、cacao、三遊間、タイムキーパー、ぐろう、というメンバーが福岡に乗り込んできます。とらんじっとと芸歴が近いメンバーが多いですが、意気込みを聞かせてください。
原 こないだの「東日本グランプリ」で東京の芸人さんとバトルしたときに、福岡の劇場で開催しているにもかかわらず上位に入るのが東京の芸人さんで……。われわれのホームのはずなのにお客さん投票でも負けるというのがもうイヤですね。今回は同世代が多いので、ふつうにライバルなので、より負けたくないという気持ちがめちゃくちゃあります。
あらた そうです、負けたくないです。本当に言い訳がキライなので、どんだけ頑張ったかはお客さんからするとどうでもいいから、面白いか面白くないか、笑ったのか笑わなかったのか。「西日本グランプリ」は、はっきりと結果が出るだけに、もう負けたくないですね。
公演概要
『マンゲキ×フクゲキ 西日本グランプリ ~Under-5~ 』
日時:8月13日(日) 開場18:30 開演18:45 終演20:15
場所:よしもと福岡ダイワファンドラップ劇場
出演:MC:黒帯
cacao/三遊間/タイムキーパー/ぐろう/
とらんじっと/インクルージョン/中村圭太/カーネギー/ザ・ローリングモンキー/出目金/太宰/パスタとパスタ
チケット:前売1,500円 配信1,000円
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