「あの時こうしておけばよかった……!」「生放送中にあんなことを言ってしまったけど、撤回したい!」など、芸人だれしも、もう1回やり直したい局面があるはず! ということで、「もし3回だけタイムリープできるとしたら、いつのどの場面をやり直す?」というテーマでトークしてもらう連載企画、その名も「芸歴3(スリー)タイムリープ」! 今回は、10月8日(日)から全国4都市4公演で結成30周年全国ツアー「COWCOW 30th LIVE」を開催するCOWCOW(多田健二、善し)が登場。賞レースでの“ほろ苦い”思い出から「もう一度戻りたいころ」まで、いろいろ振り返ってもらいました。
【1】『M-1 グランプリ 2001』準決勝
1998年に『第19回 ABCお笑い新人グランプリ』最優秀新人賞、1999年には『NHK新人演芸大賞(演芸部門)』大賞、2001年『第36回 上方漫才大賞』優秀新人賞と立て続けに賞レースで結果を残していたCOWCOW。そんな時期に第1回目となるM-1グランプリ(2001年大会)が始まったけれど……。
善し 3つの賞をいただいて満を辞してと言うか、第1回目のM-1やったし、東京に来て1年目やったし、こんなチャンスはないなと。準決勝はルミネtheよしもとでやったんですけど、そこで初めて(多田の衣装の)「伊勢丹の紙袋」のツカミを入れたら、驚くほどツカめたんですよ。
多田 ドカーンとウケて、そこから漫才4分したんですけど……「伊勢丹」が笑いのピークだったんです(笑)。むかしから「ツカミが大事」とは聞いてたんですけど、お客さんもザワザワして、“ツカミすぎた”という。結局、決勝に駒を進めることができなかったんですよね。
――タイムリープするなら、どうやり直しますか?
善し ただの負け惜しみになっちゃうんですけど、M-1の第1回目やったんで、お客さんも様子見やったんですよ。僕ら別の仕事があったんで、出番が、2丁拳銃が1番で、僕らが2番目。しかも平日の昼間で、客席も数列ぐらいしか埋まってなくて……。いま思えば、絶対にやばい場面。やり直すなら、夜の出番でもう1回、やりたいです。
もしくは、大阪のほうで準決勝を受ければよかったなって。もちろん、大阪が自信あるわけではないんですけど、会場だったNGK(なんばグランド花月)が満席やったというウワサを聞いて、「うわー!」って。東京でやるにしても、伊勢丹のツカミを変えておくとか、途中で出すとか、いろいろやり方はあったかなと思いますね。
多田 いまだったら「伊勢丹」もプラスアルファで出せたのに、あのときは「まずツカミ~!」と思いすぎてましたね(笑)。
【2】多田の衣装迷走期
第1回M-1終了後、参加資格の芸歴制限(当時は結成10年以内)もあってCOWCOWに残された挑戦回数はあと2回。そして第2回以降、多田は爆笑をさらった伊勢丹の衣装を脱ぎ、新たな衣装で予選に挑みますが……。
多田 第2回(2002年大会)は、なぜか伊勢丹とは違う青と緑のチェック(の衣装)を着て予選に出たんですよ。“伊勢丹がアカンかった、これではもうダメだ。でも、派手なスーツは着ておきたい”ということで、そのスーツを買ったんですけど、別に伊勢丹の色合いじゃないから、そのツカミもできず、ただ派手なチェックを着てる人という……。なんのために着てるんだと。
善し 言えんやつを着るなよ(笑)。
多田 それで第2回も準決勝止まり。ラストイヤーの第3回(2003年大会)は、“伊勢丹も別のチェック衣装もダメ、でも面白衣装は着ておかないと不安”ということで、ほんま言うの恥ずかしいんですけど……当時。ファンの方からいただいた「4649(ヨロシク)」って書かれたTシャツを着て予選に出ました。「どうも、『よろしく~』」みたいなツカミをして(笑)。いま考えると、素人ノリでプロのツカミじゃない。まぁ、伊勢丹もプロのツカミかと言われたらアレなんですけど(笑)。結局、その年も準決勝止まりで、M-1の夢はついえたんですよね。
――タイムリープするなら、どうやり直しますか?
多田 いま思うと、あれだけ伊勢丹がウケたんやから、初代の伊勢丹スーツで、第2、3回もやっとくべきだったなとは思います。なんであそこで色違い、そして最終的には「4649」Tシャツを着てしまったのか……。相方もそこは何も言ってくれなかったんですよ。
善し いや、思ってたよ。でも“何周も回ってんねやろな”って。
多田 (笑)。やっぱり、「4649」Tシャツはめちゃくちゃ恥ずかしい……。M-1のDVDに敗者復活の模様が映っていると思うので、すべて廃盤にしてほしいですね(笑)。
【3】調子に乗ってしまった“フルーツ大統領”ブレイク
1995年に結成され、COWCOWや小籔千豊、土肥ポン太らが所属していた若手ユニット「フルーツ大統領」は、東京や大阪で人気を博しました。結成当時、まだ若かった善しは舞い上がってしまって……。
善し フルーツ大統領でCDを出したとき、大阪でインストアイベントがあったんですよ。そこに出演したのが、メンバー全員ではなく、人気ツートップの元ブラザース・石割(博之)くんと(元スキヤキの)土肥ポン太と、なぜかプロデューサーさんが気に入ってくれていた僕。
その3人のイベントにお客さんがパンパンに入って、歌を歌ってもワーキャーがすごくて……。「なにこれ?」みたいな。そのとき「あ、オレたち一生これでやっていくんやな」と勘違いをして、グラサンを買いに行きました(笑)。インタビューを受けるときも、大物ミュージシャンばりにグラサンを外さないとか……。やっぱり、いま考えると調子に乗りすぎやし、 ちゃんとやり直したいです。
多田 ラフォーレ原宿でイベントしたとき、お客さんが押し寄せて出られないこともありましたけど、いま思うと、いわゆる若手特需。でも、そこからいまだにずっと来てくれるお客さんもいてるんで、ありがたいですね。当時、ツートップの人気が突出していたので、 僕はわりと冷静っちゃ冷静なほうだったんですけど、どこか勘違いした部分もあったのかなと思います。
善し 新幹線移動のときも、駅のホームでファンの方たちがワーッと待ってくれているんですよ。でも、劇場に来てくれた約200人のお客さんが、そのまま東京駅に来てるだけやから、絶対数は多くないんですけどね。もし、いまの僕が戻ることができたら直接、「調子乗んなよ!」と言いたいですね。
【番外編1】2012年放送『VS嵐』(フジテレビ系)にプラスワンゲスト出演
嵐チームとゲストチームが番組オリジナルの体感型ゲームで対戦するバラエティ番組。COWCOWは、嵐チームに加わる「プラスワン」ゲストとして参加することに……。
多田 プラスワンゲストで、僕らが嵐の真ん中で「イェーイ!」ってやったとき、「売れたな~!」と思いましたね(笑)。日本を代表するスーパーアイドルと一緒で、これは親戚全員に見てほしいというか、夢の中にいるような感じ。あのとき、まだ娘が小さくて、たぶん認識できていなかったと思うんで、戻ったらあの姿を見せたいです。
【番外編2】立て続けに賞レースで結果を出す
ABCお笑い新人グランプリ、NHK新人演芸大賞など、結果を出し続けたCOWCOW。賞レースで優勝したことで、人生初の〇〇を感じたといいます……。
善し 賞を獲らせてもらったときは、人生初の“ホクホク感”を感じましたね(笑)。おカネがないときに賞金もくれる、テレビにも出られて、みんなから「おめでとう」と言ってもらえる。あのときは最高潮に嬉しかったです。(吉本興業の)社員さんの対応も変わりますし、単独ライブもドッと入りましたし、あのホクホク感はもうないので、もう1回味わいたいです。
多田 先輩方からいただいた祝福の電話は忘れないですよね。大会が終わったあと、たむらけんじさんが「今度、草野球◯時からやから!」って電話がきたので「わかりました」と返したら、「ウソやん。『おめでとうやろ』とか、ツッコんでくれや」って(笑)。ほんま、ありがたくて忘れられないです。
【番外編3】SNSがなかった時代
お笑いブームのなか、東京でも活躍し始めてプライベートでも楽しいことが次々と。当時はSNSもなかったため“炎上”を心配することもなく、すっかり満喫したそうで……。
多田 「あたりまえ体操」(2011年に発表)より前の2007年ぐらいから『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ系)とか『エンタの神様』(日本テレビ系)とか、お笑いブームが来て、僕らもやっと全国のテレビに出られるようになったとき、僕も独身やから後輩と飲みに行って、合コンも行って……。あのときが、いちばん楽しかったなと思います。
いまの若手の子たちって、もちろん別の楽しさは味わってると思いますけど、あの楽しさは味わえてないんやろなって。僕らはSNSで叩かれることのない最後の世代というか、貴重な体験をさせてもらったなと思います。いまは、劇場出番があっても「後輩ウケてんな」とか、舞台袖でドキドキしてるだけなんですけどね(笑)。
THE SECONDのおかげでネタの準備は万端!!
――10月から結成30周年全国ツアーが始まります。どんなステージになる予定ですか?
多田 今年作ったネタを発表するライブなんですけど、今年は『THE SECOND~漫才トーナメント~』があったので“例年よりも漫才を多めにやろうか”という感じですね。
――THE SECONDでは、ベスト16でした。おふたりにとって大きな大会でしたか。
多田 大きかったですね。上半期は、あれ一色という感じでした。
善し この芸歴で、あそこに向けてやれたのは大きなことやったなと思います。基本、寄席は10分ですけど、これを(大会に合わせて)6分にしていく作業は、ふだんやらないですからね。細かい部分まで作り上げなアカンというのは、非常に酷な作業でしたけど、結果、発見もあったので、やってよかったなと思います。どうせなら(生放送の決勝で)生で3本ネタをやる「未知の世界」に足を踏み入れてみたいです。
――最後に、改めて読者に向けて全国ツアーのPRをお願いします。
多田 今回、「戻るなら……」とお話させてもらいましたけど、30周年の区切りなので、いま(劇場に)来てくださるお客さんはもちろん、(フルーツ大統領が出演していた)銀座7丁目劇場に来てくれていた方とか、2008年ぐらいに来てくれていた方なども、いい意味で“ぜんぜん変わってないな”と楽しめると思います。もし、お子さんがいてはるなら、親子2代で来ていただけると、さらに嬉しいですね。ツアーに向けて、いままで培ってきたものをぶつけたいなと思いますので、ぜひ来ていただきたいです。
善し 特別なことはないんですけど、ただ、脂の乗っているところは見られるのかな、と思うんですよね。調子に乗った時代を経てるので、いまがいちばん調子に乗ってない(笑)。和食で言うと創作料理は出ないけど、出汁を味わってもらうみたいなライブです(笑)。
公演概要
「COWCOW 30th LIVE」
出演:COWCOW
【公演日程】
①名古屋
日時:10月8日(日)18:00開場/18:30開演
会場:今池ガスホール
チケット:前売完売(当日券発売予定)
②福岡
日時:11月4日(土)18:00開場/18:30開演
会場:よしもと福岡ダイワファンドラップ劇場
チケット:前売指定 3,000円
先行受付:9月23日(土)11:00〜
一般発売:9月30日(土)10:00〜
③東京
日時:11月25日(土)19:00開場/19:30開演
会場:ルミネtheよしもと
チケット:前売指定 3,000円
先行受付:9月23日(土)11:00〜
一般発売:9月30日(土)10:00〜
④大阪
日時:12月17日(日)19:00開場/19:30開演
会場:なんばグランド花月
チケット:前売指定 3,000円
先行受付:9月23日(土)11:00〜
一般発売:9月30日(土)10:00〜
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