漫才が認知症やうつ防止にも? 人生の「終い仕度」について学ぶ「Petit笑店✕ACP」漫才ワークショップ開催

お笑いを交えて「人生の終い支度」を考える「Petit笑店×ACP お笑いプログラム」が、9月9日(土)に京都大学で開催されました。「Petit笑店」は、2021年から吉本興業と立命館大学、国立長寿医療研究センターが連携して進める研究で、音楽とお笑いを通じて認知機能の低下や抑うつ予防などに取り組むプログラム。今回は、いつもの「Petit笑店」のテーマを「よりよく生きること:アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」に変えたワークショップで、よしもと芸人のアドバイスを受けながら参加者たちが漫才に挑戦しました。

出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン

「ぎゅー」の動きの意外な効果

この日の司会進行を務めたのは、木下弱と親指ぎゅー太郎。まず立命館大学スポーツ健康科学部の清家理教授が、「Petit笑店」の概要を説明していきます。清家教授は、内閣府戦略的イノベーション創造事業「包摂的コミュニティプラットフォームの構築」のなかの研究開発テーマ「多様性寛容の共創システム開発─『違いがあっても大丈夫』と共育しあえるコミュニティ構築─」の研究開発責任者にも任命されています。

今回のプログラムは認知症の人とその家族が対象で、漫才のワークショップを通じて、日常的に不足しがちな認知症の人と家族の間の会話を増やすこと、“快感情の表出”が目的だと話します。そして、「認知症の方自身がワークショップを楽しむことで、新たな出会いがあったり、家族との関係性も変わる。楽しみながら認知症の進行予防、抑うつ予防につながることを解明したい」と説明しました。

清家教授は「国立長寿医療研究センターのスタッフが『吉本の人はすごい。あれだけ笑わなかった認知症の方がよく笑い、自発的によくしゃべるようになった』と言っていた」と明かしながら、ぎゅー太郎のギャグである「ぎゅー」の動きが「認知症の方とその家族をいい方向へ導いた」という驚きのエピソードを披露しました。

うれしい報告に、ぎゅー太郎は「僕らも(参加者の)表情が変わっていくのを見るのが楽しい」と、笑顔を見せました。

出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン

参加者がコンビ名から考案

「漫才ワークショップ」の作業に入る前に、まずは木下がスライドを使って、「漫才とは何か」から、ボケやツッコミの役割、「つかみ」について解説。参加者たちは、ワークショップで使うコンビ名と芸名、ボケ役、ツッコミ役を決めてもらい、最終的には全員で自分たちが考えた漫才の発表会を行います。

2人は「見本」の漫才も披露。木下のバランス芸の微妙な出来に、ぎゅー太郎からツッコミが入るシーンも。

漫才ワークショップでは、高齢者の心身を活性化させる「介護レクリエーション」の要素も取り入れます。この日はぎゅー太郎が、童謡の「あんたがたどこさ」を使った「あんたがたどこぎゅー」を披露しました。

歌詞の「さ」を「ぎゅー」に変えて歌い、その部分ではテンポにのって腕を上げるレクリエーションで、参加者も司会の2人と一緒に歌いながら、「ぎゅー」のところで腕を上げて、大いに笑いました。

出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン

「つかみが完璧!」司会の2人も脱帽

参加者の気持ちがほぐれたところで、いよいよ本日の本題、漫才ワークショップの実践です。まずは、この日のテーマである「ACP」について、清家教授が解説します。

「ACP」とは、高齢者社会における「看取り」の準備のことで、高齢者一人ひとりが、人生の終盤にどのような医療を受け、最期をどこで迎えたいかを考え、家族や周囲に伝えておくことを推進するものです。厚生労働省はACPに関するガイドラインも策定し、京都府では「京都府看取り対策プロジェクト」を推進しています。

清家教授が、ACPが必要になった背景やコロナ禍での関係性、ACPを考える意義などについて、樹木希林さんが登場した宝島社の企業広告「死ぬときぐらい好きにさせてよ」のポスターなどを使って説明すると、参加者たちも納得した表情でした。

今回は、このACPをより身近に感じてもらうため、漫才ワークショップを通じて、「人生で大切にしていること」をテーマにした「ACP漫才」を作るというお題に挑戦することに。参加者は2人1組になって、コンビを作ります。ネタには「大切なコト・モノ」を3つ入れるルールで、参加者たちは限られた時間内で工夫しながらネタを作っていきます。

木下、ぎゅー太郎もアドバイスを送りつつ、それぞれのコンビが自分たちの力で完成させていきます。ほぼネタができあがったところで、立ち上がって練習に取り組む姿も。参加者が楽しげに練習する様子を、木下、ぎゅー太郎も笑顔で見守っていました。

出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン

そして発表会の時間になりました。参加者の顔に緊張が走ると「あんなに笑顔でやってくれてたのに〜」と2人。じゃんけんで出番順を決めて、M-1グランプリの出囃子にのってネタを披露していきます。

シンプルなものやMC2人をイジったものなど、それぞれに工夫を凝らしたコンビ名がコールされ、各コンビが「人生で大切にしていること」をテーマに渾身のネタを実演。

出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン

「つかみが完璧でしたね!」「M-1狙ってるのかと思った!」「すばらしい!」と2人も脱帽のコンビや、「もっとやりたくなった」という参加者もいるなど、終始、大盛り上がりのワークショップとなりました。