帰ってきたカレーまん
明日、10月5日から待ちに待ったイベント『下北沢カレーフェスティバル』が開かれる。今回は10月22日までの18日間。116店舗が参加する。
このイベントはまさに街をあげたもよおしで、ふだんカレーを出さない飲食店が年に一度この期間だけは特別にカレーをつくって参加したりしている。これはなかなかおもしろい流れを生んでいて、カレー識者(そんな人がいるかどうかは知らないが)からは怒られそうな奇抜なメニューがどんどん誕生している。
カレーラーメン、カレー餃子はあたりまえ。カレーソーセージ、カレータコス、カレーハンバーガー、カレー入りパウンドケーキまで。
極めつけは、カレークリームソーダ。これは想像を超えてきた。たしかに「カレーは飲みもの」ってウガンダさんが言ってたけど。
でも、この「カレー味だったらなんでもいいじゃん」的なノリが、シモキタらしくていい。みんなで祭りを盛りあげようぜ、という気概を感じる。
シモキタ自体がカレーみたいな街だから。演劇や音楽や古着など、いろんな文化が交錯して混じり合って形成されているこの雑多な街は、さまざまなスパイスを調合してつくるカレーと同じようなもんだ。
今回のチラシには『ぼっち・ざ・ろっく!』というアニメのキャラクターが使われている。僕は観たことないのだが、シモキタが舞台になっていて大人気らしい。アニメで登場するライブハウスや飲食店は、聖地巡礼で訪れるファンが絶えないと聞く。また新しいスパイスがくわわった。
メインマスコットキャラクターは、ご存じカレーまんだ。以前この連載でも紹介したが、知らないかたのために簡単に説明すると、カレーまんはゆるキャラなどではなく、金色の全身タイツを着た男性だ。王様のような帽子をかぶり、サングラスをして、真っ赤なマントを羽織っているので見かけたら一発でわかる。
このカレーフェスを主催し、D-BLACKという名でラッパーとしても活動している彼は、期間中スピーカーを小脇に抱え、マイク片手にラップしながら街中を練り歩く。その姿は、もはやシモキタ名物と言っても過言ではない。
ちなみに、彼は半年前に沖縄に移住した。なんと今年4月に那覇で、カレーと酒を提供する『カレーバー シモキタザワ』という店をオープンさせたのだ。
店名が『シモキタザワ』とは恐れ入った。『デリー』とか『ボンベイ』みたいにカレー屋が店名をインドの都市名にするパターンはよくあるのだが、まさか『シモキタザワ』とは。
期間中、カレーまんはシモキタに帰ってくると言っていた。再会するのが楽しみだ。
ここでカレーフェスに参加するかたに耳よりな情報もお知らせしておこう。カレーフェスではスタンプラリーをやっていて、獲得したスタンプの数で景品がもらえるのだが、もしカレーまんを見かけたら「スタンプちょうだい」と声をかけてみてほしい。そうすると、通常は店をまわらないともらえないスタンプが一つもらえるのだ。これはあまり知ってる人が少ないので、スタンプをたくさん集めようと思っている人はぜひカレーまんに話しかけるといい。僕はこの数年、景品のTシャツをもらうのが趣味になっているので、今年もはりきってスタンプを集めようと思っている。
カレーフェスにまだ参加したことのないかたも、このタイミングでシモキタに遊びに来てほしい。いつもに増してにぎやかな街のパワーをきっと感じられるはずだ。
このコラムの著者であるピストジャムさんの新刊が2022年10月27日に発売されました。
書名:こんなにバイトして芸人つづけなあかんか
著者名:ピストジャム
ISBN:978-4-10-354821-8
価格:1,430円(税込)
発売日:2022年10月27日
[/hidefeed]
ピストジャム
1978年9月10日生まれ。京都府出身。慶應義塾大学を卒業後、芸人を志す。NSC東京校に7期生として入学し、2002年4月にデビュー、こがけんと組んだコンビ「マスターピース」「ワンドロップ」など、いくつかのコンビで結成と解散を繰り返し、現在はピン芸人として活動する。カレーや自転車のほか、音楽、映画、読書、アートなどカルチャー全般が趣味。下北沢に23年、住み続けている。