見どころは“佐田の生き様”! 舞台初日前にバッドボーイズ佐田が演出家ニシオカ・ト・ニールに熱く語る

バッドボーイズ・佐田正樹の『ひとり芝居6』が10月11日(水)~15日(日)、東京・中野テアトルBONBONで開催されます。2016年のスタートから今年で6回目を迎えるこの舞台、今回はニシオカ・ト・ニール、岸本鮎佳、ますもとたくやという個性の異なる3人が演出・脚本を務め、30分×3本の作品を上演します。テーマは、この半年間の佐田を表した「バツ」。その公演を直前に控え、今回は、稽古真っただ中の佐田とニシオカを直撃しました!

出典: FANY マガジン
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口の中がカラッカラに…

――芸人である佐田さんが、このひとり芝居を始めたきっかけから教えてください。

佐田 M-1(の参加資格)が終わって、目標がなくなったのでコンビで「お互いに好きなことをやっていこう」と話し合いをするなか、もともと役者志望でもあった僕は、映画やドラマなどに機会があれば出たいなと思っていたんです。それに向けて何をやるか考えたとき、舞台を観に行って勉強しないといけないなということと、とりあえず動き出してみようと思ったというのがきっかけですね。
それで2016年に『ひとり芝居』を始めたんですけど、芝居のことは右も左もわからない。当時は、舞台監督もいなければ演出家さんもいない。とりあえず5名の芸人に脚本を書いてもらってやったんですけど、そのとき、吉本の俳優部の社員に「ひとりコントだね」と言われて……。お芝居ではないよね、と言われてしまったことが悔しかったし、「ならば変化しないといけないな」と思ったんです。でも、そのときはわからなさすぎて、公演当日にリハ、当日に場当たりみたいな、いま考えるとむちゃくちゃなことやってて。そりゃ芝居じゃないなと(笑)。

ニシオカ・ト・ニール ふふふ。あり得ないですね。演劇人からすると、あり得ないスケジュールです(笑)。

佐田 そう、あり得ない。そこもわかってなかったぐらいだったんですよね。それと、お笑いの舞台って、つかみですぐに笑いを取りに行く。お客さんとのコミュニケーションを取るまでが早い。だからそれまでの僕は、芸人として、そこで笑いが起こると安心するという身体ができあがっているわけです。
でも芝居では、笑いのないなかで、お客さん全員が舞台上の俺を見ているわけですよ。その状況に恐怖に陥った。「俺が台詞を飛ばしたらどうなるんやろ」とかがよぎりだして、どんどん不安になってきて、そうなったときに、口の中の唾液が全部なくなって……。

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ニシオカ ふははは(笑)。口の中がカラカラに?

佐田 そう! カラッカラ! 口もまわらないし、しゃべりたいこともしゃべれない。もうその状況が悔しくて悔しくて。2回、公演やったんだけど、2回目は暗転中に水を口に含んでから出るというふうにしました。いまだにそれはジンクスじゃないけど、お守り代わりにやっているぐらい。そのぐらい、人生でいちばん緊張したんですよね。どんな大舞台のテレビよりも賞レースよりも。「あのときの恐怖を乗り越えないと、人としても成長せんやろうし、芸人としても逃げちゃだめだな」と思った。それで続けなきゃいけないと思ったんです。
そのときの公演を見に来てくれたますもとさん(演出・脚本)が「次やるなら僕、脚本を書きますよ」と言ってくれたこともあって、2回目からはスタイルを変えようということで、30分×3部作という、いまのスタイルができたんです。回を重ねるごとに脚本・演出の方々も広がり、2020年にはニシオカさんにやってもらおうとなったのに、コロナ禍で舞台そのものができなくなかった。

ニシオカ そうでしたね。私がやりますってなったときに中止になってしまって、延期になって2021年から参加ですもんね。

出典: FANY マガジン
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「台本に向き合ってくれる、いい俳優さん」

――ニシオカさんは最初、佐田さんにどんな印象を持っていましたか?

ニシオカ 木下半太さん(小説家・脚本家・監督)に「佐田さんの芝居やってみない?」と紹介されたんですけど、正直、ちょっとあやしんでいた部分もありました(笑)。

佐田 あやしんでたって(笑)。どういうこと?

ニシオカ 佐田さんはヤンキーのイメージで、かたや私はクソまじめ根暗女子高生だったので、ヤンキーみたいな人と出会うことのない人生を歩んで来ていました。しかも、芸人さんだけど「演劇やりたい。ひとり芝居やりたい」という話だったので、私が思っているひとり芝居と、佐田さんが言っているひとり芝居とは違うんだろうなとなんとなく思っていたんです。
でも実際に稽古を始めてから、「あ、本当にお芝居がやりたい人なんだ」とある意味で驚きました。あとすごい真面目というか。「ちゃんと台本と向き合ってくれるんだ」と思って。

佐田 ……いまのとこ、太字で書いておいてください(笑)。

ニシオカ 「いい俳優さんじゃないか!」って、私は思ったんですよね。すぐ弱音を吐きますけどね。

――逆に佐田さんから見たニシオカさんはどんな人ですか?

佐田 それまでもやってきたひとり芝居は、ナレーション部分は録音だったり、違う声が入ったりしていたんですが、ニシオカさんのものは、本当にひとり芝居なんですよね。ひとりで何役も演じる、“動く落語”というか。落語って噺家が何役もやるじゃないですか? そんな感じに近いんですよね。

ニシオカ うん、じつは落語ベースにはなっています。

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佐田 物語があるんだけど、そこで演じながら、動きながらという感じです。このパッケージは3回目なんですけど、正直、そう簡単にはできない。ニシオカさんのものは誰がどう見てもひとり芝居。ド直球の“THEひとり芝居”なんですよね。いちばん稽古日数もいるし、いちばん怖いし、でも、だからこそ、終わったあと、お客さんは「すごいものを見た」となるし、僕もやっていて楽しい。つまり、僕が見せたいものは、究極、コレなんです。だから、ニシオカさんが脚本書いてくれるなら、その時点でもう大丈夫だと安心できるというか。

ニシオカ あら。そんなこと思ってくれていたんですね。

佐田 ……すいません、いまの最後のとこは細字にしておいてください(笑)。でも、本当に30分すべてが「佐田」なんですよね。だからこそ、この30分のプレッシャーたるや……。

ニシオカ 私は最初から、ひとり芝居ってそういうものだと思っていたんですが、佐田さんにいちばん最初に台本を渡したら、「これのどこを覚えたらいいんですか?」って。

佐田 台本にN(ナレーション)と書いてあったので、そこはさすがに俺じゃないのかなと思ったら、それももちろん僕。つまり、台本にはいろんな役も出てくるし、ナレーションも出てくるけど、結局。すべて俺で、ぜんぶ覚えないといけないんです。

壮大なスケールでワクワクしかない

――それだけ大変なのに、佐田さんの中で「ひとり芝居が楽しい」となっている理由はなんでしょうか?

佐田 たぶん、誰かに見せたときの反応なんでしょうね。自分の中でも、正直にいうとキツいんですよ。台本みても「なげーな……。これどうやって覚えよう」とストレスに感じるんですけど、そのストレスや大変さを超えるぐらいのお客さんからの反応が返ってくる。
YouTubeを一緒にやっている、カメラ担当の宇野(慎也)くんという僕のよき理解者がいるんですが、YouTubeも作品づくりなので、編集でも宇野と一緒に「ココおもろいから」とか話しながら、2人でつくっているんです。そんな宇野くんがこの前、稽古に初めて凸して(突撃して)くるっていうのがあったんですけど、終わったあとに「いままでにない、すごい壮大なスケールで。ワクワクしかないですね」と、まさに自分でも感じていたことを言ってくれたんです。「あ、伝わってる」と感じられて、そういう瞬間が楽しいんですよね。

――ニシオカさんから見て、役者である佐田さんの魅力とは?

ニシオカ さっきも言ったように、台本にしっかり向き合ってくれているというのがいいのかなと。たぶん私のものだけでなくて、3部作ともにそうなんだと思うんですけど、自分の中で、きちんと台本を昇華させようとしてくれているんです。芝居に慣れてくると、小手先の技術ですませることも多いような、時間のかかる作業をひたむきにやってくれている方なのかなと思います。あとは、わかりやすいです。「あ、ここはノってないな」とか。素直だから出ちゃう(笑)。

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佐田 わははははは。

ニシオカ なので、「佐田さん、ここ不安ですか?」とかいうことが稽古したらわかるので、一緒に「どうしていこうか?」と話し合える。ちゃんと話ができるし、一緒につくり上げていける気がします。そうすることで、私のイメージを超えたものができあがっていくのが、演劇のいいところだと思います。3回目の今回は、特にそのあたりがやりやすく感じています。

怒涛の半年間が芝居にリンク

――今回のテーマが「バツ」。これはどういう意図ですか?

佐田 4月からいろんなことがありまして、怒涛の半年間を過ごしてきたんですね。仕事でも、プライベートでも。そのへんのことが、うまいこと芝居にリンクした哀愁が出ているのかなと思います。自分が経験してきたことを、背中が物語っているというか。

ニシオカ たぶん作品を作るときに、ますもとさんも岸本さんも、そして私も「2023年の今」の佐田さんがやるという意味を大事にすると思うんです。そうなったときに、コレなのかなと私は思った。ひとり芝居って、人生を見せる、生きざまを見せることが重要だなと思うんです。となると、つまり今回の見どころは、佐田さんの生きざまってことですね。

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佐田 むちゃくちゃ、いいこと言いますね! 1回目ですごいトラウマの経験だったわけですけど、それこそ「ここで逃げたら、何の説得力もない大人になってしまうな」と思ったわけです。単純に、それはダセェなと。「楽してるな」「こなしてるだけなんだろうな」って後輩たちにも思われたくないし、そんな生き方はしたくない。だから、大変でも逃げずに、ひとり芝居に挑み続けることで、「生きざま」を見せているのかもしれないです。究極、いつかは、もっと長いひとり芝居もやってみたい気もします。

ニシオカ やりましょうよ! 私は、佐田さんのことをすごくいい俳優さんだと思っているので、もっといい舞台に出てほしいし、いつかやってみたいということなら、1時間ぐらいのひとり芝居もやってみたいです。

――では、最後に意気込みをお願いします!

ニシオカ ますもとさん、岸本さん、私と三者三様の楽しめる作品になっていると思いますし、今回は歌でTABARUさんも入るという新しい試みもあるので、ぜひ足を運んでほしいです!

佐田 季節の変わり目なので、寒くならないようにあたたかい恰好をして来てください。とはいえ、劇場に入れば、僕の熱い芝居で上着を脱ぐことになりますけど……よいしょ!……ここは細字でいいです(笑)。

出典: FANY マガジン
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公演概要

バッドボーイズ・佐田正樹『ひとり芝居6
出演:佐田正樹
脚本・演出:ニシオカ・ト・ニール/岸本鮎佳/ますもとたくや
歌:TABARU
会場:テアトルBONBON(東京都中野区中野3‐22‐8)
日程:
10月11日(水)19:00開場 19:30開演
10月12日(木)19:00開場 19:30開演
10月13日(金)19:00開場 19:30開演
10月14日(土)13:00開場、13:30開演
10月14日(土)17:00開場 17:30開演
10月15日(日)13:00開場、13:30開演
チケット:<一般席>前売5,000円/当日5,500円

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