どうも。40歳手前にして麻雀を覚えたけれど、メンツが集まらずYouTubeの麻雀動画ばかり見ている芸人ライターのとらふぐ・田畑祐一です。
レインボー(ジャンボたかお、池田直人)といえば、今年のNHK新人お笑い大賞の本戦に進出し、コンビのYouTubeチャンネルの登録者数が100万人を越える人気芸人。そんな飛ぶ鳥を落とす勢いでご飯も食べている(?)レインボー・ジャンボたかおのデビュー小説『説教男と不倫女と今日、旦那を殺す事にした女』(KADOKAWA)が9月に発売され、その後、増刷もかかって好評を博しています。今回は、そんなジャンボに単独インタビューを敢行しました!!
芸人仲間からダメ出し?
――さっそくですが、増刷おめでとうございます。
いやいや。刻みに刻んでですよ! 増刷史上、いちばん刻んだんじゃないかっていう話もあります!
――そんなに?(笑) でも、増刷っていうのは本当にスゴいことです。
これはひとえに芸人の皆さんが告知をしてくださったり、読んだ感想をポストしてくださったおかげです。本当に感謝しかありません。
――実際に読んでくれた芸人は誰ですか?
まず本が発売された当日の夜に、ダンビラムーチョの原田(フニャオ)さんが感想をくれて。あとは、この本のなかの登場人物のモデルにもなってるコットンのきょんさん。あとニューヨーク(屋敷裕政、嶋佐和也)のおふたりだったり、男性ブランコの浦井(のりひろ)さんはレポ的なものまで書いてくださいました。NSC(吉本総合芸能学院)東京17期(レインボーの1期上でコットンと同期)の方は皆さん読んでくださって、ほかにも本当にたくさんの方が宣伝してくださいました。
――きょんがモデルになっているのは、ラフアイランドというコンビの「ぴょん」ですか?
そうです(笑)。でも、外側をきょんさんモデルにさせていただきましたが、物語に出てくるような、さまざまなことは実際のきょんさんとは違いますね。ちょっとカッコよすぎると皆さんに言われたので(笑)。
――実際にきょんからは何か言われました?
「オレ、最高じゃない?」って(笑)。
――確かに! この物語のなかでとても重要な女性を助けるところがありますが、その「ぴょん」は本当にカッコよかったです。
(ニューヨーク)嶋佐さんも、(コットンの)同期の皆さんも本当にそれだけ納得してくれなかったです(笑)。なんであんなにカッコよくなってるんだよって。そこだけダメ出しを受けました。
――モデルを知らない人からすると引っかからないけれど、知っている人は最後まで引っかかる(笑)。
はい(笑)。実は最初、本を書くにあたって、まったくと言っていいほど魅力的なキャラクターが作れなかったんです。それでどうしようかと考えていたときに、まわりにいる魅力的な人たちをモデルに書いていったら、すごく筆が進んで……。
――なるほど。じゃあ、この本のなかに出てくる人は実際にモデルがいると。
そうですね。読んでいただいたらわかると思うんですが、主人公の「田中」はめちゃめちゃ僕の要素が入っています。そして「ぴょん」はきょんさん。ぴょんの子役時代は相方の池田です。ほかの人物も、実際に自分が芸人になる前にまわりにいた魅力的な人たちなんです。
――ぴょんの子役時代は相方がモデルなんですか?
僕、池田の子役時代のエピソードが大好きで、それを本のなかでも使わせてもらいました。本のなかではコケが好きな子役としてぴょんは頑張るんですが、池田は石が好きな子どもに仕立てられたらしいです(笑)。しかも、そのキャラが全然ハネなかったらしいです。
――キツすぎる!
もうその事務所はないらしいんですが、やっぱりそんなことしてもダメなんだなって思いましたね。
――ツラい経験を乗り越えての「今」なんですね。順調に執筆したように聞こえますが、本というのはコントを作るときとは違うものなんでしょうか?
それが、本当にコントを書く感覚に近かったです。どちらかというと単独(ライブ)をひとつ作っているというか、そんな感覚でした。ひとつの章がひとつのネタで最後に大回収というような。
――最後の回収もすごかったです。見事過ぎて最後まで一気に読んでしまいました。
ありがとうございます! 芸人が一度はしてみたい回収の構成となっています(笑)。
構想2年半! でも執筆活動はたったの2週間!?
――では、最後まで止まらずに一気に書き切ったんですか?
いや。実はそれが苦労したこともあったんです。それが「ゆり」というキャラクターです。
――「ゆり」にもモデルがいるんですか?
実はあのなかで唯一、「ゆり」だけはモデルがいないんですよ。
――「ゆり」だけはゼロから作った?
そうです。だからダントツで難しかったです。本をすでに読んでいただいた方はわかると思うんですが、なかなかのキャラクターじゃないですか。
――確かに。
こんなことを考える人はどんな人なのか? それがすごく難しくて、インターネットでそれらしきサイトにアクセスしまくっていたら、実際に本のなかでも出てくるスレッドが出てきて……。めちゃめちゃ怖がりながらスレッドとか見て、「ゆり」を完成させたんです。
――それもまた、すごいですね。本のなかでかなりヒステリックなキャラクターに仕上がっているけれど、「ゆり」は現実にもいると……。
はい、そこから「ぴょん」の特殊な能力とを掛け合わせて最後の展開ができました。このあたりで何となくこの本の最後が見えてきて、そこからは最後まで書き切れたという感じです。
――なるほど。実際の執筆期間はどのくらいだったんですか?
ジャンボ 実は2年半ほどです。
――2年半!? そんなにですか?
はい。1カ月半サボって、締め切りの2日前に書いて、提出して、また2カ月休んで、ちょっと半分書いて、体調が悪くなって、「半分まだ書けてません」って言って……。
――え? 体調が悪くなって? ずっとYouTubeでご飯食べてましたよね?
本当に疲れましたね。結局、いろいろあって2年半ぐらいかかったので。
――「サボってた」って、いま自分で言ってましたよ! しかし、そんなにも前から書き始めていたなんて。
僕も実際に「これは出版されるのか」って思うぐらいまではいきましたね。
――褒められたもんじゃないです。芸人は誰もあなたが本を書いているなんて知らなかったです。
本社行ったり、喫茶店行ったりして執筆していました。最後のオチがとても気に入っているんですが、それを思いついたのは喫茶店で、そのときはミルクレープを頼んで、思いついた自分へのご褒美を食べてから書き終えたんです。
――ご褒美あげてないで早く原稿を送ってあげてください。たくさんの大人を待たせています!
ぎゅっとしたら2週間ほどで書きました。
「すべてを出し切りました」
――それはそれですごい。
この間、池田と振り返ったんですけど、オレのだらしない性格のせいで、ずっと宿題ある感じだったんですよ! せっかくパチンコ打ってるときも、「オレ、本書かないといけないんだ」とかってなるんですよ。「ゆり」さんを書いてるときは、もう出版する気はなかったかもしれないです。
――ウソでしょ!? こんなに面白い作品なのに、もったいないです。
(登場人物の)「岩渕」さんが、ただただステーキだけ食いに行くだけの回があるんすよ。これ実はAmazonでしか読めないんですよ。
――なぜですか?
「ゆり」さんのパートが本当に何も思いつかないから、適当に書いたんです。お茶をにごす感じで「岩渕」さんのただただステーキ食いに行く回ぶちこんでるんで、読んだらびっくりしますよ。あまりにも本編と関係なくて。本当に内容がペラペラなんです。
――どんな自慢ですか?
でも、本当にすべてを出し切りました。芸人で初めてこの本を読んでくれたのは相方の池田なんですが、その池田が自分たちのサブチャンネルに、この本を読み続けている2時間ぐらいの動画を上げてくれて、こいつ発想すごいなっと思ったんですが、1章ごとに感想を言ってくれています。その感想が「もうジャンボやん! ジャンボの全部が詰まってるやん」と。
――相方だからわかるところもありそうです。
「田中」という人物だけでなく、ほかの章に出てくるイヤな女性のイメージだったりも、全部ジャンボだと言ってくれました。だからきっとこの本は、自分の全部が入っているんだと思います。
――次回作はどうでしょうか?
1ミリも考えていません。震えるほどに。
――決意は固いようですね……でも、また気が向いたら書いてください。今日は執筆秘話をたくさん聞けました! ありがとうございました。
皆さん、このインタビューにダマされないで、ぜひ彼の本を読んでください! 読み始めたら、絶対に最後まで一気に読んでしまうこと間違いなしです。そして読み終えたらレインボーのコントが見たくなりますよ。2023年、最後の1冊にぜひ!
書籍概要
『説教男と不倫女と今日、旦那を殺す事にした女』
出版社:KADOKAWA
発売日:2023年9月13日
単行本:224ページ
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