疲れていないのに、なぜ日本人は「お疲れ~」と言うの? Koが講師となり、神戸大学で漫才ワークショップ開催

日本語学校で学ぶ外国人や大学の外国人留学生らを対象に、「漫才で学ぶ日本語」などの活動を展開している芸人Koが講師となり、神戸大学の日本人学生と留学生計10人が、英語で漫才づくりに挑戦しました。同大学の国際人間科学部で行われているグローバル・キャンパス・プログラムの異文化理解の授業の一環で、日本人学生と中国やバングラデシュ、パキスタンからの留学生が即席の漫才コンビを組み、異文化から生じるさまざまな戸惑いや疑問をネタに、漫才をつくりました。

出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン

Koが佐賀県在住ということもあり、この日のワークショップはオンラインで開催されました。まず、Koが自己紹介に続いて、漫才の歴史、三段落としや繰り返しといった技法など漫才づくりの基礎を簡単にレクチャーしました。

この後、日本人学生と、中国やバングラデシュ、パキスタンからの留学生が、即席の漫才コンビを結成。それぞれが話し合い、ネタづくりに取り掛かりました。

出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン

最初はよそよそしかった学生たちでしたが、お互いの特徴や共通点からコンビ名を考えることからはじめ、少しずつ打ち解けることができるように。最後には短いネタを考え、皆の前で、英語と日本語で漫才を披露するまでになりました。その一部を紹介すると…。

キャンパスで顔を合わせた二人

日本人学生:(あいさつ代わりに)「お疲れ~」。
留学生:「んん、疲れていないけど」
日本人学生:「テスト終わったね。お疲れ~」
留学生:「テスト受けただけよ。まだ疲れていないのに、変な人ね」
日本人学生:「またね~。お疲れ、お疲れ!!」
(日本語の意味合いを理解するのが難しく、どっと疲れた様子の留学生)

自己紹介

日本人学生:「お名前は何ですか?」
留学生:「ハイです」
日本人学生:「もう一度聞きますよ。お名前は何ですか?」
留学生:「ハイです」
日本人学生:「ちゃんと答えてください! お名前は何ですか?」
留学生:「ハイ」
日本人学生:「もういいです!」
(留学生の名前がハイさん)

発音が一緒のように

日本人学生:「中国語で驚いたとき、なんていうの?」
留学生:「ウォカオ」
日本人学生:「難しいね。じゃあ、中国語で怒っているとき、なんていうの?」
留学生:「ウォカオ」
日本人学生:「同じやん。じゃあ、予想外のことが起きたとき、なんていうの?」
留学生:「ウォカオ」
日本人学生:「訳わからん、ああ、ウォカオ」
(実際には中国語の声調で、それぞれの言葉の発音に違いがあるのですが、日本人学生にはすべて同じ音にしか聞こえず混乱している様子を描いています)。

参加した学生は「漫才という日本文化が留学生に伝わるか心配したけど、予想外に楽しかった」「他の国のお笑い文化について知ることもできた。お笑いは、国境や言葉、国籍に関係なく、共通するものだと感じた」などと感想を寄せていました。

一方で、留学生と話す中で、国や文化、宗教によっては笑いのネタとして取り上げることが好ましくないテーマや、その社会の文化政治的な文脈や背景を知らなかったり、理解できなかったりする内容もあることを学び、漫才づくりを通して、異文化理解や異文化コミュニケーションについて考えるいい機会となったようです。

【Ko プロフィール】

出典: FANY マガジン
©吉本興業

NSC大阪42期生(芸歴4年目)
2009年 関西外国語大学卒
2009年 リコージャパン㈱ 新規事業+海外事業担当
2013年 青年海外 協力隊 セネガル(村落開発普員)
2016年 青年海外協力隊 ボランティアとして再びセネガルへ
2017年 カゴメ㈱ セネガル現地法人設立担当
2019年 NSC大阪42期生 フランス人の相方Silverと漫才コンビ「ふらんこ」を結成。
M-1グランプリ1回戦突破 2020年 コロナの影響により7月にSilverが帰国。
「ふらんこ」を解散。
2021年 サッカーJ1サガン鳥栖英語通訳
2022年 JICAデスク佐賀 国際協力推進員

現在、JICAデスク佐賀で国際協力推進員として勤務しながら、漫才ワークショップなどの活動を積極的に行っています。英語とウォロフ語(セネガル現地語)を話し、フランス語も少々話せます。教員免許(中高英語)を持ち、現在、英会話教室で講師も務めています。