昨年12月29日(金)に放送された『オールザッツ漫才2024』(MBS)の「フットカットバトル」で、本戦出場35組の頂点に輝いたセルライトスパ(肥後裕之、大須賀健剛)。これまでのバトルでは何度も涙をのんできましたが、結成15年の節目を前に、ついに勝利をつかみました。今回は優勝記念として、そんな2人のスペシャルインタビューをお届け! オールザッツ優勝の軌跡からネタづくり、これからの目標まで聞いてきました。
「気づいたら1位やった」
──まずは優勝への道のりを振り返っていただきたいのですが、最初に手応えを感じたのはどのあたりでしたか?
肥後 準決勝で、ストリートミュージシャンのネタをやったときですかね。
大須賀 1位で通過できて、「そうなんだ!」って。あとは、バトルの合間にやっていた(さや香の)新山のコーナー(出演芸人たちの名シーンを紹介する「にーやんのこれファインプレーやで!」)で、僕の顔をピックアップしてくれたから、それもジャブみたいに効いてたんかなと(笑)。
肥後 しかも決勝の前にもう1回、あの顔が出てね。ありがたかったです。
大須賀 (別コーナーで)顔を緑に塗ってカエルになったり、バトル以外にも出番がちょこちょこあったんで、(スタジオの)空気を把握できてなかったのも逆によかった。あんまり構えず、リラックスしてできた気がします。
肥後 ほかの芸人の準決勝ネタは、1組も見てないんですよ。僕も(別コーナーで)山崎まさよしさんのモノマネをやってましたし、大須賀は出る直前まで顔の緑をシャワーで落としてて。
大須賀 3回ぐらいクレンジングを繰り返して、肌がビリビリ・バキバキになり、目も開けられないぐらいでした。
肥後 だから、2人とも緊張感がまったくなかった。
大須賀 「やろう、とりあえずやろう」って。
肥後 なんにもわからず、気づいたら1位やった、みたいな感じでしたね。
ひな壇の芸人に盛り上げてもらった
──ネタ選びにあたって、戦略みたいなものはあったんでしょうか。
大須賀 ストリートミュージシャンのやつもそうなんですけど、「いけんのか? いけんのか?」みたいな挑戦系、もしくはハッピーエンド系がワーッと盛り上がるなと思って。まあ、それも、終わってみて感じた後付けです(笑)。
──決勝のネタは、確かにものすごい盛り上がりになっていました。
肥後 終わってから改めて見たら、キャツミなんか2回立ち上がってましたね(笑)。
大須賀 肥後はずっと横向いてるんで、ネタ中は客席が見えてなかったんですよ。
肥後 だから、あの大須賀の動きもまったく知らなくて。録画で見て「こんな動きしてたんや!」って初めて知りました。
大須賀 あれは事前に動きを決めてたわけじゃないんですよね。ひな壇の芸人さんが、僕をあそこまで盛り上げてくれました。
肥後 ノったっていう。
大須賀 そうそう。ヴァイブスが上がって(笑)。
──ネタが終わった時点で優勝の確信は……。
大須賀 「どうだ!」っていうのはありました。ただ、さや香の「からあげ」もめちゃくちゃ盛り上がってたんで、なんとかイーブンには持っていけたかな、ぐらいで。
肥後 「からあげ」が終わったあと、石井がずっと優勝したみたいな顔してたんです。
大須賀 してたな〜(笑)。
肥後 ずっとしゃがみ込んで、ハーッハーッ(肩で大きく息をする)って。それもあって、余計にわからなかったですね。
優勝のご褒美で海外ロケが決定!
──優勝が決まった瞬間の気持ちは?
大須賀 最初にスタジオ投票の結果が出て、そのあとに(X=旧Twitterによる)視聴者投票の結果が出るんですけど、それを完全に忘れてて……スタジオ投票の数字だけ見て「やったー!」って言ってしまったんですよ。
肥後 僕もそうでした。
大須賀 で、またクルクルクルって点数表示が動き出したのを見て、「うわ、そうやった!」と。しかも、ちゃんとそっちは(さや香に)負けてたもんな。
肥後 そうね。
大須賀 危なかった。めちゃくちゃ恥かくとこでした(笑)。
──優勝後は、芸人仲間からの反響も大きかったそうですね。
大須賀 「しびれたー!」という声をよく聞きましたね。「めちゃくちゃカッコよかった」って言ってくれて。
肥後 オールザッツに出てなかった芸人にも、めっちゃ声かけられました。デルマパンゲの迫田(篤)さんとか隣人(中村遊直、橋本市民球場)とか、一緒にユニットライブをやってる人たちが「知ってる人が勝ってくれてよかったわ!」って。
大須賀 いや、みんな知ってるやろ(笑)。アイロンヘッド・ナポリさんからもLINEが来て、「やっぱ獲るやつが獲ったな」みたいに言ってくれました。
肥後 ほかにも、大自然(しんちゃん、ロジャー)とかね。
──『オールザッツ漫才』は賞レースのなかでも特別というか、芸人仲間にも認められる、みたいな感じがありますもんね。
大須賀 そうなんです。いい意味で、いちばんアホになったやつが勝つというか。かしこまったネタじゃなくね。それがひとつのステータス。いちばんバカできたんだなっていう。
──仕事面で変化はありましたか?
大須賀 MBSさんからは、けっこう呼んでいただいてて。肥後がエンディングで言ってた『あれみた?』です(「『あれみた?』にほぼ大須賀しか呼ばれていなかったので、これで報われる」と発言)。あのときは変な空気になったけど……。
肥後 僕も「やってもうた!」って思ったんですけど、その後、急激に『あれみた?』の仕事が増えました(笑)。しかも、このたび海外ロケに……。
大須賀 『オールザッツ』優勝ご褒美で行かせてもらえるみたいで。
──それはすごい!
大須賀 ありがたいです。豪遊したいですね〜。
肥後 遊ぶ時間あるんか?(笑)
大須賀 だってご褒美よ? でも、できれば肥後以外と行きたかった(笑)。
どっちがつくったネタかバレバレに!
──ネタはどんなふうにつくっているんですか?
大須賀 僕は、1個のボケをまず思いついて、これを4、5分のネタにするにはどう色づけしたらいいかなって考えていくパターンが多いですね。だから、そのボケだけウケて、あとは全然ウケないっていうこともしばしばあります。
肥後 そこから徐々に調整していく、みたいな。
大須賀 2人ともネタを書くんで、「あれ? これ、セルライトスパっぽくないな」と思われることもあると思います。芸人からは「今日の肥後でしょ」「今日の大須賀でしょ」みたいなのも、けっこう言われますし。
肥後 7、8割は当たってるよね。
大須賀 ダブルアートの真べぇさんとか、よく当ててる。「今日の肥後でしょ。わけわかんないもん」って(笑)。
肥後 ビスケットブラザーズのきんちゃんにも、毎回、「このネタ、肥後さんでしょ」とか言われますね。で、当たったらちょっと喜ぶんですよ、みんな(笑)。
大須賀 なんか、猟奇的な部分があったら肥後のことが多い気がする。ちょっと怖いというか。
肥後 確かにそうですね。猟奇的な部分は全然ウケないです(笑)。そこが悩みなんですけど……。
──ネタのもととなる発想は、どんな時に生まれることが多いですか?
大須賀 常にアンテナを張って、外を歩いたり電車に乗ったりしてるときに「いま、あの人があの状態でこんなこと言ったらおもろいな」みたいなシーンを見てメモったり。
肥後 僕も、まずはリアルな日常生活のひとコマを切り抜くことが多いですね。あとは漫才だったら、ほかの人がやってないような設定を思いつけばいいなと思ってます。
──セルライトスパはコントのイメージが強いですが、どちらに力を入れている、というのはあるんでしょうか。
大須賀 年によって変わるんですよ。漫才については、しゃべくりを頑張ろうとしてたときもあったし、コントを漫才にする形でM-1準決勝まで行けてた時期もあったんですけど……いま、ほんまに悩み中です。どっちで行ったほうがいいのかっていう。
ミルクボーイさんとかウエストランドさんとかは、スタイルが確立されてるじゃないですか。そういう人たちがずっと磨き上げてきたネタってやっぱ強いんで、そこにどう勝つか。「セルライトスパといえば」という形をつくれるのがいちばんなんですけど、僕ら今年がラストイヤーなんで……もう間に合わないか(笑)。
肥後 うん、間に合わない(笑)。
──やっていて楽しいのはどちらですか?
肥後 僕はコントですね。
大須賀 漫才のほうが、ちょっと緊張するんですよね。コントって、「いま噛んだ?」みたいなのもバレないというか。
肥後 キャラにしてしまえばね。自由度が高いんです。
大須賀 楽しいのは、僕もやっぱコントかなぁ。
伝説の“裏拳”、1年越しの伏線回収!?
──肥後さんは、音楽系のイベントを主宰したり、HI†GO×極彩G12として楽曲(『ア・ラ・モード』)をリリースするなど、音楽にからんだ活動も多いですよね。『M-1グランプリ2023』予選で披露した「黄緑」「わやくそ」もクセになるメロディでした。
肥後 準々決勝でやった「わやくそ」はね、もともとぜんぜん違うメロディだったんですよ。前日ぐらいになって大須賀が「もうちょい歌い上げてるほうがおもろいと思う」って言ってきて。
大須賀 最初、3回戦でやった「黄緑」とはガラッと変わったメロディを持ってきてたんで、もうちょっと「黄緑」に近いほうがいいんじゃないかって。
肥後 それで、新たに作ったのがあの曲でした。
──そんなウラ話があったんですね! かたや大須賀さんは特技が多く、空手など武道のほかにもセルフ亀甲縛りとか……。
大須賀 60秒ぐらいで自分を縛れるよっていうやつですね。NSC(吉本総合芸能学院)に入る前、なんか特技があったほうがいいなと思って、独学で身につけました。とんねるずさんの『安すぎて伝わらない素人芸選手権』(フジテレビ)にも3、4回行かせてもらいましたよ。『ABCお笑いグランプリ』で優勝(2016年)したときも空手のネタでしたし、やっぱ自分のストロングポイントをガンガン出していかないと勝てないなとは思ってます。
──武道といえば、『M-1グランプリ2022』での裏拳(3回戦でのネタ終盤、大須賀の裏拳が肥後に炸裂したハプニング)、あれはものすごい破壊力でした。
肥後 ほんまに気力と本能だけで立ち上がりました。だって、空手で2回、日本一になってる人の裏拳ですよ?
大須賀 速いほうが面白いんで、僕も全力でいっちゃったんですよね〜。
肥後 よけないとダメなんですけど、速すぎて見えなかったです。眼鏡がクッションになって助かりました。
大須賀 ちょうどそのあとの肥後のセリフが「謝れ!」で、ぴったりリンクしたのがよかったよね。
肥後 お客さんも笑ってくれたのでホッとしました。
──昨年のM-1予選では、うまくよけられていましたね(笑)。
肥後 みんなに言われます、1年越しの伏線回収って(笑)。
15周年記念に「漫才劇場で一発やろうか」
──セルライトスパを生で見たい! という人におすすめのライブを教えてください。
大須賀 『森ノ宮シックスライブ』(大阪・森ノ宮よしもと漫才劇場)が、いまいちばん見てほしいかも。コーナーも、ちょっと変わったことを毎回やってるんで。
肥後 ほかのメンバーも全員尊敬してる人たちですし、どう考えても面白いと思いますね。
大須賀 新ネタが見たいんだったら『新ネタライブ!!ハイキック寄席!!』(大阪・よしもと漫才劇場)。
肥後 あと、『茹でたて!ホクホク!ブ6ッコリー!』(同)も。カベポスター、フースーヤ、ヘンダーソンさん、マイスイートメモリーズ、ぎょうぶの6組でやってる新ネタライブで、これも間違いないです。
大須賀 『ハイキック寄席!!』は肥後が考えた新ネタ、『茹でたて!』は僕が考えた新ネタをやってるんですよ。
──両方見ることで、セルライトスパの個性がより深く伝わってきそうです。
大須賀 そうですね。いま『ハイキック寄席!!』のほうが正直、お客さんが多いんです。『茹でたて!』のほうはまだ少ないので、たまにはお客さんが多いところで試したいなっていう気持ちも……。
肥後 そしたら、これを機に1回逆にしてみるか。
大須賀 そのあたりも、見に来たみなさんに「あ、入れ替わってるな」「まだだな」と予想していただけるとうれしいです(笑)。
──今年は15周年ということで、特別な企画も用意しているんでしょうか。
大須賀 (よしもと)漫才劇場で一発やろうか、みたいな。僕と肥後は誕生日が1日違いで、5月31日と6月1日なんです。そのあたりで、ちょっと大きいイベントをやりたいなという話はしてます。
──楽しみです! 今後の目標も、ぜひ聞かせてください。
肥後 賞レースがないと、ここまで続けられてなかったかなと思うんです。だから、やっぱ賞レースにずっと食らいつきたい。『M-1』が獲れたらいいんですけど、獲れなかったら『THE SECOND』にも出てみたいし、もちろん『キングオブコント』も。モチベーションになりますし、賞レースはずっと意識したいなと思ってます。
大須賀 僕は、賞レースは関係なく、目の前にいる人を笑かしたいだけなんで。
肥後 カッコいいな。
大須賀 肥後くんとは違うスタンスでやってますね。
肥後 ちょっと……さっきの僕の、撤回してもいいですか(笑)。
──(笑)。ちなみに『フットカットバトル』にはもう出場しなくなるんですか?
大須賀 いやあ、どうなんでしょうねえ?
肥後 いまは夏にも『オールザッツ』があるんで、こうなったら冬夏を制覇したいです。甲子園の春夏みたいに。
大須賀 完全優勝ね。じゃあ、この夏は史上初の連覇を狙いますか!