“NSC講師”ノンスタ石田が語るお笑い教育論「いまのNSCにもちゃんとトガっているやつがいる」

日本最大規模のお笑い養成所・NSC(吉本総合芸能学院)の東京校で3月16日(土)にオープンスクールが開催され、講師としてNON STYLEの石田明が登場しました。2021年からNSC講師を務め、近年のNSC改革を推進してきた石田はこの日、集まった参加者向けに模擬授業を行い、ネタづくりの考え方や見せ方について講義。オープンスクール終了後にはインタビューに応じ、NSC生と向き合いながら実践してきた自身の“教育論”について熱く語ってくれました。

出典: FANY マガジン
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「NSC改革」の立役者

よしもとアカデミーはNSCのほか、マネージャーや構成作家、制作スタッフなど即戦力を育てる「YCA(よしもとクリエイティブアカデミー)」、俳優やパフォーマー、歌手として本格デビューできる人材を育てる「YPA(よしもとパフォーミングアカデミー)」、エンタメ×デジタルの最前線を学べる「YDA(よしもとデジタルエンタテインメントアカデミー)」、そしてこの4校のカリキュラムを学びながら高校卒業資格が得られる「吉本興業高等学院」の5校からなる総合教育機関です。

石田はNSCの講師に就任後、カリキュラム作成や講師の人選に携わっています。笑い飯・哲夫やパンクブーブー・佐藤哲夫といった賞レースチャンピオンを講師に加えるなど、改革を進めました。

出典: FANY マガジン
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この日のオープンスクールでも参加者と対話型で授業を進め、ところどころで笑いを交えながら、その緻密な“お笑い論”について語りました。最後に石田が「みなさんがNSCに来てくださって授業で会えること、そしてその後、舞台やテレビで一緒になれることを楽しみにしています」とあいさつすると、参加者から大きな拍手が起きました。

「講師をやっていてよかったな」と思う瞬間

特別授業終了後、石田を直撃しました。

――今日のオープンスクールの感想を聞かせてください。

過去のオープンスクールはお笑い経験者の方も多かったんですけど、今年は社会人の方で、忘年会で漫才を披露してから興味を持ったとか、いろんな人がいましたね。ペンを持って聞いている人もたくさんいて、真面目な人が多い印象もありました。

――石田さんは、吉本興業の岡本昭彦社長から直々に「NSCを変えてほしい」とお願いされたそうですね。

岡本さんが「これだけ言語化できる人はそうおらん」と言ってくださったんですよね。それで最初はNSCの講師ではなくて、カリキュラムや教科書をつくってほしいという依頼をいただいたんです。でも、それをつくるには、自分が実際に教えてみないとできないので、講師にも挑戦することになりました。

出典: FANY マガジン
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――3年間教えてきて、気づいたことはありますか?

僕らの若いころと時代は違えど、同じ部分はあるということですね。やっぱりトガっているやつはトガっているし、真面目なやつは真面目です。お笑いって常に新しくなっているとは思いつつ、懐かしい香りがするやつもおるし、常に循環しているようにも思います。

――最近のNSCは、むかしほど殺伐としていないと聞きますが……。

ちゃんとトガっているやつもいますよ。でも態度じゃなくて、ネタがトガっているからイマドキやなと思いますね。

――いいトガり方ですか。

もう、すごくいいっすね。楽しみです。そんなネタがトガっているやつが僕の授業に来てくれるなんて、めちゃくちゃ嬉しいんですよ。だってネタがトガってるやつなら、ぜったいNON STYLEのネタが好きではないはずですもん。

――そうですか?

はい(笑)。なんですけど、そいつらが毎度、質問をしに来てくれたりとか。授業の合間に「石田さん、どうすればいいですか」「衣装はこんなんどうですか」とか、聞いてくれるだけでも「やっていてよかったな」と思いますね。

出典: FANY マガジン
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――石田さん自身も講師を楽しんでいるんですね。

楽しいですね。おもろい。ウケずに悩んでいる子をウケる方向に導くのは嬉しいし、笑いを取ったことのないような子が、同期の子たちを笑かして嬉しそうにしているのを見るのも、すごく楽しいです。

「全員が芸人になれなくてもいい」

――石田さんの指導方針について聞かせてください。NSC生全員の台本を添削したこともあると聞きましたが。

初年度は、僕にとっても挑戦だったんですよね。だから、頭おかしくなりそうでしたけど、全員の添削をやりました。当時から東京校だけで600人くらいいて、大阪校を入れたらもっといたんですけどね。

――それは、すさまじい労力ですね。

でも台本って人が見えるので、わかりやすいんです。「あ、こいつは自分勝手なお笑いをするな」とか「こいつは見せ方が上手だけど、内容は面白くないな」とか。

――そうやって全員を丁寧に見ていくことが、石田さんの講師としての姿勢なんですね。

なんか僕はね、全員がお笑い芸人になれなくてもいいと思っていて……。でも人生の中で、NSCに通ったことが「うわー、損な時間だったな」とは思われたくないんですよ。少しでも人生にプラスになったと思ってほしい。人数も増えて物理的に無理になったので、いまは全員分の添削はしていないですけど、その考えは変わってないです。

出典: FANY マガジン
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――ほかに意識している指導方針はありますか。

お笑いはみんなでやるもんですから、基本はいる生徒みんなを伸ばすということ。あと、やはり人によってアドバイスを変えることです。

――アドバイスを変えるとは?

たとえば将来性やスター性のある子は、講師陣も気になって、いろんな言葉を送りたくなるんですね。そうなると、いろいろな人からいろいろ言われて、そいつの本来持つ光が減っていってしまうこともあるんです。そうなったときには、「いろんな意見があると思うけど、お前らはお前らであり続けることが大事やねんで」と伝えます。「講師陣のアドバイスは5年後に思い出せばいいから、いまははみ出して、やりたいことをやり続けろ」と言う。一方で、その逆に「お前はあの先生の言うことをちゃんと聞いとけ」って伝える子もいます。

――それも全員を丁寧に見るからこそできることですね。自分で教えることが向いていると思いますか?

どうなんでしょう。わかんないですけど、でも僕は楽しいですね。もちろん生徒にもタイプはありますから、僕みたいな人間のお笑い論をアレルギーに感じる人もいるとは思いますけどね(笑)。

――成長する人と成長しない人の違いはありますか?

まずは、探求心があるかどうかですよね。あと経験者で入ってきて、もともとの自分の知識がある子は少し伸びにくいです。自分の中での正解があるから、講師がアドバイスをしても「いや、ここ現場ではウケてたし」ってなる。でも、その部分がウケているせいで、その後のボケがウケづらくなっていることは、説明しても飲み込めなかったりね。

出典: FANY マガジン
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――素直であることは成長のポイントかもしれないですね。

そうですね。でもまあ、それもいいんですよ。いまのうちぐらいしかプライド高くいられないですから。卒業したらそうもいかないので、NSC生のうちはプライド高くいたほうが健全やとは思います(笑)。

――最後に、NSCへの入学を検討している人たちにメッセージをお願いします!

ホンマに1年間、こんなに堂々とスベれる時間はないと思います。もう1回、青春したい人なんかは、ぜひ来てもらえたらなと思いますね。授業を受けに来るというよりも遊びに来る。青春しに来るみたいなことでいいのかなと思います。


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