今年81歳になる落語家の桂文枝が、誕生日の前日となる7月15日(月・祝)に、大阪・なんばグランド花月(NGK)で記念公演『傘寿を越えて 文枝自選集 華麗なる独演会』を開催します。タイトルには、文枝が今後、よりいっそう創作落語づくりに情熱を注ぎ、「米寿(88歳)」「卒寿(90歳)」を迎える思いが込められています。4月18日(木)にNGKで発表会見を開いた文枝が、独演会への意気込みを語りました。
カフェが「稽古の場」に
文枝は、傘寿を迎えたこの1年を「これまでとあまり変わらず、元気に過ごしています」と振り返りました。最近はよく歩いているそうで、多いときで1万歩超え、平均でも5000歩は歩くとのこと。
「歩いている途中にカフェがあるんです。これまでそういうところに1人で入ることができなかったんですが、最近では1人で入って、けっこう長居しています。80歳になってから始めたことが多いです」
そうしたカフェは、落語の稽古の場にもなっているといいます。
「若いときは簡単に覚えられたんですけども、80歳前後から忘れることが多くなりまして……。毎日、(落語の)長い、ややこしいところを稽古しています。いままでの人生の中でいちばん稽古できているんじゃないかなぁと思います」
傘寿の締めくくりとなる今回の「独演会」には思い入れも強い様子で、こう意気込みました。
「傘寿を越えて、まだまだ、米寿もありますし、卒寿もあります。そういうふうに思えるようになったのは、(92歳の)大村崑先生にお会いして、本当にお元気でいらっしゃったので『これはまだまだいけるな』と。(創作落語を)500作目指していますので、現在は336作ができあがりました」
ゲスト出演は林家つる子と桂二葉!
「自選集」ということで、演目は、文枝がこれまでやってきた中で見てもらいたい三席を選んだといいます。
まずは、「いつも大いに笑ってもらえる」という『妻の旅行』。文枝は「『妻の旅行』をやるとすごくウケて、それがうれしかったんです。まずは最初にこれをやらせていただいて、(お客さんに)温まってもらって」と語ります。
続いて新作の『約束』については、「まだ……あまりできていないんです」と記者陣を笑わせながらこう語りました。
「男性と女性が、“約束”を交わしたわけじゃないんですが、あることをきっかけに約束を守る、というような。落語を聞いていただくと『そういうことか』と思っていただけると思います」
そして、最後は『涙をこらえてカラオケを』。このネタを選んだ理由を、こう明かしました。
「家内と母が亡くなってからは、ずっと封印していたんです。人が亡くなる、というような落語はずっとやらなかったんです。3年が過ぎましたから、母と妻のことを思いつつ、またそういうネタをやっても許してくれるやろう、と。そろそろ許してくれるかなあと思いまして、本当に久しぶりにやらせていただきます」
今回の独演会のゲストは、林家つる子と桂二葉。まさに“花を添える”という言葉がぴったりの話題の女性落語家2人です。
「つる子さんは、このあいだ真打ちになられました。そして上方からは、いま大変人気のある二葉さん。このおふたりに助けていたただいて、たくさんの方に来ていただいて、80を越えてもますます元気に500作を目指すということを皆さんに見ていただきたいなと思っております」
「創作落語500作」の目標が生きがい
質疑応答で、いまの原動力をたずねられた文枝はこう答えました。
「やはり、いちばん心配だったのは、健康と喪失感というもの。ひとりですから、ちょっと淋しくなることもありますが、自分のモチベーションを保つために、(創作落語の)500作を目標に(しています)。落語を作っているときは、淋しさも忘れます。自分の中でがんばれるのは、落語があったからじゃないかな、と。500作を目指すというのが生きがいになっています」
そして、その創作落語を作るときに大切にしていることについて、こう説明しました。
「やはり、皆さんに『そうや、そうや、あるある』という普遍性のもの、そして身の回りに起こること。あまり、流行とかそういうものや、人を傷つけたり、下ネタを使わないとか、そういうことを心がけてきましたね。これからも、ハートフルな落語をたくさん作っていきたいなと思っております」
公演概要
『傘寿を越えて 文枝自選集・華麗なる独演会』
日程:7月15日(月・祝) 17:30開場 18:00開演
場所:なんばグランド花月
ゲスト:桂二葉、林家つる子
チケット:前売5,500円 当日6,000円
FANYチケット(会場)はこちらから。