よしもとアカデミーの吉本興業高等学院から現役高校生プロ芸人としてデビューしたコンビ「ミラクルボディ」。高校3年生の西山と高校2年生の山本とんちゃんの2人が織りなすネタは評判で、昨年の「ハイスクールマンザイ」決勝にも進出した実力派コンビです。彼らはどんな授業を受けて、どうやってネタをつくっているのでしょうか？ ふつうの高校生活とは違う“お笑いやエンタメに特化した”特別な高校生活とは？ そんな疑問を解き明かすべく、今回、東京・池袋にある吉本興業高等学院に潜入してきました！
よしもとアカデミーは、日本最大規模の芸人養成所「NSC（吉本総合芸能学院）」、タレントマネージャー・構成作家・公演制作スタッフなど即戦力のエンタメスタッフを育てる「YCA（よしもとクリエイティブアカデミー）」、俳優・パフォーマー・歌手など本格デビューを目指すタレント養成所「YPA（よしもとパフォーミングアカデミー）」、エンタメ×デジタルの最前線を学び即戦力を目指す「YDA（よしもとデジタルエンタテインメントアカデミー）」、そしてこの4校のカリキュラムを学びながら高校卒業資格が得られる「吉本興業高等学院」の5校からなる総合教育機関です。
実は「お笑いエリート」だった山本！？
――それぞれ吉本興業高等学院へ入学を決めた理由を教えてください。
西山 僕は中3のころ、ふつうの高校には行きたくないなと思っていて、やりたいことを探していたんです。そんなときにココを見つけて、お笑いは小さいころから好きだったし、「お笑い、いいな」と思って。それで入学して2期生になりました。
山本とんちゃん（以下、とんちゃん） 自分は親がお笑い好きで、小学生のころから浅草の東洋館でよく寄席を見ていたんです。それでお笑いが好きになって、小学5～6年生のとき、「よしもとNSCジュニア」（吉本総合芸能学院のジュニアコース）というのに入りました。でも、そこが中１のときぐらいでなくなってしまい、なくなるかわりに吉本興業高等学院ができると聞いて、「ならばここに行くしかない」と決めて入学しました。
――小学生からNSCジュニアに入っていたとなると、お笑いエリートですね。
とんちゃん ……そうですね。エリートになっちゃいますね（笑）。
西山 どこがだよ（笑）。
――ということは、2人は最初、学校の先輩後輩として出会ったわけですね。
西山 そうです。けっこう、ずっと敬語で話しかけられてました。でも、僕はコンビ間としてはフランクにいたいほうなので、いまではもう友だちとしても友だちですし。2人でカラオケ行ったりもありますし。
とんちゃん ……何回か、片手で数えるほどだけど（笑）。
西山 というか、吉本興業高等学院ってみんな仲いい感じなんです。
プロの芸人にしっかりネタを見てもらえる！
――その吉本興業高等学院のクラスや授業の特徴は？
とんちゃん 毎週木曜日に芸人さんが来て授業をしてくれます。
西山 特別講師みたいなかたちでゲストで来てくださって。
とんちゃん それがけっこう頭を使う、発想を鍛える授業だったり、あとは表現力とか。
西山 基本、みんなで楽しくワイワイする授業ですね。ずっと笑わせられるというか、すっげぇ楽しくて。たとえば、ジョイマンさんだったら「ジョイマンラップをやってみよう」みたいな感じで。
――吉本興業高等学院で受けた授業のなかで印象的だったのは？
とんちゃん 自分はガクテンソクさんに、ハイスクールマンザイの準決勝でかけるネタを見ていただいたとき。自分たちのなかでは絶対に必要だと思ってたフレーズを「それ、いらなくない？ 逆にそこでツッコめるんちゃう？」と指摘されたんです。自分たちではまったく気にしてなかった部分だったので「その発想はなかったな」と目からウロコでしたし、すごく参考になりました。
西山 ネタ見せをすごいしっかり見てもらえるんですよ。それはすごくありがたいですね。僕は、NONSTYLE・石田（明）さんの授業。僕のツッコミのスタイルがオードリーの若林（正恭）さんぽいと言われていたんですけど、そのなかで石田さんが若林さんと『史上空前!! 笑いの祭典 ザ・ドリームマッチ』（TBS）でコンビを組んだときのウラ話を話してくださって。僕、おふたりとも尊敬していてすごく好きなので、自分のために石田さんが話してくださったというのがうれしかったです。
「特徴のあるやつが入学してきたので、相方に選んだ」
――クラスにいるみんなが芸人を目指すというわけではなく、作家志望などの場合もあるんですか？
西山 そうです。高校ではNSC、YCA、YPA、YDAというよしもとアカデミーの4つのコースから主専攻を選ぶんですけど、クロスカリキュラムなので4コースのどの授業も参加できる。つまり、YPAを主専攻にしていてもNSCの授業に出られるんです。
ただ、僕は芸人になりたくて入ったので、NSCを主専攻にしてNSC29期生として出ていました。
とんちゃん なので、NSCの同期は年齢が上の人が多いです。
西山 そうなんです。基本、NSCの同期は年上なので、けっこうかわいがってもらえてましたね。でも、僕は歳が近い相方がほしかった。あと僕は特徴ない側なので、特徴のある相方を探していたところに、ちょうどぴったりのやつが吉本興業高等学院に入学してきたので、僕から声をかけました。
とんちゃん 高１で入ってきてわりとすぐに声をかけられました。自分もコンビを組むなら歳が離れているよりは近いほうがいいかなと思っていたところに、西山さんが声かけてきてくださって。
西山 フフフ。すごい敬語だな（笑）。
とんちゃん 「あ、ぜひぜひお願いします」と。あ、これ当時のトーンですから。でも、声かけてもらってありがたかったです。
西山 それで2023年5月の終わりにコンビを結成しました。
――コンビ名の由来は？
西山 ミラクルボディっていうと、相方の体型のことかと思われがちなんですけど、僕もじつはガリガリという意味のミラクルボディで。２人ともそういう体型だから、このコンビ名にしました。
とんちゃん ちょっと僕がぜんぶ持ってちゃっている感じはありますよね。
西山 持っていかれてます。あと、いまにして思うとめちゃくちゃダサいコンビ名な気がして、ちょっと変えたくなってます。
とんちゃん 僕はお気に入りです。大好きなんで！
目指すは「ハイスクールマンザイ」リベンジ優勝！
――このたび、最年少の吉本芸人になったそうですね。芸人としての目標は？
西山 NSCを卒業したので、NSC東京29期ということで吉本興業１年目の芸人となりました。やっぱり、いちばん近い目標は「ハイスクールマンザイ」の優勝ですね。
――ハイスクールマンザイは、ミラクルボディで昨年も出ていましたね。
とんちゃん はい、決勝進出で。
西山 で、決勝で負けました。それがすごい悔しくて。敗戦後のインタビューで、なぜか相方が号泣して。僕も悔しくてウルっと来てたけど、それ見て涙が引っ込みました（笑）。
とんちゃん だって本当に悔しくて……。
西山 ハイスクールマンザイって、大阪で決勝戦が開催されるんです。だから東京の僕らはある意味でアウェイな感じもあるんですよね。自分の納得のいく状態でネタをいけなかったというのが、反省点です。今年は、僕はラストイヤーなので、昨年のリベンジと高校生活の集大成で優勝を果たしたいですね。
とんちゃん 決勝行ってね。華々しく。
西山 華々しく？ え？ お前、適当にしゃべんなよ。というか、ハイスクールマンザイの準決勝のときに取材してもらったんですけど。そのとき、ひと言も喋らなかったのに、今日はすごい喋るよね（笑）。
とんちゃん あのとき、ひと言も載らなかったから今回はちゃんと話そうと思って。ほぼ「西山」の文章で終わってたんで。だって、2人で載りたいじゃないですか！
西山 そんなとこで成長している感じ出すなよ（笑）。
しっかり準備はできている！
――2人とも、今年こそはと思っているわけですね。
西山 僕は1年生から出ているんですけど、そのときも決勝で負けちゃったんです。その後、燃え尽き症候群みたいになってしまい、何もしていない時期があったんですが、その時期が後になってみるともったいなかったなと。去年も結局、負けちゃったので、一昨年の反省を生かして、終わった直後から、次の大会のためのネタづくりを始めました。気持ちを切り替えて取り組んでいたら、いいネタができた。
それがよかったのか、「NSC大ライブ 2024 TOKYO」でもいい結果が残せて、よしもと∞ホールドームでのライブにも呼んでいただけました。動いたぶんだけ自分たちの自信にもなるし、結果もついてくる。このいい調子のままでハイスクールマンザイにのぞみたいなと思っています。いまのところ準備はしっかりしているので。
とんちゃん そうですね。去年、すごく悔しくて、インタビューでも面白いこと何も言えずにただ泣いてるだけになってしまって。終わったあとにも、インタビューで笑わせられる余裕をもっておけばよかったなと反省してます。決勝中にも、出順を決めるときに西山さんからフリをしてもらったんですけど。僕的にはうまく返せなかったのも悔しくて。
西山 なんでハイスクールマンザイの意気込みで平場の反省してるんだよ（笑）。ネタのことだろ！
とんちゃん 気持ち的にも余裕がなかったので、そのあたりも含めて頑張りたいなと思ってます。今年は平場から違うぞと思わせたい。
西山 これ、お前、言ったぞ？ 今年、覚えてるからな！（笑） ちなみに去年は12月だったのに今年は9月に早まったので、なおさら終わった直後から準備し始めておいてよかったなと思います。
「いいレールの外れ方」をしていると思う
――では、将来の夢を聞かせてください！
西山 僕がすごくラジオが好きなので、『オールナイトニッポン』とか、誰もが知っているような深夜ラジオができたらというのがいちばんの目標ですね。
とんちゃん 自分は鬼越（トマホーク）さん、大好きなんです。EXITさん、錦鯉さんとか、小さいころから劇場で見て、面白すぎて「グワッ」と印象に残った方々です。
西山 どちらかというと目線がファン寄りだよな（笑）。
とんちゃん そうそう、ファン。EXITさんがデビューしたばかりのころに見て、「これは！」と思ったらすぐに売れました。僕の見る目は正しかったなと思っているんですが、そのときのことをEXITさんも覚えてくださっていました。
西山 そうなんですよ。そのときの山本のことを先輩方が覚えてくださっているのはすごくありがたくて。
――そんなとんちゃんの夢は？
とんちゃん ……自分の目標は、とりあえずは学校のある池袋に、肉劇場という店があるんですけど。そこの「肉劇場丼」という３.５ポンド（1.5キロほど）のものを食べることです。
西山 ……それ、このあと行けよ（笑）。お前、そこでボケるんならそれ貫けよ！
とんちゃん ずっと気になっているんで、いつかはと思ってます。
――叶うといいですね（笑）。ちなみに、ネタはどちらが？
西山 僕が書いてます。相方はお笑いエリートのはずなんですけど……。
とんちゃん ……お笑いエリートですよ。いつも最前列でいろんな芸人さんのネタを見てきたはずなんですけど。
西山 なのに、ネタは1本も書いたことがないんだよな（笑）。
とんちゃん 西山さんの書くネタが面白いんで。ずっと頼っちゃってます。
――最後に、吉本興業高等学院のここが素晴らしいという点を教えてください。
とんちゃん 事務局さんのフォローがすごく手厚くて、すごく面倒見がいい。とてもありがたいです。
西山 パンフレットにも書いてあるんですけど、僕は「特別な3年間」というのを感じています。ふつうの高校生とぜんぜん違うことをしているな、と感じるんですよね。ふつうの高校生のように、毎日ワイワイ楽しむのもいいと思うんですけど、楽しさのベクトルが違うというか、そこが特別だなと思います。
テレビや劇場で活躍されている芸人の方々に教えてもらえたり、新しい自分を見つけていくような感覚があって、いいレールの外れ方をしているなと思います。この段階から自分のやりたいことを見つけて、行動できるというのが、この学校の魅力ですね。
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