はるかぜに告ぐら「アート系若手芸人」が新進気鋭の芸術家とコラボ! 「アーティストはお笑いのネタづくりもうまそう」

いまもっとも注目されている関西の若手芸術家9組と、吉本興業所属のアートが得意な若手芸人4組による合同アート展『Bud Art Exhibition (BAE企画展)』が、大阪・LAUGH & PEACE ART GALLERYで7月6日(土)~15日(月・祝)まで開催されています。アーティストとしても参加したはるかぜに告ぐ(一色といろ、とんず)と、ディレクターの高田雄平氏に会場でお話を聞きました。

出典: FANY マガジン
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この黒い部分と透明なところの濃淡はどうやって…」

『Bud Art Exhibition (BAE企画展)』は、エコロジカルアーティストの高田氏がディレクターとなり、“Bud”=“芽生え”を掲げて25 歳以下の作家がさまざまな機会を得られるようにと2022年からスタートしたもの。そこに今回、アートを得意とする吉本の若手芸人、イワタアキラ、猫化粧・ギャンペイちゃん、はるかぜとともに・やすお、はるかぜに告ぐも合流し、多くの人々でにぎわっています。

2日目の7月7日、はるかぜに告ぐの2人と、ディレクターの高田氏が一緒に展覧会場に登場したのに合わせ、3人に話を聞きました。

——まずは、今回の展覧会の企画趣旨を教えていただけますか?

高田 この企画展は2年前に始めて、今回で4回目になります。僕は昨年で40歳になったのですが、活動のなかで若いアーティストと出会う機会も増えてきて、やっぱり僕らも先輩方にいろんな機会をいただいてきたので、「お返ししていく場」として開催しました。参加アーティストは全員25歳以下。年齢を制限しているのは、入れ替わりがあったほうが循環するというのと、26歳以降になったら自分自身でもステップアップしてもらえたら、という思いもあります。

出典: FANY マガジン
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とんず (高田氏の作品を見て)この黒い部分と透明なところの濃淡はどうやってつけているんですか?

高田 新聞紙の炭を細かく砕いたものと、レジン(樹脂)を混ぜ合わせてつくっています。

とんず ということは、透明なところはレジン多めってこと?

高田 そうです。このレジンは水に近い柔らかいものなので、新聞の色が広がってしまうんです。でも“線”も表現したかったので、3~4時間ほど置いて少しドロドロに固まったレジンをお箸とかを使ってビュッと垂らして線を表現しました。

とんず 「新聞を細かく砕いたものをレジンに混ぜてみよう」っていう発想がすごいですね!

高田 僕の師匠(現代美術家の故・嶋本昭三氏)も、新しいことや、誰もやっていないことをする方なので、僕も誰もやっていないことを探していきたいと思っています。今回の表現のおかげで、僕自身の創作にも広がりが出始めて、新しい進化が生まれています。

とんず “自分乗り越え”ですね。

高田 はい。そのためにも、毎年、新しいテーマを設けています。

出典: FANY マガジン
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アーティストと芸人「根本は同じ」

とんず 今回、こういう展覧会に参加するのは初めてやったんですけど、ベタ塗りの絵とかばっかりなんかなと思ってたら、こんなに種類があるなんてってビックリしました。同じジャンルでも、似てるようでぜんぜん違いますね。

といろ かわいらしいアートがあれば、リアルな作品もあるし、情熱が伝わってくるような絵もあって、本当にいろんなテイストがあるんですね。

高田 たとえば同じ木材を使った作品でも、木材を焦がして表現するのか、木材を焼いて表現するのかで、またぜんぜん違った作品になりますね。考え方も表現の仕方もそれぞれなところが魅力なのだと思います。紙切りの作家さんもいますし。

といろ 私、カッパの紙切りアートを作ってもらいました!

出典: FANY マガジン
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とんず 皆さん、作品の着眼点も、ゼロイチから何かを生み出す発想がすごいです。今回、参加しているアーティストさんはそんな方ばかりのように感じました。皆さん、お笑いのネタをつくるのも上手そう(笑)。

——今回はアートが得意な若手芸人さんと合同の企画展ですが、このイベントが生まれたきっかけは?

高田 以前からずっと、「芸人さんが入ってくれたらいいな」と思ってたんです。以前、画家としても活躍されている芸人のたいぞうさんが、テレビの企画で僕の師匠を訪ねてきてくれたことがあって、その後、僕自身もたいぞうさんとこのギャラリーでコラボしたことがあります。アートプランナーとしても活動するおかけんたさんも先輩だったりして、そういう流れもあって、以前から芸人さんと何かをする流れはあったんです。

今回のような機会は新たな才能の“発掘”にもなりますし、僕も新しい作品を見て、「こういう活動もやっているんだ」という発見がある。作家さんとしても活動の場を広げてもらえるきっかけになればいいなと思います。

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——3人のお話をうかがっていると、アーティストさんと芸人さんは近しいものがあるのかなと感じます。

高田 ジャンルは違っても、“何かを生み出す人”、“表現する人”って、根本は同じだと思うんです。いろんなものを自分のなかにインプットしてから、アウトプットする。その表現の仕方が作品を創るのか、しゃべるのかで技法ややり方が違うだけです。どう表現するのかもまた、その人が持つ個性だと感じますね。

若手アーティスト&芸人が作品の見どころ紹介!

はるかぜに告ぐの2人と、この日、ギャラリーに在廊していた新進気鋭のアーティストたちに、自分の作品のテーマや見どころを聞きました。

はるかぜに告ぐ・一色といろ】
『開運ニャ行絵図』のモチーフは、『百鬼夜行』です。私のライブ配信(SHOWROOM『はるかぜに告ぐ といろROOM』)に出ている子たちが『百鬼夜行』として、お化けとなって行進している、みたいなイメージで表現しました。モチーフを何にしようか決めるのに、いちばん悩みました。

出典: FANY マガジン
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はるかぜに告ぐ・とんず】
アクリル板に絵を描くのは初めてやったんです。絵の具も初めてのアクリル絵の具を自分で選んで、止まらない感性で描きました(笑)。仕上げるまでの時間は、かかってるんかな? 標準の時間がわからないけど、描けば描くほど『もっとよくなるんちゃうかな?』みたいな感じになってきて、やたら描き直しました。

でもアクリル絵の具って一度乾くと落ちひんから、「これ以上やってもな……」と思いながらも、その翌日に見たら重ねて描きたくなったりしたんですけど、「ナチュラルなボーンでいいかな」と思って、あえて途中でやめた、みたいな感じです。

作品タイトルは『No Mash』です。私のヘアスタイルが、マッシュとかウルフじゃなくてクラゲやでっていう意味で名付けました。クラゲを描くのはもともと好きです。

出典: FANY マガジン
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【イワタアキラ】
NSC(吉本総合芸能学院)大阪39期。ポップでキュートなくまのキャラクター「もこもこくまさん」シリーズを展開。
「もこもこくまさん」は3~4年前から手掛けているシリーズです。今回も「もこもこくまさん」にちなんだ何かをつくれたらいいな、と思ってつくりました。初めてデジタルで下絵を描いて、それをキャンバスに転写したものを原画として描いたので、けっこうきれいな「もこもこくまさん」になったんじゃないかと思っています。遠くで見るのと近くで見るのとでは印象が変わるので、どちらからも楽しんで見てもらえるとうれしいです。

出典: FANY マガジン
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【岡優七】
線のストロークや日本語の文字を積み重ねた抽象画を制作。油彩、アクリル絵の具でのキャンバスアートが主な作品。

今回はすべて新作です。私は抽象画で、「集積」とか「記録」をキーワードにして描いています。見ていただきたいのは、筆跡の重なりや、線のストローク。最初から「こういう絵を描きたい」という計画があるわけではなく、そのときどき、その場その場で、絵の具を使って勢いのある点や線を重ねていき、それをそのとき自分の過ごした記録としています。

出典: FANY マガジン
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【Grogs.】
平面や立体、アニメーション映像など、さまざまな方法で自分の考えを視覚的に表現。オリジナルキャラクター「WHOMAN」とともに、見る人が考えることを楽しめる作品を制作。

今回は“芸術”の道をゆく方々との展覧会なので、そんな方々が共感しやすい作品をつくりました。オリジナルキャラクター「WHOMAN」を通して、狭い世界と広い世界を表現しています。

自分たちのように“芸”に生きる人は、人と考え方が違うっていう意識があります。狭い世界に1人だけいると違和感を持つことがあると思うんですけど、広い世界に出ると、意外と目立たなかったり、もっとすごい人と出会ったり、自分とまわりの人たちとの違いが見えるようになります。それを目の錯覚を利用して表現しています。作品と合わせてキャプションも読んでもらえるとうれしいです。

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【辻󠄀笙】
落語の色物で唯一の「立体紙切師」として、天満天神繁昌亭や神戸喜楽館に出演。そのほか、舞台や映画、作品展示やワークショップなど活動の幅を広げている。今年4 月から『にほんごであそぼ』(NHK Eテレ)に出演。

ふだんやっている切り絵のパフォーマンスだと時間が限られているので、ちゃんと見てもらえるように時間をかけて丁寧に作りました。たとえばトリケラトプスは、1枚の黒い紙をデザインナイフで切り抜いてアウトラインを作り、その裏に違う色の和紙を貼って色味を出しています。

いろんな角度で見てもらいたいですね。絵だと平面で、真正面から見るのが基本だと思うんですが、(切り絵作品は)立体になっているので、裏側や体の模様や和紙の色合い、切り出し方など、角度によって見え方が変わるので、実際に足を運んで注目していただけるとうれしいです。

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【灰野ゆう】
学生時代に図鑑でふと目にしたアメフラシの解剖図に心を奪われ虜となる。飼育や解剖を通してアメフラシへの理解を深め、主にそれをモチーフとした作品を制作している。

アメフラシという生き物の美しさに魅了されて7~8年になります。恋に落ちる瞬間のように、雷に打たれたような衝撃でした。そこから実際に海に行って浜で観察したり、写真を撮ったり飼育をしたりしてきました。アメフラシは不定形で、実際に見ていると1秒たりとも同じ形をしておらず、流動的なところに「うわ~!」と萌えるんです。

人生のテーマはアメフラシ。出会えたことを幸せに感じています。ただただ自分が美しいと思ったものをアウトプットしたので、見た方が「おもしろい」だったり、「美しい」と思ってもらえると本望です。

出典: FANY マガジン
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展覧会概要

合同アート展『Bud Art Exhibition (BAE企画展)』
日程:2024年7月6日(土)~7月15日(月・祝)
時間:13:00~18:00  火・水 定休日
場所:Laugh & Peace Art Gallery
入場料:無料
参加アーティスト:東樹生、岡優七、喜愛来、Grogs.、辻󠄀笙、灰野ゆう、古家達成、マスダアキラ、吉田琉平
出展ディレクター:神野翼・現代美術家 / 精華大学特任教員 / 高田雄平・エコロジカルアーティスト / windfall gallery Art director / NPO 法人芸法理事
吉本興業所属:イワタアキラ、猫化粧(ギャンペイちゃん)、はるかぜとともに(やすお)、はるかぜに告ぐ(一色といろ・とんず)

詳細はこちらから。

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