テレビや劇場で活躍する人気芸人は、ふだん、どんなエンターテインメントに触れているのでしょうか? テレビ、ラジオ、映画、本、漫画、ネット動画……自分自身を構成するさまざまなエンタメ要素を挙げてもらい、芸人たちの発想のもとをつまびらかにする「エンタメ成分表」。今回、登場するのは、9月8 日(日)に「20周年単独ライブ『絵心』」を開催するピン芸人の大谷健太です。
大谷は、「バスガス爆発見て吐くバク」「腹痛中普通シチューつくる?」「湯吞みの夢のみ見る野ネズミ」など、オリジナルの早口言葉を披露するフリップ芸で人気。日ごろ“摂取”しているエンタメコンテンツから、早口言葉のインスピレーションを受けることもあるといいます。エンタメ成分を聞くうちに、規格外エピソードがたくさん飛び出してきました。
【スポーツ 50%】
ゴルフ
最近、ゴルフを始めました。誰に教わることもなく、1人で打ちっぱなしに行って、ずっとフルスイングをしているんですけど、本当に楽しい。楽しすぎて止め時がわからなくなり、アバラを2回も疲労骨折しました。「イタッ」ってなったらやっと帰る。それぐらい楽しいんです(笑)。
ゴルフクラブは、まわりの芸人たちは先輩のお古をもらっていることが多いようですが、僕はメルカリで20本1500円のものを買いました。それが思っていたより何倍も古くて、クラブの先が木製だったんです。しかも、その木がちょっと腐っているし、左利き用だった。2本だけ右利き用のものがあったんで、18本は捨てて、そこからまた安いクラブを買い足して、いまでは7本までそろいました。
ノブコブ(平成ノブシコブシ)の吉村崇さんや、おいでやす小田さんに連れて行ってもらう機会があり、この前やっとコースデビューもしました。みなさん、ゴルフバッグを持っているんですけど、僕は布で包んだ7本だけ。だいたいキャディさんに笑われます。
でも、打ちっぱなしでアバラを折るぐらい打ち込んでいたので、飛距離は上手い人よりも出るんですよ。300ヤード以上、余裕で飛びます。吉本では大西ライオンさんがいちばん上手いらしいですけど、飛距離だけなら僕のほうが飛ぶときがありました。でもスコアは130ぐらいなので、まだまだです。
野球
あらゆるエンタメのなかで、いちばん好きなのは野球だと思います。福岡出身なので、子どものころから福岡ソフトバンクホークスのファンで、毎日、試合を見ています。柳田悠岐選手やモイネロ選手、中村晃選手など、みんな好きですね。各球団にもだいたい好きな選手がいて、ホークスの試合以外でも、よく球場に観に行っています。
野球を好きになったきっかけは、母親が、負けたら不機嫌になるほどゴリゴリの巨人ファンだったから。母親が野球好きであることも、福岡なのに巨人ファンというのも、いま考えると珍しいなと思います。
【動物 20%】
猫
実家はアパート暮らしで、本当に貧しかったです。猫が当たり前に出入りしていて、13匹くらいの野良猫と一緒に生活していました。飼っているというか、猫が勝手に入ってくるので、平等な立場でした。
そんな環境で育ったので、猫には愛着があります。大人になってからも1回、公園に小さな野良猫がいたので、かわいそうになって連れて帰ったこともありました。すぐに、逃げて行きましたけど(笑)。いまでは猫カフェにもたまに行っています。
井の頭自然文化園
吉祥寺の井の頭自然文化園(井の頭恩賜公園の一角にある動物園)がお気に入りです。上野動物園は広くて、大きな動物がいますけど、井の頭自然文化園はコンパクトで、かわいらしい小動物がたくさんいます。
井の頭自然文化園に行くと、絶対に見るのはアヒル。意外ときれいなんです。あとはリスやサルも見ます。サル山をじーっと観察して、「こいつはケンカが強いんだな」「こいつは、ぜんぜんご飯を食えてないな」と、関係性をなんとなく想像するのも楽しいです。
僕の早口言葉にも動物が多く登場します。ネタを動物園で考えることもあって、サル山を1人で見ながら「サル、サル、サル、サルが……」とぶつぶつ言っていたりするので、ほかのお客さんからしたらメチャメチャ気持ち悪いと思います。
【YouTube 10%】
基本的に1人で行動するのが好きなので、ソロキャンプにも行きます。そういう理由で、YouTubeでもキャンプ動画をよく観ています。日本人のチャンネルはあまり観ず、海外の方が一言もしゃべらず料理を作っていたり、黙々と作業していたりするものを観ています。
【漫画 10%】
『あかね噺』(原作:末永裕樹 作画:馬上鷹将/集英社 連載中)
週刊少年ジャンプで連載中の『あかね噺』は、落語家のお父さんを尊敬する娘が、父親の意志を受け継いで、落語家として奮闘するストーリーです。
この作品を読んでいると、お客さんの雰囲気を見て喋り方や話題を変えるなど、自分たちのやっているお笑いと通じるところがすごくある。共感もできるし、知らない落語の世界も知ることができるので、すごく面白いです。
『ゴールデンカムイ』(野田サトル/集英社 全31巻)
この作品では、アイヌの人々が登場します。北海道の歴史や文化を知らなかったので、「こういう文化もあるんだ」と知ることができるのが面白いです。
僕は中卒で学がないので、アイヌの話や落語の世界など、触れてこなかった文化を学べるのが漫画のいいところだと思っています。
【美術 10%】
「カッコいい趣味だな」と自分でも思うんですけど、美術館が好きです。カッコいいと思って、後ろに手を組んで絵を観ています。初めのころは「美術館でもっともらしく絵を観ているオレ、いいぞ!」と思いながら観賞していたので、まったく絵が頭に入ってきませんでした(笑)。
僕のフリップ芸は自分で絵を描いていますが、後ろの席の人でも見えるように、めっちゃ太い線で描くんです。でも、美術に興味があるので、本当は鉛筆などで繊細な絵も描いてみたいと思っています。
シュールレアリスム
ダリなどが代表的ですけど、シュールレアリスム(超現実主義)の作品が好きです。現実を超えた、あり得ない構図や発想のすごいものに惹かれる。そのなかでも、ルネ・マグリットの絵は訳がわからなすぎることはなく、それでいて発想が面白いので好きです。今度の単独ライブのポスターも、マグリットの絵からインスピレーションを受けました。
あとは、マグリットが影響を受けたというジョルジョ・デ・キリコも好きです。10年間ぐらい、デ・キリコの『不安を与えるミューズたち』という絵をスマホの待ち受けにしています。
山下清
シュールレアリスムが好きといいながら、最近いちばん感動したのは、『生誕100年 山下清展』です。山下清さんの生涯のエピソードをたどりながら、切り絵や貼り絵を観ていったんですけど、泣いてしまいましたね。過酷な生い立ちにもかかわらず、純朴に絵に打ち込んでいるピュアさが心に刺さりました。真っ直ぐなしゃれっ気なしの絵で、花火の絵なんかはすごく綺麗だと思いました。
まだまだある大谷を構成するエンタメ成分は…
【カラオケ】
音楽は疎いんですけど、カラオケは好きです。特によく歌うのは中島みゆきさん。ドラマ『家なき子』の主題歌だった『空と君のあいだに』や、『ファイト!』などが好きです。この間、大阪で開催されていた『中島みゆき展』も行きましたけど、良かったです。本当に“言葉の人”だと思いました。
あとは、X JAPANも好きです。時代をつくった人たちって古くならないから、当時の映像をいま見てもカッコいい。『Silent Jealousy』『WEEK END』『DAHLIA』などをよく歌います。
【ブルース・リー】
小学生のときに、人生で最初に好きになった人がブルース・リーです。『燃えよドラゴン』を観て、筋肉や俊敏さ、それとあまり体が大きくないところにも憧れました。母親に本物の硬い木のヌンチャクを買ってもらって、中学生ぐらいまで練習していましたね。当時はけっこう上手にできましたし、いま思えば、顔も少し似ていた気がします。
ブルース・リーが映画のなかで「相手と挨拶するときは目を離すな」と言っていたのに影響されて、芸人になりたてのころは「どうもありがとうございました~」と言うときも、頭を下げずに挨拶していました。
【気になるネットニュース】
やっぱりロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手が達成した「43-43」(ホームラン43本、盗塁43回)のニュースですね。大谷選手はいま、いちばんカッコいいと思う人ですし、同じ苗字ということで勝手に親近感を持っています。不可能を可能にしてきた人なので、「50-50」も達成するんじゃないかと思います。
「大谷選手がホームランを打ったら、1本ネタをつくる」というマイルールもつくったんです。でも、正直に言うと、今年はホームランのペースに追いつけず、序盤で大差をつけられて数えるのを辞めました。大谷選手は6月に強いんですけど、僕はそのころにスランプになったので、気持ちが折れましたね(笑)。
【お笑い・バラエティー】
子どものころに影響を受けたのは、ふつうですけどダウンタウンさんです。『ごっつええ感じ』や『ガキの使いやあらへんで!』を観ていました。あとはナインティナインの岡村隆史さんにも憧れました。小さいのにダンスもめっちゃカッコよくて、本当に大好きでした。
「大谷健太20周年単独ライブ『絵心』」
今年は芸歴20周年を迎え、お笑い芸人として成人を迎えます。その節目となる単独ライブは、自分がやりたいことを全部やりつつ、観にきてくださる方にも楽しんでもらえる円満なものにしたい。センスを見せつけるとかではなく、気楽に肩ひじを張らずに楽しめる、大人なライブにしようと思います。
フリップ芸は、たくさんのフリップを用意してひたすらめくる予定です。とんでもない紙の量になるので、ちょっと自然には申し訳ないと思っています。ほかにも、コントネタや歌ネタなどを盛り込む可能性もあります。
20年、お笑いを辞めずに続けてきてよかったと思えるような、お客さんも来てよかったと思えるようなライブにしますので、ぜひ観に来てほしいです!
公演概要
大谷健太20周年単独ライブ「絵心」
日時:9月8日(日) 開場17:40 開演18:00
場所:ヨシモト∞ホール
出演:大谷健太
チケット:前売2000円 配信1200円
FANYチケット(会場)はこちらから。
FANYオンラインチケット(配信)はこちらから。