THE SECONDベスト4に4年ぶり単独ライブと躍進続くタモンズ…自身がモデルの映画『くすぶりの狂騒曲』は「いろんなミラクルがあった」

今年5月の『THE SECOND~漫才トーナメント~2024』でベスト4となり、爪痕を残したタモンズ(大波康平、安部浩章)。彼らを主人公に芸人ユニット「大宮セブン」の軌跡を描いた映画『くすぶりの狂騒曲』は、12月13日(金)からの公開を控えています。今年、飛躍を果たしたタモンズに、今回の映画や来年1月22日(水)に4年ぶりに行う単独ライブへの思い、そして“くすぶり”ながらも前を向き続けてきた芸人人生をじっくり語ってもらいました。

出典: FANY マガジン
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「今回はけっこうガツンと新ネタ」

――俳優の和田正人さんと駒木根隆介さんがおふたりの役を演じる映画『くすぶりの狂騒曲』はもうすぐ公開、そして、来年1月には東京の座・高円寺2で4年ぶりの単独ライブ「DEADSTOCK」開催と、話題が続いていますね。

大波 僕らは毎月単独ライブというか、「60分ノンストップ漫才」を披露する『詩芸』というツアーを、クラウドファンディングでおカネを集めて全国各地で開催していまして。なので、4年ぶりっていう感覚でもないんですけど。ただ、コントもやって、幕間のVTRも撮ってという、いわゆる“エンタメ色に富んだ単独ライブ”という意味では4年ぶりになります。

安部 そうなんです。自分たちのなかではずっと漫才をやっているので、4年ぶりでもなんでもない感覚なんですけど、“派手”な単独ライブという意味では久しぶりっていうことで。

――派手といえば、このポスターがまさにおカネかかっているなという感じがしました。

大波 そうなんですよ! おカネかかってます! 実際のお店で衣装を着て撮影しました。今回のライブのタイトル「デッドストック」は“売れ残り”という意味です。僕が古着にハマっていて、古着の世界ではデッドストックは売れ残りだけど価値がある。まさに僕らにこうバッチリ刺さる言葉だなと。それでタイトルにしたんです。

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安部 僕は新ネタをするのが楽しみですね。1つのネタをのりこなすのに僕は時間がかかるタイプで、いまあるネタをどんだけ強くできるかというのをここ数年はやってきたので。今回はけっこうガツンと新ネタ作ると思うので。

――その新ネタというのは、来年の『THE SECOND』も見据えてなんですか?

大波 『THE SECOND』のことを考えてというよりも、単独ライブというかたちで、いまの自分たちがお客さんをエンタメ的に楽しませる構成を考えてみたら、コントあり、VTRあり、新ネタありという形になったということです。光と音とプロジェクションマッピングと!

安部 いや、予算だいじょうぶなんですか!?

大波 プロジェクションマッピングはちょっと言い過ぎましたけど(笑)。でも、こういう単独ライブをやらせてもらえるっていうことに関しては、今年の『THE SECOND』のファイナル進出は大きいと思います。

『THE SECOND』は囲碁将棋と決勝で戦うのがゴール

大波 『THE SECOND』自体は昨年も今年も、大会があると聞いて僕らはすぐに「出ます!」と手を挙げたんです。大会があるなら出ない理由がないかなと。1回目の予選会は、会場もよくわからない、あんまりやったことのないような会場で。お客さんは満席だったんですけど。

安部 囲碁将棋(文田大介、根建太一)さんのあとに僕らが出番だったんですけど、ネタが終わって戻ってきた文田さんに「たぶんお前ら今日、絶対大丈夫だよ」と言われて。そのくらいお客さんウェルカムというか、あたたかいよという意味だったんですけど。

出典: FANY マガジン
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大波 実際にその言葉通り、挨拶したあとも拍手が止まらなくて、ネタが始められないぐらいのあたたかさで。ネタの持ち時間もあるから、早く拍手終えてくれないかなと思ったくらいでした(笑)。

安部 去年の1回目の『THE SECOND』は、32組に絞られたノックアウトステージで三四郎さんに負けてしまった。そこで負けたのが、僕は悔しかったんですよね。すごいウェルカムだった予選会と、空気も全然違って。わりと名の知れた人たちと戦うとなると、僕らは当時、「誰やねん」みたいな感じだったんじゃないかと。それもあって、悔しかった。だから、2024年も大会あるなら出ようかと。

大波 三四郎さんとやったとき、名前が知られている人とやるとこういう感じになるんだなというのが経験としてできたので、その後、「60分ノンストップ漫才」のライブで全国まわるなら、次の『THE SECOND』を意識してまわってみようかとなったんです。たぶんそれもあって、2024年の決勝という結果につながったのかなと。

安部 2024年は決勝に行けて、決勝って全然ちゃうんやなって思いましたね。「よかったね」という声をいっぱいいただけましたし、楽屋のケータリングとかも露店みたいなんがあって、その場でフランクフルト焼いてくれたり、ハーゲンダッツがいっぱいあったり(笑)。打ち上げも焼肉屋さんやし、これは絶対にファイナリスト8組には入らなと思いました(笑)。

――2023年ではそれこそ大宮セブンの仲間である囲碁将棋さんがベスト4という、熱い戦いでした。それを見てどういう気持ちでしたか?

大波 単純にうれしかったですね。僕は最終的に『THE SECOND』の決勝で僕らと囲碁将棋さんが並ぶという状況になったらゴールかなって勝手に思ってるんですけど。

『THE SECOND』の舞台袖って芸人がすごく応援できるんですよ。枠を争うのではなく、トーナメント戦だから。そういう安心感みたいなのはありました。

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風向きが変わり始めた「60分漫才」挑戦

大波 でも、考えてみると、2023年の選考会に出たときの、あのときの感じがわけわからなくて。三四郎さんに負けたんだけど、なんとなくあの大会をきっかけに、急に追い風が吹いてきた感じもあって。そこから1年間、「60分漫才」で全国をまわって、なにか結果が出たとかではないんですけど、2024年に出場したときになにかにつながった気がしました。

――「60分漫才」をクラファンしてまでやってみようと思ったのはなぜですか?

大波 僕らはずっと何をやるにも、「集客」の問題がつきまとってきたんです。ライブやるにしても、いつも最終的に集客で終わってしまう。でも、そのあたりが変わり始めたのがその2023年のあとに感じた追い風のあたりからで。全国まわりたいけど、僕らの知名度では無理かとなったんですけど、クラウドファンディングをやってみたら、応援してくださる方が出始めて。結局、それで実現できたんです。

安部 配信が入ったことで、関東に住んでいなくてもタモンズを見てくれる人が出て来た感じはありました。なんだろう、環境が変わり始めた感じでしたね。

大波 でも、よくよく考えてみると変わり始めたのって、僕たちのM-1ラストイヤー(2021年)の前年で。やっぱり2人でやっていこうとなったときに、もう1回、漫才に向き合うようになって。映画『くすぶりの狂騒曲』でも描かれてましたけど、体感としてはそのあたりから変わり始めたんじゃないかなと。まぁM-1には間に合わなかったんですけど。

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映画化の理由は「いちばんくすぶってたから」

――『THE SECOND』で決勝戦に行き、その流れで自分たちの話が映画化されるってすごい流れだと思うんですが、どういう経緯だったんですか。

安部 『THE SECOND』の前から映画の話はあって。最初に話がきたのはだいぶ前。 「大宮セブンで映画が作りたいけど、ただのサクセスストーリーではなく、お笑い芸人で夢を持っているやつの現実みたいなものを描きたい」と、最初にプロデューサーの方に言われたんです。

僕は「最後もうまくいかないまま終わりたい」ということを言ってたので、なんなら、『THE SECOND』の決勝戦がなかったほうが映画的にはよかったのかもしれないんですけど(笑)。その当時、いちばんくすぶってたのがタモンズだったから、僕らが中心の話になったということなんですけど。

大波 でも、いろんなミラクルがあって。4月の沖縄国際映画祭で初めて先行上映したタイミングと、僕らが『THE SECOND』のノックアウトステージでダブルアートと戦って決勝に行けるとなったのが同じ日の同じ時間やったんです。

それで、主演の和田正人さんが舞台挨拶をしている最中に、スタッフさんが入ってきて「決勝決まりました!」と伝えて盛り上がったという話も聞いて。ある意味でいろいろと出来すぎてて、「これ来年、絶対に予選で負けるっていうフラグだな」と思うほどなんですけど(笑)。

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――そこも含めて、まさに映画みたいな話ですね。映画もすごく面白かったんですが、どこまでがフィクションで、どこまでが本当なんだろうっていうのが気になりました。

安部 囲碁将棋の根建さんが、ラストのほうで僕にいろいろ言ってくれるシーンがあるんですけど、あれはホンマに言うてました。あと、僕の奥さんの感じとかもほんまです。実際の映像を使ったんやないかなっていうほどで。

――大宮セブンを演じている俳優さんたちも、見た目でなく、言い方や佇まいみたいところが「似てる!」と思いました。

大波 主演の和田さんに聞いたら、役者さんたちは逆に似せないようにしようと話していたらしくて。つまり、モノマネになってしまうとよくないから、役に入ればおのずと似てくるはずと。だから、俳優さんならではの高度な技ですよね。

ただ、僕らを題材に映画にしてもらいまして、いろいろよかったよと言っていただけたりするんですけど、正直、僕らは何もしていないので(笑)。

安部 自分たちの話だけど、「どうですか?」と聞かれても、僕らは何もしてないので何とも答えようが難しくて困るという。役者さんたちはすごくて、「最高でした」と言いたいけど、それって自分たちのことを最高と言っているような感じでもあるし。言いづらいところはあります。

M-1ラストイヤー後の目標は「お客さんのため」

――M-1含めてなかなか結果が出なくても、そこでクサクサせず、しかも、そのあとにもクラウドファンディングしてまで自分たちで全国まわってみようとするのはすごいと思います。

安部 映画でも描かれてましたけど、僕らもやめそうなタイミングめっちゃあったんです。M-1ラストイヤーが終わったときは、目標を一瞬、見失った時間もあったんです。しかも、まだ『THE SECOND』もできる前で。そんなときに、ある吉本の社員さんから「漫才で寄席に呼ばれる芸人になりなさい」と言われたんです。

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大波 M-1までは、けっこう自分のためにやってたところがあって。自分たちの面白さを表現するためにというか。でも、それこそM-1ラストイヤーの少し前ぐらいから、目の前のお客さんを楽しませるためにってなっていったんですよね。「お客さんのために」という続ける理由ができたというか。

M-1とかテレビとかに合わすのではなく、お客さんがおカネを払って見に来てくれるなら、お客さんのために全力で頑張ろうと。お客さんが喜んでくれるなら、お笑いは続けられるんだなと意識をシフトできた。不思議なもので、そうなったら給料も出番もどんどん増えていったんですよね。

――では、最後に単独ライブへの意気込みとメッセージをお願いします!

大波 いままでのタモンズとはちょっと違う感じの単独ライブになると思うので、ぜひ1月22日は一緒に楽しみたいなと思います。今回、この単独ライブで初めて新しい衣装を披露することになっているんで。そこも楽しみにしてもらいたいです。

安部 今回の単独ライブの会場は高円寺なんですけど、いい飲み屋さんも多いんですよね。このポスターを撮ったのは阿佐ヶ谷のお店なんですけど、単独ライブ前にこのお店を見物して、ちょっと気持ち高めてから公演にきてもらって、楽しんだあとに高円寺の居酒屋でしめていただけると、とてもよい1日になると思いますので!

公演概要

■タモンズ単独ライブ「DEADSTOCK」
日時:2025年1月22日(水)18:15開場/19:00開演
会場:座・高円寺2(杉並区高円寺北2-1⁻2)
出演:タモンズ
チケット:前売4,000円/当日4,500円
※11月23日(土)10:00から一般発売
※本公演はオンライン配信を予定しています。

FANYチケット(会場)はこちらから。
FANY Online Ticket(配信)はこちらから。

■タモンズ寄席『多聞会すぺしゃる』
日時:2024年12月12日(木)19:30開場/20:00開演
会場:東京・紀伊國屋ホール
出演:タモンズ、ゲスト:ナイツ
チケット:前売4,000円/当日4,500円

FANYチケット(会場)はこちらから。

映画概要

『くすぶりの狂騒曲』
公開日:2024年12月13日(金)より新宿バルト9、イオンシネマほか全国ロードショー
出演:和田正人 駒木根隆介 辻凪子 土屋佑壱 永瀬未留 / 徳井義実(チュートリアル) 岡田義徳ほか
監督:立川晋輔
脚本:中村元樹
主題歌:河口恭吾「悪い恋人」(よしもとミュージック/ミラクル・バス)
配給:イオンエンターテイメント 吉本興業

公式サイトはこちらから。

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