2024年度(令和6年度)の重要無形文化財保持者、いわゆる「人間国宝」に認定された浪曲師の二代目京山幸枝若(こうしわか)が12月12日(木)、20年ぶりに大阪・なんばグランド花月(NGK)の本公演に出演しました。浪曲師としての人間国宝認定は史上初、吉本興業所属芸人の認定も初という快挙。舞台では「六代目横綱 阿武松緑之助」を披露し、円熟した名人芸で観客を魅了しました。
モニターに映し出された「人間国宝」の4文字
冒頭、NGKのモニターに「人間国宝」の4文字が映し出されると、満席の会場からは「おお~」という声が上がりました。
高座に上がり、「浪曲を聞いたことがないという人?」と語り掛ける幸枝若。少なくはない人数の手が挙がると、少し驚いたようなリアクションをしつつ、穏やかな笑みを浮かべて、このたび晴れて人間国宝に認定されたことを報告。観客からは大きな拍手が沸き起こりました。
幸枝若のNGKでの浪曲披露は、2004年5月8日の「二代目京山幸枝若襲名記念興行」以来、実に約20年ぶりです。この日、選んだネタは「六代目横綱 阿武松緑之助」。石川県は能登半島に位置する七尾市出身の力士の一代記を描いた一席です。紙垂のついた回しの絵柄が施されたテーブル掛けも、ネタに合わせてチョイスしています。
幸枝若は親しみのある穏やかな語り口で、大飯食らいという理由で力士の世界に飛び込んだ男の半生を語ると、観客も引き込まれて聞き入ります。男が因縁の相手と一戦を繰り広げんとする展開では、緊迫した場面を三味線の音色に乗せた節(浪曲の歌の部分)で情感豊かに描写し、物語はさらに盛り上がっていきました。
浪曲初鑑賞が多い観客に「かえって新鮮な感じ」
そして、もっとも続きが気になるクライマックスの場面に差し掛かったところで、幸枝若は「ちょうど時間となりました~、この続きはまた今度~」と、浪曲ではおなじみの節回しでお話は未完のまま終了。
すっかり聞き入っていた観客からは「ええ~」という驚きと、不意を突かれて思わず笑いが巻き起こっていました。
舞台を終えた幸枝若に20年ぶりのNGK出番を終えた感想を聞くと、こう話しました。
「NGKの舞台は20年前と変わっていませんので、懐かしいなぁ、こうやったなって思っていましたね。ネタを『六代目横綱 阿武松緑之助』にしたのは、このネタは、噺のどこからでも切れるからです(笑)。出番時間に合わせて口演できる便利なネタなんですよ。今日はほぼ浪曲は初めてというお客さんの前での高座でしたが、かえって新鮮な感じがしまして、すごく気持ちよかったです」
来年2月28日(金)には、人間国宝認定の記念公演を大阪・なんばグランド花月で開催します。構成は目下企画中とのことですが、にぎやかな舞台になりそうです。