『NHK新人落語大賞』優勝の桂三実が創作落語“100作目”披露! 「いいことなかったけど、終わりよければすべてよし!」

いま乗りに乗っている若手落語家の桂三実が、創作落語100作到達独演会『少年のジャンプ』を、12月11日(水)に大阪・天満天神繁昌亭で開催しました。三実は大勢のファンを前に、初出しとなる100作目『少年のジャンプ』を含めた三席を口演。桂三度、桂九ノ一をゲストに、終演後にはインタビューに応じてくれました。

出典: FANY マガジン
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「2024年の桂三実はエグかった」

名古屋出身の三実は、2012年に桂三枝(現:六代 桂文枝)に入門。今年10月の『NHK新人落語大賞』では、早口言葉を連発する創作落語『早口言葉が邪魔をする』で栄冠を手にしました。また、12月5日(木)には『第19回繁昌亭大賞』奨励賞も受賞しています。

開演とともに、ハンドマイクを手に舞台へ現れた三実。観客から「おめでとう!」の声がかかるなか、三実は新作『少年のジャンプ』が、初出しであることを力説します。また受賞ラッシュについて、「お祝いが一度にまとめられるのでは」と危惧して笑わせました。

独演会は、三実の創作小噺からスタート。これでもかと繰り出される小噺で、会場を笑いの渦に巻き込みます。

出典: FANY マガジン
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続いて登場した桂九ノ一は、三実とともに自身も出場していた『NHK新人落語大賞』のエピソードをマクラに。「出るだけでも難しいんですよ」と客席に訴えながら、『厩火事』を披露。しっかり者の女房とぐうたらな亭主の夫婦喧嘩をイキイキと演じました。

再び登場した三実は、三度と九ノ一との交流を紹介したあと、『ワンワン』を口演。しゃべり始めたばかりの子どもと父親の会話に、さまざまな擬音語、擬態語が散りばめられた、ほっこりコミカルな噺です。

続いて登場したのは三実の兄弟子である桂三度です。三実が『NHK新人落語大賞』で優勝した際に号泣したと暴露された三度は、「三実が『NHK』を獲ったときに泣いた男です」と挨拶します。そして「2024年の桂三実はエグかった」と称えつつ、自身がその才能を早くから見抜いていたと自慢も!? 披露した創作落語『AM/FM』では、飲み屋で繰り広げられるFM局DJの会話で爆笑をさらいました。

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100作目は「3割から4割が実体験」

中入り後は、ついに“100作目”のお目見えです。大きな拍手に迎えられた三実は、「師匠のおかげで、いまここに立たせていただけている」と文枝にあらためて感謝。史上初の“ワンクリック入門”だった弟子入り秘話に始まり、落語にハマったきっかけや入門を決意させてくれた文枝(当時は三枝)の創作落語、はたまたコロナ禍に始まった一門のグループラインまで、さまざまな話題をマクラに「3割から4割は実体験」という『少年のジャンプ』へと入ります。

やる気のない帰宅部の高校生が、ふとしたきっかけで演芸場に足を運び、そこで出会った落語の魅力にとりつかれる──。まさに三実の自伝的ストーリーとも言え、生い立ちや趣味趣向はもちろん、弟子生活のあれこれも「想像やけどな」と前置きしながら大放出! 

出典: FANY マガジン
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最後の最後まで観客を引きつける展開で、たっぷりと聴かせます。サゲとともに舞台が暗転すると、チャットモンチーの曲『少年のジャンプ』が流れ始め、三実の“あのころと今”に重なる歌詞がまるでエンドロールのようにスクリーンに映し出されました。

締めくくりは三実の三席目。『少年のジャンプ』にもさわりが登場した、入門のきっかけとなった桂三枝作の『鯛』です。いけすの魚たちが織りなす、おかしくもせつない物語で、ここでも大きな笑いと拍手を起こしました。

「10月後半からグイッと巻き返した」

独演会を終えたばかりの三実が、ファニマガのインタビューに答えてくれました。

──記念すべき100作目を披露した、いまの心境を聞かせてください。

早くビールが飲みたいです(笑)。ほんまのズルなし、1回目だったので、「ちゃうなあ、ちゃうなあ」みたいに思いながらやっていました。早くもう1回やってみたいですね。

──節目となる100作目は、三実さんの半生記という趣でしたね。

ほぼほぼ実話ですからね。『エンタの神様』のところとかは、ほんまの話です。

出典: FANY マガジン
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──お客さんの反応はどうでしたか?

ここで笑いのポイントやな、みたいなのを作ってたんですけど、正直なところ、思ったより(笑いが)なくて……。なので、そこを変えたいなと思いながらやってました。お客さんからの感想がまだわからないんで、SNSとかであとで見て楽しみます。いやぁ、ここでやるのは7回目ぐらいがよかったですね(笑)。

──今日披露した『鯛』は、本当に三実さんが落語家を志すきっかけになった噺なんですよね。

そうなんですよ。落語(『少年のジャンプ』)のなかでは“舞台とお客さん”だったんですけど、実際はテレビで見て「うわあ、面白いなあ!」って思って、そこから師匠に興味を持つようになりました。

──『少年のジャンプ』に登場した『鯛』が、続きでそのまま演じられるという趣向も新鮮でした。

通じるようにしました。いい会にしようとしました(笑)。

──今年は『NHK新人落語大賞』と『繁昌亭大賞』奨励賞を続けざまに受賞して変化はありましたか?

いちばんは、後輩のLINEの返信が早くなったということです(笑)。あとは行く現場、行く現場で「おめでとうございます」と言っていただいたり、「こんなお仕事させていただけるんだ」みたいなのがあって……。『笑点』の“若手大喜利”とか、よしもと祇園花月の本出番でオール阪神・巨人師匠とかの中で出させていただく機会が増えました。それは優勝してなかったらできなかったこと。いままでできなかった仕事ができてることが、いちばんうれしいですね。大変なんですけど、やっぱり経験値になります。

出典: FANY マガジン
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──2024年を振り返ってみて、どんな年でしたか?

ほんまに10月までいいことがなかったんです。お祓いにも行きましたし、「なんでこんなことになるねん」みたいなのが続いて。8月も7連休と8連休があって、もうやめようかな、向いてないなみたいなことを思ってたんですけど、10月後半からグイッと巻き返したっていう。終わりよければすべてよしという、まさにそれになりました。

──100作到達して、次の目標はなんですか?

次は、ちょっと長い創作落語を。いままではコンテスト用の10分ぐらいのしかなかったし、今日のところも15分ぐらいなんで、最後の師匠の『鯛』のように20分ぐらい引き付けられる落語を作れるようにしたいですね。トリをとれるようなネタを作りたいです。

──最後に、2025年はどんな年にしたいですか?

繁昌亭にお客さんを呼べるようにしたいですね。「三実さんきっかけで……」という方が1人でもいたらありがたいです。

出典: FANY マガジン
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