結成12年目のマグリット(サバイバルダンス大地、おふらんす田中)が、大阪・よしもと漫才劇場(マンゲキ)で12月8日(日)に行われたグランドバトルで総合3位に入り、マンゲキのレギュラーである極メンバー入りを果たしました。グランドバトル史上過去最多である10回目の挑戦の末に、ようやく果たした昇格。2人のこれまで、そしてこれからについて、存分に語ってもらいました。
喜びよりも「ホッとした、よかったぁ」
グランドバトルは、マンゲキ所属・芸歴9年目以上の極メンバーが総出演して2カ月に1回、1日がかりで行われるネタバトル。審査員と観客の投票で順位が決定します。
そして、マンゲキ昇格を狙う若手芸人らのオーディションライブ「UP TO YOU!」から勝ち上がってきた選抜メンバーが総合10位以内に入った場合、極メンバーとして「よしもと漫才劇場」のレギュラーへ昇格できるため、若手芸人の登竜門ともなっています。今回、マグリットは3部構成の第3部で1位に輝き、総合3位で悲願の極メンバー入りを果たしました。
──マンゲキメンバー入り、おめでとうございます。決まったときの気持ちを聞かせてください
おふらんす田中(以下、田中) もう10回目やったんで、僕らがマンゲキの最多記録なんですよ。いままでの最多が8回の鬼としみちゃむ(しみちゃむ、鬼沢さん)なんですが、それを2回も上回ってるんで、もうあとがないっていうのがあって。もうホッとしたという感じでしたね。
サバイバルダンス大地(以下、大地) 最多ってだけじゃなくて、去年12月からまる1年間、7回連続で出てましたからね。
田中 これも僕たち記録で(笑)。芸人もお客さんもスタッフさんも、もう全員が「がんばって〜、がんばって〜」って、みんながお母さんみたいな感じ。それはホンマありがたかったです。
大地 だから、「よっしゃ」ってガッツポーズよりも、「ホッとした、よかったぁ」っていう。
──まわりの芸人さんの反応も?
田中 よかったなぁっていうのがすごかったです、ありがたかったです。
──その晩はどうやって過ごしましたか?
田中 同期の超速バギー(ハマムラ、アキラ、明里洋輔)が前回、昇格してるんですよ。それでハマムラが「飲みに行こ!」って感じで誘ってくれて、大地と3人で飲みに行きました。
──前回、超速バギーさんに先を越されたときは焦りましたか?
田中 悔しいな〜っていうのと、置いていかれたっていうので、どうしようって。相方からすると先輩になるんで、ふつうやったらすぐ「おめでとうございます」って連絡するじゃないですか。でも相方もテンパってしまって、そのまま日にちが過ぎて、連絡できず。それくらい僕らは追い込まれました。
大地 ちゃんと怒られました。「先輩にはちゃんと、おめでとうございますは言いなさい」って、ありがたいお言葉をいただきました。
田中 2人ともがテンパってしまってたと思います。何日かあとには、もう切り替えてたんで「置いていかんといてくれ〜!」って抱きつきました。
──今回、超速バギーの皆さんの反応はどうでしたか?
田中 めっちゃ喜んでくれました。ちゃんと、おめでとうって言ってくれましたね。
──飲みの席では「よっしゃー!」ってなったんですか?
田中 僕は前夜、張り詰めすぎてて寝てなかったんですよ(笑)。だから酔いが本気で回ってしまって。
大地 真っ赤でしたもんね。
田中 すぐ真っ赤になりましたねぇ。ホンマに実感が湧いたのは2日後。グランドバトルに出るための登竜門イベントの「UP TO YOU!」っていうのがあって、次の日程も決まってたんですが、それ出なくていいですよ、って言われたときに、「やったぁ〜」って。このときに初めて「うれし!」ってなりました(笑)。
大地 マネージャーからメールで「晴れて卒業です」って来て、それ見て、ああよかったって。
田中 実感が湧きましたね。
突然消えた大地がガリガリに痩せて再登場
──いまコンビは何年目なんですか?
大地 結成して12年目ですね。
田中 僕はNSC(吉本総合芸能学院)を卒業したあと、おふらんすってコンビを組んでたんですよ。それを解散して、相方(大地)と組んでマグリットになったんです。
大地 僕もNSCのときに別のコンビを組んでたんですけど、すぐ解散しちゃって、それからはピンでやってました。だから、これだけがっつり組んでるコンビは初めてです。
──コンビ結成のきっかけは?
田中 2010年ごろ、前のコンビのときに若手のオーディションの1次予選を通ったんです。そこにいまの相方もピンで勝ち上がってきてたんですけど、まわりは売れてるメンバーばっかりで、お互い居場所がなくて。「ないよな」ってちょっと仲良くなったんです。で、僕はそのあと解散して、相方は消えたんです
──消えた!?
大地 当時、まだNSC卒業してすぐで「あ、意外とピンで合格できるんや」ってヘンに自信がついちゃって。なんか、ゆっくりしちゃったというか。そこからお笑いの舞台からどんどん離れちゃって、バイトの日々でした。2年間くらい「来月がんばろ、来月がんばろ」って24回続いて。
田中 僕もその間にコンビ解散しちゃって。それで、ある日ライブにガリガリになった相方が僕の前に現れたんです。知り合ったオーディションのときはめっちゃ太ってたのに。
大地 ぽっちゃりしてました。
田中 僕の前にいきなり現れて「覚えてますか」って言うたんです。「え!? 大地?」ってなって、ご飯に行って。そこから「もう1回、復活したいんです」ってことで、それやったらピンで出ようやってなって、僕もピンやったんで、「組もか」です。
大地 2年間バイトばっかりで、さすがに重い腰上げないと、と思って。ただ勇気はないんで、お笑いライブをお客さんとして見に行こうって。行ったところでたまたま「あ、あのときの田中さんや!」ってなって、出待ちして(笑)。
田中 ガリッガリに痩せて、出待ちしてました。
──痩せたのはなぜなんですか?
大地 もうバイトばっかりで毎日楽しくないし、心もいっしょにやせ細っていく感じで。で、出待ちさせていただいて、声かけて、そこからお笑いの活動をもう1回がんばろうってことで結成した感じです。
誘われるのをじっと待っていた大地
──その出待ちから結成まではどれくらいだったんですか?
田中 もう2、3カ月の話ですね。僕が違う人と組むかも、みたいになってたんです。その話をしたとき、大地の顔がキッ!ってなったんで(笑)。
大地 なってました!?
田中 ちょっとユニットでやってたんですけど、思いのほか、うまくいかなくて。だから電話して「あのときキッ!ってなってたから、なんか思ってくれてるかな」っ言ったら、すぐ来ました! 速かったっす。
大地 これたぶん、初めて言うと思うんですけど、僕はずっと組みたいなって思ってたんですよ。でも、それよりもすごく仲良くさせていただいてて。だから、告白みたいな感じじゃないですか、もし僕が組みたいですって言って断られたときに、いままでの仲いい感じが崩れちゃうのがいやだったんで、僕はずっと待とう、待とうで。
一同 (笑)
大地 もし声かけてくれなかったら、そのときは諦めようって思ってたんで。だから着信鳴ったときに、やったー!ってすぐ出ました。
田中 すごい覚えてます。
──それがいつごろの話なんですか?
大地 2013年の5月5日ですね。
──すごく覚えてる!
大地 日曜日でしたね(笑)。
田中 マクドナルドでしたね(笑)。
お互いが補完し合ういいコンビ!
──お互いの思う、相方のいいところはどんなところでしょうか?
田中 僕のわがままな部分にも即座にパンッ!と合わせてくれるところ。それと、いろんな絵を描いたり、小道具作ったりっていう頼もしいところがあるんで。コントの小道具も全部作ってもらってます。そこはすごいと思いますね。
大地 ネタづくりを担当してくださっていて、そこがめっちゃ頼もしくて。なんかサラッと「いまもうネタ3本作ったから」とか。絶対自分では思いつかへんなと思いますし、お客さんの前でやってどんな感じでウケる、というイメージがちゃんと頭のなかにあるんです。だから言われた通りやったら「あ、ウケる」みたいな。すごいな〜ってところがあります。
田中 あと、平場になったときの勇気が大地はすごい。僕はちょっと考えすぎて「いまは違う」とか思ってるところを、考えずにもうブワーッ!っていくんで。そこをみんなに愛されて盛り上げられるのは才能かなって思いますね。僕ができない部分を補ってくれてるところはめっちゃあります。
マンゲキで「あのフカフカのソファに腰掛けたい」
──マンゲキのレギュラーメンバーになって、これからやってみたいことは?
田中 お笑い的なこととはまた別で、楽屋でみんなと仲良くしたい。いままでマンゲキのメンバーたちとあまり絡むことがなかったんで、楽屋で一緒にしゃべったり、ゴハン行ったりとか、まずそこから。僕が圧倒的に先輩になっちゃうけど、後輩のほうが経験値が高いから、そこは教えてもらいながら仲良くなっていきたいって考えてますね。
大地 マンゲキの楽屋というか、みんなが溜まるところにソファが置いてあって、劇場メンバーが座ってるんです。僕たち、いままでマンゲキに行っても「UP TO YOU!」組だったんで、あのソファに腰掛けたことがない。みんなすごくリラックスして座ってるのを「ああ、いいな〜」って見ながらいつも立ってたので。そこに1回、心置きなく「よいしょ」っと、どれくらいフカフカかお尻で確かめてみたい。
田中 お笑い的にはマンゲキのスタッフさんは超一流やと思うんです。そのなかでネタができるっていうのはめっちゃうれしいんで、とにかく出番を増やしたいですね。ちゃんと出番をもらえる、っていうのが目標ですね。
──いままで漫才とコントの割合はどうだったんですか?
田中 M-1の時期だけ漫才をするって感じですね。でも、これから漫才にも力入れていきたいんです。腹くくってますし、なんでもします(笑)。
──来年2025年はこうなりたいというイメージはありますか?
田中 僕らはこれまで劇場メンバーに入るためにグランドバトルに挑んでて、今回入らせてもらった。次、2月に僕らは出られるんですけど、今度は劇場メンバーとして10位以内に入れるんやっていうのを皆さんに見せたいです。もちろん1位を目指しますが、ちゃんと10位以内に入って、仕事いっぱいもらうっていうのが1年の目標です。
大地 マンゲキのお客さんが入ってくるロビーの上のところに、たとえばグランドバトルで総合優勝したり、賞レースで決勝に行った、優勝した人たちのパネルがあるじゃないですか。あそこに一緒に飾られたいっていうのが、僕は昔からずっと憧れで。
田中 これは話があって、「関西演芸しゃべくり話芸大賞」っていう賞レースがあるんです。関西の若手300組くらいがオーディションに出て、決勝に10組が選ばれる。そこで僕ら今年選ばれてるんですよ。マンゲキでは選ばれたらパネル作ってもらえるんですけど、僕らマンゲキのメンバーじゃないんで、なかったんです。
大地 マンゲキのXアカウントが「決勝メンバー発表!」みたいな感じで、劇場メンバーからは誰々、誰々って出したときも、僕たちはやっぱり載ってなかった。だから、今年は絶対あれに載りたいです。
──将来の夢、目標はどうですか?
田中 まずはお笑いで生活できることが大前提で、やっぱりネタがおもしろいって思われたい。だから定期的にライブができたらいいなって思ってますね。それが評価につながっていくような芸人さんになりたいです。
──キングオブコント獲るぞ! みたいなのは?
田中 それはもうキングオブコントはめっちゃ狙ってます。憧れが強いです。
──M-1とキングオブコントならキングオブコント?
田中 ここ……難しいんよね(笑)。
大地 難しいとこですね、リアルなところで(笑)。
田中 M-1のほうが弾けるんかなと思うんですけど……僕は、M-1を獲りたいです!
一同 (笑)
田中 年齢も重ねちゃって、僕、いま41歳なんです。ちょっとやっぱり弾けたいですね。
憧れの舞台は『アメト──ク!』とプロレス中継
大地 僕もネタでがんばってっていうのと、ちっちゃいころからテレビっ子でブラウン管のなかの華やかな世界に僕も入りたいっていうのがすごくあった。だからバラエティ番組のひな壇のようなきらびやかなところに入って、僕がしゃべったことがギザギザのテロップになって、赤字でボーンと出たりとか。そういう世界でお仕事できて、生活ができるってところに、憧れがすごくあります。
──じゃあ、いまいちばん出たいテレビ番組は?
大地 いまの話をしながら思い描いてたのは『アメトーーク!』のスタジオでしたね。1回は出とかんとっていう。
田中 僕がパッと浮かんだのはバラエティじゃなくて『ワールドプロレスリング』のゲストとか。プロレスが異常に好きなんで。たまに好きな芸能人さんとか芸人さんが実況の横とかにおるのを見て、あそこに出られたら1個夢かなったなって(笑)。『アメトーーク!』のプロレス芸人とかも、めっちゃ憧れました。「いいな〜!」って、オレも知ってるっていうの、めっちゃありましたもん。
──最後に、ファンへのメッセージをお願いします
大地 グランドバトルに何回も負けて心折れそうなときも、がんばってねとか、おもしろかったですって言葉が、めちゃくちゃ支えになったんで、これからは劇場メンバーとして活躍する姿を見せて、恩返しさせていただきたい。芸人という職業は、がんばればがんばるほど笑顔になっていただけると思うんで。「劇場メンバーになる前から応援しててん」とか、「マグリット前から知ってんねん」って自慢してもらえるような芸人さんになりたいなって思います。
田中 僕はホンマに感謝しかないんですよ。グランドバトルで勝てるっていうのはお客さんの票がデカいんで、応援だいぶしてくれたと思うんで。がんばってって声もかけてもらったし、それには本当に感謝してます。ホンマひとこと、ありがとうございます! これからも活躍してる姿を見てほしいって大地は言ってて、その気持もあるんですけど、僕は謙虚になりすぎてて、「怠けませんのでよろしくお願いします」って。ここまで時間がかかり過ぎてるのはそういうことだと思うので、今後、絶対怠けないんでよろしくお願いしますって言いたいです!