なだぎ武が“いじめられた経験”と“人生の転機”を小中学生に講演!「失敗や挫折も経験のひとつとして楽しめる大人になってほしい」

お笑いタレントのなだぎ武が、1月25日(土)に東京・霞が関の文部科学省で開催された『全国いじめ問題子供サミット』に出席しました。10回目を迎えたこのイベントは、全国の小中学生が集まって、いじめをテーマに話し合ったり、いじめをなくすための取り組みを発表したりするもの。近年、いじめについての講演を行っているなだぎはゲストとして登壇し、自身の体験について語りました。

出典: FANY マガジン
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“フーテンの寅さん”の人間力に憧れて

なだぎは、もともと人前に出て話すことができるような性格ではなかったそうです。いじめにあったのは、中学1年生のとき。それが原因で人とかかわることが怖くなり、高校への進学を断念したなだぎは中学卒業後、就職します。しかし、15歳が大人の世界でうまくやっていくことは困難も多く、わずか3カ月で仕事をやめ、その後は家に閉じこもるように……。

まだ、“ひきこもり”という言葉もなかった時代。自分の好きなテレビ番組を観たり、映画を観たり、漫画を読んだりと、好きなことをし放題の毎日は楽しかったのですが、1年、2年と続くうちに「これでいいのかな?」「自分の時間を誰とも共有することなく1人で使っていいのかな?」という気持ちが湧き上がってきたといいます。

そんなとき、ある映画との出会いがなだぎの人生の分岐点になりました。その映画『男はつらいよ』について、なだぎがこう語ります。

出典: FANY マガジン
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「主人公の寅さんは、毎日フラフラしている“フーテン”。いまでいうニートですね。毎日フラフラして、一人旅をして、恋愛もして、おカネがなくなったら実家に帰って妹にお小遣いをもらって、実家にいるのがイヤになったらまた旅に出るという最低な生活をしてるんですけど、なぜかこの人のまわりには人が集まるんですね。人間力があるというか……」

なだぎは、「なんだこの人は。みんなを笑顔にしてるし、男前でもないのにかわいらしいマドンナとも恋愛してる。自分にないものを100%持ってる」と思い、「こんな人になりたい、近づきたい」と考えたそうです。

NSCで世界の見方が変わった

寅さんに近づくためにと17歳で大阪から広島県尾道市まで1人旅をしたというなだぎは、広島で食べた牡蠣にあたって公園で倒れてしまいました。そのときのことを、こう振り返ります。

「女性が『大丈夫?』って声をかけてくれて、『私のところに来なさい』と言ってくださったので、ついて行ったら旅館だった。女性はそこの女将さんだったんです」

出典: FANY マガジン
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女将の厚意で旅館に泊まらせてもらったなだぎは、一宿一飯の恩義にと翌日、旅館の手伝いを申し出ます。

「そういうとき、たいていの大人は『そんなのいいから、もう家に帰りなさい』などと言って断ると思うんですけど、女将さんは『じゃあ、今日はしっかり働いてもらう』と言ってくれた。その、同じ目線で対等に話せている感じがすごく嬉しかったんです」

そして旅館の従業員たちとも食事をとり、それまで家族とすら食事を一緒にしていなかったなだぎは感動したそうです。

「人と楽しくご飯を食べることがこんなに楽しいんや、こんなにあったかいんやと思ったら号泣してしまって。そしたら料理長に『そんなに涙が出るくらい俺の料理がうまかったんか』って言われて、それにまた感動して……」

1人旅でほかの人と過ごすことの大切さを痛感したというなだぎは、人生を変えようと動き出します。

「環境を変えないとなかなか変われないと思ったので、自分が好きなものを武器にしたほうがいいと思ったんです。映画とかテレビとかのメディアが好きやったんで、大阪やったら吉本やな、と。吉本の学校があるから、1年過ごしたら少し変われるんじゃないかと思ってNSC(吉本総合芸能学院)に入ったんです」

出典: FANY マガジン
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NSCでなだぎは、千原兄弟やFUJIWARA、バッファロー吾郎といった同期芸人たちと出会い、世界の見方が変わっていき、物事を前向きに捉えることができるようになったといいます。

その後、『R-1ぐらんぷり(現R-1グランプリ)』(2007年、2008年)で優勝し、現在では映画にドラマ、舞台など、ジャンルを問わずエンターテインメント界で活躍を続けているなだぎは、最後にこう語りました。

「よく『過去は変えられない』と言うけど、僕は変えられると思う。イヤな過去があったからこそ、いまがあるんだと思えば、過去のイヤな経験にも意味があったと思えるし、気持ちを清算できると思うんです。だから、失敗や挫折も経験のひとつとして楽しめる大人になってもらいたいなと思います」

小中学生が真剣に協議する姿に感動

この日のイベントでは、全国から集まった約150人の小中学生が22のグループに分かれて、いじめについて話し合う“セッション”の時間が設けられました。

ときには真剣に、ときには和やかに協議するなか、なだぎも各グループをまわってディスカッションに耳を傾けます。それぞれのグループを丁寧にまわり、話す内容に感心しながら聞き入っていました。

各グループは「このような状況になってしまった原因はどこにあると思うか」「自分が登場人物の1人だったら、どう行動するのか」「SNSなどインターネットでトラブルになりそうになったとき、どうしたらいいか」といった内容について、考えを話し合います。そして“いじめを生まない環境づくり”というテーマで、グループごとに心の込もったメッセージを発表しました。

出典: FANY マガジン
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なだぎは「私がとやかくいうことがないくらいしっかりした意見を出し合って答えを出していて、感心させられましたし、勉強にもなりました」と感想を語ります。

「発表にあった、『いじめはなくならないかもしれない』という言葉は真を突いてるなと思いました。確かに、いじめはなくならないかもしれない。でも、いじめが起こったらどうすればいいかを考えて行動することはとても大事だと思うので、今日はとても有意義な時間になったのではと思います」

なだぎは最後に、参加者に向けてこう呼びかけました。

「できるだけ自分の直感を信じて行動してください。直感は当たっているかもしれないし、外れているかもしれない。だから、もしかしたら後悔するかもしれないけど、自分の直感を信じて行動すると、正解かどうかはわからないけど、きっと何かに繋がると思うんです。だから、自分の直感を大事にしてほしい。あと、『なんかイヤだな』という違和感は信じていいと思います。イヤなことからは逃げていい。自分が『無理してるな』と思ったことからは逃げていいと思うんです。逃げた先の新しい環境でできることもあると思うし、新たな繋がりもできると思うから」

出典: FANY マガジン
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