吉本のギャラリー初のアートコンペでグランプリ決定! 「不思議な一体感が生まれた公募展だった」

多くのタレントやアーティストたちの作品を展示・発表している大阪・なんばのギャラリー「LAUGH & PEACE ART GALLERY」で開催されていた初のアートコンペ「Laugh & Peace Art Competition 2025」が、1月26日(日)にクロージングを迎えました。同日には各賞の授賞式も開催され、自由気ままに動き回る女の子のキャラクター“FOPPISH GIRL”をテーマにした世界を描くCHIEさんがグランプリを受賞しました!

出典: FANY マガジン
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「芸人とアーティストが一緒の展覧会が面白い」

「Laugh & Peace Art Competition 2025」は、今年でオープン6周年を迎えたLAUGH & PEACE ART GALLERY が“発信基地”としてさらなる発展を目指すべく、初めて開催したコンペ。1月16日(木)から26日(日)までの期間中、ギャラリーではCHIE、R・Y・O、福田沙千代、ミゾ(カーキ)、八木宇気、naoh、菅原央喜、那須ヨルイチ、藤澤憲彦、青原優花(NMB48)、野村愛希子、marthaというアーティスト12人の作品が、最終審査を兼ねて展示されていました。

1月18日(土)に開催されたレセプションパーティーには8人が参加し、それぞれのコメントを記事で紹介しましたが、今回のクロージングには、そのとき参加できなかった3人のアーティストも出席。そこで彼らに改めて、今回のコンペに応募した理由や展示作品へ込めた思いを聞きました。

【ミゾ】
僕は東京でアート活動をしているんですが、(吉本の)マネージャーから教えてもらって参加しました。

僕はできる限りリアルなものを描くことを大切にしていますが、紙にボールペン1本で描く作品は意外とないので、挑戦してみようと思いました。80号のキャンバスに下描きをせずにボールペンで一発書きした今回の作品は、僕がこれまで描いてきた女の子のキャラクターと、ビル群をひとつのキャンバスの中に落とし込んだ、いまの僕の集大成です。

出典: FANY マガジン
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【martha】
「LAUGH & PEACE ART GALLERY」は、以前、知り合いの作家さんが展覧会をやったので何度も足を運んだ場所です。吉本さんが運営しているギャラリーということで、ふだん会うことのない芸人さんとアーティストが一緒に展覧会をするのが、すごくおもしろいなと思いながら拝見していました。

3年ほど前から「わたしのおにわ」シリーズを描いています。幼いころに住んでいた田舎の家をもとに、原風景や当時の思い出を絵と言葉で表しています。「おまもり」や「たからもの」をテーマに、ノスタルジーでもありますが、その過去を持っていま生きている私を表現したいなと思って描いています。

出典: FANY マガジン
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【CHIE】
「LAUGH & PEACE ART GALLERY」の存在自体は知っていたんですが、訪れたことはなかったので、「一度、この場所を見てみたい」という気持ちが強かったです。すごく魅力的に感じていて、私が描いている“FOPPISH GIRL”をここで遊ばせたら楽しそうだなと思っていました。

“FOPPISH GIRL”は1997年から描いていて、当時はカラフルな色を使って組み合わせていましたが、新作ではそれを抽出して、色のパターンの使い方に新しく挑戦しました。

出典: FANY マガジン
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M-1審査員の気持ちがわかった

授賞式では、今回参加したアーティスト、審査員を務めたおかけんた、そしてギャラリー責任者の真野博未、安達千花子が出席しました。

第1回となる今回のコンペで、映えあるグランプリを受賞したのは、CHIEさん! この日、活動拠点である北海道からギャラリーに到着したばかりだったCHIEさんは、「さっき、ギリギリに着いて状況があまりわかっていなかったんですが、グランプリをいただけてすごくうれしいです」と驚きつつも喜びの表情を浮かべます。

CHIEさんには、「LAUGH & PEACE ART GALLERY」での個展開催、「Laugh & Peace Art」公式サイトで連載中のおかけんたのアートコラムへの掲載(個展開催時)、「Laugh & Peace Art」公式サイトでの作品販売取り扱いなどの特典が贈られます。

出典: FANY マガジン
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続いて「LAUGH & PEACE ART GALLERY賞」に輝いたのは那須ヨルイチさんとR・Y・Oさんの2人。そして来場者投票1位の「オーディエンス賞」に選ばれたのはnaohさんでした。

立体や平面、日本画、精密画など、甲乙つけがたい作品が集まった今回のアートコンペ。最後に、おかけんたから今回の総評が行われました。

「敷居を低くして、どんな方でも参加していただけるようなかたちに……と思っていたら、こんなにバラエティに富んだアーティストの方々から応募していただけました。これだけ違うパターンの作品があると、1番を決めにくいんです。M-1グランプリで、審査員が『迷いました』と言うのを聞いて『何を言うてんねん』と思ってましたが、今回がそうでした(笑)」

出典: FANY マガジン
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濃厚な時間を過ごせた貴重な体験

各賞受賞者のコメントは以下のとおり。

【グランプリ】
CHIE

グランプリをいただけると思っていなかったので、すごくうれしかったです。先ほどの授賞式でけんたさんが「搬入のときも見ていた」とおっしゃっていて、「搬入のときも気が抜けないんだ……!」と思いました(笑)。“FOPPISH GIRL”のベースは、これからも続けていきます。今後は色のパターンを広げていき、また、違う素材で表現してみたいと思っています。

【LAUGH & PEACE ART GALLERY賞(2人)】
那須ヨルイチ

本当にいろいろなジャンルの作品があって驚いていたんですが、そのなかでギャラリー賞に選ばれたことが光栄ですし、うれしかったです。僕の場合は“影絵”という、あまり見かけない作品だと思うので、大阪の方は目新しいものが好きというか、そういった特性にも刺さったのかなと思いました。まずは来月、個展があるので、それに向けて制作していくことと、これからもこうしたことを積み重ねていき、モノの大切さを表現してきたいと思います。

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R・Y・O
それぞれ違う分野のトップクラスの方々が集まったコンペだなというのが第一印象でした。僕は、情報化社会に焦点を当てた「Imagineシリーズ」を、なんばの中心街から広げていきたい考えで、今回、挑戦しました。これからは「Imagineシリーズ」といえばR・Y・Oといわれるくらいブランドを強めていき、それと同時に日々鍛錬して作品をつくり続けていけたらなと思います。

出典: FANY マガジン
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【オーディエンス賞】
naoh
私は、ほかの作家さんと比べて在廊日数が多かったので、来場者の方にすべての作品を紹介するようにしていたんですが、やはり自分の作品には熱が入り、投票してくださる方が多かったのかなと思います。甲乙つけがたい魅力的な作品ばかりで、そのなかから選んでいただけたのは、すごく光栄で誇りに思います。(ほかの)作家さんたちも「いい展示にしよう」という一体感にあふれていて、熱量がすごく高かったです。そんな濃厚な時間を過ごせたのは貴重な体験でした。

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敷居を低くしたことが意外な結果に!

各賞の発表を終えて、改めて審査員のおかけんたに今回のアートコンペの感想を聞きました。

——総評でも「各賞を選ぶのに非常に頭を悩ませた」と話していました。

たとえば、有名な公募展だと大作(大きな作品)があったりするんです。展示が1点のみだと審査しやすいんですよ。ところが今回はスペースに限りがあり、小ぶりな作品をまとめて展示して世界観を表すこともあった。そうすると審査が難しいんです。これだけ違うパターンの作品が並んだことも理由ですが、実はその点も含めて、非常に審査が難しかった。もし、みなさんが1点しか出していなかったら、ひょっとしたら違う結果になったかも知れません。

——これまで、さまざまなコンペの審査を経験してきたけんたさんでも悩ましかったのですね。

敷居を低くしたことが、こんな仕上がりになるとは思えへんかった(笑)。アーティストさんからも聞いたんですけど、ふつうのコンペならライバル意識が芽生えるものですが、それがなく“団結”と言いますか、授賞式を見ていても、思わずもらい泣きしている方がいたりとか。そんな気持ちになるとは、アーティストさんもギャラリー側も想像していなかったんじゃないかな。

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お互いが応援しあえるようなコンペに

——今回、「オーディエンス賞」を受賞したnaohさんも「不思議な一体感が生まれた公募展だった」と言っていました。

ここがミナミという街で、吉本が運営していて、目の前にお笑いの殿堂(なんばグランド花月)がある。すべてがまとまっているんです。ふつうなら、公募展は美術館や閑静なギャラリーで行われるんで、非常に他人行儀というか、ちょっと“よそ行き”なイメージがあるんです。でも、「LAUGH & PEACE ART GALLERY」って全然よそ行きちゃうやないですか(笑)。だからアーティストの皆さんも、アミューズメントな世界に迷い込んでしまったような感覚の中で展示されていたと思うんです。

——立地も大事なんですね。

中に入ればアートの世界ですが、一歩外に出たら豚まんは売ってるし、たこ焼きもめちゃくちゃ売ってるし、特殊なんです。よそのギャラリーとは違う体験ができる。「ここは楽しむ場所じゃないか」というようななかで、皆さん自身も別世界にいるような体験をして、それがひとつの仲間意識のような感覚につながったのかなって思いますね。

——今後、第2回、3回と続ける場合も、やはり今回のようなかたちで続くのでしょうか。

それはギャラリー次第ですが、公募展って第1回目の受賞者がすごく大事なんですよ。なぜなら第2回以降に応募する目安になるからです。「誰が受賞して、こういう賞を獲ったのか、じゃあ私も応募してみようかな」というきっかけにもなります。そういう意味でも、CHIEさんは女の子のキャラクターですし、R・Y・Oさんは動物をコンセプチュアルに描いた作品、那須ヨルイチさんは照明を使ったクラフト的な作品、naohさんは浮世絵的な作品。これだけ見ていただいてもわかるように、非常に幅広い。来年もあるとしたら、応募する方々はそういう見方もされると思いますよ。

そして、アーティストの皆さんがひとつになって、合間にテーブルを囲んでたこ焼きを食べたりして、ワイワイガヤガヤと楽しんで、いい思い出になったらいい。ここからスタートして、それぞれが「がんばってるな」とお互い応援できれば、それが励みになっていくと思います。


「Laugh & Peace Art Competition 2025」の詳細はこちらから。