藤森蓮華が「Audience Award 2024」「Musical Awards TOKYO 2024」でトリプル受賞の快挙! 「天国の恩師も拳を突き上げてくれていると思います」

ミュージカル界の新星・藤森蓮華が、2024年に上演された『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』のニニ役が評価され、「Audience Award 2024」の俳優部門(女性)・ネクスト俳優部門(女性)の大賞をW受賞、さらに「Musical Awards TOKYO 2024」の新人賞グランプリも受賞しました。大きな快挙を成し遂げた藤森蓮華に、受賞の喜びと、作品や役にかけた思いなどをたっぷり語ってもらいました。

ダンスに絶対の自信があるニニは自分と重なる

「Audience Award」は、「生きてて、よかった。そう思える瞬間が、演劇にはある。」をコンセプトに掲げるwebメディアAudienceが主催する賞で、1年間で上演された演劇・ミュージカルの中から、特に印象に残った作品や演出、役者が観客投票制で選出されます。

『Musical Awards TOKYO』は、ミュージカルの「創る、観る、広める」を活性化するために舞台芸術関係者が新設した初のミュージカルアワードで、専門選考員と書類審査で選抜された観客選考員によって選ばれる賞です。

今回、これらの栄えある賞を獲得した藤森蓮華は石川県出身で、10歳からクラシックバレエ、モダンダンスのレッスンを開始。高校卒業後に米ワシントンD.C.にバレエ留学し、若手バレエダンサーが集う世界最大のコンクール・YAGPの2部門で優勝。帰国後、世界的ミュージカルスターのヒントン・バトルのもとで約3年間、ブロードウェイスター育成プログラムに参加し、ヒントンからの助言がきっかけでミュージカル界に進出しました。

出典: FANY マガジン
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2020年に『ウエスト・サイド・ストーリー』でミュージカルデビュー。その後も数々の作品に出演し、2023年、日本初演の『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』のオールキャストオーディションでニニ役に抜擢されました。

──このたびは「Audience Award 2024」の俳優部門(女性)大賞・ネクスト俳優部門(女性)大賞のW受賞と、「Musical Awards TOKYO 2024」の新人賞グランプリ受賞おめでとうございます! あらためて、今回評価されたニニ役はどのような役なのでしょう。

ありがとうございます! ニニは実在した人物で、絢爛豪華なショーが繰り広げられるフランス・パリのナイトクラブ「ムーラン・ルージュ」で踊る娼婦のダンサーです。女性たちが息をそろえて脚を美しく上げるラインダンスのダンサーとして有名で、人気の火付け役にもなった人物。脚の形の美しさではなく、脚さばき、つまり“脚で魅せるダンス”の技術がすごい人だったんですよね。

ダンスの技量で“トップダンサー”にまで上り詰めたものの、あくまでムーラン・ルージュの“トップ”は主役のサティーン。ダンスの技術は勝っているのにトップにはなれなくて、サティーンに対する嫉妬、劣等感の塊みたいなキャラクターです。

でも、ダンスだけは誰にも負けないというプライドがあって、そこは私と同じものをすごく感じています。ただ漠然と夢に向かって走るというよりは、自ら厳しい鍛錬をして、確実に力を積み上げていくさまが、自分の少女時代からのバレエ人生と重なるところがありました。

出典: FANY マガジン
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私は田舎で生まれ育ちましたが、やはり東京で生まれ育った人とはチャンスの数がまるで違うと感じました。情報量も圧倒的に違うし、身近に前例がない中で、自分で道を切り開くしかありませんでした。

まさに”当たって砕けろ”という気持ちで、上京をすっ飛ばしていきなり海外へバレエ留学を決意しました。しかし、今度は日本と世界の差に打ちのめされました。

そして帰国後、東京へ出てきて、今の私がいます。なので、洗濯娘から自らを変えていったニニの人生には、本当に共感することが多いんです。

──演じる役柄に共感できるというのは大事なことですか?

そうですね。ニニと同じような経験があるからこそ、できる表現はあると思います。

ニニは高いプライドを持ちながら、実は強いコンプレックスも抱えていました。私もいろいろなコンプレックスと戦ってきましたが、ニニとの出会いで、人と違うことこそが最大の強みであり、個性だということに気づけました。ニニを理解していくことが自分を理解することにつながり、何度もニニを演じることで、どんどん自分を受け入れられるようなったんですよね。

恩師のひと言でミュージカルの世界へ

──ミュージカルの世界に足を踏み入れたきっかけを教えてください。

ダンス留学から帰国して、トニー賞を3回も受賞しているブロードウェイのレジェンドスターであるヒントン・バトルが吉本興業と一緒に立ち上げたダンスアカデミー(ヒントン・バトル ダンスアカデミー)の第1期オーディションに合格したんです。

出典: FANY マガジン
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当時は「ダンスで生きていく!」と心に決めていましたが、そのダンスアカデミーの公演で少しだけ歌を歌ったら、ヒントンが「蓮華はミュージカルが合うと思うよ」って言うんです。

それまで人前で歌もお芝居もしたことがなかったから「まさか」と思っていたんですけど、そんなときに日本でミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』のオーディションがあることを知りました。

この作品はダンサーの私でもよく知っていたので『ウエスト・サイド・ストーリー』の世界で踊れるなら出たい! やるなら死ぬ気でやろう! と奮い立って、そこから初めてミュージカルに向き合い、数カ月にわたって歌のレッスンも重ねて、何とかオーディションに合格できました。

──ヒントンさんは、蓮華さんのミュージカルの才能をすぐに見抜いたんですね。

そうなんですかね…。本当に、ちょっと歌っただけだったので、びっくりしました! ヒントンも2020年の私の初舞台を観に来てくれました。残念ながら昨年1月に67歳の若さで亡くなってしまって、今回の受賞を報告することはできなかったのですが、あのとき、ミュージカルの舞台に立った姿を観ていただけて本当に嬉しかったし、本当によかったです。

そこではアンサンブルとしての出演で、憧れだった”America”を歌い踊る6人に選んでいただきました!ですが、出演人数も多い作品なので、WSSの世界の中で舞う姿を一瞬でも観ていただけるだけで光栄でした。終演直後、ヒントンが駆け付けてくれて「次のアニータ(メインキャストの1人)は蓮華だ!」と激励してくれたことを今でもはっきりと覚えています。

人生を変える大チャンスだと思った

──そして、今回の『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』では、メインキャストである“プリンシパル”に抜擢されたんですね。

『ウエスト・サイド・ストーリー』でデビューしてから3年間くらいは、アンサンブルのキャストで年に2~3作品くらい出演していました。

日本だと、アンサンブルのオーディションしか受けられないことがほとんどなのですが、『ムーラン・ルージュ!』は珍しくオールキャストオーディションで、みんなが平等に、どんな役のオーディションでも受けられるという大チャンスでした。人生を変えるならこのオーディションしかないと思い、覚悟を決めて挑戦しました。

出典: FANY マガジン
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──大変な競争のなかで役を勝ち取れた理由を、自身ではどう考えていますか?

ダンスのスキルは少しだけ自信があったので、それを評価していただけたのなら嬉しいです。あとは、10歳でバレエに出会って、人生のすべてをバレエに捧げたという自信みたいなものがニニに似ていることを汲み取っていただけたのかなと。この先の人生を自分で変えていこうという情熱や気迫が、ダンスや歌などのパフォーマンスに自然と込められていったのだと思います。

こんなに早く受賞できるとは思わなかった

──受賞を聞いたときはどう思いましたか?

マネージャーさんか連絡をもらって、本当に驚きました! 茫然として、待っていた終電を逃したくらい。

「Audience Award」はもちろん以前から知っていて、アンサンブルの時代から憧れていました。ですが、観客投票型ゆえにファンの数がそのまま結果に反映される賞なんですよね。

私は映画やドラマに出演したり、アーティスト活動をしたりと活動の場を広げてきたわけではないので、自分には無縁な賞だと思っていました。あと10年、20年と頑張ったら、少し可能性が出てくるのかなと。

それが、ミュージカルを始めて3年、プリンシパルデビューしてまだ1作目というこの早い段階で受賞できるなんて、夢にも思っていませんでした。

出典: FANY マガジン
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『ムーラン・ルージュ!』はWキャストなので、私のニニを観ていただける公演数も少ないのですが、そんな中でこれだけ多くの方に投票していただけたというのは、公演を観てくださった多くの方が投票してくださったり、また、「蓮華ちゃんにこの賞をあげよう」と呼びかけてくださった方がいたりしたからなのかなと思っています。

──ますます喜びが大きいですね。

応援してくださる皆さんの想いが詰まった賞だと感じていますし、ニニという役が多くの方の心に刺さったのだと思うと感慨無量です。ニニ役でこの賞をいただけたというのは本当に嬉しい!

──受賞の報告を最初にしたのは誰ですか?

両親です。幼いころから「ダンスで革命を起こす」とか、「蓮華旋風を巻き起こす」とか、周りに笑われるようなことを堂々と言うタイプの子だったので、よく「その自信はどこから来ているんだ?」と言われました。今でも言われるんですけどね(笑)

この仕事は安定を求められないし、一か八かの賭けみたいな人生です。バレリーナを目指していたときから、心配しながらも、「蓮華の好きなようにすればいい、蓮華ならできるよ」と全面サポートしてきてくれた両親なので、喜びもありながら、私と同様、驚きが大きかったみたいですが、一言、「よし!」と言われました(笑)。

でも今回の受賞で、昔から言っていた「蓮華旋風を起こす」みたいなことが、「蓮華ならできるかもしれないね」と初めて言ってもらえました。ニニ役に合格したときも“まさか”だったし、この子は本当に言ったことをやり遂げるんだと驚いているみたいです。あとは、「ファンの皆さん、スタッフの皆さん、カンパニーの皆さんに感謝だね。受賞は蓮華だけの力じゃないよ」というのは、両親ともに口をそろえて言っていました。

──恩師のヒントンさんにも報告したかったですね。

そうですね。でも、きっと天国で拳を突き上げてくれていると思います!

受賞はファンの方々との絆の証

──あらためて、蓮華さんにとってダンスやミュージカルの魅力とは何でしょう。

ダンスやミュージカルの魅力は、表現を通じて自分自身を解放できることだと思います。幼少期の私は、人前に出るのが苦手で、お遊戯会でも幕が開くと泣いてしまうような子でした。ですが、バレエという心から好きになれるものに出会い、全てを賭けて没頭できるほどの圧倒的な情熱を初めて感じました。自分を表現する喜びを知ったんです。そんなかけがえのないものに出会えたことを、本当に幸せに思いますし、心から感謝しています。

出典: FANY マガジン
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ダンスとの出会いは運命だと感じていて、バレエ時代の苦楽が自分の表現や強みになっていると実感しています。そしてヒントンと出会い、沢山のギフトを頂きました。

表現の幅は、これから人生経験を重ねるほど広がっていくもの。大袈裟かもしれませんが、自分にしかできない表現を通して、少しでも多くの人の心を支えたり、ときには生きる希望のようなものを届けられたらと思っています。

──今後の展望は?

ブロードウェイで上演されている『Moulin Rouge! The Musical』で、アジア人初のニニとして舞台に立つことが目標です!これがヒントンへの最大の恩返しかなと思います。他には、彼と約束した『ウエスト・サイド・ストーリー』のアニータ役もやりたいし、『CHICAGO』のヴェルマ役も目標です。

──最後に、ファンへメッセージをお願いします。

今回、3つの賞をいただけたことは、日頃より応援してくださるファンの皆様のおかげです。心から感謝しています。また、こうして皆さんとの絆を形に残せるよう精進していきますので、応援よろしくお願いいたします!