ラニーノーズ山田“漫画家の夢”が再燃!? 現代美術家・わにぶちみきのワークショップで「下手でも完成させたい」

「風景から色を抽出する」。その一点にフォーカスし、極限まで抽象化された「風景画」を描く現代美術家・わにぶちみきさん。そのわにぶちさんの個展『Miki Wanibuchi Solo Exhibition Beyond the FUKEI』が、1月30日(木)〜2月10日(月)に大阪・LAUGH & PEACE ART GALLERYで開催されました。期間中に2回行われたワークショップも大盛況で、2月8日(土)の回にはラニーノーズ・山田健人がゲストとして参加! 今回は、その模様をレポートします。

出典: FANY マガジン
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3枚のキャンバスで“過程”を可視化

風景から「色」だけを抽出するわにぶちさんの作品は、ITが発達した現代における“風景の見方”への問題提起でもあり、「風景」の本質にも改めて気づかせてくれます。そんな作品郡の中から今回、展示されたのは、家族が暮らす米ロサンゼルスに滞在した際、その日常から収集した色を素材にした風景画シリーズ。

制作は、写真に収めた風景を、コンピューターを通してピクセル化するところからスタート。その“色”をアクリル絵の具でつくり出してドットとして表現、それを使って抽象化した風景を描いていきます。すべての作品が「色をつくり出すパレット」「ドット」「風景画」という3段階に並んだキャンバスで構成されていて、わにぶちさんの思考の過程を可視化しています。

出典: FANY マガジン
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題材は山田が撮った地元写真

今回のワークショップは、わにぶちさんの作品における「パレット」と「ドット」を実際に描いてみようというもの。ゲストは、わにぶちさんが暮らす箕面市出身のラニーノーズ・山田です。

ギャラリー内には大きなテーブルが2つ配置され、その上にはアクリル絵の具に筆、筆洗用の水など道具類が並んでいます。題材は、せっかくなので山田にちなんだものを……ということで、山田が箕面で撮影した写真をピックアップ。「マネージャーから箕面の写真を送ってくれと言われて、まさか作品になるとは思わず、小学校からの友だちと写った写真を送付してしまった」と山田。

出典: FANY マガジン
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1枚は勝尾寺で“勝ちダルマ”を手にする山田、もう1枚は箕面の秋の風物詩・天狗まつりで地元の友人“まっちゃん”と撮ったもの。すでに、わにぶちさんの手でピクセル化されていて、それを見ながらドットに色を塗っていきます。

9つのドットのうち、ひとつだけは山田が塗るという“色のお土産”サービスも! 参加者は「ここを塗ってほしい」というドットを残しつつ、さっそく創作を進めていきました。

「黒にも違いが…」色づくりの奥深さにハマる

迷いなく次々とドットを塗っていく人もいれば、写真とピクセルをじっと見つめて思案する人や、色がうまくつくれず、わにぶちさんに質問する人も。オレンジをつくろうと、参加者とともに奮闘する山田には、わにぶちさんから「黄色を足すと早いかも」などさりげないアドバイスが送られます。

出典: FANY マガジン
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最初は創作に集中して静かだったギャラリーも、参加者たちが徐々に打ち解け、おしゃべりが弾む空間に。山田は先日、テレビのロケで巨大アートを制作したそうで、番組MCの見取り図からツッコまれたひとことなど、ウラ話を披露して笑わせます。かつてノートにオリジナルの漫画を描いていたという山田は、わにぶちさんの作品やワークショップの様子を見て“アート魂”に再び火がついた様子でした。

混色を繰り返すうちに、「黒の中にもいろんな違いがあるんですね」(山田)といった新たな発見も。色の配合に失敗し、「難しい……」と打ちひしがれたかと思えば、意外な美しい色が生まれて興奮するなど、ワイワイ盛り上がる一同。「悩み出すとつくれなくなる。私もダメなとき、あります」(わにぶちさん)という色づくりの奥深さと楽しさに、すっかり魅了されていました。

出典: FANY マガジン
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終了後は、「楽しかった!」と口々に感想を述べていた参加者たち。作品を自宅で飾ることができるよう、フレームがプレゼントされます。山田は「帰ってから、3枚目(最終ステップである風景画)に挑戦してほしい」とメッセージを送っていました。

同じ色にも個性が出る

盛り上がったワークショップも無事終了。終えたばかりのわにぶちさんと山田に話を聞きました!

──今日のワークショップの感想を聞かせてください。

わにぶち 皆さん、本当は山田さんに会いに来たんだと思うんですけど(笑)、アートをしっかり楽しんでいただけたので嬉しかった。「楽しかったです」って言ってくださったし、何か新しい感覚を感じていただけたと思います。

山田 本当に皆さん、上手でしたよね。僕は先生に教えてもらってやっと色をつくれてたんですけど、1人で淡々とされてる方もめっちゃ上手やったりして、すごいなと思いました。

──パレットに広がる色合いも、不思議と一人ひとり違っていて……。

山田 そこがおもしろいですよね。過程が作品になるっていう。

わにぶち 個性が出るんですよね。

山田 改めていろんな色がある、同じ赤でもいっぱいあるのがわかりました。(モデルでタレントの)アンミカさんが「200種類ある」みたいに言ってたのは知っていて、「ほんまか?」と思ってたんですけど、確かにつくるとなったら(同じ色でも)全然ちゃうねんなと思いました。

出典: FANY マガジン
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──参加者の皆さんにとっては、今日がアートへの入り口になるかもしれません。

わにぶち 100均とかでも最近は(画材を)売っているので、ご自身でやっていただくのはもちろんなんですけど、今日の経験で風景の中に色があるっていうのに気づいてもらって、これから見る街並みが変わっていったらいいなと思っていて。このワークショップでは、そういうのを目指してます。

山田が作品制作を宣言「人類みなクリエイター!」

──山田さんも、今日をきっかけに“制作欲”が出てきたのでは?

山田 実は壁画(テレビのロケで制作した作品)以降、けっこう燃えてまして。やっぱ漫画を描いていこうかなと。

わにぶち すごい!

出典: FANY マガジン
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山田 さっき先生にはお話したんですけど、僕んちは芸術一家なんですよ。父親と母親はデザイン会社で知り合って、お兄ちゃんはその血を受け継いで絵がめっちゃうまいんです。なのに僕だけめっちゃ下手で、子どものころから漫画を描いてたけど、母親がそれを見て「かわいそうに」「こんなに漫画が好きなのに」って(笑)。

でも、いまこそ「人類みなクリエイター」といいますか、堂々とすることが大事なんちゃうかなと思って。下手だろうがなんだろうが関係ないと、番組ロケで壁画も描かせていただいた。その気持ちを胸に、下手でも完成させたいと思えてきましたね。

わにぶち 楽しみですね。ぜひ、どこかで公開してください。

山田 むかし描いたものは大学ノートにシャーペンなので、それを清書してSNSに上げようと思います!

──わにぶちさんから、山田さんのアート活動へメッセージもいただければ。

わにぶち ええっ!? 難しい!(笑) でも、塗るときはすごく神経を使ってらっしゃったり、几帳面なところもあるので、やり始めたら完成までいきそうな感じがします。それを楽しみに待ってます。頑張ってください。

山田 はい! いい作品を作れるように頑張ります!