「関西の街を演劇を通してもっと元気に!」「関西から出てくる演劇の才能を日本全国に発信!」をスローガンに昨年始まった『関西演劇祭』が、今年も開会式を迎えました。今回は、関西以外の地域からも含めた10団体が参加。初日の11月21日(土)に開かれた開会式では、実行委員長の女優・羽野晶紀が「公演の45分間、絶対に中だるみさせるなよ! 集中して観させてください」と檄を飛ばして、開幕を宣言しました。
今年の演劇祭は、徹底した新型コロナウイルス感染予防対策のもと、11月21日(土)から表彰式のある29日(日)まで、大阪市中央区のCOOL JAPAN PARK OSAKA TTホールで開催されます。開会式では、参加した10劇団の代表者たちが意気込みを語りました。
大阪、京都、東京…全国から集結
【Artist Unit イカスケ】
「演劇祭というお祭りなので、皆さんと楽しみながら。でも賞はいただきたいですね。いただけるものは何でもいただけるように準備してきました。最後まで頑張っていきたいと思います」
【安住の地】
「私たちは京都からまいりまして、初めての大阪公演で戦々恐々としています。今回は、会話劇で、私道かぴの脚本で行います。苦しい世の中ですが、ちょっとでもほっこりしてもらえたらと思います」
【キミノアオハル】
「今日、ここに立たせていただけることが本当に嬉しいです。こんな時期だからこそ作品を精一杯、届けられたらと思います」
【くによし組】
「普段は東京の劇場でやっているので、関西のお客さんを前にしてお芝居ができることが嬉しく思います。これだけ一気にいろんな劇団を知ることができるので、僕個人的は稽古を減らして、会場に観に行きたいと思います。『異常で、日常で、シュール』をテーマに作品を作っているのですが、今回は『トランポリンさん』という、トランポリンさんが家にやってきた家族の引っ越しの物語をお届けします」
観る前は必ずご飯を食べてから
【劇団アンサングヒーロー】
「ふだん、われわれは吉本新喜劇で活動しているのですが、新喜劇でもお芝居の部分を担っているメンバーで構成されています。新喜劇は稽古が1日しかありません。それに比べたら、奇跡的にめちゃくちゃ練習しました。そして、リハーサルで台本を持っている人が1人しかいませんでした。それぐらいの気合を入れて頑張っています」
【劇団 右脳爆発】
「このコロナ禍で公演が打てることがすごくありがたいです。この喜びを胸に頑張っていきたいと思います。僕たちはいつも90~100分ぐらいの公演をしているのですが、今回は45分なので、ラフで簡単なものを作ろうと進めていたのですが、結局、照明・音響はいつもと同じ、舞台装置には業者を呼びました。それだけ45分に凝縮して、素晴らしいものをお届けしたいと思いますので、よろしくお願いします。謎解きサスペンスで頭を使うので、ぜひ観る前はご飯を食べてから来てください」
【劇団The Timeless Letter×ラビット番長】
「劇団The Timeless Letterとのコラボ公演として、初めて『関西演劇祭』に出させていただきます。しっかりと爪痕を残して、皆さんにお届けして、勝ちにいきたいと思います」
【劇団乱れ桜】
「まずはじめに、われわれの紹介文が『素敵な物語をお届けします、お芝居で』とごく当たり前のキャッチフレーズでした。これは脚本家のnapomidoriが考えました。個人的には、いまワンルームマンションに住んでいて、キッチンのまな板を置くスペースが指3本分くらいしかありません。いまは床で切っているので、ぜひ『関西演劇祭』を機に劇団で売れて、しっかりとまな板を置ける家に引っ越したいと思います。皆さん、どうかお力添えをお願いします」
高知の幡多弁を使った芝居
【ばぶれるりぐる】
「ばぶれるりぐるは高知県幡多郡の幡多弁という方言を使ったお芝居を発表しています。幡多弁は高知県の西のほうの方言なのですが、今回は幡多弁を用いて、女ばかり4人の短編をお届けします。こげんに広いホールでやらせてもらうのは年に何回あるかないかやけん、がんばるけん、どうぞよろしくお願いします」
【May】
「今回、『タンデム・ボーダー・バード』という作品で、『関西演劇祭2020』のトップバッターを飾らせてもらいます。この作品は本来、今年の春に上演する予定でしたが、直前に中止になりました。今回は同じメンバーに1人を足して、オリジナルメンバーで出させてもらえることを本当に光栄に思っています。大阪・生野が舞台と局地的な物語で、独特の韓国語が出てきます。分からなかったら聞き流してください。朝、イカスケさんに会うなり、『トップバッターのMayさんがコケたら、もう終わりですね』と言われたのですが、僕たちは終わらせるためではなく、始めるために来たのだということを証明します。筋肉がつぶれるまで暴れるので、よろしくお願いします」
関西演劇祭版「GO TOポイント」を!
続いて、羽野委員長をはじめとする審査員らのトークセッションが始まります。メンバーはフェスティバルディレクーを務めるお笑い芸人の板尾創路、スペシャルサポーターを務める映画監督の行定勲氏、劇作家で演出家の西田シャトナー氏、NHKチーフ・プロデューサーの櫻井賢氏。司会はお笑いユニット、ザ・プラン9の浅越ゴエです。
「今年の演劇祭、参加する10劇団にどのようなことを期待するのか」と浅越が尋ねると、それぞれが思い思いのメッセージで会場を沸かせました。
羽野委員長は、「私は今回、初めてお会いする方々ばかりなので、まず私にも覚えられるよう、皆さんに頑張ってもらいたいと思います」と劇団を鼓舞する一方で、こんなアイデアを。
「この演劇祭で10劇団をぜんぶ観てくださる方がいたら本当に嬉しいです。来年、再来年も続いていくといいなと思うので、『ぜんぶ観たよ』という人には『演劇祭Go Toポイント』みたいなものを来年、設けてくれるよう提案したいと思います」
フェスティバル・ディレクターの板尾は「今年は開催できないかなと思っていたので、ここに立つことができていい感じです」としたうえで、劇団のメンバーたちに“心構え”を諭します。
「お客さんは満員というわけにはいきませんが、配信で観ている人もいっぱいいるので、会場でウケなくても茶の間はスゴイことになっていると思って、気にせず、稽古したとおり、プラスここでのパワーを出すと、中だるみしないのではないかと思います」
キラリと光る才能がこのなかに
西田氏はコロナ禍での演劇についての意義をこう話しました。
「この機会はすごく貴重ですよね。集まることも難しいなか集まって、お芝居をやって、観てもらって。お芝居をしに来た劇団の方も、ほかの劇団の作品を観たりして。今年は、その後の飲み会や楽屋裏でワチャワチャすることも難しいので、すべての力を作品にぶつける、純粋で貴重な演劇祭になると思います」
行定監督は、新しい才能が生まれることを期待します。
「映画祭とか、演劇祭とか、そこでせめてスターになってよ、と。そこでスターになれないヤツは、世の中でスターになれない。僕らは広い目、長い目で見ているので、才能がキラッと光る人たちがこの中にもいるだろうなと思う。去年は本当に面白かった。今年もきっと面白いだろうと、ものすごく期待しています」
「朝ドラ」発言に色めき立つ審査員たち
さらにNHKの櫻井氏からは、こんな爆弾発言が!
「私は演劇の専門家ではありませんが、いま来年の朝ドラの準備をしていて、まだキャスティングは空いております。今回、素敵な出会いがあるのではないかなと楽しみにしています」
これを受けて、板尾が興奮気味に劇団員たちを挑発します。
「僕、去年も審査員でしたが、NHKの方に見事にキャスティングされましたから! ティーチイン(上演後に劇団員、観客、審査員が意見交換する仕組み)のトークが認められました。今回も、劇団のみんなが油断していたら、僕が持って行きます。勝負ですから!」
羽野委員長も負けていません。「私も朝ドラの『スカーレット』でお世話になりましたが、来年、再来年、スケジュールが空いているので、ぜひよろしくお願いします。大河ドラマがいいなーと思います!」と演劇祭そっちのけで自分をアピールして、観客を沸かせました。
最後は羽野委員長のこんな宣言で、『関西演劇祭2020』が幕を開けました。
「ではそろそろ始めたいと思います。この演劇祭は、出演する皆さん、スタッフの皆さん、そしてお客さんとみんなで作るものです。感染に気をつけながら、楽しみたいと思います。それでは開催しまーす!」
開催概要
『関西演劇祭2020~お前ら、芝居たろか!~』
日程:11月21日(土)~28日(土)
※表彰式は11月29日(日)
場所:COOLJAPAN PARK OSAKA TTホール(大阪市中央区大阪城3-6)
参加劇団:Artist Unit イカスケ/安住の地/キミノアオハル/くによし組/劇団アンサングヒーロー/劇団 右脳爆発/劇団The Timeless Letter×ラビット番長/劇団乱れ桜/ばぶれるりぐる/May
実行委員長:羽野晶紀
フェスティバル・ディレクター:板尾創路
スペシャルサポーター:西田シャトナー、行定勲、櫻井賢(NHK)、NTTぷららプロデューサー
<チケット>
一般:前売3,000円 当日3,500円
学生割引:前売2,000円 当日2,500円
オンラインチケット:2,000円 ※11月27日(金)、28日(土)の公演のみ。
公式サイトはこちらから。