武論尊に「怒ってないよー」と言われたマンガ、ジャスミン・ギュ『ケンシロウによろしく』とは?|川島・山内のマンガ沼web

麒麟・川島とかまいたち・山内が「面白いマンガ」に沼のようにハマって楽しむマンガバラエティ『川島・山内のマンガ沼』。今回は前回放送の「マンガ家ガチアンケート ジャスミン・ギュ編」を前後編まとめて紹介していきます(放送を見逃した方はTVerもご覧ください)。

顔・年齢・性別すべて非公開の謎のマンガ家

川島 今回のテーマは「マンガ家ガチアンケート」。今回アンケートに答えてくれたのは、山内くんのリクエストによる先生です。

山内 ジャスミン・ギュ先生です。

川島 「このマンガがすごい!芸人楽屋編2021」下半期で4位にランクインした『ケンシロウによろしく』の作者、ジャスミン・ギュ先生でございます。

山内 教えてもらって読み出したんですけど、めっちゃ面白くて。前の作品の『Back Street Girls』も最近読み出したんですけれども、全話ぶっ飛ばしてます(笑)。たぶん、お笑いセンスが相当高い先生なんだと思います。

川島 スタジオには忙しくて来れないということで、今回はアンケートのみの出演です。

山内 ジャスミン・ギュ先生の顔、めっちゃ気になるんです。スタジオだけでも見せてほしいです。

出典: FANY マガジン
©池ノ谷侑花(ゆかい)

川島 では先生のプロフィールを、山内君から紹介してください。

山内 先生のプロフィールなんですが、顔、年齢、性別、すべて非公表。性別まで非公表ということは、女性の可能性もありますよね。

川島 全然あるね。

山内 京都精華大学マンガ学部ストーリーマンガコースを卒業後に上京。

川島 じゃあ若いな……。

山内 大学の講師にヤングマガジンの編集者がいたことで、ヤングマガジン新人賞に応募し受賞。デビュー後、『怨み屋本舗』の栗原正尚先生のアシスタントを経て、2015年、ヤングマガジンにて『Back Street Girls』を連載。2020年よりヤングマガジンにて『ケンシロウによろしく』を連載中、今大注目の天才マンガ家です。

川島 今や、マンガ家が好きなマンガ家になってるもんね。和山やま先生とかね。絶対若い先生だと思うけど、『北斗の拳』を熟知していないとあのマンガは描けないと思うし……。

山内 こちらの資料には「名前もペンネームかもしれません」と書いてます。いやペンネームでしょ? ジャスミン・ギュが本名とは思ってないです(笑)。

「殺すために治す」は『ブラック・ジャック』にも通じるテーマ?

山内 『ケンシロウによろしく』を詳しく知らない方のために、簡単にストーリーを説明させて頂きます。子供の頃にヤクザに母を奪われ、復讐を誓った沼倉孝一は『北斗の拳』のケンシロウに憧れ、暗殺拳を独学で学び、一人前の男へと成長します。しかし天才となった彼の拳に宿ったのは殺しの技術ではなく、人を幸せにするテクニックでした。天才指圧師伝説のギャグコメディでございます。

川島 1巻から非常につかまれる設定です。

山内 暗殺拳を極めて人体を極めてたら、いつの間にか整体師になっていたという。それではガチアンケートにまいりましょう。まずは僕たちが大好きな『ケンシロウによろしく』について、先生に質問をぶつけてみました。

「『ケンシロウによろしく』で1番好きなキャラクター&好きなシーンは何ですか?」

山内 先生の回答がこちら。

「主人公の沼倉孝一です。絶望的な過去があって、孤独で壮絶な人生を歩んだにもかかわらず、それをまわりに感じさせないところが好きです。無茶苦茶な理屈を出して、それを謎に納得させる不思議なオーラも好きです。好きなシーンは、暗殺したいけど、捕まって裁判になるのはケンシロウとしてカッコ悪いから駄目だ、からのヒロイン里香の天丼ツッコミシーンなどが好きです」

川島 主人公は、母親の敵のヤクザを倒してやろうという恨みで強くなっていくわけです。それで殺すための技術を学んで、リベンジのためにヤクザと会うんだけど、そのヤクザは病で衰えてしまってる。病によって命を落とすことは主人公にとっては許せない。だから健康にしないといけない。殺すために相手を健康にしないといけない……というこのテーマ、けっこう深いんですよね。僕が大好きな手塚先生の『ブラック・ジャック』にも、死刑囚を死刑で裁くために1回手術で治すという話があるんですよ。それと全く一緒ですよね。「命って何なんだ?」という話でもある。

山内 またそのヤクザの人がよく死にそうになるんですよ。

川島 だから殺すために必死で治さなあかんという。ギャグなんですけど、ちょっとリアルな部分もあって僕は大好きですね。

山内 なかやまきんに君さんの「健康のためなら死んでもいい!」と通じるところがありますね。

出典: FANY マガジン
©池ノ谷侑花(ゆかい)

山内 僕からも質問をしました。こちらです。

「整体の勉強はしましたか?」

山内 整体のシーンはけっこう出てきて、すごくリアルな気がしたので、これは勉強したのかなと思って先生に質問しました。回答はこちら。

「かなり勉強しました。基本的には書籍で勉強していますが、取材を兼ねていろんな指圧院にも行っています。あえて取材と言わずに行くことが多いのですが、必要経費になるので領収書をもらうとき、但し書きに『取材代』とお願いすると、だいたい『えっ、何の?』と聞かれます。説明するのが難しい」

川島 施術代ではないんだ。整体師側もそんな但し書きは初めてでしょうね。ということは、ここで紹介されてるというツボは、本当にあるわけだ。今日は担当編集の方が見学に来られているので、いろいろ聞いてみましょう。先生にはもちろん生でお会いしてるわけですよね。だから性別も年齢もだいたいは知ってるわけですよね。

山内 どうなんですか?

編集 それはご本人が非公表、内緒ということで。

山内 「彼」がそう言ってるんですか?

編集 彼がどうかもわかりません。

山内 引っかからなかった!

川島 今のはキラーパスやったのにね(笑)。ちなみに先生は整体の勉強は本当にされているんですか?

編集 本当に本でかなり調べられていて、僕の先代の担当は先生から施術を受けたこともあります。

山内 自分もうまくなるんですね。

川島 でもそれは実際に効くかどうか試したいよね。

山内 ジャスミン・ギュ先生の補足情報があります。

「初めて『ケンシロウによろしく』の設定を持って行ったとき、編集者は『え、うん、そっか、うん……まあやってみよう』みたいな反応でした。出版社が違うため許可取りが必要だったので、実は編集者も困っていたようです」

山内 この編集者というのは先代の方ですよね?

編集 そうです。これも聞いてきたんですけど、まずは「マッサージマンガをやりたい」という話だったということで。

川島 マッサージマンガありきなんだ。

編集 それがまず先にあって、でも「マッサージマンガ? 地味なんじゃない?」ということで1回ジャスミン先生に戻したあとに、先生が『北斗の拳』を足してきたと。

川島 なるほど、相当ポップにしたんだ。

編集 出版社が違っても、この企画は面白いので、いろんなハードルをクリアしてでもやろうということになったということです。

山内 マッサージの方が先だったとは。

川島 ケンシロウは後からのトッピングだったという。

武論尊から言われた一言とは?

川島 僕からこんな質問をさせてもらいました。

「原哲夫先生・武論尊先生に、お会いしたことはありますか?」

川島 これは会っておかないとね。はたしてお会いしてるのか? お会いしてるならどんなことがあったのか? 回答はこちら。

「武論尊先生にはお会いしました。最初のお言葉は『怒ってないよー』でした」

川島 怒ってるやん(笑)! これ怒ってるときのやつやん(笑)。

「でも救われました。いつか原哲夫先生にもお会いする日が来て、『怒ってないよー』が欲しいです」

出典: FANY マガジン
©池ノ谷侑花(ゆかい)

山内 そしてジャスミン・ギュ先生の補足情報、まだあります。

「もともと『北斗の拳』の大ファンで、1番好きなキャラはケンシロウ。シンプルにカッコいいから。連載を始めてからはマニアックなネタを出しちゃいそうなので、『北斗の拳』はなるべく読まないようにしている。『北斗の拳』を読んでない方にも楽しめるよう心がけている」

川島 なるほど、あんまり細かいネタまでやっちゃうと、ついてこれない人がいると。いい距離感でやってるんですね。

山内 俺はもっと出していただいてもいいんですけどね。

川島 そうなるとおっさんしか読まないから。芸人として、ちょっと分かるところもあるよね。

山内 あんまり攻めすぎても、伝わらないと。

川島 人の単独ライブ見に行くの、ちょっと怖いもん。そっちに引っ張られるんじゃないかって思うし。キングオブコント見る前と見た後で、自分の作るネタが変わったらあかんやん?

山内 わかりますね。基本、前年度優勝者のネタがブームになりやすいから、それは影響を受けないようにしないといけないですもんね。

川島 M-1でオードリーが敗者復活から勝ち上がって爆発したときがあったやんか。その翌年のM-1グランプリ1回戦では、ボケがだいたい胸張ってたっていう(笑)。だから先生があえて『北斗の拳』を読まないのも、そういうところでしょう。影響されすぎないようにってね。

ヤクザがアイドルに!?『Back Street Girls』

川島 続いてはジャスミン・ギュ先生の初めての長編連載であり、代表作でもある『Back Street Girls』についても掘り下げていきましょう。

山内 『Back Street Girls』のストーリーを簡単に説明します。主人公は某暴力団・犬金組の若手組員である3人の極道……角刈りの「健太郎」、オールバックの「リョウ」、パンチパーマに髭面の「カズ」。彼らは大きなヘマをやらかしてしまい、組長の命令によって性転換手術を受けさせられた挙句、アイドルになってしまう。これは2択を迫られるんです。「臓器を売るか、性転換するか」ということで。それで3人とも性転換のほうを選んでアイドルになる。それで結成したアイドルグループ・ゴクドルズが、想像以上の人気を博したことから、3人は辞めるに辞められなくなってしまう。そんな極道ギャグコメディでございます。

川島 これ、設定だけ聞くと「すごく短命で終わっちゃうのかな」と思うんですけど、ストーリーがどんどん面白くなっていくんですよね。タイトルの付け方もいいよね。『ケンシロウによろしく』は、『北斗の拳』はもちろん『ブラックジャックによろしく』の要素もあるけど、こっちはもう『バックストリート・ボーイズ』ありき、いかにヤクザというのをオブラートに包むかという。すごくいいタイトルです。さあ、『Back Street Girls』について、先生に質問をぶつけました。まずはこちら。

「『Back Street Girls』で1番好きなキャラクターは?」

川島 これ気になりますね。回答はこちらです。

「犬金組長です。自由すぎる生き様や、アイドルプロデューサー、作詞家としての情熱が好きです」

山内 一番クレイジーな人ですけどね。

川島 でもこの方がいなかったら、このマンガはないですから。組長の説明よろしくお願いします。

山内 関東有数の暴力団・大酷会の分家・犬金組の組長。65歳ですね。犬金企画の社長兼プロデューサー兼作詞家。アイドルという商売が儲かることに目をつけ、ヘマをやらかした子分3人を性転換させ、アイドルグループ・ゴクドルズを結成させた張本人。

川島 この方が全てを仕組んだということですからね。

結局、ジャスミン・ギュとは何者なのか?

川島 先生の補足情報があります。

「仕事場では基本的に映画やドラマを流しっぱなし。始めて見る作品だと作業に集中できないので、何回も見た作品を流して作業している。『ゴッドファーザー PART II』は130回くらい見た」

川島 もうBGMなんだ(笑)。

「作画期間中は起きてから寝るまでマンガを描くが、1日の自分へのご褒美として、寝る2時間前からはビールを酔わない程度に飲みながら作業をしている」

川島 先生はお酒は飲まはるんですか?

編集 そうですね。自分で酒を出す店もやってて。

山内 それは「ジャスミン・ギュの店」と言わずに?

編集 そうです。

山内 それじゃあたどり着けないなあ。

川島 謎が謎を呼ぶなあ。それは会員制ですか?

編集 いや普通に入れるお店です。そこにいらっしゃるときはあるけど、店員として立っているわけではないです。

出典: FANY マガジン
©池ノ谷侑花(ゆかい)

川島 謎が謎を呼んでますが、続いての質問はこちら。

「影響を受けた漫画家は誰ですか?」

川島 先生の回答はこちら。

「伊藤潤二先生、楳図かずお先生、井上雄彦先生、藤子・F・不二雄先生。ホラーマンガにかなり影響を受けました。ギャグマンガとホラーマンガには通ずるものがあると思います。学生時代、初めて新人賞に投稿した作品もホラーマンガでした」

川島 たしかに、落語上手い人って怪談も上手いからね。紙一重です。そしてジャスミン・ギュ先生に仲の良いマンガ家さんを聞いたところ、回答はこちらでした。

「デビュー前、近所の飲み屋で出会った、『鬼門街』の永田晃一先生と『OREN’S』のカズ・ヤンセ先生。ヤングマガジンの作者では、『セブン☆スター』の柳内大樹先生と、『ザ・ファブル』の南勝久先生は長い付き合いで、悩み相談なども聞いてくださっている尊敬する先輩です。仲の良いの基準が微妙なので、一応私のことを『ギュちゃん』と呼んでくださる先生方を述べました」

川島 年上の人に「ギュちゃん」とは言わないよね? 相談できるということは、絶対キャリアとしては浅いはず。

山内 永田先生も柳内先生も、たーし先生が仲いいと言ってました。ああいうおっさんなんじゃないですか(笑)?

川島 あれ、つながってきたぞ。ちょっと見た目若そうなおっさんなんか(笑)? でも男の人に「ギュちゃん」ってあだ名つけるかな? 普通「ジャスミンくん」とかじゃない?

山内 永田先生は、居酒屋でたまたま出会っているわけですよね。どう仲良くなったかわかんないけど、居酒屋で女の人に声かけます? 女性のマンガ家の先生と男性のマンガ家の先生がめっちゃ仲良くなるってあんまり聞かなくないですか? 男子同士でつるんでいるイメージがあります。

川島 ここに名前の挙がった先生は男子ばかりですからね。

山内 しかも男くさいマンガばっかりですよ。40代や50代の先生の中で、1人だけ30代だったら、「ちゃん付け」するんじゃないですか? 年が離れすぎてるから。

川島 そうか、それ系でしょ。

山内 絶対合ってる。プロファイリングはもう完璧に近い。

川島 あとは性別だけ。(伊藤潤二の)『うずまき』って女性人気がすごい高いんだよ。ホラーマンガって女性がすごいハマるから。藤子・F・不二雄については、チェイサーで入れてるだけだと思う。これを入れておけば謎感を出せるっていう。井上先生は男とミスリードする為に入れていると思う。伊藤先生と楳図先生はとにかく女性人気が高い。ということは……ジャスミン・ギュ先生は30代女性?

山内 だったらびっくりするな。

川島 山内さん、もう1つ、消しとかなあかん可能性がある。(編集者に向かって)あなた、もしかしてジャスミン・ギュですか?

編集 ご想像におまかせします(笑)。

山内 その可能性まであるの(笑)!?

川島 先生に今、毎週読んでるマンガについて聞いてみました。

「ヤングマガジンで最近始まったハライチ岩井さん原作の『ムムリン』を楽しく読んでます。お笑いが好きなので、芸人さんが作るマンガにすごく興味が湧きました。まだ始まったばかりだから毎週楽しみです」

山内 岩井、そんなことしてるの?

川島 めっちゃ人気なんですって。ちょっと『ドラえもん』っぽい要素があるんで。俺はまだ読んだことないですけど。

山内 俺も知らなかったです。

川島 これをジャスミン先生が楽しみにしている。岩井君も女性人気が高いんですよね……やっぱり女性かな。

山内 女性の可能性が急激に上がってきた。

川島 もう最後ですけど、結局、年齢も性別も分かりませんでした。山内さん、どう思います?

山内 僕はやっぱり『北斗の拳』を読んでいる感じから、若めの男性。36、7くらいの男性マンガ家だと思ってます。で、チョケてかわいがられる感じだから、先輩たちから『ギュちゃん』と呼ばれてるんじゃないかと。

川島 俺は32歳の女性だと思う。作品の中に美しさもあるし、ホラーマンガが好きというところとか、ハライチ岩井君が好きっていうところとか。『Back Street Girls』で言えば、やたらとおっぱいを推してくるんですよ。男性だったらここまで描くかなって思う。あと、きれいな、まったくムケてない男性器が出てくるのよ。すごくつるんとしていて。そういうのが女性っぽいなって。……あと、新たな可能性を思いつきました。ジャスミン・ギュって1人なんですかね?

山内 うわ、なにそれ! 集合体ですか?

川島 コンビ名じゃない? で、「ギュちゃん」と「ジャスミンくん」がいるんだよ(と言って編集者のほうを見る)。いま、座り方を変えましたね?

山内 余計わからなくなった。せめて集合体かどうかだけでも教えてくれます? それくらい別にいいんじゃないですか?

編集 5人以下です。

山内 なんなんそれ(笑)!

川島 面白い答え! いや、これ濁し方によって行けたのよ。「いや、それは言えません」やったら1人じゃないもん。1人やったら「1人」って言うと思うし。5人以下か……また来てください!

出典: FANY マガジン
©池ノ谷侑花(ゆかい)

*次回放送は「書店員に聞いた2022年最新マンガ」をお届けします。

(構成:前田隆弘

マンガバラエティ『川島・山内のマンガ沼』は、読売テレビ:1月22日(土)深25:34-26:04、日本テレビ:1月27日(木)深26:29-26:59の放送(※一部地域を除く)です。

おたのしみに!

番組概要

川島・山内のマンガ沼
次回放送
読売テレビ:1月22日(土) 深25:34-26:04
日本テレビ:1月27日(木) 深26:29-26:59
「書店員に聞いた2022年最新マンガ」を放送。
(TVerでも配信中!)

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