広島を拠点に活躍するお笑いコンビ・メンバー(山口提樹、潮圭太)のYouTubeチャンネル『メンバーチャンネル』が、注目を集めています。特にバズっているのが、誰もがよく知るヒット曲を、そのタイトルになっている“モノ”から出る音を加工して演奏する「奏でてみた」シリーズ。バレンタインデー直前の2月12日(土)には待望の新作動画、「【手作りバレンタイン】チョコレートから出る音でPerfumeのチョコレイト・ディスコ奏でてみた」がアップされたということで、動画編集直後の2人に制作秘話や見どころ、今後の展望などをズバリ聞いてみました。
歌ネタ・リズムネタに定評があり、「歌ネタ王決定戦2018」でチャンピオンに輝いたメンバー。『メンバーチャンネル』には“音”を駆使したおもしろ動画が並び、「奏でてみた」シリーズでは、BTSの『Butter』をフライパンでバターが溶ける音などを使って再現したり、瑛人の『香水』を香水から出る音で演奏するなど、斜め上をいく発想と驚異の完成度で、いくつもの作品をバズらせてきました。
すべては山口の“耳コピ”から生まれる
──新作は『チョコレイト・ディスコ』ということですが、なぜこの曲を選んだんですか?
山口 バレンタインが近いんで、その関連で何かないかなっていうところからです。2人が思いつくチョコレートの曲がそれしかなかったので(笑)、もう一択でした。
潮 バレンタインが近づくと、YouTubeでチョコレート菓子の作り方を調べる人が増えるかなと。検索したら、そのついでに出てくるかも……みたいな算段もあります。
──「バター買ってきてBTSの【Butter】奏でてみた」と同様、今度はチョコレートで?
山口 『Butter』のときは(バターの)容器を鳴らしたり、というのもやったんですけど、今回はぜんぶチョコだけで音を出してみました。
潮 最初は包み紙とか容器の音も使おうと思ったんですけど、相方が「それはもうやめよう」と言うので。「チョコレートだけで勝負しようぜ」って。
──自らハードルを上げたんですね。
山口 上げましたね〜、地味に(笑)。
──作業は楽譜を見ながら進めるんですか?
山口 いや、まず耳コピで起こします。譜面は読めないし書けないです。音源を流しながら、聴き取ったものを同時進行で作曲ソフトに打ち込んでいく、という作業をやってます。
潮 僕は(モノから出る音を)聴いてもなんのことだかさっぱりわからないので、それ(音)を見つけ出す力はすごいと思いますね。山口がその作業をやってる間、僕はヒマなんですよ。やることがないので、隣で応援するしかないんですけど……。
──一応、隣にはいるんですね(笑)。
潮 その間、自宅にいたりすると申し訳ないなと思って。たまに山口が気を使って、僕に意見を求めてくることもあるんですけど、いい意見を言えたことがないですね(笑)。
絶対音感の境地に辿り着けるかも
──もしや、山口さんには絶対音感があるのでは?
山口 絶対音感ではなく、相対音感っていうヤツですね。基準となる“ド”の音を教えてもらえば、ほかに鳴らした音が何の音かわかるっていう。絶対音感の人は、何も基準がないところで適当に音を出しても(それが何の音か)わかるんですけど、それはできない。ただ最近、ちょっとずつ絶対音感になってきた気が……。
──そうなんですか!
山口 実感があるんです。ポンと聞こえた音が「あ、これ何の音だ」ってわかって。
潮 合ってるの?
山口 合ってるんだよ。この年で、もしかしたらちょっとずつ身についてきてるのかもと思って(笑)。
潮 絶対音感の境地に辿り着けるかもしれない(笑)。
──一緒に作業をしている潮さんの音感も、徐々に鍛えられているかもしれませんよ?
潮 それはないです(笑)。だから、歌ネタの漫才とかやってて「そこ違うよ」って言われても、何が違うかわからないことがあります。何回も教えてもらって、ようやくノドが覚えてその音を出せてるだけで、僕からしたら間違ってるか、間違ってないかがあんまりわからない。よく「メンバーって音楽的にすごいよね」って言っていただくんですけど、そんなとき、どういう顔していいかわからないです。
山口 (笑)
「制作に15時間以上」でコスパ悪い
──『チョコレイト・ディスコ』の集音作業で大変だったことは?
山口 チョコを固めた後に壊れる(割れる)っていう失敗があって。ふくらませた風船にチョコをコーティングして、固まってから風船を取り出して球体を作ったり、トイレットペーパーの芯みたいなものを使ってチョコの筒を作ったりしてるんですけど、いざ剥がそうというときに、ぜんぶバリバリっと壊れたりとか……。それで丸1日無駄になった、みたいなこともありました(笑)。
──今回は完成までにどれぐらいかかったんですか?
潮 全部で10日間ぐらいだと思います。
山口 時間でいったら15時間、いやもっとか。
──チョコを買いに行く時間なんかも必要ですもんね。
山口 買い出しでは、何が要るかわからないんで、とにかくいろいろ買いました。結局、使わなかったチョコもめっちゃあります。買って音を確認して、「違うな」みたいなのとか。
──チョコの種類によっても音に違いが!?
山口 密度とか大きさでぜんぜん違ったりもしましたね。カカオ含有量が高かったら音も高い、みたいな感じで。
潮 チョコを買うときに、軽く叩いてみる客なんて僕らぐらいのもんでしょうね。ちょっと店員さんの目も気にしながら(笑)。
山口 コソコソと(笑)。
潮 最終的に購入はするので、叩かせもてらって。
山口 やってみると、ブラックチョコレートのほうが硬いっていうのはありました。1回目にプレーンを使って失敗したので、2回目はブラックチョコを使ったら成功した。だから、“楽器”を作るならブラックチョコがオススメです。
潮 誰も作らないけどね(笑)。
山口 あと、チョコレートから出た音って、“ドレミファソラシ”のどれでもない音だったりするんですよ。ドとレの間ぐらいの微妙な音とかがあって、それを調整するのにすごい時間がかかる。
潮 そのまま並べたんじゃキレイな音にならないから、編集ソフトで微妙にずらしてるっていうね。
──自宅で作業しているそうですが、周囲の音が影響することは?
山口 ありますね。ビルの9階で、外の音がすごい入ってくるんですよ。なので、遮光と防音を兼ねたパネルを張って。
潮 厚紙みたいなものを窓に張って、光と音を極力遮断するようにしてます。
山口 でも防音は、ほぼできてなくて……。
潮 もう気持ちの問題というか。
山口 車待ちをして、車が通り過ぎたら「いまだ!」って録り始める。
潮 ちょうどでっかい交差点の近くなので、信号が切り替わるとき、両方の車が止まるタイミングがあるんですけど、そこで録るっていう。
山口 だから、そこにもかなり時間を取られてます。
──いちばん時間がかかるのは、集音作業なんでしょうか?
潮 いちばん時間かかってるのは、(集音が終わった後の)山口の曲編集の時間だと思いますね。
山口 今回だと12時間ぐらいかかってるんで……じゃあ合計15時間以上かかってるか。コスパ悪いですね(笑)。
チョコバーかじりすぎて体重2キロ増!
──『チョコレイト・ディスコ』の見どころ、聴きどころは?
山口 さっきお話ししたように、風船で作った丸いチョコを使ってるんですけど、最後にそれを食べるんですよ。でも、食べたらもうおしまい(使えない)じゃないですか。なので、そのときの僕の緊張を感じてほしいですね。
潮 (笑)
山口 もし(集音した音が)使えなかったら、また1日かけてチョコを固めて、中の風船を取り出して……をやらないといけないという恐怖が。
潮 でっかいチョコバーをかじる音も使ってるんですけど、これもなかなかいい音が出なくて。1回かじったら、残った部分はもう使えないんで、食べるしかない。結局、7、8本ぐらい食べたと思います。1日でこんなに食っちゃダメだろう、ぐらいの量を食べて、体重が1~2キロ増えてるんで、そのがんばったところを見てほしいです。
山口 わかりにくい(笑)。
潮 「よく、あんなにチョコバーを食べたね!」っていう気持ちで見ていただければ(笑)。
山口 「ガッ!」みたいな音がほしいので、「ガリッ!」となると違うんですよ。
潮 細かいんです(笑)。その場ではOKになったのに、あとで山口が編集する段階で聴いてみたら思ってた音じゃなかったっていうのが、過去に何回かあって。それで録り直しとかもあったので、その場でできるだけいい音を出すために何度もやりました。
山口 録り直しって、めちゃくちゃめんどくさいんですよ。音を録るときはテレビを移動させて時計を外して、飼ってる鳥を隣の部屋に逃がして……。
潮 模様替えをしないといけないんでね。
山口 そうとう時間がかかるんで、録り直しは地獄なんです。しかも、奥さんが帰ってくるまでに原状復帰しとかないと文句言われるんで、2人で大急ぎで戻して(笑)。
──本当にいろんな苦労があるんですね(笑)。
山口 でも、それがぜんぶ楽しいです。
潮 たしかに。僕ら小学校からの同級生で、中学とか高校のときにもビデオカメラ回して動画撮ってたんですよ。
山口 YouTubeがない時代から。
潮 どこに出すわけでもなく(笑)。それがいま、仕事としてできてるので、基本的にずっと楽しいです。
『ドライフラワー』に『キセキ』に『Butter』
──過去作についても聞たいのですが、「おカネがかかったNo.1」はどの曲ですか?
潮 『ドライフラワー』(ドライフラワーから出た音を加工して優里の【ドライフラワー】奏でてみた)ですね。(ドライフラワーは)まあまあな値段がしたので……1人1、2万とか使ったかもしれない。
山口 そんなに使ったか。でも1本で3000円とかしたもんね。
潮 お店の人に「硬いドライフラワーありますか」とか聞いてね。「いい音が鳴りそうなヤツはありますか」とか(笑)。
──では、「時間がかかったNo.1」は?
山口 それはやっぱ、『キセキ』(奇跡の瞬間から出た音を加工してGReeeeNのキセキを奏でてみた)だと思います。
潮 奇跡を6、7個起こしたんで、合計したらたぶんいちばんかかってますね。僕がキャップをはじいて筒に通すヤツは、(集音に)日をまたいでますし。
山口 潮の指が変色して真っ赤になったんです。
潮 中指が腫れちゃって、今日は無理だってなったので、冷やして次の日もう1回。もう折れてもいいやという覚悟で(笑)。
──「お気に入りNo.1」も教えてください。
山口 僕は『Butter』です。パンケーキの上にバターを乗せる音とかめっちゃいいなと。あと、フライパンに(バターを)ジューってやる音をリバースシンバルとして使ってるんですけど、あのへんはうまい具合にいったなと思ってます。
潮 僕は『香水』(香水から出る音を加工して【香水/瑛人】を作ってみた)ですかね。完成した音が美しすぎる。瓶の音とか香水をシュッとやる音がマッチしてて、いちばん好きです。
山口 『キセキ』で卵を割ったら黄身が2個出てくるところも。(歌詞の)「君に巡り合えたそれって『奇跡』」の“君”と“黄身”をかけてるんですよ!
潮 気づいてコメントしてくれる人がいないから、自分から言っちゃった(笑)。
──さらなる新作にも期待してしまいます!
山口 ゲーム実況とか流行ってるから、ゲームの音を組み合わせてゲーム画面で曲作る、とか考えてます。
潮 みんなが知ってるCMソングを、その商品を使って奏でるとか。アイデアはいろいろ出てますね。
──YouTube『メンバーチャンネル』の今後の展望も教えてください。
山口 『遺伝子組み換えトトロ』とかいって、原曲を少しずつ変えて、YouTubeのAIがギリギリでオリジナル曲だと判定する曲をアップしてるんですが、そういうふうに音楽を使って、軽く笑える興味深いことをやっていきたい。ミュージシャンはやらないだろうし芸人にもできないっていう、そのちょうど中間ぐらいのところのおもしろみのある音楽、みたいなことをやりたいですね。
公式YouTubeチャンネル『メンバーチャンネル』はこちらから。