全身全霊をかけて出版を目指す! 『作家育成プロジェクト』vol. 2

こんにちは、芸人ライターのあわよくば・ファビアンです。

今回も、吉本興業とブックオリティが手を組み始まった『作家育成プロジェクト』についての第二弾の記事をお送りします。

前回は、本を出すことの意義のほか、サンプル原稿や『はじめに』の大切さを学びました。

今回、高橋先生はどんな授業を行い、僕たちは何を吸収したのか——、まとめてレポートしたいと思います。

編集者・高橋朋宏とは?

出典: FANY マガジン

まずはじめに、前回に引き続き、高橋先生のプロフィールを紹介したいと思います。

高橋朋宏(Takahashi Tomohiro)

  • 通称『タカトモ』先生。
  • ベストセラー編集者として、吉本興業に文化人として所属。
  • ブックオリティ代表取締役学長。元サンマーク出版常務取締役編集長。

【過去に担当した本】

  • 『病気にならない生き方』/新谷弘実(140万部)
  • 『体温を上げると健康になる』/齋藤真嗣(70万部)
  • 『なぜ、「これ」は健康にいいのか?』/小林弘幸(52万部)
  • 『人生がときめく片づけの魔法』/近藤麻理恵(159万部)

そうなんです、ベストセラー連発の、第一線で活躍し続けてきた編集者なのです!

とくに『人生がときめく片づけの魔法』は、2014年10月、米国でも刊行されて400万部を超え、日米両国でミリオンセラーという、日本の出版史上初の快挙となりました。

著者として本を読め

「最近読んで一番勉強になった本はなんですか?」

出典: FANY マガジン

授業はそんな問いかけから始まりました。
というのも、これから本を書くにあたって、僕らは読者じゃなくて、著者として本を読まないといけないからです。

書店に並んでいる自分と同じジャンルの本は“ライバル”。
高橋先生は“仮想敵国”という強烈な言葉を使い、講義を続けます。

高橋「まずは仮想敵国をリスペクトしましょう。書店にある本は、考えや物語の出口が見つかって、世の中に放たれています。編集者が『これなら世に出せる』とゴーサインを出しているということです。

読んで研究しましょう。自分に足りないものは何か、反対に自分だけが持っているものは何か。見極め、違いを意識しましょう。読みっぱなしじゃなくて、自問自答し、違いを考えることが出版につながっていきます」

僕は小説(ショートショート)で挑戦しようとしているので、今まで読んだものを思い返してみました。

星新一に始まり、筒井康隆、小松左京、阿刀田高、江坂遊、田丸雅智などなど(敬称略)……。

彼らにあって、自分にないもの。

彼らになくて、自分にあるもの。

答えはすぐに出ませんが、このセミナーの最終回までには見つけておかないといけません。

授業は、最近読んで勉強になった本・面白かった本について語り合うグループワークへと進みました。
僕は朝井リョウさんの小説『正欲』について、話しました。

伝え方の角度を決めよう

次に『文体』についての講義がありました。

文体とは、文の型のことです。話し言葉で言えば『言い方』に近いでしょうか。
文体を考えることは、どう読んでもらいたいか、どう伝わって欲しいか、その角度を決めることだと言います。

高橋「“文は人なり”という言葉があります。これはその通りで、文には否応なく人柄が出てしまいます。

例えばSNSの文面を見ているだけでも、その人がどういう人かわかります。この人をもっと知りたいと思うのか、反対にこの人とは合わないと感じてしまうのか。つまり相手との距離感が決まってくるんです。

本も文体によって、読者の受ける印象が変わります。だからまず、本を読むときには、ぐさっと刺さるのか、温かく包み込んでくれるのかなど、どんな角度で著者からのメッセージが伝わってくるか意識しましょう。内容以外に、温度や熱意など伝わるものがあると思います。

書くときにも、どう伝えたいか意識しましょう。一見おなじ『です・ます調』で書かれていても、格調高かったり、臨場感があったり、泥臭さがあったり、ときには敢えて上から目線で書かれているものもあります」

確かに、同じビジネス本を読んでいても堀江貴文さんと、西野さんの本では違うなと思いました。

だ・ある調で論理的で、時には突き放す優しさ(厳しさ?)がある堀江さん、です・ます調の話し言葉で、包み込むような文章の西野さんと言えばイメージしやすいでしょうか。

最近ふたりの本を読んだので、ふと思い浮かびました。

僕の場合は小説なので、文体に関しては、一人称のときは主人公の視点と喋り方で、三人称ならより状況がわかりやすく伝えられるように書いてみようと思います。

線を引きたくなる文章を書くには?

出典: FANY マガジン

さらに講義は続きます。

高橋「本には線を引きたくなる文章や、折り目をつけたくなるページがないといけません。反対に、一箇所も線を引いてもらえないような本は、買ってもらえません。本屋で手に取った段階で“これだよ!”と思わせないと。

もしかしたらあなたがこれから書く一文との出会いで、読者の人生が変わってしまうかもしれない。それが文章の力です」

今までそんな思いを持って、文章を書いたことはありませんでした。
やはり今まで本を生業に、いや本に人生を捧げてきた高橋先生にそう言われると、説得力が違います。

高橋「ここから小技を紹介します。これは今の段階では、小手先のテクニックです。

しかし、技は使い込んでいるうちに自分のものになってきます。そうすると、自分の中から思わぬ言葉が出てきます。コツを使い倒すことで、読者が線を引きたくなる箇所が確実に増えます。逆説的ですが、敢えてコツを紹介するんです。

日本語は『て・に・を・は』で決まると言われます。正直、恐ろしいほど文が見違えます。芥川賞作家の平野啓一郎さんも、大学時代、熱心に三島由紀夫の文章の書き方を研究したといいます。

皆さんも情熱的に書き、書いた後に冷静さを持って自分の文章を磨き上げましょう。バリエーションが増えると文章の幅が広がります」

それから、実際に高橋さんが編集した本の例文を使って、テクニックの説明がされました。
対比、反語、断言、強調、倒置、無生物主語、畳み掛けなどなど、今すぐにでも使えそうなものがたくさんありました。

さらにはみんなが書いている『はじめに』の箇所を、強調してみるトレーニングが行われました。

20分ではありますが、みんな自分の世界に集中していました。

あなたの墓には何と書かれたいですか?

出典: FANY マガジン

高橋「今日の最後の質問です。あなたのお墓には何と書かれたいですか?」

ドキッとする質問で、授業は終わりに近づきます。

高橋「いわゆる墓碑銘です。私は『本のチカラを誰よりも信じた者、ここに眠る』と書かれたい。それくらいの気持ちで編集者をしています。皆さんも考えてみてください」

ここでそれぞれ、考える時間があったあと、全員で墓碑銘を発表しました。

  • 言葉で遊び尽くした人が眠りました
  • 日本とベトナムをつないだ人が眠る墓
  • 何でもない隣人の小説家
  • 神様の愛のメッセンジャー天使
  • 書道しか出来なかった者、書道とともに生きた者、書道以外は何もなかった者
  • イラストで、見る人の心を毎日ワクワクさせ続けた人、ここに眠る
  • 3000本の会話劇を書いた人
  • 水泳を愛し、全身全霊でバタフライに情熱を注いだ者
  • まだ未来を見て世界を歩いているので、ここにはおそらくいません

(一部抜粋)

「みんな一体どんな本を書き、どんな人生を過ごそうとしてるんだ?」と考えてしまい、ワクワクが止まりません。

ちなみに、僕のはこういったものが完成しました。

  • 1000の物語はこれからも人を幸せにし、刺激し、ワクワクさせるでしょう——安らかに

ちなみに今、短いものも合わせると300ほどありますが、果たして世に出せるレベルなのか——。
いっぱい吸収して、せっかくもらったチャンスをモノにしたいと思います。

最後に高橋先生から言葉がありました。

高橋「書いたものが残るってすごくないですか? 今までは絶版になることもあったんだけど、現代では、電子書籍を含めたら絶対に残ります。

僕がいろんな著者を見てきて思うのは、自分が書いたものを通して人を幸せにしている、あるいは役に立っている。小説でも実用書でも自己啓発でも、ぜひそういうものを皆さんにも書いて残して欲しい。

出版が決まったら、まちがいなく人生が変わります。激変につながる可能性もある。だったら時間を費やさない理由はありません、何をさしおいてもやるべきなんです。

空いてる時間に書こうと思ったら、絶対に書けません。スケジュールに入れてください。
本を書くというのは、人生の時間をかけるに値します。短期集中して、全身全霊をかけて取り組んでください」

こうして第二回の講義は幕を閉じました。
授業が終わってすぐ、Googleカレンダーに『書く時間』とスケジュールを入れました。

また6月の第三回講義に向けて、課題があります。出版できるよう、全身全霊で取り組みたいと思います。

プロジェクト概要

作家育成プロジェクト

吉本興業が本気で「本を書く才能」を見つけたいという思いから生まれたプロジェクト。
応募者総勢220名の中から審査を通過した、芸人、文化人、アスリート、アーティスト、アイドルなど吉本興業所属のタレント33名が参加中。
ブックオリティの出版セミナーでプロット作成や執筆の指導を受けたあと、複数の出版社が参加するオーディション方式の「出版プレゼン大会」(6月末開催予定)に参加し、出版のチャンスを広げていく。
さらに、『板尾日記』(リトルモア)などの著書があり、『火花』(文藝春秋)など書籍を原作とした映画作品の監督経験もある板尾創路が、アンバサダーとして携わることも決定。

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