芸人、タレントなど著名人だけでなく、元ホストやAV女優、一夫多妻制を実践する謎の男性など、さまざまな個性あふれる人に自身の歩んできた人生を聞く、YouTubeの人気チャンネル『街録ch〜あなたの人生、教えて下さい〜』。その開設2周年を記念して、4月14日(木)に初のライブイベント『街録ch -episode.0 笑える絶望』が開催されます。そこで今回は、『街録ch』で自身の壮絶な生い立ちを語って話題となったガンダム芸人・若井おさむが立場を変えて、チャンネルを主宰する三谷三四郎さんにインタビューを敢行しました!
東野幸治など吉本芸人も多数出演するこの『街録ch』で動画を制作するのは、かつてテレビ番組でディレクターを務めていた三谷さん。相手から引き出す話の面白さで、2020年3月のスタートから、いまではチャンネル登録者数63万人を超えるまでになりました。なぜ誰もが、三谷さんにはいろいろなことを話したくなってしまうのか――その秘密に迫ります。
街録から1年…若井に訪れた変化
若井 今日は人生初のインタビューをする側ということで、めちゃくちゃ緊張してるんですけど、よろしくお願いします。
三谷 こちらこそ、よろしくお願いします。若井さんを取材したのは2020年の年末。「街録ch×中尾班」(中尾班=吉本興業のマネジメント本部東京マネジメントセクションのチーム)とのコラボ第1弾が、若井さんだったんですよね。でも確か、取材したときは「もう結婚も、子どももいいかな」みたいな話だったじゃないですか。だから今回、結婚されてお子さんもいることに驚いたんですけど。
若井 そうなんですよ。2021年8月に再婚して、子どもが1月に生まれました。街録のインタビューを受けてから、1年経たないくらいですね。実際、自分の生い立ちもあって、子どもは作りたくないという気持ちでいたんです。でも、先輩からも「子どもっていうのは、いいぞ」と言われたりして……。虐待を受けた人間に子どもができると、99%、虐待してしまうというのを聞いていたので不安はありましたが、実際に子どもが生まれたら、とにかく可愛くて。虐待しようなんてかけらも思わない。とにかく大事に大事に、育てていきたいです。
三谷 うちの子がいま1歳3カ月なので、1歳ぐらい先輩かもしれませんね。若井さんのところは、まだ生まれて間もないですもんね?
若井 まだ2カ月経ってないです。3時間に1回ミルクをあげたり、夜の20時から朝の8時ぐらいまでオムツを替えたりしてますけど、それもぜんぜん苦ではないです。その後、朝からバイトに行って、夜に帰ってきて、お風呂に入れて……という生活ですが、嫌だなとか微塵も感じない。子どものパワーってすごいなと。ちなみに、街録chで話を聞くときって、お子さんの影響もあるんですか?
三谷 うちは女の子なんですけど、20代女性に話を聞くとき、「親ってどんな気持ちなんだろうな」っていう疑問が自然にわくようになった。子どもが生まれたことで、「親はどうなんだろう」という視点が肥大していった感じです。
若井 子どもが生まれたことで、久しぶりに連絡をもらう機会が多いんですが、「おめでとう!」と一緒に「街録見たよ」って必ず言われる。いまだに反響がすごいです。
三谷 街録chのファンに好きな動画を聞くと、若井さんの名前が挙がります。「そんなつもりはなかったけど、前・後編、一気に見ちゃいました」とか。若井さんは、話を聞いたら、想像以上のものが出てきた感じだったんですけど(笑)。漁でアミを引いたら、魚いっぱい入ってた的な感じでしたね。
大切なのは「緊張させないこと」
若井 自分が取材されたときも思いましたけど、三谷さんとは話しやすい。「こんなこともあるわ」って思い出すし、聞いてもらいたいという気持ちにもなる。いろんな方に話を聞いていると思いますけど、聞き出すコツとかあるんですか?
三谷 なんですかねー。大それた感じじゃなく登場するとかかな? 待ち合わせには1人で立っています。チャンネルの規模が大きくなったからと言って、ほかのスタッフを連れていたら、その時点で相手はちょっと緊張するじゃないですか? 芸能人ならそういうのも慣れているけど、一般の方は緊張しちゃう。大事なのは「緊張させない」こと。
あと、外でやっているので、いろいろな雑音もあって気が紛れるのかな、とも思います。密室に呼び出されて、自分の声も反響してという状況だと、ちょっと緊張しちゃうと思いますね。最初はおカネがなかったから外で撮影していただけなんですけど(笑)。スタジオのおカネがないから、毎日続けるためには、外で話を聞けばいいかなと思ったけど、それが結果、良いほうに転がっているのかも。
若井 話を聞いていて「この人は向いているな」とか「この人は向いていないな」というのはありますか?
三谷 あまりないけど、講演会を頻繁にやっているような人だと、話が2時間くらいのパッケージとして出来上がっているんですよね。だから、ムダもないけど、こっちの質問の入るスキもなかなかない。向いていないというわけではないけど、やりづらさは少しあるかもしれませんね。
若井 逆に、なかなか話してくれない人はいるんですか?
三谷 この前ありました。こちらからオファーした人だったんですけど、日本で一夫多妻制を実践している68歳のおじいちゃんで、その人は、こちらが質問しても毎回一言で返してくる。こちらが頭をフル回転させなきゃいけない状況でしたね(笑)。最後に「こういう取材を受けるのは面倒ですか?」と聞いたら、「けっこう好きです」と答えられたのが意外でした。口が重い人のときのほうが、こっちが頑張らなきゃいけないから、ちょっとエンジンがかかるというか、僕の脳はフル回転するので、冴えてくる感じですね。
若井 街録chに出た芸人は、僕も含めてみんな「どうしよう。エピソードなんて何にもないのに」とそういう気持ちで行ったと思うんですよ。なに話そうってドキドキする。僕もそういう気持ちで取材受けたんですけど。
三谷 若井さんはエピソード、めちゃくちゃあるじゃないですか(笑)。でも、芸人さんは皆さん、ベーストークが上手なので面白いですよね。やりやすいっちゃやりやすい。あと、自分がそもそもお笑いが好きだから芸人さんの話を聞くのは楽しい。でも、確かに気負っちゃいますよね。だって自分の人生話してくださいって、しかも芸人なのに笑いを取らなくていいですって言ってるようなもので。そこがこそばゆいかもしれない。
ただ、好きなようにしてもらえたらいいと僕は思ってるんですけどね。演出はかけないので。ルールは作らない。ルールを作ると同じような感じになっちゃうから面白くない。どういうモードで話始めるのかなって、その判断も含めてその人の人間性が出るのでお任せしている感じです。
チャンス大城さんとかは、話を聞きながら、すべらない話的なエピソードトークをはさんできてくれたり。ゆったり感の中村(英将)さんも、自分のなかで「ぜんぶエピソードトークで返そう」と決めてたらしくて。そういうのも含めてその人の色が出るから面白いなと思います。
若井 印象に残っている芸人の回はありますか?
三谷 とろサーモンの久保田(かずのぶ)さんは、やっていていちばんドキドキした。久保田さんが質問に対して出す回答が、面白いかつめちゃくちゃまとまっていて、しかもスピードが速くて、次の質問が間に合わないというぐらいで。久保田さんは、いい意味でこちら側が頭を働かせて、すごくスリルがありました。
若井 そう聞くと“芸人力”を感じますね。
最初の1週間で打ち砕かれた
――街録chが2周年を迎え、チャンネル登録者数は63万人。始めたときに、2年でここまでに成長していると想像していましたか?
三谷 まったく思っていなかった。もちろん最初は、芸人を目指す人が1年目で売れると思っているのと同じくらいの、淡い夢は持っていました。「いきなり100万再生とかいっちゃうのかな」とか。でも、そういう気持ちは、最初の1週間で打ち砕かれました。「あ、YouTubeってそういうものじゃないんだ」と。
でも、なんとなく決めていたのは、見た人の「得」になるように作ろうということです。そして、話をした本人が喜んでくれたら、その人のまわりの人も10人くらいは喜んで見てくれるはず。だったら1000人に話を聞いたら、見てくれる人は1万人くらいにはなっているかなと。地道にそういうことを続けていたら、誰かが面白がってくれないかなという下心はありました。ただ、こんなペースで伸びてくれるとは思ってなかった。そういう意味では、東野さんが出てくれたおかげです。東野さんに出ていただいていなかったら、いまでも10万人いっているかどうかだと思います。
若井 4月には、東野さんも出演する街録ch初のライブをするんですよね?
三谷 そうなんです。登録者1万人になったところで、東野さんにDM(ダイレクトメッセージ)で「1万人突破できそうなんで、記念に出てもらえませんか」と声をかけたら、「ええよ。鑑賞会とかなんでもええよ」と言ってくださって。せっかく出てもらえるなら、普通にインタビューさせてほしいと思って、1万人のときはあの形(2020年9月の街録ch「ダウンタウンと出会い20代で天下を諦めた/排水溝で育ったからこそのMC術」など)にしました。
そうしたら、去年12月に東野さんの「ホンモノラジオ」(ABCラジオ)で、「以前、(三谷ディレクターと)鑑賞会みたいなライブしましょうと話しとったけど、あれ、どうなったんでしょうね。忙しいから、相手してられないんですかね」とオチ的に話してくれてて。それを聞いてすぐにご連絡して、今回、ライブをすることになったんです。
もともと東野さんとは担当していたテレビの深夜番組に出ていただいた縁があったんですけど、あの番組の準レギュラーだった平成ノブシコブシの吉村(崇)さんと、『街録ch』の主題歌を作ってくださっている大森靖子さんにも出ていただけることになりました。こちらが何者でもなく、リスクしかない、付き合っても何のメリットもなかったのに僕に手を貸してくれた3人をゲストで呼んだんです。
――せっかく今日、再会したんですから、若井さんも何かの形で出演してはどうですか?
若井 そんなそんな、恐れ多いです。
三谷 あーでも、僕もちょっと考えていたんですよ。どういう形になるかわからないけど、ぜひ関わっていただきたいですね。
若井 ありがとうございます。僕にできることがあれば、なんでもやりますので!
『街録ch』はこちらから。
公演概要
『街録ch -episode.0 笑える絶望』
出演者:ディレクター三谷、東野幸治、吉村崇(平成ノブシコブシ)、大森靖子
開催日:4月14日(木)
時間:開場18:00 開演19:00
場所:草月ホール
料金:前売5,500円 配信2,200円
FANYチケット(会場)はこちらから。
FANYオンラインチケット(配信)はこちらから。