又吉が海外支援に取り組むフロントランナー3人と対談! 「日本人だからこそ気づけるものがある」

お笑いコンビ・ピースの又吉直樹が、日本の「政府開発援助(ODA)」の意義を伝えるドキュメンタリー動画『フロントランナー~世界の未来を作る日本人たち~』でナビゲーターを務めることになりました。動画では「平和構築」「保健・栄養」「防災」の分野で、国際協力の場で活躍する3人のフロントランナーと又吉が対談。日本が培ってきた知見で世界に貢献する3人の熱い思いに触れ、又吉も「もっと関心を持って学びたい」と思いを新たにしました。

出典: FANY マガジン

“心に刺さるメッセージ”を発信

動画のテーマであるODAとは「Official Development Assistance(政府開発援助)」の略で、開発途上国の経済・社会・福祉の発展に役立てるために政府が行う国際協力のことです。これまで日本のODAは、「人間の安全保障」を理念に世界で大きな功績を上げてきました。『フロントランナー~世界の未来を作る日本人たち~』は、そうした国際協力に携わる日本人にフォーカスして、“心に刺さるメッセージ”を発信します。

完成した動画は、国際協力活動、社会貢献活動、SDGsなどに取り組む官民さまざまな団体が一堂に会する国内最大級の国際協力イベント「グローバルフェスタJAPAN」の一環として、10月10日(日)に披露。その後、外務省の公式サイトやYouTubeチャンネルで公開されます。又吉は、このイベントで動画公開記念トークショーを行う予定にもなっています。

出典: FANY マガジン

対人地雷の驚くべき「値段」とは?

9月15日(水)に行われた収録当日。世界で活躍する“第一人者”たちとの対談とあって、少し緊張した面持ちの又吉ですが、収録が始まるとそれぞれの話に興味深く聞き入ります。

最初の対談相手は「平和構築」のスペシャリスト、認定NPO法人「日本地雷処理を支援する会(JMAS)」の岸川公彦理事長です。

JMAS(ジェーマス)は、世界の戦争・紛争地域で残された地雷や不発弾を除去する活動をしています。メンバーのほとんどが自衛隊の定年退職者で、2002年の発足から約43万発(2021年3月末時点)を処理。現在もカンボジア、ラオス、パラオ、ミクロネシアの4カ国で地雷除去や不発弾処理に取り組んでいます。

出典: FANY マガジン

「戦争が終わっているのに、(地雷は)人々をいまだに苦しめ続けている。われわれは、それを救うことができるんです」

こう話す岸川理事長が持参した地雷のレプリカに触れて、又吉は「こういうものが無差別に埋まっているということですよね……」と言葉を失います。

こうした対人地雷が1ついくらだと思うか、という岸川理事長の問いかけに、「なんとなくですけど、10万円ぐらい?」と答える又吉。しかし、「じつは数百円」と驚きの事実が明かされます。

「非常に安い。だから大量生産され、いろいろなところにバラまかれているというのが現実」と言う岸川理事長に、又吉は「数百円でできちゃうんですか……」とショックを隠し切れない様子でした。

出典: FANY マガジン

対談の最後に、又吉が「平和構築のために、若い世代に期待することはありますか?」と質問すると、岸川理事長はこう話しました。

「世界に目を向けると、いまも貧困や紛争で苦しんでいる地域があります。まずは、その事実を知ってほしい。そのためにも国際情勢に関心を持ってほしい。そしてそのなかで、自分たちも何かができるかもしれない、自分たちも何かをやってみようと思う人たちが少しでも多く出てくればいいなと思います」

“日本の発明品”母子手帳を世界に

2人目の対談相手は「保健・栄養」のスペシャリスト、公益社団法人「日本WHO協会」の中村安秀理事長です。中村理事長は、30年以上にわたって子どもたちの命を救う活動を世界中で続けるなかで、母子手帳を広げる活動に注力。幼くして亡くなる子どもたちを救うために、母子手帳による妊婦や乳児の健康情報の管理の重要性を提唱してきました。

出典: FANY マガジン

対談の冒頭、実家から送ってもらった母子手帳を持ってきたと話す又吉。

「実家にあったのを見た記憶はあったんですけど、中を見たことはなくて。送ってもらったんですけど、まだ見ていないんです」

中村理事長が母子手帳の見方を説明しながら、妊娠中の母親の記録と、出産後の乳児の記録が1冊にコンパクトにまとめられていることなど“利点”を挙げると、又吉は「ほんまですね」とうなずいて、自身の母子手帳を大切そうにめくっていました。

出典: FANY マガジン

中村理事長は母子手帳を、「日本が世界に先駆けて作った発明品」だと言います。母子手帳が公式に誕生したのは戦後間もない1948年。日本が貧しく子どもの死者数が多かった時代に、妊婦と乳児の健康を守るために当時の厚生省が作成しました。

中村理事長がそんな母子手帳を世界に広めようと考えたのは、35年前。インドネシアの貧しい村で母子保健専門家として子どもたちの健康を守る活動をしていたときのことだったそうです。

「(その村で)病気のお子さんの相談を受けると、妊娠中や生まれたときの記録がなにもない。メモを取っていないんです。なんの記録もないけれど、『いま3歳で歩けないんです、診てくれませんか』というのは、本当に大変です。そのときに、すべてわかったうえで診断ができる日本の母子手帳って凄いなと初めて思ったんです」

出典: FANY マガジン

いまでは中村理事長の活動もあって、母子手帳は50カ国以上の地域で利用されるようになり、世界の乳児と母親の7組に1組が使っているともいわれます。それぞれの地域で使いやすいように工夫された母子手帳を見ながら、又吉は「それぞれ色も形も違うんですね。日本で生まれた母子手帳がそれぞれの国に伝わっていって、文化になっているんですね」と、感心しきりでした。

「Build Back Better」という復興理念の生みの親

最後は「防災」のスペシャリスト、国際協力機構(JICA)で防災分野特別顧問を務める竹谷公男さんが登場しました。竹谷さんは、防災に関する世界標準の理念「Build Back Better(ビルド・バック・ベター)」という言葉を生み出し、世界に広めたことでも知られています。

「ビルド・バック・ベター」は、日本語で言うと「よりよい復興」という意味。被災から復興する際に、再び同じ被害を繰り返さないため、以前よりも災害に強いまちづくりをする――という考え方です。竹谷さんは日本がホスト国を務めた2015年の国連防災世界会議でこの理念を提唱し、世界の防災に対する意識を変革してきました。

出典: FANY マガジン

対談で竹谷さんは、日本ではむかしから「ビルド・バック・ベター」の考え方が当たり前だったと語ります。

「原形復旧という言葉があります。復旧の旧は“旧い(ふるい)”という字。ありのまま、もとに戻すのが復旧です。それに対して、復興は“興す”という字を書くように、災害を契機としてよりよいものに戻していこうということです。日本は災害のたびに強くしてきましたよね。日本では『復興』という考え方は当たり前なんです。でも、それは必ずしも世界の常識ではないのです」

こうした日本の“復興”の概念を世界に広げようと、「ビルド・バック・ベター」という造語を生み出したと説明する竹谷さんに、又吉は深く感嘆していました。

世界の未来を守るためにできることはなにか――最後に竹谷さんは、若い世代にこうメッセージを送りました。

「日本は災害が多い国です。災害の対策とか技術、知識がほかの先進国に比べて圧倒的に蓄積されている。だからそうした蓄積を使って、途上国や世界に貢献できる。それを、ぜひ知ってもらいたいです」

出典: FANY マガジン

世界に対して日本的な知見で何ができるか

こうして世界でODAに携わる3人との対談は終了。又吉に、フロントランナーたちとの対談を振り返ってもらいました。

——今回、世界の未来を作るフロントランナー3人のお話を伺ってみて、どうでしたか?

これまで、こうした活動のことを詳しく知らなかったので、こういう人たちの活動があって、(世界が)よりよくなっていけるんだなあ、という気づきがありましたね。頭が下がるというか。もう少し自分自身も関心を持ってODAを学びたいな、という気持ちになりました。

——JMASの岸川理事長が語った地雷撤去の活動は、文字通り「命がけ」の作業です。

単純に、地雷を処理する作業自体が危険を伴うものなので、それをずっとやり続けるというのは凄いことだと思いますし、もっとみんなが知っていていいことだと思います。
もちろん、僕らの生まれ育った町に地雷は埋ませんが、それがいかに過酷で大変な状況かということくらいは想像できるので。本当に意味のあることだと思いますし、尊敬しますね。

——母子手帳を普及させる取り組みをしている中村理事長との対談では、又吉さんも自分の母子手帳を初めて見たと言っていましたね。

表紙ぐらいは見たことがあった気がしたんですけど、開いてみたのは今日が本当に初めてで。母親は「あまり活用できていなかったかも」と言っていたので、なにも書いてないのかなと思っていたら、けっこういろいろと書いてあった。それぐらい母子手帳というもの自体が、子どもを育てるうえで有効なものということですよね。それが浸透して、世界基準になりつつあるというところが凄いなあ、とお話を伺っていて感じましたね。

出典: FANY マガジン

——「ビルド・バック・ベター」という言葉を生んだ竹谷さんの活動も、世界にインパクトを与えました。

「ビルド・バック・ベター」という言葉は、めちゃめちゃ大切な理念やな、と改めて感じましたね。話を聞けば聞くほど、そう思える。
災害が起きたとき、それをもとの状態に戻すだけでは同じことの繰り返しになるかもしれない。それをさらにいいものにして、なおかつ、継承していくという考え方は、もしかしたら災害だけじゃなくて、いろんなことに応用され得るんじゃないかな、と感じましたね。

——今回、対談したお三方にどんな印象を持ちましたか?

やっぱり実際に活動をされている方々なので、話に血が通っている。自分たちが見てきたことを話しているので説得力があって、もっと時間をかけていろんなことを聞いてみたいなと感じました。
活動は大変やと思うんですけど、何年も時間をかけた結果、目に見える進歩につながっている。今日お話を伺った方たちは「こんなに成果が出るか」っていうぐらい結果を出されていて、これからODAに興味を持つ人にとって励みにもなるでしょうし、求心力になると思いました。

——日本に蓄積されたノウハウや文化を生かすなど、日本人だからこそできる支援もあるのかなと聞いていて感じました。

日本人だからこそ気づけるものがある。そのチャンスは、もしかしたら僕にもあったのかもしれないんですけど、やっぱり見逃して生きているんですよ。今日のお三方はそこに着目して、これが人の役に立つんじゃないかと(考えた)。しかも、3人とも人の命に直結するような活動をされているんですよね。そういう先輩がいるんやから、自分も見習って、学んで、なにかに生かしていけたらいいなって思いました。

出典: FANY マガジン

——今回の動画は、視聴者のODAへの参画意識を高めることも目的にしています。又吉さんからもメッセージをお願いします。

やっぱり、世界に目を向けるということが、特に僕らぐらいの世代には大事なのかな、と思います。自分の枠を広げて、世界に対して日本的な知見で何ができるかと関心を持つことで、ふだんの身のまわりのことに対する視点も変わってくると思います。
あと今日のお話はやっぱりね、聞く人によって「ああ、なるほどな。そこでそうしたんや」とか、それぞれの気づきのポイントが違うと思うんです。そういう意味でも、今日の動画を見ていただいて、また意見の交換とかしながら広がっていけばいいなと思いますね。

イベント概要

『グルーバルフェスタJAPAN2021 リアル&オンライン~国際協力をもっと身近に。見て、聞いて、触れて楽しむ2日間~』

日程:10月9日(土)~10日(日)
リアル会場:東京国際フォーラム

オンライン会場はこちらから。

『フロントランナー ~世界の未来を作る日本人たち~』動画公開記念トークショー
日程:10月10日(日) 13:00~13:45
会場:東京国際フォーラム ホールE2 メインステージ
出演者:
ピース・又吉直樹
外務省国際協力局政策課長・上田肇氏
JMAS事務局長・道幸孝久氏
司会:平成ノブシコブシ・吉村崇
ゲスト:パンサー・向井慧