「バレたらドラえもんになるな…」真鍋昌平(「闇金ウシジマくん」「九条の大罪」)が語る、恐怖の取材体験|川島・山内のマンガ沼web

麒麟・川島とかまいたち・山内が「面白いマンガ」に沼のようにハマって楽しむマンガバラエティ『川島・山内のマンガ沼』。今回は、前回放送された「マンガ家ガチアンケート・真鍋昌平編」の前編を紹介します(放送を見逃した方はTVerもご覧ください)。

悪徳弁護士を描くマンガかと思いきや…

山内 今回も川島さんがお休みということで、代わりに山添くんが来てくれています。今回のテーマは「マンガ家ガチアンケート」! 今回は僕が大好きなあの先生が来てくれております。『闇金ウシジマくん』『九条の大罪』 の真鍋昌平先生です!

出典: FANY マガジン
©池ノ谷侑花(ゆかい)

真鍋 よろしくお願いします。

山内 先生、サングラスなんですね。

真鍋 いつも取材とか、表に出させていただくときはサングラスをするようにしてて。『闇金ウシジマくん』を描いてるとき、けっこう取材に行くから顔出しをしたくなくて、そうしてたんですよ。いま描いているマンガは別に顔出ししてもいいんですけど、もうこれで定着してしまっているので。

山内 まずは真鍋先生のプロフィールをご紹介させていただきます。

真鍋昌平先生プロフィール
●1971年生まれ(50歳)
●神奈川県茅ヶ崎市出身
●1998年、月刊アフタヌーンにて「憂鬱滑り台」でデビュー

真鍋昌平『闇金ウシジマくん』(小学館)
●2004年〜2019年、ビッグコミックスピリッツにて連載。
●単行本は全46巻。
●累計発行部数は2100万部以上。主演・山田孝之で実写ドラマ化。映画化もした大ヒット作品。
●「10日で5割」という法外な金利で客に金を貸す闇金「カウカウファイナンス」を経営する、丑嶋馨(うしじま・かおる)。
●訳ありの客や、その関係者たちの人生を中心に、「裏社会」や「現代日本の闇」を描いた、怖いけど目が離せない問題作!

山内 これはもうみなさん知ってますよね。

山添 男子は絶対通ってると言っても、言い過ぎじゃないんちゃうかな。

山内 そして2020年からはビッグコミックスピリッツで『九条の大罪』を連載中です。

真鍋昌平『九条の大罪』(小学館)
●単行本は第5巻まで発売。
●作品のテーマは「法律とモラル」。
●主人公は「法律と道徳は分けて考える!」という弁護士・九条間人(くじょう・たいざ)
●半グレやヤクザなど、「裏社会」の住人たちを顧客に持ち、依頼人がどんな悪人でも持てる知識をフルに使って弁護する。
●交通事故ひとつをとっても常識がひっくり返る!
●今まで見たことがない視点の弁護士マンガ!

山内 1巻の最初を見たときは、「悪徳弁護士を描くマンガなのかな?」と思ったんですけど、九条は信念をもとに弁護してるんだなと。

山添 正義を感じますよ。

山内 そうなのよ。読んでいくうちに、この先生の中の正義をもとに弁護してるというのがわかってくる。今回、弁護士をテーマにした理由というのは?

真鍋 法治国家で生きてる以上、法律って絶対みんなに関わるものじゃないすか。でも自分が無知すぎて、そのことを知らなかったんですよ。たとえば目が充血していたら、眼科に行くじゃないすか。風邪をひいたら町の病院に行きますよね。弁護士にもジャンルがあって、離婚に強い弁護士とか、交通事故に強い弁護士とかがいる。債務整理が得意な先生のところに、離婚の相談をしてもあんまり意味がない。でもみんなそういうことを知らないですよね。それをマンガを通してわかるようにしていきたい、というのがありました。

山内 芸人って、こういうアンダーグラウンド的な世界が好きやんか。みんなクズやから。みんな借金してるし。

山添 怖いもの見たさというか。

山内 我々ってたぶん、闇金の一歩手前、正規の業者ではあるものの、「ここで借りられなくなったら、あの噂の闇金に行かないといけないのかな」のラインまで来てたやんか。

山添 来てました、来てました。

山内 でも『闇金ウシジマくん』見て踏みとどまったよね。借金を返せない男が、富士の樹海に連れて行かれて、体に甘い汁を塗られて放置されて、体中が虫だらけになるやつあったやん。俺、ほんま虫あかんから、「これだけはされたくない」と思って。

山添 あれリアルすぎて、「これ絶対ほんまにあったんちゃうか」と思ってました(笑)。

「犯罪を流布させるようなマンガを載せるな!」とクレームが

山内 それでは、真鍋先生のガチアンケートに行きましょう。まず最初の質問はこちら。

出典: FANY マガジン
©ytv

山内 先生の回答がこちらです。

出典: FANY マガジン
©ytv/©真鍋昌平/小学館

真鍋 連載を続けるには、マンガ自体が売れるか、商業誌で人気を取るしかないって思ったんですね。だから人気を取るために、1話目というのがものすごく重要で。1話目は何回も直しましたね。

山内 センセーショナルな1話目だったんですけど、その1話目の流れを簡単にご説明いたします。ひき逃げ事件が起きるわけですね。ひかれた方は善良な一般市民です。犯人は飲酒運転で、さらにスマホをいじりながら運転していた男性でした。ちょっと悪い奴なんですよね。そのひき逃げ犯が、半グレの男から紹介された弁護士が主人公の九条です。「被害者は死んでた方がいい」「酒が抜けてから出頭」など、刑が軽くなる方法を指南するんですよね。その後、被害者親子の父親は死亡、息子は左足切断という、もう悲惨な結果になるんですけども、裁判の結果、犯人には執行猶予がつくんです。

山添 だから、善良な方が悲惨な事故に見舞われて、悪い奴が得をしたという話なんです。

山内 そうなの。だから普通イメージする結末と逆なんですよね。なぜ1話目のテーマに、交通事故を選んだんでしょう?

真鍋 財産分与だったり、交通事故だったり、1話目は身近なものがいいなと思ってたんですよ。誰にも起こり得るもの。

山内 今日は担当編集の方も来られてますので、聞いてみましょう。

担当編集 1話目をTwitterに上げたら、ものすごい反響をいただいて(「【クズが交通事故を起こしても無罪になるのはこんな理由】」というツイート)。そしたら読者の方から熱烈な電話が編集部にかかってきたんですよ。「なんでこんな犯罪を流布させるようなマンガを載せるんだ!」と。

山内 ああ、なるほど。

担当編集 ただ、実際に「アルコールを抜いて出頭する」というのが今、警察で問題になっているので、これを取り上げる意味はあるなと。

山内 「犯罪者にヒントを与えているマンガだ」と思った人が、たぶんそういうふうにクレームを入れたりするんでしょうけど……。

山添 全然、逆ですよね。

山内 読んでいくうちに、どんどんわかっていくんですよね。

取材しすぎて笑いのツボが変になってる?

山内 ちなみに『闇金ウシジマくん』はどういう感じで始まったんですか?

真鍋 もともとは1巻分だけの掲載で終わる予定だったんですよ。でも絶対に2巻目もいけるように、1巻の構成はめちゃくちゃ考えて作りました。それで人気が出て、続けることができた……という感じですね。

山添 「一歩間違えたら、自分もあり得るかもしれない」という怖さがずっとありますよね。

山内 ある。さっきも言ったけど、山に連れて行かれて、木くくりつけられて、甘い蜜を塗られるのが一番怖い。

真鍋 実際にそれやった人の話を聞いたんですよ。

山内・山添 えーーーーーーっ!

山添 やっぱりそうなんや!

真鍋 自分の負担がない拷問法として、ああやって虫に攻めさせるのがあるらしいです。あと、「相手を目隠しして縛り付けて、一定時間、軽くトンカチでずっと叩くと頭おかしくなる」と言ってて(笑)。それ大変ですよね、叩かるほうはもっと大変だけど(笑)。

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©池ノ谷侑花(ゆかい)

山添 ……先生、いろんな取材しすぎて、変なとこで笑ってますよ。

山内 今、先生の顔、ちょっと見れなかった。

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山添 先生がご自身で考えたオリジナルの拷問も描いたりするんですか?

真鍋 ブラジャーの形に根性焼きをするのは、自分で考えましたね。「自分がされたら嫌だな」と思って。

山添 なんで「ああ、オリジナルで良かった」と思わなあかんのやろ(笑)。

取材相手からずっと探偵をつけられていた

山内 続いての質問はこちらです。

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山内 先生の回答はこちら。

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©ytv/©真鍋昌平/小学館

真鍋 やっぱり怖いものや恐怖って、どこか魅力を感じてしまうというか。それでどんどん取材して、そういう人たちにも会ったりして。

山内 アポ取るんですか?

真鍋 最初は犯罪ライターみたいな方に、その方が取材している相手を紹介してもらってました。で、やっていくうちに、取材した相手の人間関係を聞いていって、「じゃあその方を紹介していただけますか」という感じで……「友達の輪」みたいですけど。 

山添 「いいとも」のテレホンショッキングと同じ流れですよ。

山内 ワルの「友達の輪」。

真鍋 それをやっていると、点で見ていたものが面で見えてくるから、より描きやすくなるんです。あと、そういう人がいる場所に行って、盗み聞きしたりとか。あるんですよ、そういうヤカラが行くようなキャバクラとか、飲み屋とか。

山内 盗み聞きしてるのバレたらボコボコにされますよ。

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©池ノ谷侑花(ゆかい)

真鍋 だからめっちゃ怖かったです。

山内 次の質問に行きましょう、こちら!

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山内 先生の回答がこちら。

出典: FANY マガジン
©ytv

真鍋 (何度取材しても)同じことしか言わない人たちもいるんですよ。で、キャバクラとかに連れ回されて、しかも取材ということでこっちに会計まわしてくるんですよ。それはもうしんどいなと思って、連絡を絶ったことがあったんです。そしたら毎日ガンガン電話がかかってきて、それも無視していたら、1年くらいたって、知らない番号からかかってきたんです。出たらその人だったんすね。で、会って話し合いみたいなのがあったんですよ。そのときに聞いたんですけど、ずっと自分に探偵をつけてたらしくて。

山内 ええええええええ!? 会うの怖くなかったですか?

真鍋 いや、めっちゃ怖かったですよ。話し合いの場所は人気の鳥鍋屋だったんですけど、誰も客がいなくて、その人が店の真ん中で仁王立ちして立ってるんですよ。

山内 殺される前やん(笑)。

真鍋 女将さんが鍋を仕込んでくれるんですけど、二人とも食わないまま、立ち話を2時間くらい続けて。だからどんどん鍋の水分がなくなって、最後は焼き鳥みたいに(笑)。

山内 呼び出されて、何て言われたんですか?

真鍋 「何で連絡を絶ったんだ」と言われたから、マンガというのは自分個人で全部やっているわけじゃなくて、編集部があったり、印刷所があったり、いろんな人がいて回っているんだと。あなたと会って時間を潰すと、次の日が使えなくなって、いろんな人に迷惑がかかることになるから会わなかったんだ、というのを2時間くらいかけて説明しました。

山内 それ言ったんですか!

真鍋 タイミングが良かったんですけど、その日はちょうど「ウシジマくん」の映画の公開日だったんですね。それで、(TOHOシネマズ新宿に続く)歌舞伎町の道が、全部「ウシジマくん」のポスターだったんですよ。だから帰り際に「ほら見てください、あれ。こういう仕事なんですよ」と言ったら、「今まで俺が悪かった」と言われて。そこから「これからは下の名前で呼んで、連絡していいか」と聞かれたから、「いいですよ」と言ったら、それ以降はかわいい絵文字のメールが来るようになりました(笑)。

山添 うわーーー、すごい! マンガで関係を変えたんですね。

まだまだ続く、恐怖の取材体験

山内 取材をしていて、本気で怖かった話ってあります?

真鍋 中にはやっぱり非協力的な人もいるんです。話を聞こうと思って行ってみたら、向こうがすごく癇にさわるような顔をしていて。顔の雰囲気でわかるじゃないですか、「この人怒ってるな」みたいなの。向こうが拷問の話をしてきて、「ガスバーナーで相手の手を焼き切って、ドラえもんにしちゃったよ(笑)」って、笑いながら言うんです。でも、その目つきがちょっと尋常じゃなくて。こっちも何かされそうな恐怖がありました。しかもその話、内緒でずっと録音してたんですよ。「バレたら俺もドラえもんになるな……」と思ってました。それは怖かったですね。

出典: FANY マガジン
©池ノ谷侑花(ゆかい)

山内 先生、もうマンガ描けなくなるところでしたよ。

真鍋 そうですね。でも原作はできるかなと(笑)。

山添 何言ってるんですか(笑)。

真鍋 あと、「ウシジマくん」でタクシードライバーの話を描いてたんですよ。大阪のタクシー関係者を取材したんですけど、そのとき3日間くらいアテンドしてくれた人がいて。その人、前科のある人だったんです。で、あちこちいろんなところに連れていってもらって、最後に「ところで罪状は何だったんですか?」と聞いたら、殺人でした。まあその人はもう更生していたんですけど、取材から4、5年たって、「中国で麻薬の密売をやって死刑になった」と聞いて、すごいショックでした。

山内 オチがすごすぎてちょっと……。

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山添 こんなエピソードトーク、もう一生聞けないでしょう。

山内 そういう取材をしているから、あれだけリアルな、ちょっと思いつかないような怖さがあるんですね。編集の方は止めないんですか?

担当編集 止められないですよね……。いわゆる「組織の偉い方」とお食事させていただいて、お話聞いたあと、会計のときにおごっていただくのはいろいろ問題があるので、「こちらの分は払います」と言ったんですけど、若い方に「兄貴に怒られるから、それはやめてください」って言われて。その場は何とか収まったんですけど、その1ヶ月後にその方が発砲事件で捕まって、「何なんだこれ!?」と驚きました。

真鍋 その発砲事件の人は、毎週ビッグコミックスピリッツを購読してて、刑務所で『九条の大罪』を楽しみにしてくれてます。

山内 いや、そんなオチいらない(笑)。

自殺者の取材で、自分も自殺しそうなマインドに

真鍋 地方都市に、1週間くらい前に自殺した人の家があって、その債権者が家を建て壊すというので、「建て壊す前にちょっと中を見たい」とお願いして、入らせてもらったんですよ。けっこう遺留品があって、その人がどういう人だったか考えながら、創作をしていたんですけど、その話を描いているうちに、自分自身が自殺しちゃいそうなマインドに入っちゃって。

山添 えええ……。

真鍋 そのとき1ヶ月くらい事務所で寝泊まりしてたんですよ。で、事務所にお風呂がなかったから銭湯に行って出てきたら、夏場なのに寒くて汗かくみたいなことになってて、何かおかしくなっちゃったんですね。それで編集の人が気にかけてくれて、人を呼んで朝までみんなで話したときに、なんだか救われたというか、「戻ってこれた」という感じがしました。

山内 取り憑かれてたんちゃいますか。そのときの先生って、おかしかったですか?

担当編集 あんなに病んでる先生、久しぶりに見ました。事務所に行ったら、中が薄暗くて。テレビだけがついてて、机の上にコンビニで買った食料の食べかすが落ちてて、「自殺現場と同じじゃないか……」と思ったくらいでした。

山内 絶対に取り憑かれてるやん……。ちなみに先生がマンガ家を目指したきっかけって何だったんですか?

真鍋 小学校のときに『ドラえもん』を読んで、すごい衝撃が走ったんすよ。それで「自分も描きたいな」と思ってて、小学校のときからマンガを描いてたんですね。それでプロになったって感じですね。

山内 全然違うマンガ描いてるやん(笑)。どこが『ドラえもん』なんですか、先生!

*次回放送は「マンガ家ガチアンケート・真鍋昌平編」後編をお届けします。

(構成:前田隆弘

マンガバラエティ『川島・山内のマンガ沼』は、読売テレビ:4月16日(土)深 1:28~1:58、日本テレビ:4月21日(木)深2:35~3:05の放送(※一部地域を除く)です。

おたのしみに!

番組概要

川島・山内のマンガ沼
次回放送
読売テレビ:4月16日(土) 深1:28~1:58
日本テレビ:4月21日(木) 深2:35~3:05
「マンガ家ガチアンケート・真鍋昌平編」後編を放送。
(TVerでも配信中!)

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