「学生服リユース」というSDGsな取り組みで話題の馬場加奈子さんがトータル大村と対談! 「哀愁の人かと思ってたら…」

春といえば入学シーズン――ということで、今回は制服にまつわる対談をお届けします。ご登場いただくのは、3児の母でありながら自らの経験を活かして日本初の学生服リユース事業を立ち上げ、メディアでも大注目の馬場加奈子さん。そして、息子(晴空くん)が中学卒業で制服を買い替えたばかりというトータルテンボスの大村朋宏。2人が“学生服リユースの世界”についてじっくり語り合いました。

出典: FANY マガジン
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馬場さんはワンオペで3人の子育てをするなか、学校の制服購入に困った経験から2011年に起業。運営しているリユース店「さくらや」は、地域の子育て家庭を支援したいと全国でパートナー出店が相次ぎ、店舗数は100店舗に迫る勢いです。

店の営業時間は「子育て中のお母さんたちが働きやすいように」と週4日10:00~15:00と短く設定してあり、創業当初は「そんなんで起業というな」などと厳しい声もあったそうですが、昨今、SDGs(国連が掲げる持続可能な開発目標)の取り組みが重要視されるなかで、いまやメディアや講演会などで注目を集める、まさに“時の人”に。「女性起業家大賞」スタートアップ部門優秀賞(2014年)や「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」子育て家庭応援ビジネス賞(2017年)など数々の賞を受賞し、吉本興業には文化人枠で所属しています。

“お正月は新喜劇”という家庭で育った

馬場 もともと私が3人の子どもを育てているシングルマザーで、子どもの制服が買えなかったんです。おさがりを探したくても、働き詰めで時間もなくて頼むことができなかったり……それでこの制服のリユース業を始めたんです。

大村 「こういう人はほかにもいる。これがあったら便利だろうな」と思って始めたわけですか?

馬場 そうなんです。2011年創業なので、今年で12年目に入りました。息子さんが今年から高校生と聞きましたけど、中学のとき制服だったと思うんです。そういうのを引き取りして、次に必要な人に定価の3分の1程度の価格で販売していきます。創業時、そういう店が全国どこにもなくて……。

出典: FANY マガジン
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大村 3分の1程度ってすごいですね! いまお店はたくさんできてるんですか?

馬場 いまは96店舗で、今月には100店舗を超える予定なんです。働くお母さんが増えたことでお母さんたちのコミュニティが希薄化してきて、制服のおさがりをもらうとかのコミュニケーションが少なくなった。それで私たち「さくらや」が、そこを担おうと思ってて。
ただ、制服のリユースがメインなんですけど、やってることは地域活動のほうが多いんです。制服を買うときって、お父さんやお母さんがお子さんと来店されていろんな話をします。そういう話を聞いて、支援が必要そうな人にはそのお手伝いをしたり、イベントのアイデアが生まれたり。そういうことばっかりやってきた結果、「おもしろいことしているね」と、このたび吉本に文化人として所属となりました(笑)。

大村 吉本のお偉いさんが、どっかから聞きつけたわけですね(笑)。

馬場 私は香川出身で吉本新喜劇を見て育ったので、吉本は特別なんです! 新喜劇は小さいときから見てて、お正月といったら新喜劇を見に大阪に旅行に行ってたような感じでした。なので、友人たちにも吉本って言うだけで「すごい!」って、めちゃくちゃウケがいいです。

出典: FANY マガジン
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馬場「制服の価格が高いことが問題」

馬場 大村さんの息子さんは4月から高校生とのことですけど、制服は購入したんですか?

大村 そうなんです。僕もついていって、高校の制服を新宿の髙島屋に買いに行きましたよ。

馬場 お父さんも一緒にお買い物行くってすごくいいですね。

大村 そのあと家族でどっか行くついでだったんですけどね。その日、車を停めるんで、先に晴空たちが売り場に行って、あとから合流したんですけど、行ってみたらオレが晴空の高校の制服だと思ってたのとは違うのを試着してたんですよ。で、「あれ? オレが見てたのは古いのなのかな?」と思っていたら……実は、ぜんぜん違うところの制服を着ていたと判明した(笑)。サイズとか合わせるのに30分ぐらい違う学校の制服着て、ああでもない、こうでもないって無駄な時間を過ごしてたんです(笑)。

馬場 え! そんなことあります?

大村 むこうの手違いだったんですけどね。それでちゃんとした学校の制服をもう一度試着したんですけど、ベストだ、ニットだ、ポロシャツ、半袖シャツ……といろいろあって。選べるスタイルの高校だったみたいなんですけど、種類が多くて。

馬場 それだけ全部そろえたら、かなりの額だったんじゃないですか?

大村 会計は奥さんだったので僕はなんにもわからないんですけど、たぶんけっこうな額だったんだと思います。

出典: FANY マガジン
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馬場 制服ひとつにしても、貧困問題が関わってきます。制服を買えないご家庭があるから「制服って必要なの?」とか言われるんですけど、でも実際には、お母さんたちからすると制服があるほうがありがたい。となると、なにが問題かといえば、制服の価格が高いことなんですよね。

大村 それはありますよね。だから、うちの奥さんも成長を見越して大きめを買おうとするんですよ。でも、ブカブカだとカッコ悪い。「いいよ、デカくなったらそれはそれで成長の証だから、うれしい悲鳴と思ってそのときまた買おう。とりあえずジャストサイズを着させてやろう」と言って。

馬場 よくありますよね。165センチの男の子に180センチぐらいのサイズを買って、丈をお母さんが一生懸命詰めたり。でも、最近は「ちょうどを着せたい」というお母さんも増えてきていて。うちのリユースだと定価の3分の1程度で買えるので、サイズが大きくなっていったら買い替えていこうと、まさに大村さん的な考えで利用してくれる方が増えているんです。

大村 高いと、どうしても3年を見越して買おうとしちゃいますから。

馬場 あとは3年生ぐらいでどーんと大きくなる子とかもいて、「あと半年なんだけど、そのために制服を買い直すのは……」っていうケースがあったり。

大村 なるほど! たしかに半ズボンみたいになってるヤツ、いましたもん(笑)。そういう人も、リユースを使えばジャストサイズが買えるってことですね。リユースを利用すれば、お子さんにジャストを着させてあげることができる。

馬場 そうなんですよ。ブレザーも1年間着るのではなく、寒い時期に着ることがほとんど。「それだけのために?」となるよりは、そこで少し節約して、浮いたぶんを子どもの教育費に回したり。

大村 たしかに! 夏用のズボンとかも買いました。もう少し早くにさくらやさんの存在を知ってたら、そこで買えたってことですね。

出典: FANY マガジン
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大村「ぜったいにすごくいい取り組みだなって思った」

大村 定価の3分の1程度で売られてるのはすごいですよね。その安さは。

馬場 平均単価が1枚1440円ですから、下は100円から高いのでも5000~6000円。さくらやはいま渋谷が拠点なので、渋谷とか新宿まわりの学校が多いですね。
回収ボックスをいろんな企業さんや全国各地の自治体さんに置かせてもらっていて、そこにみなさんが制服をもってきてくれる。その仕入れがうまくいってるから、みなさんにより安くお売りできてるんです。

大村 なるほど。企業や自治体に回収ボックスを置いて、そこに入れる人は売るのではなく、無料で寄付ってことですか?

馬場 そうなんです。だから、3分の1程度での販売が実現できるわけです。なんせ制服が高くて購入が大変な家庭が増えているのと、ランドセルが買えない家庭もあって。
ランドセルは無料でもらって無料でお渡しする譲渡会のようなものをやってるんです。ほかにも、回収した制服の洗濯を障がい者の方にお願いしたり、体操服に縫い付けてあるゼッケンや刺繍を取るのを高齢者の方にお願いしたり。そうやっていろんな方にお願いすることで、だんだん私の時間もできていって、営業などに行き始めることができました。
それをどんどんやっていくと、全国のお母さんたちが「こんな仕事、私たちもしたかったんです」と言ってくれて。そんなふうにコツコツとやってきたら、いまでは「さくらやさん、SDGsやな」と言われるようになりました。

出典: FANY マガジン
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大村 いろんな方が関わってるんですね。すごいなぁ。

馬場 最近では、子どもたちも学校の授業でSDGsを習ったりしています。それで子どもたちの意識も変わり始めていて、子どもたちのほうから「リユースでいい」と言って、(買いに)来るようになりました。この春は、すごい変化が見えました。

大村 子どもからしたら、「経済事情なんて知ったこっちゃねぇ! 新しいの買ってくれよ」というのかと思ってたけど、いるんですね、そんなできた子たちが!

馬場 お子さんと、環境のこととかSDGsなどに関して話すことはありますか?

大村 SDGsに関する話題は1ミリもしたことないですね。時代と逆行しちゃってますね……。

馬場 ふふふ(笑)。まぁ、これからきっとそういう感じになっていくかもしれないですね。でも、今日の大村さんとの対談も、こんな機会なかなかない。こういうことを活用して、もっとチャンスっていっぱいあるよっていうことを、地方で起業を目指しているお母さん、そして女性たちに伝えていきたいです。
今後は、回収はしたけど使えなかった制服などをリサイクルして、Tシャツやエコバッグに変えて販売していくことや、オンラインショップの立ち上げも控えてるんです。そのときは、ぜひまわりの方に広めていただけるとうれしいです!

大村 「制服は新しいものを買うしかないんだ」と思っていたので、僕も新しい世界を知れました。自分自身、デカめを着せられてイヤな思いをして育ったタイプなので、息子とか娘にはジャストサイズで着させてあげたいという思いがあって。

出典: FANY マガジン
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でも、どの家庭もそれができるわけではないし、泣く泣くデカめ買って、っていう子もいるわけで。でも、リユースだったら(価格が)3分の1程度だから、単純に考えて3回買える。それってすごいですよ。ぜったいにすごくいい取り組みだなって思いました。

大村 しかも、いろいろと話を聞いていくと、リユースだけでなく、障がい者支援だったり、本当にいろんな人が社会参加できるシステムになってる。それもめちゃくちゃいいですよね。

馬場 ……そんなふうに目の前で言っていただけると感動しますね。大村さんのイメージって、息子さんがギターを弾いて歌って、後ろで哀愁を漂わせてる人っていう感じだったので、「今回の対談って、話盛り上がるんかな」と思ってたんです(笑)。

大村 ははは。あのイメージだとそう思っちゃいますよね(笑)。

馬場 でも今回、お話させていただくのでYouTubeとか見てたら、むっちゃお茶目な人だなと。そして、実際お話させていただいて、むちゃくちゃ楽しかったです。ありがとうございました!

出典: FANY マガジン
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「さくらや」公式サイトはこちらから。
トータルテンボスの公式YouTubeチャンネルはこちらから。

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