盲目の漫談家・濱田祐太郎が吹っ切れた爆笑問題・太田からの一言【あなたは誰に憧れ芸人に?⑤】

あなたは誰に憧れ芸人に?

芸人を志したきっかけや憧れた芸人、そして芸人になるまでの道のりなどを語り尽くしてもらうインタビュー
(イラスト:ネゴシックス)

芸人を志したきっかけや憧れた芸人、そして芸人になるまでの道のりなどを語り尽くしてもらうインタビュー
(イラスト:ネゴシックス)

いまをときめく芸人たち……周囲から一目置かれる存在になった彼らにも、かつて「こんなふうになりたい!」という憧れの存在があったはず。そんな売れっ子たちに、芸人を志したきっかけや憧れた芸人、そして芸人になるまでの道のりなどを語ってもらうインタビューシリーズ『あなたは誰に憧れ芸人に?』。今回は『R-1ぐらんぷり2018』王者で、5月8日(日)には東京で初となる単独ライブ『濱田祐太郎スタンドアップコメディーライブ』を開催する盲目の漫談家・濱田祐太郎に話を聞きました。

出典: FANY マガジン
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大阪のしゃべくりの”ボケ“に「カッコいい!」

――誰に憧れて芸人になろうと思いましたか? 

いちばん最初にお笑いやネタに興味を持ったのは、小学6年生のとき。漫才番組に出ていたビッキーズさん(現在は解散、メンバーの須知裕雅はのちに“すっちー”として吉本新喜劇の座長に)とハリガネロックさん(現在は解散、メンバーのユウキロックは構成作家などで活動)の漫才を観てからです。涙を流して笑ったのを覚えていますね。

――それまでに漫才に触れることはなかったんですか?

そうですね。土曜日のお昼に吉本新喜劇を観るというのはありましたけど、漫才を観る機会はなかったです。それで、その漫才番組を観て「マイクの前で喋るだけで、こんなにも面白いんや」と、一気に興味を持ちました。その約1カ月後に1回目の『M-1グランプリ』(ABCテレビ、2001年)があって、ハリガネロックさんが決勝に残っていたんですよ。

「あれだけ面白い人らやから、ぜったい優勝するやろ」と思っていたら、中川家(剛、礼二)さんが優勝したので、「もっと面白い人がおんねや!」って驚きました。そこで、漫才やネタというものにハマっていきましたね。

――ハリガネロックやビッキーズなど、濱田さんが好きになった漫才師の魅力は、どんなところにあると思いますか?

2組に共通することやと思うんですけど、ハリガネロックさんもビッキーズ​さんも、​ボケの人がガンガンしゃべっていくスタイル。なりふり構わず、興味があることをしゃべってボケていく形がカッコよくて、すごく面白かったです。

出典: FANY マガジン
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――お笑いを仕事にしようと思ったきっかけは何だったんですか?

1回目の『M-1』で漫才というものを好きになり、そこから漫才に限らず、バラエティー、コント、トーク番組を観るようになりました。あの当時だと『笑う犬』シリーズ(フジテレビ系)、『内村プロデュース』(テレビ朝日系)といった番組を観ていくなかで、中学生くらいのときに、お笑い芸人になりたいなと思うようになりましたね。

『R-1』準決勝でつかんだ漫談スタイル

――その後、NSC(吉本総合芸能学院)に35期生(2012年入学)として入学しましたが、いざ入ってみてどうでしたか?

実際のお客さんの前ではなく、講師の先生と生徒の前でしかネタをやらへんから、いろいろ教えてもらっても「(アドバイスが)」当たってるんかな」って不思議に思っていました。もちろん講師が間違っているとは思わないですけど、「じゃあ、言う通りにやったらウケるのかな?」とは思っていましたね。

――漫才師に憧れて芸人になったわけですが、いまの漫談スタイルになったのはいつごろからですか?

NSCに入る前の2月ころに「お笑いのことを何も知らない今の自分が、どれほどの力があるんやろ」と思って『R-1ぐらんぷり』(現在は『R-1グランプリ』に改題)の予選に出たことがあったんですよ。

そのときには、いまのような自分が体験したエピソードトークを並べていくスタイルができていたんですけど、それをやって準決勝まで行けたので、漫談でもお客さんが笑ってくれるし、1人喋りも楽しいなって。「こいつ、いいな」っていうヤツがいたら、漫才コンビを組んでもいいかなと思いましたけど、別にこのままでもかまへんなと。

――もし漫才をやるとしたらボケがしたかった?

ガンガンしゃべるスタイルのボケは憧れだったんで、やってみたいとは思っていました。ただNSCに入ってからは、いままで聞いて楽しむものだった漫才を“漫談”に生かすにはどのようにすればいいのか、と考えるようになりましたね。

出典: FANY マガジン
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芸人になって感じた理想と現実

――NSC卒業後、漫談家として活動していくなかで、最初にぶつかった壁は?

漫才やコントのインパクトに立ち向かうことへの難しさを感じました。劇場のオーディションライブは、漫才、コント、漫談、歌ネタ、みんな一緒の舞台で戦うんですけど、そのなかでも漫談はどうしても地味。そこが、いちばん大変でした。

――そうした壁を、どのように乗り越えようとしたんですか?

ボケの手数と話の内容ですね。僕にしかできないしゃべりとわかりやすさを意識するようになりました。どうしても“(目が)見えない”ことをネタにすることが多いので、まずはお客さんに目が見えないとはどういうことなのか、理解してもらわないといけない。そのことを意識してから、笑いの量も増えていったような気がします。

――同じ舞台に立ったり、近くで見たりして、すごいと思った先輩芸人は?

もちろんたくさんいらっしゃいますけど、やっぱり上の方々は、劇場でものすごくウケるんですよ。劇場メンバーになったとき、土日の寄席でご一緒したあべこうじさん、佐久間一行さんなど、ピン芸人の方々は「やっぱりすごいな」と思うことが多いです。

――特にあべさんは、濱田さんと同じようにマイク1本で勝負しているだけに、濱田さんの進む道と重なる部分がありそうです。

そうですね。あと何より、奥さんがアイドル(モーニング娘。の元メンバー・高橋愛)。これが、いちばんすごいと思います。

出典: FANY マガジン
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――(笑)。芸人になって思い描いていた理想に、どの程度、近づいていますか?

ネタに限っていうと、しゃべりで笑いをとるというのが理想だったので、それはいまも続けられていると思います。ただ、お笑い芸人としての理想はテレビに出ることなので、そこについてはまだまだなのかなって感じです。

――昨年には、杉咲花さん主演のドラマ『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(日本テレビ系)に解説役として出演していましたよね。バラエティではなくドラマなどにも出演したいと思いますか?

バラエティ以外にも出ていきたいです。僕が『SASUKE』(TBS系)に出たっていいわけですし。

――(笑)

爆笑問題・太田との対談で見えた光

――憧れの芸人と共演することはできましたか?

R-1優勝後、劇場で中川家さんや、すっちーさんに挨拶できました。あと爆笑問題の太田光さん。優勝特番『R-1ぐらんぷり2018優勝者特番濱田祐太郎のした事ないこと!』(カンテレ)で対談させていただけて、すごく嬉しかったです。

――確かに太田さんもしゃべくりスタイル。濱田さんが感銘を受けた漫才と似た形です。

そこがすごいと思う部分ですし、僕も漫談で(爆笑問題と同様に)「時事ネタ」をするんで、太田さんも憧れの芸人の1人ですね。

――太田さんと話してみて、どうでしたか?

本当にイメージのまんまの方だったんで、「すげーな!」と思いました。それとR-1優勝後、それまでは舞台が月に1回あるかどうかだったのに、急にテレビや取材が増えたんですけど、どう答えてええかわからんし、あと当時、“しゃべりたいこと”と“しゃべっていいこと”みたいなのがあって、どうしたらいいんやろと悩んでいたんですよ。

そうしたら太田さんが「俺なんか怒られまくってるけど、しゃべりたいことだけしゃべってるよ」って言うてはって……。それを聞いて、「俺もそれでええんかな」とラクになりました。

――太田さんとの出会いは、芸人人生のなかでもある意味、分岐点だと言えそうですね。その後も共演などはあったんですか?

爆笑問題さんがMCをされている正月の寄席番組で一緒になりました。(2人で)しっかり話をすることはなかったですけど、(スタッフにアテンドされて舞台から降りたところ)「お前、1人で歩けよ! 歩けるだろ!」って(笑)。あと当時、問題を起こして話題になった方々をネタにしたら、「ビクビクしたわ!」と言われて嬉しかったですね。

出典: FANY マガジン
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――子どものころから見ていて、出たかったテレビ番組には出演できましたか?

『さんまのまんま』『快傑えみちゃんねる』(ともにカンテレ)に出演できたときは嬉しかったですね。明石家さんまさんとしゃべってみて、自分の流れがしっかりしてる方やなって思いました。実は(収録が)終わったあと、なぜか首の筋肉がシビれていたんですよ。余計な力がグーッと入っていたのか、もしくは、さんまさんは“お笑い怪獣”って言われているくらいなんで、筋肉をシビれさせる毒を口から吐いていたか、のどっちかですね。

――(笑)

(『えみちゃんねる』のMCだった)上沼恵美子さんは、優しいし、容赦なく笑いにしてくれはんねやって思いました。上沼さんが表情で笑いをとりはったあと、「ごめんね、濱田くん。わからへんと思うけど」って。その一言はすごくありがたいし、嬉しかったですね。あと、一緒にゲストに出ていたIKKOさんが超いい匂いでした。

――(笑)。5月8日(日)に東京で初の単独ライブが開催されます。これまでやってきたことを、東京のお客さんにぶつける機会ですね。

そうですね。たぶん、オレしかしてへんやろなっていう経験をしゃべれたらええかなと思っています。どうしても絵面として、1人でしゃべるのは地味になりがちなんですけど、60分終わったときに「ずっと楽しかったな」と思ってもらえるようなライブにできたらええし、自分自身も楽しみながらしゃべりたいですね。

公演概要

『濱田祐太郎スタンドアップコメディーライブ  』
日時:5月8日(日) 開場15:30 開演16:00
場所:紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
チケット:前売2,800円 配信2,000円
※オンラインの見逃し視聴は5月10日(火)16:00まで(チケット販売は同日正午まで)

FANYチケット(会場)はこちらから。
FANYオンラインチケットはこちらから。

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