ピン芸人として各メディアで活躍する横澤夏子。2児のママとして、夫と子育てに奮闘している彼女は、現在、家族と一戸建てに住みたいと考えており、理想の土地を探し中。そんな横澤と、『建物の値段は頼み方で9割決まる』(ヨシモトブックス)の著者・掛川将さんの対談が実現しました!
掛川さんは、施工会社と発注者の間に立ち、中立的な立場で工事計画を調整する“コンストラクション・マネジメント(以下、CM)”という仕事をしている建築業界の風雲児。今回、家を建てる際に、誰もが抱える悩みにハマっている横澤が、掛川さんに質問をぶつけていきました。
掛川将
1990年長野県生まれ。株式会社工事企画代表取締役。コンストラクション・マネージャー。
2010年に大前研一氏の創立したビジネス・ブレークスルー大学に入学。在学中の2010年以降、IT企業、建設デベロッパーなどで働く。2016年、建設業界を変革する志を抱いて工事企画を設立。戸建て・マンション・工場・幼稚園園舎の新築や中古アパートのリフォームなど幅広い工事案件を手がけ、顧客のリピート率は9割を超える。工事に関わる全ての関係者がフラットな関係である発注体制を構築する事で、建設業界の更なる発展、楽しい業界にする事を志している。
『建物の値段は頼み方で9割決まる』
掛川さんの豊富な実体験をもとに、質を下げずにコストを下げる方法、施工会社が気持ちよく仕事ができる“魔法の言葉”など、家を建てる際に気をつけるべきノウハウがまとめられた一冊。
CMは双方に利益をもたらす仕事
ーー横澤さんは、今回の対談前に本書を熟読されたそうですね。
横澤 本当に教科書ですし、すべてが書かれてありました。まず聞きたいことは、掛川さんにお願いするのにいくらかかるのか、ということです!
掛川 (笑)。
横澤 それほど、家を建てる上での種明かし・裏側が書かれてあって感動しました。“施工会社さんにこうやって言えばいいですよ”という台詞もありましたし、めちゃくちゃ勉強になりましたね。
掛川 よく「施工会社が悪い」という声を聞くと思うんですけど、9割くらい発注者さんに問題があって。
横澤 言い方が違うということですね。
掛川 そうです。そこからメスを入れていくのがウチのやり方なんですよね。
横澤 CMという職種は、建築業界に多くいらっしゃるんですか?
掛川 体育館や文化会館建設などの公共事業には多いんですけど、民間での認知は普及していないんです。
横澤 なんで今までいなかったんですか?
掛川 施工会社の組織体制が、海外と違うからです。(CMは)アメリカやイギリスでは普及しているんですけど、日本の企業だと、会社の営業マンがお施主さん(施工を依頼する人)と話すので、全然リテラシーが違うし、そもそも交渉ができない。バブル期のやり方が今でも残っている状態なんですよね。
横澤 誰もこの流れを疑わず、もともと、そういったものを見直す体制がなかった、ということなんですね。
掛川 そうですね。でも、我々の存在って施工会社さんのためにもなるんです。CMって、もともとアメリカの大不況時代に生まれたもので、建設会社の利益担保としての役割を担っていました。なので、我々が入ることによって、施工会社さんの利益も担保されるし、トラブルも防げると。
横澤 目からウロコ! 一生に一度の大きな買い物なので、失敗したくないですが、こうやって、家を建てるときの裏ワザを教えてくださる方がいるなんて思わなかったです。
家を建てる際は◯◯を見るべき!?
横澤の現在の状況
将来的に子どもは3人ほしいため、4LDK以上の家を探している。当初は建売住宅も見ていたが、東京には理想の間取りがなかった。現在は、家を建てるべく、土地選びを探している段階。
横澤 不動産屋さん選びについて知りたいです。本には、どういう人が信用できるか、裏側も書いてあるじゃないですか。いま、ウチは2社の方と話を進めているんですけど、こういったやり方はどうですか?
掛川 いいと思いますよ。それに伴って、建物を建てるときの予算計画書を事前に作っておいて「こういう予算感で、こういう土地を探してください」と明確な指示を出すと、より動きがスピーディーになっていきます。
横澤 なるほど。不動産屋さんにお願いする際、どんなトラブルが起こりやすいんですか?
掛川 不動産仲介においての告知事項ですね。土地に関しては比較的誰でもわかるんですけど、その周辺状況まで把握している方はなかなかいない。失敗談としてよく聞くのが、近隣住民との関係性や、ゴミ出しが汚いなどのトラブル。私の場合だと、その地域に行って、ゴミがきれいにまとめられているか、ゴミ置き場・ゴミ出しは絶対に見ます。
横澤 逆に言えば、ゴミ出し状況もわかっている不動産屋さんは地場に強いんですね。
掛川 自分と同じくらいの考え方・節度を持っている人じゃないと疲れちゃいますからね。(担当者が)近隣住民について把握しているかどうかは、かなり重要です。
ーーほかに、家を建てる際に頭に入れておくべきことは?
掛川 戸建ても資産として考えておくのがおすすめです。私は、値上がりする動きがあった埼玉県のある場所に家を建てたんですけど、売却することを見越した規格にしました。安い時に土地を買っておくと、何千万の利益が出る場合があるんです。家の考え方って住むのはもちろん、資産的に考えないと、ちょっと損をする可能性もあるんですよ。
横澤 土地の選び方として“高く売れそうだな”って地域はどうやって探せばいいんですか?
掛川 基本的にアクセスや都市開発地域かどうかは見ますが、私が特に注目しているのは、銀行の支店です。
横澤 えー。おもしろーい!
掛川 銀行が新しく出店する地域って今後伸びやすいんですよ。ファイナンス系に強い方がおっしゃっていました。
ーー逆に土地の値段が下がりやすい場所ってあるんですか?
掛川 交通機関が不便なところ、栄え出した町と町の中間地点で、快速が止まらないようなところは、若干人が逃げていく傾向にありますね。何十年か後に売却を考えると、売りづらいと思います。
施工会社を驚かせる一言とは?
横澤 家を建てるのは本当に大変で……。◯畳くらいの広いリビングがほしいとか、土地はハザードマップ的にどうなのか、アクセスはいいのかなど、いろんなことを考えると、もうお手上げ(笑)。
掛川 たとえば、“◯畳くらいの広いリビングがいい”という横澤さんの条件をお聞きすると、木造はキツいのかなって思います。スパン(建物を支える支柱と支柱の距離)が飛ばせるのかが微妙で、耐震用に柱が必要になってくるんですよ。そのまま木造で建てたとしても、結局、特殊な材料を使うので、鉄骨くらいの金額になってしまいます。
横澤 いろいろ聞けて嬉しい。夫を連れてきたかった!
掛川 (笑)。たとえば、若干の崖地にいい土地があった場合、RC(鉄筋コンクリート)がおすすめです。木造だと(土砂崩れなどを防ぐため)擁壁を作らないといけませんが、RCは擁壁代わりになるので、その分建物面積を増やせたり、庭先の確保ができたりと、おしゃれな家ができる。そこも狙い目と言えば狙い目ですね。
横澤 ハザードマップ的に崖地は大丈夫なんですか?
掛川 大丈夫です。建築基準法で、RCが擁壁代わりになると認定されれば問題ありません。ご主人といろいろ話し合って、業者さんにいくつか土地を出してもらうと面白いと思いますよ。
ーー家を建てた経験のある人に相談するのもアリなんですか?
掛川 いいと思います。周りに経験者がいなければ、アメリカ発祥のアプリ「Houzz(ハウズ)」を使うのもおすすめです。家を建てたユーザーの声が聞けますし、工務店や専門家を選ぶこともできるので、とても便利です。
横澤 絶対インストールします! あと、SNSで「#マイホーム失敗談」で調べると、めちゃくちゃ出てくるんですよ。“よく自分の失敗を教えてくださるな”って思って、本当にありがたいです……。
ーー土地が決まったとして、見積もりを依頼する際にやるべきことは?
掛川 施工会社によって、設備関係のメーカーとの取引きがあるので、コスト削減の観点から「設備は施工会社さんの掛け率のいい(仕入率のいい)メーカーで見積もりを出してもらっていいですよ。仕様書もいただけますか?」と伝えるといいと思います。そんなことを言われると、相手は“この人わかっているな”ってドキッとするでしょうね(笑)。概算のときはそれでいいのですが、本見積もりのときは「材料と工賃は別で出してください」とお願いする。一式計算ではなく、各項目を計算して出してくださいと依頼するのが大事です。
横澤 聞いてなかったら絶対やってなかったことですね……。
大切なのはコミュニケーション
ーーいざ住んでみて、内装や設備など「こうしておけばよかった」と後悔することも多いと聞きます。そうならないために、やるべきことはありますか?
掛川 抜け漏れがないよう、建築中に定例会を設定することです。みなさんお忙しいと、定例会に参加しなくなるんですよ。工程が進む中、決めるべきことが出てくるのに、定例会が開かれないから、失敗してしまうんです。
あとは、施工会社が報告できる状態を整えてあげる。定期的に現場写真を送る会社もあれば、そうでない会社もあるので「施工写真は3日に1回送ってくださいね」などと伝えるのがよいでしょう。
ーーコミュニケーションが大事なんですね。
掛川 いざ工事が進みだすと、配線類が収まらないなど、現場でわかるトラブルもでてきます。それをお施主さんが柔軟に対応できるかも大切で、こちらが寛容的に受け入れられれば、施工会社さんも「その分、ここをこうしてあげよう」と動いてくれて、いい関係が生まれます。やはり、お施主さんと施工会社がバチバチになるのはよくないですから。
横澤 定期的に会うしかないし、お互い言いやすい関係にしておかないといけないんですね。
掛川 あとは現場監督ですね。事前にどういう方が入られるのかを聞いておきましょう。現場監督って、細かなこともやってくれたりするので、しっかりとした関係を築いておくことが重要なんです。
ーー家を建てるか迷っている方は、この対談と『建物の値段は頼み方で9割決まる』を読んで、失敗しない家づくりをしてほしいですね。
横澤 この本を読む・読まないで、まったく変わりました。家を探しているいまの時期に出会えてよかった……。今回、お話を聞いてみると、いろんな問題が山積みで、やることめちゃくちゃ多いんだなって、ひしひしと伝わってきましたね。もちろん「ハウスメーカーさんや工務店さんが悪い」って言いたいわけじゃなくて、家を買う側の言い方や伝え方が大事なんだって改めて気づきました。
掛川 本には、発注者さんが知っておかないといけないポイントを詰め込んでいますし、施工会社さんに気持ちよく仕事をしてもらいたい、という意味あいでも書いています。
横澤 今後、おウチをどう建てるべきか、幅が広がった気がします。本には、喧嘩の例も書いてあって、どう折り合いをつけるのかも大事なんですよね。これまでハウスメーカーさんにファイティングポーズをとっていましたけど、本を読んで一気におさまりました(笑)。
書籍概要
『建物の値段は頼み方で9割決まる』
著者:掛川将
定価:1650円
発行:ヨシモトブックス
発売:株式会社ワニブックス
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