桂文珍が40回目の8・8独演会開催! 「“老いるショック”を乗り越えてネタを楽しむ!」

落語家・桂文珍の『吉例88 桂文珍独演会』が、今年も8月8日(月)に大阪・なんばグランド花月で開催されます。大阪の夏の風物詩ともいえるこの独演会も、今年でなんと40回目! 5月19日(木)に開かれた概要発表会見では、40回を振り返りながら、落語への思いなど文珍自身の“いま”をたっぷりと語りました。

出典: FANY マガジン
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コロナ禍の間に「実験的なことができた」

この日、作務衣に甚兵衛を羽織って登場した文珍。コロナ禍で故郷の丹波篠山に生活拠点を移したため、「このスタイルが、いちばんアジャストする」とタネ明かしすると、「(丹波篠山では)ナチュラル・ソーシャルディスタンスがとれる。日本語では“過疎”と呼んでおります」と、さっそく笑わせます。

そして、40回目となる恒例の独演会について、その思いを語りました。

「あっという間の40年だった。『ようやってこられたな』という思いと、『あと何年できるやろ』という思いが交錯しています。コロナ禍やウクライナ情勢などで鬱々とした日々が続いて、皆さん疲れ果ててらっしゃるのではないでしょうか。そういうなかで、落語で少しでも潤いを感じていただければ」

出典: FANY マガジン
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新型コロナウイルスの感染状況が悪化していた時期は、客席に数人の観客しかいないこともあったそうですが、「その間にいろんな実験的な噺を作ったりできるメリットもあった」と文珍。「演者としては何度も心が折れそうになったが、たとえ少なくてもお客さんにお越しいただいていたことで励まされた。それを軸にしながら、がんばって40回を迎える」と決意を新たにしました。

若手の背中を見ながらのたれ死にたい

ここで文珍は、過去の独演会ポスターを持ち出します。自宅の整理をしていて発見したとのことで、切り絵風ビジュアルが目を引く30年前のポスターを見ると、ゲストは高田文夫、文珍は『老婆の休日』と『死神』を口演していました。25年前のポスターには師匠である五代目桂文枝の名前があり、「お師匠はんが出て『船弁慶』をやってくれはった」と懐かしそうに話します。

出典: FANY マガジン
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今回のポスターには、文珍の演目として『デジナン』と『らくだ』が。デジナンとは“デジタル難民”の略で、「高齢化とデジタル化の落差を笑い飛ばす」という自信作。話題のアバターやメタバースも登場する、まさに“実験的”な内容となっているとのこと。25年前にも口演した『らくだ』についても、「久しぶりにたっぷりとやらせていただく」と意気込みがうかがえます。

そして迎えるゲストは、『笑点』(日本テレビ系)でおなじみの桂宮治。『情熱大陸』(TBS系)で“令和の爆笑王”と紹介された気鋭の若手に、「若いときから『この子いいな』と思っていたが、やっぱり売れてきはりまして。これからを非常に嘱望されている後輩」と期待を寄せます。

出典: FANY マガジン
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吉本興業に所属して53年。「自分の口から言うのは何ですが、レジェンドです」と笑わせつつ、「『このおっちゃん、いつまでやんねや。しつこいな』と言われながらもがんばりたい。いい後輩が私どもを踏み台にして前へ進んでいく、その背中を見ながらのたれ死ねたらいいなと思っております」と締めくくりました。

ゲストの桂米朝が8時間の稽古

質疑応答で「40回のなかで、特に印象に残っているのは?」と質問されると、「うちの師匠に出ていただいたり、(三代目桂)米朝師匠や、(三代目桂)春団治師匠にもお出ましいただきました」と豪華ゲストに言及。ほかにも夢路いとし・喜味こいしや、ケーシー高峰らの名前が次々とあがります。

米朝が出演した年、文珍は『地獄八景亡者戯』を口演しましたが、その際、米朝に稽古をつけてもらいに行ったところ、「『いやあ、ワシは年やから、もうようやらんわ』と言われまして(笑)」とほほえましいやりとりを披露。それでもその後、8時間かけて稽古をつけてもらったのだとか。

「当日は米朝師匠にゲストとして一席やっていただいた後、私が『地獄八景』をやったら、前半を聞いて安心したのか、諦められたのか(笑)、そこでお帰りになりました」

出典: FANY マガジン
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ほかにもいとし・こいしや兄弟子・六代 桂文枝のエピソードなどを紹介し、「さまざまなお師匠さんのおかげで今日がある」と改めて感謝の言葉を述べました。

若手が腕を磨く落語版M-1を!?

25年前と同じ演目となる『らくだ』について演じ方の変化を聞かれると、「若いときはそれなりに勢いがあるし、テンポも出たりするが、年齢とともに間がとれるようになる。息切れしてるんやないかという言い方もあるが(笑)、70代は70代なりの間合いができます」。

最近は、同級生と食事に行っても、アクリルパネルで隔てられ、マスクも着けているうえ、友人は差し歯、自身も耳が遠くなってスムーズに会話ができないそうで、「お互い『老いたな』とショックを受けてしまう。これがオイル(老いる)ショック(笑)」とニヤリ。そんな複雑な心境を乗り越えて、「年を楽しみ、そのネタを楽しむ。そんな『らくだ』ができたら」と話しました。

出典: FANY マガジン
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そして、上方落語界の後輩たちへの思いも明かします。

「皆さんが『誰かいい子いないのかな』と思ってくれているときに、上方にも、グンと伸びる子に早く出てきてほしい。漫才は『M-1グランプリ』があって、うまいことビジネスパターンができあがった。落語でも、ある種の競争原理を働かせながら、より腕を磨くような場所を用意しないといけない」

一方で、「必ず才能が花開く人が出てくるので、その人たちにぜひ注目してやってほしい。(若手落語家たちが)ユニットを組んだり、工夫しながらやっているが、それが“慰め合いの会”にならんようにがんばってほしい」と若手に向けたゲキも飛ばしていました。

公演概要

『吉本興業110周年感謝祭 吉例88 第四十回 桂文珍独演会』

出典: FANY マガジン
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日時:8月8日(月) 開場17:15 開演18:00
場所:なんばグランド花月
出演者:桂文珍
ゲスト:桂宮治
チケット:前売・当日共4,500円

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