中学の時、休み時間に友達と手押し相撲していたらなぜか僕の小指の骨が折れてしまい、学校で問題になって、その友達とその友達の両親が菓子折り持って僕の家に謝りに来ました。泣きそうな友達と本当に申し訳なさそうなご両親。絶対に悪いのは僕の骨なのに、弱すぎる僕の骨なのに。
どうも、いつか使おうと思ってたけど結局1度も「vineだよ」と言うことなくtiktokの時代になってしまった男ことたくろうの赤木です。
この前、ドーナツ・ピーナツのピーナツさんに「もし、神様にこれからの人生の恋愛を自分で全部決めて良いって言われたら、どういう恋愛人生を送りたい?」って聞かれたのですが、トリッキーな題材すぎたのと、僕に恋愛の経験がほとんどなかったので、「35までには結婚して、休みの日はキャッチボールに付き合ってほしいですね」って変なことしか言えませんでした。なので、今回は死ぬまでどういう恋愛をしていきたいか真剣に考えてみました。ちなみにピーナツさんは理想の恋愛なのに2回修羅場をむかえてました。
あれは35歳の誕生日。
祝ってくれるような友達もおらず、その日は何の予定も無し。寂しさを埋めるために同期の芸人の下川24時を呼んで公園でキャッチボールをしていました。
「今日さ、なんの日か知ってる?」
知っててほしいと思いながら投げたボール。
「今日? あぁあれじゃろ。ジャンプの発売日じゃろ。もうワンピース読んだ?」
広島なまりで投げられた求めていない返球。
「読んだ!! ルフィやられてジンベエが海賊王なった!!」
イライラから適当な嘘と共に思い切りボールを投げつけました。ボールはすっぽ抜け下川の頭上を大きく越えて転がっていきました。
「おいおい、どこ投げとんじゃ」
転がったボールは公園で休んでいた女性の足にコツンと当たりました。
「あ、すいません。」
ボールを拾いにいった下川が言うと、女性はボールを拾いあげ、目の前の下川には目もくれず、遠くにいる僕の方を見て
「あんたー!! いい球投げるなー!!」
と大声で叫びました。
よく聞こえなかった僕は
「あっ、え? なんですか? すみませーん!!」
と精一杯の声で叫びました。
すると、女性は拾い上げたボールを握って、ゆっくりと投球モーションに入りました。
遠くではありましたが「ん? なんか見たことある投げ方だな」とぼやっと思っていると
彼女の右手から放たれたボールが
ゴゥゥゥゥゥゥゥ!!!
と轟音を鳴らし気付いたら僕のグローブに吸い込まれてました。
近くで見ていた下川は驚いて
「あんたなにもんじゃ!?」
と言うと。
「わからへん? これでも?」
と言って、かけていたサングラスはずしました。
「あ、あんたは!?」
と、下川は腰を抜かしました。
「そうや。あたしは阪神のエース、虎田虎子や。」
下川は
「と、虎子選手!!!!」
と叫び、僕もそこで気付きました。
そうです。その女性は女性初のプロ野球選手で阪神のエース。虎田虎子だったのです。
「あ、え、なんで、、あの、、連絡先交換してください!!」
そう言った下川の顔面を虎子さんは左手の拳で殴り、下川は死んでしまいました。
虎子さんは僕の方にゆっくり近づいてきて、僕に言いました。
「あんたセンスあんで。うちのチーム入らへんか?」
しかし、誕生日を誰にも祝ってもらえなくて気分が沈んでいた僕は
「ごめんなさい、そういう気分じゃないんで。」
と言うと。
「えー、ほなどうしたら入ってくれるん?」
僕はチャンスだと思いました。
でも、こんなスーパースターに、、
僕はうつむき少し考え
でも、こんなチャンス2度とないかもしれない。勝負かけるしかない。と思い
意を決した僕は顔を上げ彼女の目を見て言いました。
「ぼ、僕と付き合ってくれたら!!」
彼女は驚いた顔をした後フフッと笑って
「あんた、あたしが誰かわかってんの?」
と言いました。僕はやっぱりダメかと思ってうつむいていると
「ちょっと落ち込まんといてや。こんなん私に言う男はじめてや、あんた度胸あるわ。」
僕が顔をあげると、困った顔をして彼女は言いました。
「んーわかった。わかったわかった。阪神のためや。付き合ったるわ」
僕は嬉しくなって
「ほんまですか!? やった!やった! ありがとうございます!!」
と言うと。彼女は「はぁ、、」とため息をつき
「これであんたは阪神の一員な。明日、甲子園で試合やから来てや。ほな」
と言って帰ろうとしました。勢いに乗っていた僕は彼女の手を掴み
「いや、付き合ったなら、彼氏の誕生日は祝いますよね? 僕、今日誕生日なんですよ」
と真剣な目をして言いました。彼女はすこし呆れた顔をして
「あんた今日誕生日なん。ほんでこんなとこで油うっとったん。可哀想な男やな。わかった。ほなホルモンでも一緒に食おか」
それが今の奥さんとの出会いでした。
僕は芸人を辞めて阪神に入って中継ぎとして3年は活躍しましたが、その後肩を壊し引退し、今は阪神のピッチングコーチとして活動しています。
妻は50歳を越えた今もなお現役で活躍しており、プロ野球界のスーパーレジェンドとして歴史に名を刻んでいます。
彼女がピンチになると僕はタイムをとってマウンドに行きます。
「もう疲れたわ、代わってぇや」
「あほか、俺はもうコーチやねん」
「ほなどうしたら代わってくれる?」
「んー、今日の晩飯ざるそば作ってくれるんやったら」
「ふふっ、あほか、なんで先発の日にそば打たなあかんねん、もうええわ」
「ほながんばってここ抑えよ」
「言われんでも抑えるわ」
僕のわがままはもう聞いてくれないけど、それが夫婦ってもんです。
それでも僕は死ぬまで彼女にわがままを言い続けようと思います。
これが僕の理想の恋愛です。
理想の恋愛の道中で急に下川がいらなくなったので死んでしまいましたし、僕は芸人辞めて阪神の中継ぎとして3年活躍してしまいました。本当に申し訳ないです。