SNS界に突如、現れた新星『板橋ハウス』。ルームシェアしている男3人が、夜な夜な部屋で「変なあだ名で呼ぶ」「ライバルっぽい奴選手権」など、“ヒマつぶし”と称したやりとりをTikTokにアップし、驚異的な動画再生回数を連発しています。TikTokのフォロワーは50万人以上、YouTubeチャンネル登録者数も19万人を突破し、ますます勢いに乗る彼ら。いったい何者なのでしょうか?
じつは『板橋ハウス』は、東京・神保町よしもと漫才劇場で活躍する吉本芸人。めぞん・吉野おいなり君、ピュート・竹内智也、軟水・つるまるの3人は、それぞれ別々のコンビで活動中です。
動画は、さえない仲よし3人組のグダグダな日常――といった風情ですが、いまや全国の女子中学生・高校生・大学生にアンケートした「女子学生が選ぶ2021年下半期トレンド予測」(ネオレア調べ)で3位にランクインするなどの人気ぶり。今回は、その『板橋ハウス』の知られざる生態を探るべく、3人にじっくり話を聞きました。
本当に動画みたいな生活
――もともとNSC(吉本総合芸能学院)東京22期生の同期とのことですが、『板橋ハウス』はどう生まれたんですか?
吉野 昨年10月にルームシェアを始めたんですけど、本当に公開している動画みたいに、毎朝5時くらいまでただ部屋で遊んで、そのあとバイト行って、ライブに出て……みたいなことを続けていたんですよ。体力だけが消耗している感じがあったので、せっかくなら動画を撮ったほうがいいかなって。(ルームシェアは)竹内が「もっとお笑いをがんばりたい」って熱い目をして、全員を誘った感じです。
竹内 (コロナ禍の自粛で)人と会うことが少なくなったので、“芸人ともっとしゃべれるように”っていう思いはありました。
――『板橋ハウス』の名前の由来は? まさに板橋に住んでいるから?
つるまる そうですね。でも、こんなにバズるとは思っていなくて(笑)。
竹内 確かに。名前は間違えたかもしれないです。
――基本的に、竹内さんがゲームをやっている後ろで、2人がヒマそうにしているところから動画がスタートします。
吉野 それこそ、朝5時まで遊んでいたときの配置だったんですよ。竹内はゲームを続けて、僕とつるまるがヒマそうにしている……というのが日常だったので、“ゲームをやめさせたかった”っていうのはあるかもしれないです。“もっとこっち向いてよ”って。
竹内 そうだったんだ。ごめんね。気づかなくて(笑)。
――動画のなかでは、はっきりとボケとツッコミが決まってないですよね。
吉野 僕は「ボケ」と「ツッコミ」ってあまり言いたくなくて、「攻撃」と「防御」って呼んでいます。動画撮影前、竹内にツッコんでほしいときには「ツッコんでよ」ってお願いするんじゃなくて、「今日は防御で」みたいな。あまりお笑いの感じを出したくないので、大学生のフリをしています。
――スタジオや会議室がある吉本の本社を使って動画を撮影する芸人さんも多いですが、やはり自宅で撮るのがいいんですね。
竹内 やっぱり、おうちのほうが素人感が出ますよね。
吉野 ルームシェアしている大学生感がいいです。一時期、ふつうに「21歳の大学生」ってウソついてました(笑)。
竹内 バレてるんですけどね。
――こうしたインタビューで芸人さんだと知る人も増えると思いますが、大丈夫なんですか?
竹内 ここまでたどり着く人は全員知っていると思うので、大丈夫だと思います。
――ネットで検索すると、「板橋ハウスって誰?」みたいな記事が多く上がっています。みなさん、気になっているみたいですね。
吉野 そういった記事で1つだけ訂正したいことがあるんですけど、ほとんどの記事で、僕の身長が162センチってウソ書かれているんですよ。僕の身長は172センチなので、そこは直したいです(笑)。
つるまる 僕も出身が大阪・西成にされているんですけど、堺市出身です。
竹内 僕はいま、なぜか名古屋吉本所属になっています(笑)。
女子学生トレンド3位って…
――さまざまな媒体があるなかでTikTokを選んだ理由は?
竹内 同期にマツきんぐっていうTikTokの先駆者がいて、そいつが最初に大バズりしたんですよ。うらやましいな!っていう思いがありました。
――3人の動画は、「ダンスを踊ってあるあるを言う」などの、いわゆるTikTokのオモシロ動画の定石から外れた、芸人のノリに近いものがあります。あえて、TikTokに寄せることはしなかったんですね。
吉野 踊るとか、カメラに向かってコントをするとかが恥ずかしいし、芸人ってバレたときに攻撃されそうだったんで、あんまりバチバチに決めたくないなって。
つるまる 僕は恥ずかしくないですけどね。一人暮らししているとき、自粛中にヒマすぎて、漫画あるあるを1年やったんですけど、まったくバズらなかったんですよ。3人でやろうってなったときも、「一応、やるけど……」みたいな。
竹内 確かに。有識者みたいな顔してたもんな(笑)。
――ネタは、どうやって考えているんですか?
竹内 撮る前に、主に吉野が「◯◯って言わせるか」って、カメラを回す感じです。
吉野 2人が企画を出すこともあります。撮影は1時間くらい撮ったものを7分くらいに編集していますね。
――ここまでバズると思っていましたか?
吉野 マジで思っていなかったですね。劇場に来てくれる人が楽しんでくれればいいかな、くらいの気持ちだったんで、(気持ちが)追いついてないですね。
竹内 まだウソなんじゃないかなって思います。街中で声をかけられることもないし……。つるまるはあるよね。
つるまる 見た目が目立つんで、声をかけていただきます。歩いていて「えー! TikTokの人ですよね?」「ルームシェアの人ですよね?」って。『板橋ハウス』っていう名前は出てこないですけど。
吉野 つるまるが顔をさされた日、その話を聞いた僕と竹内が「そんな人気なんだ!」って実感がなくて……。おとぎ話のような感じがします。
――「女子学生」のトレンド予測にランクインしています。
吉野 『東京卍リベンジャーズ』『INI』に次いで3位だって……。
竹内 そんなわけないけどね。
つるまる あれはどなたが選んでるんですか?(笑) YouTubeの「急上昇クリエイター」に選んでいただいたり、どれが影響しているかは分からないですけど嬉しいですね。
――動画を見た芸人から声をかけられることはありますか?
竹内 3時のヒロインさんはまったく面識がなかったんですけど、出会い頭に「板橋ハウスだ!」って言われてビックリしました。
吉野 ゆめっちさんが「あー!」って、“会えた!”みたいな顔されていて。逆!って思いました。
つるまる たぶん、みんな知っている方やと思うんですけど、スイランのほしさんにも声をかけていただきました。
吉野 「知らん!」とかも言いづらい(笑)。お前の「たぶん、みんなも~」から、そんな感じでくるのは分かってたよ(笑)。
初心者におすすめ動画を紹介!
――最初にバズった動画は?
吉野 「コンビニ行く誘いを絶対に断らない男、吉野」です。これだけ、ちょっとテイストが違うんですけどね。(動画はこちらから)
――唯一、TikTokっぽい動画ですよね。そこでフォロワーが増えたんですか?
吉野 そうですね。あれがいちばん最初にバズったので、3回に1回くらいシリーズで続けていたんですけど、2発目以降はずっとスベり続けています(笑)。“そういうことじゃないんだ”って思いました。
つるまる ハネる基準が分からないです。
――動画撮影中に印象的だったエピソードがあれば教えてください。
竹内 最初のほうに上げた「寝たいのに出て行かない」っていう、なかなか僕の部屋から2人が出て行かない動画なんですけど、2人はカメラが回ってなくても、それをやるんですよ。なんだったら、カメラ回ってないときのほうが「出ていけよ!」っていう回数が多いんで、正気じゃないなって。(動画はこちらから)
吉野 (笑)。動画を撮ったあと、完全に竹内が油断していたんで、そこからむちゃくちゃやってやりました。
つるまる そこからがオモロかったよな(笑)。
吉野 ふだんのノリから動画が生まれたものもあって。竹内が健康オタクで、毎日、豆乳に青汁を入れて飲んでいるんですよ。それを動画じゃないところで「もう本当にやめて……」って“彼女が彼氏の違法行為をとがめる”みたいな扱いをしたら、竹内が「お前には関係ねぇだろ」って彼氏の役をしてくれて。それが面白かったので、動画(「違法なものみたいに言う」)にしたら、めっちゃバズって嬉しかったです。(動画はこちらから)
――自分たちが好きな動画や初心者に向けておすすめの動画を教えてください。
吉野 『板橋ハウス』を応援してくださる方のなかでも人気なのは、つるまるを女子扱いする動画です。(動画はこちらから)
つるまる 僕は、まったく手応えがないんですけどね。
吉野 僕と竹内のなかで、つるまるが女の子に見えるっていう。「洗濯物につるまるの下着が入っていて、ちょっと触ってしまった……」「全然いいよ。俺、女の子ちゃうから」みたいな。
つるまる えらい人気やけど、あれは何がオモロいの?(笑) 僕のおすすめは、まだバズってないけど「背水の陣大喜利」。吉野が大喜利してスベったら、服着たまんま水風呂に飛びこむっていう。いちばんお笑い芸人っぽいんですけど、いちばんバズってないです。
(動画はこちらから)
吉野 (板橋ハウスで)いちばん最初にそれをアップして、“これバズるんじゃない?”ってなったんですけど、結局、「7いいね」で……。TikTokってこういうことじゃないんだ、って思いました。
竹内 僕は「偉人の名言を言う」が好きです。マリー・アントワネットの「パンがなければケーキを食べればいいじゃない」の言葉が好きだっていうところから始まる動画なんですけど、面白いです。(動画はこちらから)
お互いの魅力を告白!
――それぞれの魅力を教えてください。まずは竹内さんから。
吉野 返しがすごいです。家でフザけているとき、何も考えずにボケることがあるんですけど、竹内がツッコミでゴールを作ってくれるというか。竹内が「◯◯かよ!」ってツッコんで、“あ、これ◯◯なんだ”って気づかされることがあります。あと、1発目の反応がうまいし、動きも面白い。
つるまる ツッコミがキレキレ。撮影しているときは、次のボケを考えているから、竹内のツッコミあんまり聞いてないんすよ(笑)。編集しているとき、こんなオモロいこと言うてたんや!って気づきます。
――続いて、吉野さんのいいところは?
竹内 「全力力(ぜんりょくりょく)」がすごいなって思います。YouTubeの概要欄に、毎回1,000文字以上のポエムだかコラムを書いているんですよ。ほとんどの人が見てないですけど(笑)、細部にまでこだわるというか。突き詰める力がすごいんで、何をやっても成功するんじゃないかなって思います。
つるまる 行動力ですかね。「TikTok始めよう」って言うたのも吉野やし、企画も持ってくるし、「何かやろうぜ!」っていう友だち感がいいところだと思います。
――最後につるまるさんの魅力は?
竹内 ……マジで優しいところですね。
つるまる 何もないときに言うやつやん!
吉野 (笑)。つるまるは、何かされたときのリアクションがぜんぶ面白い。
竹内 マスコット感が強いので、つるまるが「いる・いない」でぜんぜん違うと思います。たぶん、つるまるがいなかったら、こうはなってない(バズってない)よね。見た目のポップさがエグい。いつもはちゃらんぽらんな感じだけど、すごく面白いことバシッて言うんで。
――『板橋ハウス』があることで、コンビの活動に還元できたと感じることはありますか?
竹内 吉野の相方(原一刻)は、編集でも参加してくれているんですよ。仲は深まっていると思います。
つるまる 相方(大川内聡)がネタを考えているんですけど、YouTubeで収益が出たので、僕が、相方の家賃を払う代わりにネタを書いてもらう新ネタライブをやるようになりました。
竹内 相方(村田翔平)は負けず嫌いなので、僕の現状をいけすかないと思っているでしょうね。
吉野 この前、竹内の相方は「早く『板橋ハウス』の人気なくなれ!」って言っていました(笑)。
竹内 (笑)。あと、若干、劇場出番が増えた気がします。
吉野 お客さんに来ていただけるので、主催ライブが打ちやすくなったのはあります。『VSめぞん』っていうゲストを呼んでネタとコーナーで戦ったあと、最後に好きなラップバトルで決着をつける、というライブをしているんですけど、この間は、ネタとコーナーなしで、ただラップをやる「ラップバトルグランプリ」をしました。集客を気にせず、ライブを開けるのがだいぶデカイですね。
――最後に『板橋ハウス』の目標を教えてください。
竹内 YouTubeで100万人の登録者にいきたいです。あと、『板橋ハウス』でライブをやったことがないので、それぞれのコンビが集まってライブをやれたら嬉しいですね。
つるまる 『板橋ハウス』が調子いいときに、それぞれのコンビもいい感じになればいいなって思います。
吉野 いまは『板橋ハウス』からコンビを知ってくれることが多いので、コンビからも知ってもらえるようになりたいです。あと、仲悪くはなりたくないですね。そうなるくらいなら、アカウント消去してバイトしたいです。
つるまる いまのままで仲良くできればいいよね。
吉野 いまは自粛期間でできないですけど、みんなで旅行に行ってその動画も上げたい。
つるまる わざわざ旅館に行ったのに、いままでと同じことするのオモロいもんな。
吉野 「旅館から出て行かない」とかしてみたいですね。
竹内 女将に出ていけって言われる(笑)。
板橋ハウスの公式TikTokはこちらから。
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