東大生が二所ノ関部屋の朝稽古を見学!「笑う東大×学ぶ吉本プロジェクト」

「笑う東大×学ぶ吉本プロジェクト」の一環として、吉本興業が参画している東京大学の「体験活動プログラム」。2022年度の第一弾、「相撲部屋体験入門」が8月12日(金)、茨城県阿見町にある二所ノ関部屋で行われました。6人の東大生が部屋を訪問し、それぞれの視点で朝稽古を見学するなどしました。

出典: FANY マガジン
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体験活動プログラムは、東大の学部学生と大学院学生が、今までの生活と異なる文化・価値観に触れる体験型教育プログラム。吉本興業が参画し、本年度中に4つのプランを実施予定です。

相撲部屋体験入門は、東大相撲部OBの吉本興業社員が企画。多くの伝統的な習慣や日本文化が残る大相撲の世界を身をもって感じ、真逆の生き方ともいえる世界に飛び込んだ同世代の若者との交流を通して、新しい視座を得ることなどを目的とし、二所ノ関部屋の協力で実現しました。

白まわしを締めた二所ノ関親方も稽古に参加!

現在では珍しいという土俵が2面ある広々とした稽古場で行われた朝稽古は、二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)と中村親方(元関脇嘉風)が分かれて指導にあたりました。

出典: FANY マガジン
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四股や腰割りなどの基礎運動に長く時間を取った後、申し合い稽古などで汗を流す力士たち。途中からは白まわしを締めた二所ノ関親方も加わり、名古屋場所で序ノ口優勝した高橋を相手に10番相撲を取って全勝します。約2時間半に渡って行われた稽古を間近で見ていた学生たちは、現役を退いてなお強さ健在な元横綱の姿に圧倒されつつも、食い入るようにその姿を見つめていました。

出典: FANY マガジン
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稽古後、学生たちが思い思いに二所ノ関親方に質問を投げかけました。大学院工学系研究科1年の西野輝希さんがこれからの稽古の方針について尋ねると、「基礎運動を長めにとって、けがをしない体づくりをすることが大事だと考えている。まずは土台を作らないと上もできていかないし、3年後に出世するための稽古をしている」と、先々を見据えての稽古内容について明かす親方。

稽古を見て「迫力に圧倒された。稽古というと厳しい声が飛び交うイメージだったが、想像とは違っていて、時に笑いながら、時に厳しくも前向きな声がけをされていて、厳しさと優しさの両方を感じた」という教育学部4年の酒井聖平さんは、“力士の個性と親方の力士への希望のすり合わせ”に着目。「すり合わせていく上で大切なことは?」と質問します。すると親方は、「まずは基礎運動の大切さについて理解させてあげたい。(基礎運動は)つまんないけど、つまんないことがいちばん力になるんだよ、って。だから、なぜ基礎運動が大事かについては常に話してるし、そこからだと思っている」と語りました。

出典: FANY マガジン
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教養学部前期課程2年の重徳英介さんは稽古中の“声がけ”が印象深かったといい、声がけで心がけていることについて質問します。すると親方は「ポイントを押さえてシンプルに教えることを心がけている。たとえば『小指を握ってみろ』とか。小指をちょっと握るだけで、相撲ってずいぶん変わってくるんですよ」と、効果的な声がけを意識していることを明かします。

東大生との意見交換で、スキルアップにつなげたい

教養学部3年の増田和俊さんは、たとえば四股を踏む際、やり方をもっと言語化して伝えれば、ただ体で伝えるよりみんながわかりやすくなるのでは?と自身の考えを伝えます。それを聞いた親方は、「言葉って難しい。声がけひとつでいろいろ変わってしまうこともある。『人間の体は80回やると体が自然と動く』と言われているように、言葉よりも経験と回数が大事だと思っている。できない子には自分が形を直接見せて、回数をこなさせるのが大事だと思う」と持論を語ります。

「同世代の力士たちが全力で稽古に取り組む姿勢に刺激を受けた」と語る農学部3年の武市尚輝さんからは、「稽古場の雰囲気づくりで意識していることはありますか?」という質問が。すると「雰囲気づくりはあんまり気にしないけど、とにかく力士たちが力を出し切れるような稽古をしたいと思っているので、自分の体を使いながら『全力で倒してこい』という気持ちでやっている」と、稽古に向けた自身の心構えを明かしてくれました。

また、大学院総合文化研究科2年の劉冠廷さんからは「モンゴル人力士が強い理由は何だと思いますか?」という質問が。すると「自分の時代は白鵬や鶴竜、日馬富士……、そもそも体のつくりも違ったし、やる気も違うし、研究もすごくしている。白鵬とも辞めたあと話したんですけど、彼は『いちばん強い力士がいちばん考えている』って言うんですけど、まったくその通り。それになにより、彼らは『日本で絶対成功してやる』という気持ちが強いんですよ。彼らがいなかったら僕らはここまで来られなかったと思う」と現役時代を振り返り、感謝する親方でした。

出典: FANY マガジン
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本プロジェクトの取り組みについて、「他分野の人からいろいろな話を聞くことは勉強になると思うし、意見を参考にしたい。力士たちも同世代だし、相撲には考える力が必要なので、東大生と意見交換できればスキルアップにもつながってくるのかなと思います」と話してくれた親方。東大生についても、「今日の経験がなにかのきっかけになればいいと思う。こういう世界もあると知ってもらえれば」と笑顔で語ってくれました。

今後は土俵つき体験や本場所見学のほか、二所ノ関親方の故郷であり、二所ノ関部屋がある茨城県阿見町の地域創生の取り組みを、学生のアイデアを活かして実現することも計画しています。

笑う東大、学ぶ吉本プロジェクト

2021年3月、国立大学法人東京大学と吉本興業ホールディングス株式会社が、東大の「知」と吉本興業の「エンターテインメント」を掛け合わせるプロジェクトとして立ち上げました。2025年の大阪・関西万博、さらにその先のSDGs目標達成年次の2030年を見据えながら、学術とエンターテインメントの積極的な対話や協働を推進し、持続可能な新しい価値の創出と未来への提言を目指しています。