いまをときめく芸人たち……周囲から一目置かれる存在になった彼らにも、かつて「こんなふうになりたい!」という憧れの存在があったはず。そんな売れっ子たちに、芸人を志したきっかけや憧れた芸人、そして芸人になるまでの道のりなどを語ってもらうインタビューシリーズ『あなたは誰に憧れ芸人に?』。今回は、ギャル漫才で注目度抜群のエルフ(荒川、はる)にそのルーツを聞きました。
きっかけは「ノンスタのM-1」と「中川家のバラエティ」
――おふたりが最初にお笑いを目指したきっかけを教えてください。
はる 私は2008年のM-1グランプリがきっかけです。もともとお父さんが漫才好きで、M-1もめっちゃ好きで見てたんですよ。だから、それまでは「年末に必ず流れているもの」くらいの感覚だったんです。それが小6のとき、ご飯を食べながら見ていたM-1でNON STYLEさんが優勝されて、涙を流されてて。それを見て、「あ、芸人ってすごいカッコいい職業なんや」と思ったんです。
荒川 うちは絵に描いたような大阪の家庭で、テレビでバラエティ番組をよう見てたんですよ。そこに中川家さんがほんまに1日中出てて。そのときはなりたいとかじゃなくて、ただただ面白いと思ってました。しかも、そういう面白いテレビを見てるときは、家族がいつにも増して明るくて仲いい感じがしたんですよね。それで「家族が明るくなるって最高やん」と思って、いつしか目指すようになりました。
――その「カッコいい」「面白い」という気持ちから、実際にお笑いの道に進んだのは?
はる 高1のとき、3者面談でなんとなく「むかし芸人になりたかったことがあって」と先生に話したら、先生が「めっちゃ面白いやん」と乗ってくれたんです。でも、そのあと急に「体育教師になりたい」と思う時期があったんですよ。高3になって、高1のときと同じ担任の先生に「体育教師になりたいです」と言ったら、「お前、高1のときに芸人て言うてたやん。一度でも思ったんやったら、NSC(吉本総合芸能学院)って学校あるから行ってみたら」と言われて。
――高校の先生が背中を押してくれたんですね。荒川さんは?
荒川 芸人になんて、なれるわけないと思ってたんですよ。テレビの人らは面白すぎて別の世界の住人やと思ってたから。でも高校のときにNSCの存在を知って、「ヤバない? 入りたい!」って感じでした。売れるとも思ってなかったけど、NSCに入れるだけでええやんって。
――憧れのNON STYLEさん、中川家さんに実際に会ってみてどうでしたか?
はる 私は井上(裕介)さん、石田(明)さんそれぞれにご挨拶させていただいたことがあるくらいで。「うわー、NON STYLEさんや!」と思いながら、挨拶するので精一杯でした。
荒川 私は中川家さんと特番で共演させていただいて。緊張しすぎて、どんなときでも言えてた(持ちネタの)「ハッシュタグ」が初めて言えなかったです。「ほんとに憧れなんです」と伝えたんですけど、あまりに芸風が違いすぎたせいか「ウソつくな」って言われました(笑)。
「イワクラさんのおかげで私の今があります!」
――実際にプロの芸人になってからは、先輩芸人に対する見方もまた変わってくると思いますが、芸人になってから改めて憧れた存在というと誰ですか?
荒川 私は蛙亭のイワクラさん。イワクラさんのことはいろんなところで話してて、話しすぎて最近、許可とってないですけど。
はる 無断で言うてるんや(笑)。
荒川 最初のころは「話さしてもらいました!」と言ってましたけど、毎回やから。イワクラさんにはお笑いのことも、人としての生き方も、ぜんぶ教えてもらいました。「こんな人になりたい」と思ってる人です。
――どんなところを、いちばん尊敬していますか?
荒川 いまはまったくそんなことないですけど、私みたいにギャルの格好をしていると、「そんなにお笑いを好きじゃない」「お笑いに対してアツくない」と見られることがあったりしたんですよね。でもイワクラさんって、まわりの男芸人さんからめっちゃ信頼されてるんですよ。それは見た目とかいっさい関係なく、芸人としての実力でそうなってる。ひたすらお笑いだけで認められてる。
イワクラさんのことを知ったとき、「私が憧れたお笑いの世界って、やっぱり実力がモノを言うとこやったんや!」と思えたんですよ。女だからとか、見た目とか、ぜんぜん関係ない。ギャルの格好でも、かわいくしててもいい。そんなことよりも芸事の部分だけを見て判断する人たちがいて、面白さで認められてる芸人がいる。
――憧れのお笑いの世界が、ちゃんと実力主義だったとわかったわけですね。
荒川 そうですね。それと、むかしの私はだいぶいい加減で、ちっちゃいウソついたり、ごまかしたりする人間やったんです。でもイワクラさんを見てたら、「こんなんじゃ通用せえへん、ちゃんと生きてみたい」と思って、いまがあるんです。イワクラさんに出会ってなかったら、お笑いに対しても半端で、しょうもない人間になってたと思います。
――生き方にまで影響を受けたんですね。
荒川 いまだにちょっとイワクラさんには緊張してて、ふつうに話せるようになるまで、3年くらいかかりました。お笑いの話とかは特に緊張します。プレイスタイルもぜんぜん違うし(笑)。
でもイワクラさんに注意されたとか、怒られたことは一度もなくて。ただただ「面白いから大丈夫」とだけ言ってくれて、自分が戦い続けて、後輩を守ってくれてる。だから私、本人にめっちゃ言うんですよ。「イワクラさんのおかげで私の今があります!」って。でも、「まあまあ、はいはい」としか言わなくて……。
はる 流されてる(笑)。ぜったい伝わってるんやろうけどな。
いつも見ていてくれる尼神インター・渚
――はるさんが芸人になってから憧れるようになった人は?
はる 私はデビューしてからずっと、まわりの男性芸人さんにすごくお世話になっています。特に令和喜多みな実の河野(良祐)さんと、なにわスワンキーズの仲西(隼平)さんは、劇場でMCをよくやられてるんですけど、あらゆるボケにツッコミ入れて、めちゃくちゃカッコいいんですよ。ぜんぶ拾ってくれるから、みんなボケに行くんですよ。その姿に憧れてて。私、すぐ「何してんねん!」と言っちゃうんです。それはあんまりよくないのかなと思ってたんですけど、仲西さんは「それ、ぜったい捨てたらあかんで」と言ってくれたりして。
――MCのできる芸人さんに憧れているんですね。
はる 大阪時代に「はるのMCやらしてください」というライブをやらせてもらっていて。上京後、トットの桑原(雅人)さんやインディアンスのきむさんがそのことを知ってくださっていたおかげで、大宮(ラクーンよしもと劇場)でもMCライブをやることができたんです。
――上京して、新たにお世話になった人たちは?
はる めちゃくちゃいます。上京してからいちばん大きい出会いは、尼神インターの渚さんです。大阪時代はほぼ面識がなかったので、最初にゴハンをご一緒したとき、めちゃくちゃ緊張してて。そしたら、「はるちゃん、こないだあの番組出とったやろ」と、まず私の情報を知ってくださってたんですよ。それですごく気持ちがラクになりました。
――芸歴の離れた先輩が、自分の番組を見ているなんてうれしいですよね。
はる そうなんです! その後、渚さんの番組に呼んでいただいて2人でロケをしたこともあるんですよ。そしたら、「はるちゃん、MCやりたいんやろ? ここのコーナーでMCやっていいよ」と言ってくださって。自分の番組で私に試させてくれて、しかも「こうしたら?」とか的確なアドバイスをくれるんです。渚さんが最初に歩み寄ってくれて、意見もくださるようになったおかげで、「ここってどう思われますか?」と自分からも聞けるようになりました。その後も、私たちが出てる番組とか、動画とか、SNSまですごく見てくださってて。
荒川 すごいな! ありがたい。
はる YouTubeでやった私のルームツアーとか、誰も見てないような動画まで見てくれてるんですよ。
荒川 それ、私もちゃんと見てないわ。
はる こんなふうに、相方でさえ見てないもんを(笑)。自分のお仕事があるなかで、後輩との話題のために見てくれてて……。
荒川 その話聞いてたら、渚さんにLINEしたくなってきた。「はるがありがとうございます」って。渚さんがしてくれてること、はるにとってはめちゃくちゃ大きいことやと思うから。でも、「私も誘ってください!」とかじゃなくて、「相方がありがとうございます」だけで連絡してくる後輩、ちょっとヘンかな(笑)。
公演概要
『ギャルJAPAN vol.15』
日時:9月24日(土) 開場19:45 開演20:00 終演21:00
場所:神保町よしもと漫才劇場
チケット:前売1,500円 配信1,200円
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