2022年4月に本土復帰50年の沖縄で開催された「島ぜんぶでおーきな祭 第14回沖縄国際映画祭」で上映された2本のショートフィルム『バーミィトーリ/あの夜、コザにいた。』が京都国際映画祭でも同時上映されました。
西表島の魅力と課題を描いた『バーミィトーリ』
ここにしかない自然や生物、文化が愛おしい西表島。タイトルにある『バーミィトーリ』とは、島の言葉で「私の分を分けてください」の意味で、人間が山などに入って自然の命をいただく際にこう囁いて、神様の許可を得ます。本作では西表島を代表するイリオモテヤマネコを題材に、「自然との共生」「エコツーリズム」など、西表島の魅力と課題をファンタジックに訴求した作品です。
社会派ショートフィルム『あの夜、コザにいた。』
アメリカ統治下の沖縄で1970年の〝あの日、あの場所〟で起こった出来事を題材とした本作。抑圧された島の人々の不満が熱をはらんで日々膨れ上がっていく沖縄・コザが舞台。いつの時代も根本的には変わらない若者の日常を描き、主人公の2人タケルとコウケンの言動から、コザで起きた騒動を表現した社会派ショートフィルムです。
沖縄をテーマにした作品作り
上映後に行われた舞台挨拶は、ガレッジセールが司会を務め、『バーミィトーリ』からは主演女優兼監督の宮城夏鈴、『あの夜、コザにいた。』からは丹野雅仁監督が登壇。作品テーマや配役について、監督の大変さなどの質問に答えました。
「2年前に初めて訪れた西表島で『人間は生物の一部』という概念に感銘を受けた」という宮城監督は、本作と同じく京都国際映画祭でも上映される西表島ドキュメンタリー『生生流転』のプロデューサー・仲程長治さんのオファーもあり、本作の主演監督を決意したそう。「島の生態系を守るためにも必要なエコツーリズムの観点を一般の方にいかに分かりやすく伝えられるかが苦労した点です。本作において西表島出身の池田卓さんの配役は欠かせませんでした。ありんくりんのお二人がいつも明るく現場を盛り上げてくださったのも印象的でした。今日はこの場に来られて幸せです。1人でも多くの方に『人間は生物の一部』なんだというメッセージを感じていただけたら幸いです」と映画への思いを語ります。
丹野監督は 「兵庫出身の僕にとって沖縄はとても不思議な場所で、映画の題材は盛りだくさん。青い海、空、ハイビスカスといったイメージとは異なる沖縄も本作で見せられたらいいなと思いました。1970年のあの日、沖縄・コザで起こった事件もそのひとつ。事件は記録され残りますが、当事者以外にもあの日、あの出来事に何らかの形で携わった人は多い。やりきれない思いを抱えながらグダグダと日々をやり過ごす若者たちもそう。会話劇で進む作中で、クライマックスでやっと彼らの目的に到達します。」と作品の見どころを話しつつ、「お出かけ日和にこうして映画祭に足を運んでくださった観客の皆様に感謝します。これからもぜひ映画館へ足を運んでくださいね」とメッセージを送りました。