「アート×テクノロジー」から生まれた「人生を豊かにするアート」をファッションショーとトークで堪能!

10月15日(土)と16日(日)の2日間、京都市内各所で開催中の「京都国際映画祭2022」のアートイベントとして、15日(土)、京都大学防災研究所アートイノベーション(凸版印刷)にて同研究所アートイノベーション・土佐尚子教授と、京都国際映画祭実行委員長・中村伊知哉氏によるトークショー、さらには京都大学の学生がモデルとなり、土佐教授が最新技術を使って表現したアート映像「Sound of Ikebana」をモチーフにしたファッションショーが開催されました。

出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン

アート映像を切り取ったファッションを披露

ファッションショーは、スタイリッシュな音楽と「Sound of Ikebana」の映像とともにスタート。京大生がモデルとなり、Sound of Ikebanaの映像の一瞬を切り取ったデザインのシャツやネクタイなど20点以上のファッションを身に着けて続々と登場、来場者を魅了しました。

アートの世界に引きずり込まれるトークショー

続くトークショーでは、MCのザ・プラン9の浅越ゴエが登場し、来場者の皆さんとファッションショーに改めて喝采を送ります。さらに、「映画もアートもその他もぜんぶ」という京都国際映画祭のテーマを改めて紹介した後、土佐尚子教授と中村伊知哉氏が登壇しました。

中村氏のいでたちはSound of Ikebanaの一瞬を切り取ったデザインがあしらわれた肩衣をまとった裃姿。京大OBで、旧郵政省(総務省)を経て、さまざまなビジネスに携わり、現在はiU(情報経営イノベーション専門職大学)の学長を務めていますが、その経歴のなかで、MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボ客員教授時代に土佐教授との出会いがあったといいます。

対して、クールな黒の装いの土佐教授が自己紹介。MITのフェローアーティストを経て、日本の美術大学で教鞭をとった後、京大でアーティストとして、教授として活動している、という経歴の話に続いて、アートの話になだれ込みます。

アートはすべての人々に関わり、「アートな生き方」こそが人生を豊かにする、と説く土佐教授。現在に残るアートは、実は当時の最先端技術で作られ、表現されたものだ、という考えに至り、先端技術でアートを生み出す活動をしてきたといいます。

MITではテクノロジーによって「インタラクティブ漫才」というシステムを生み出しましたが、日本人にはなじみの深い漫才でも、海外では海外の文化に合わせたアレンジを加えないとうまく受け入れられなかったという経験から、「アート」と「テクノロジー」に加えて「文化」をも融合することでより豊かな表現ができるのだと気づかされたと語りました。

出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン

そうして生み出されたのが、Sound of Ikebana。様々な流体、粉体がスピーカーの上で音の振動によって生じる多様な動きを現在のテクノロジーであるハイスピードカメラでとらえた姿が生け花の姿と重なることから名付けられました。

中村氏が「その姿は二度と同じ形になることはないんだよね?」と聞くと、「まさに一期一会の美」と土佐教授。ここで来場していた京大大学院エネルギー科学研究科の林潤教授を土佐教授が招き入れ、テクノロジーから見たアートについて問いかけました。

林教授は「私たちは完全にテクノロジーの世界にいるけれど、土佐さんとご一緒した取り組みでは、そのテクノロジーが表現するものを『キレイだな』と思いながら見ていました」と感想を述べつつ、「アートというと文系、というイメージですが、実は理系にも深く通じるものがある、と気づかされた」と話しました。

「Sound of Ikebana」が表現するものとは

このSound of Ikebana は2017年、ニューヨークのタイムズスクエアのサイネージを埋め尽くしたといい、当時の動画が紹介されました。さらには狂言師、茂山逸平氏による狂言とのコラボレーションや、いけばなの華道家元池坊の次期家元、池坊専好氏とのトークセッション動画などが紹介されました。

出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン

中村氏は「新しいものを表現することに取り組んでいるのに、狂言や生け花といった伝統文化に携わる人が受け入れてくれるのはなぜ?」と問うと、土佐教授は「伝統文化というけれど、実はその時代に合わせて姿を変えてきたから今に残っている。だからこそ新しいことを受け入れる器がある」と答えていました。

アートと防災、その関係性とは?

ここまでは「アートとテクノロジー」が主な話題でしたが、ここでゴエが「ここは京都大学防災研究所(防災研)ですが、『アートと防災』ってどういう関係性があるのかすぐにピンとこないのですが・・・」と問いかけました。

土佐教授は「私も『防災研』と言われたときは頭にハテナが浮かんだ。でも、防災研と一緒に取り組むことで気づいたことがあった。防災研はそれまでは防災の『技術』研究が主だったが、『防災を人に伝える』ということはあまりできていなかった、と。そこでアートが担う役割は『防災を可視化して伝えること』なんです」と説明します。

出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン

その具体例として、京阪電車の中書島駅に津波シミュレーターの音から表現されたSound of Ikebanaの啓発ポスターを掲示し、アートによって防災意識を高める活動が紹介されました。中村氏は「アートの力で『見える防災』、『おもしろい防災』というアプローチはすばらしい」と絶賛します。

Sound of Ikebanaファッションショー再び

この後、再びSound of Ikebanaデザインのファッションショーが行われました。トークセッションを楽しんだ後に見るショーはまた違う感動を呼び起こします。
さらに素材にプリントされたデザインは「デジタル捺染」という転写技術で表現されており、ここでも現代の技術が見事にアートに活用されています。ファッションを楽しむことも人生を豊かにする一つの方法。最初の新鮮さに加えて、アートの奥深さを改めて感じさせてくれるファッションショーになりました。

イベント終了後、司会を務めた浅越ゴエは「一見交わりそうにないアートと防災がこんな風につながるのか、と驚きました。そして、アートというとどうしてもアナログなイメージだが、デジタル、テクノロジ―の融合が新しいものを生み出し、そして『アートと何かの掛け合わせ』が新しいものを生み出している、というアートの大きな可能性をも感じることができ、とても発見に満ちたトークショーになりました」と話していました。

関連記事

関連ライブ配信

関連ライブ