『夜王』の“完結編”が舞台に!? “ホスト役”元ピスタチオ・伊地知とネオン漫画の祖・倉科遼が語る『手塚マキ物語』

元ナンバーワンホストで、現在は実業家として活躍する手塚マキ氏をモデルにした舞台『夜鳥 翔べ~夜を生きる~歌舞伎町ホスト 手塚マキ物語』が、11月17日(木)から27日(日)まで、東京・新宿シアターモリエールで上演されています。製作総指揮は務めるのは、『女帝』『夜王』などで知られるネオン漫画の祖・倉科遼氏。そして主要キャストである実在の伝説のホスト・頼朝役を演じるのが、自身もかつて歌舞伎町ナンバーワンホストだった元ピスタチオの伊地知大樹。今回、2人による豪華対談を敢行しました! 

出典: FANY マガジン
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「怖い世界に足を突っ込んでいたらどうしようと…」

――おふたりは、この舞台の仕事で初めて一緒に?

伊地知 そうですね。製作発表の囲み取材があった日に初めてお会いしました。

倉科 初めてお会いした日に、どえらい大酒を飲みました。

伊地知 飲みに行きましたね。先生は夜王でした(笑)。

倉科 やめてくれよ(笑)。でも、酒を飲んで語り合って、伊地知君って人が垣間見えて、なんとなく上手くいくなという予感がしました。

――伊地知さんは、倉科さんに対してどんな印象を受けましたか?

伊地知 囲み取材のときに、先生を軽くイジるボケをしたら、びしっとツッコんでくれたんです。でも、そのときはまだお堅い人なのか、ユーモアがある方なのかわからなくて、「ヤバい。怒ってるのかな?」とも思ったんですよ。だけど、その後に飲みに行ったら「あれはツッコミだよ」と言ってくれて、安心しました。それくらい、初めて会ったときは緊張してましたね。

倉科 俺が吉本興業所属ということは知らなかったんでしょ?

伊地知 そうですね、知らなかったです。

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――夜の世界を長く描いているだけに怖そうな印象はありますよね。

伊地知 そうです。そういう怖さもあるじゃないですか。

倉科 それ、みんな言うんだよねえ。

伊地知 ちょっと、怖い世界に足を突っ込んでいたらどうしよう、みたいな。吉本の反社チェックは大丈夫なのかなと。

倉科 お前、ぶっとばすぞ(笑)。

伊地知 (笑)。でも初日に飲みに行ってから、僕が言うのも生意気ですけど、打ち解けられたといいますか。この作品に対して向かいやすくなったというのはあります。

伊地知をキャスティングして大正解!?

――キャスティングは、製作総指揮の倉科さんがすべて担当しているとのことですが、伊地知さんの演技を見てどうですか?

倉科 芸人さんって「僕はお芝居はできない」と言うじゃない。でも、やっぱり“芸”人ですよね。急所を捕まえるのが、早いんだ、本当に。それと伊地知君はホスト経験者でしょう。だから演出面でも、ボトルの置き方が違うとか、アイスピックはここに置くんですとか、ちゃんとみんなにアドバイスをしているんですよね。だから、彼をキャスティングして大正解でしたね。

伊地知 ホストの舞台ですし、その世界の方も見にきてくれると思うので、ちょっとした細部が気になっちゃうんですね。どこまでリアルを追求するのかは難しいですけど、こういう風にしたほうがホストっぽく見えるよとか、最低限、修正できるところは言うようにしています。演技面は、自分はぜんぜんダメですけど、ホストらしさを出すうえではよかったのかもしれないですね。

倉科 いやいや、演技もぜんぜん大丈夫。伊地知君がこの舞台をきっかけに、本格的に役者として活動していくなら嬉しいよね。これから、舞台やドラマにどんどん出ていくのかもしれないからね。

出典: FANY マガジン
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――伊地知さんは今後、役者活動にも力を入れていくんですか?

伊地知 そうですね。コンビのときは、相方との仕事が入れられなくなるので、(役者の仕事の)スケジュールを押さえられなかったんですけど、ピンだと自分がやりたいと思えばできるので。呼んでいただけるなら、続けたいと思ってます。先生に演技のお墨付きをもらったことは、ぜひ書いてください(笑)。

倉科 (笑)

芸人になったら収入が半分に…

――ところで、伊地知さんはなぜホストになったんですか?

伊地知 地元の後輩がホストクラブに入って、毎月1000万以上稼ぐようなカリスマホストになったんですね。その彼が独立するという話になって、週に1日でもいいからバイトでやってほしいと言われまして。もともとホストはチャラチャラしているイメージがあって苦手だったんですけど、後輩から頼まれたからやることにしました。

――どれくらいの期間、やっていたんですか?

伊地知 芸人を始めて1年目だった22歳から、ピスタチオとしての活動が忙しくなる30歳の手前までやっていましたね。芸人に専念したら収入はすごく下がったんですけど、もともと芸人として売れる夢があったので、わりとスパッと辞めることができました。

出典: FANY マガジン
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――7、8年はホストの世界にいたんですね。では、やはり倉科さんの作品も知っていましたか?

伊地知 もちろんです。『夜王』とかは、みんな見てましたし、あれがきっかけでホストになった人も多くいたと思います。夜の世界に、大きな影響を与えた作品だと思いますね。だから、先生の舞台に参加できるのはありがたいなと思います。

倉科 そう言ってくれると嬉しいね。

――ちなみにホストでナンバーワンだったと聞いていますが、芸人としてブレイクしても、ホスト時代より稼いでなかったんですか?

伊地知 ぜんぜん稼いでないです。吉本なんで。

一同 (笑)

伊地知 半分にも満たないです。芸能界は厳しいですよ(笑)。でも、たくさん楽しい経験をさせてもらってるんで、いいんですけどね。

倉科 そこで芸能界のグチがでるか(笑)。

今回の舞台を手掛けた本当の理由

――倉科さんは今回、手塚マキさんの著作(幻冬舎新書『新宿・歌舞伎町 人はなぜ<夜の街>を求めるのか』)を原案に、この舞台や漫画の原作を書きました。手塚さんをモデルにしたのはなぜですか?

倉科 本当は、前作の『荷風になりたい』を最後に、漫画の原作は引退しようと思っていたんですね。でも、これは初めて話しますけど、『夜王』という漫画が、実は納得して終われなかったんですよ。

伊地知 え、そうなんですか?

倉科 遼介というキャラの最終目標や到達地点をどこにするかが、書いている最中からぜんぜん見えなくてね。たとえば『女帝』という作品なら、タイトルの通り、政界や裏の世界ともつながって女帝になるという到達目標があるんだけど、夜王はそれがなかったのよ。だから中途半端に書き続けていて、見えないうちに終わってしまった。

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伊地知 それは意外でした。

倉科 腹の中ではずっと、未完で終わったという意識なんですよ。だから、いまも何となく『夜王』の話はしたくないんです。代表作を聞かれても、「女帝です」って言うようにしてね。だけど、手塚君の本を読んだときに「あ、これだった」って気づいたんです。手塚君は実業家として、いろいろな事業を展開してホストの地位やイメージを上げているけど、遼介の生き方もそこに持っていくべきだったなと。これを漫画にして舞台化すれば、『夜王』をやっと完結できるのではないかと思ったんです。

伊地知 そんな思いが込められていたんですね。この作品はホスト時代の話も描かれていますけど、ホストを引退した後の話も2部構成でしっかり描かれていますもんね。舞台のパンフレットに、「もう1人の“夜王”」という言葉が入ってるのも、そういう意味だったんですか?

倉科 そうだよ。キャッチまでぜんぶ俺が考えたんだから(笑)。恥ずかしいけどね。

――『夜王』に決着をつけるためだったんですね。それで、決着はつけられましたか?

倉科 つけられましたね。たぶんこれが、最後の漫画原作になると思います。この作品でいちばん伝えたかったのは、“引退した後にどう生きるか”ということ。ホストってすごく売れたとしても、「その後どこに行っちゃったの?」っていう人が山ほどいる。それは芸人もそうだろうし、漫画家もそうなんですよ。漫画家でも50歳過ぎて描けている人なんて珍しいからね。自分はラッキーにも舞台の世界に巡り合って、漫画時代の余力で幸運にも働くことができているんだけどね。だからこの話に関しては、自分自身もものすごく感情移入しているんです。

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――伊地知さんは脚本を読んで、どういう感想を抱きましたか?

伊地知 先生がおっしゃった通り、ホスト時代の物語も、その後の未来も描かれている。そういう話は見たことがなかったので、まず新鮮で面白いと思いました。実話をもとにして作られているからこそ、リアリティもありますし、ホストを経験している人も楽しめる。では、ホストの世界を知らない人にはどうかと言うと、ちゃんと恋愛や友情、夢が描かれていて、共感したり熱くなったりするシーンがたくさんあるんです。本当に、多くの人が楽しめる作品になっていると思います。

倉科 さすが、うまいねえ。

伊地知 一応、芸人を15年やってますから(笑)。

お笑いファンも楽しめる舞台に

――それでは最後に、舞台を観に行こうかという人たちへ、2人からメッセージをお願いします。

伊地知 今年、僕はピスタチオを解散したんですけど、元相方の小澤(慎一朗)が、同じ時期に舞台(『セーブ・ザ・ダディ』=11月20日に公演終了)に出ているんですよ。だから、もちろんそっちにも行ってほしいんですけど、こっちにも来てください。元相方に負けないように頑張りたいと思います。

倉科 いいね。相方にも観に来てもらってよ。

伊地知 先日会ったときに話したら、(自分の舞台が)終わった後に行こうかなとは言ってくれてました。小澤のファンだった人にもぜひ来てほしいですね。

出典: FANY マガジン
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――倉科さんはいかがですか?

倉科 今回、伊地知君をがっつり使って作った舞台なので、お笑いファンの人にはぜひ観ていただきたいと思います。

――お笑いファンが観ても、楽しい舞台なんですね。

倉科 そうだと思いますね。今後の舞台でも、吉本のお笑い芸人さんを毎回1人ずつくらいは呼んで、出てもらおうかなあと思っています。

伊地知 この舞台に多くの人が来てくれたら、今後は、皆さんが好きな芸人がキャスティングされる可能性もあるんですね。ぜひ、そのためにも皆さん来てください!

倉科 いや、伊地知君、お前も出ろよな(笑)。

一同 (笑)

公演概要

『夜鳥 翔べ~夜を生きる~歌舞伎町ホスト 手塚マキ物語』
日程:11月17日(木)~11月27日(日)
会場:新宿シアターモリエール
原作・製作総指揮:倉科遼

公式サイトはこちらから。

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