2012年に吉本興業の100周年記念事業としてスタートし、2017年には劇場公開もされた『ワレワレハワラワレタイ ウケたら、うれしい。それだけや。』。木村祐一がインタビュアーとして 笑福亭仁鶴、西川きよし、桂文枝、明石家さんま、ダウンタウンら計106組、180人もの吉本芸人に話を聞き、 芸人たちが普段はあまり明かすことのない芸人人生に対する葛藤やプライドをありのままに語るドキュメンタリーです。
そんな『ワレワレハワラワレタイ』が、このたびBSよしもとの特別企画『ワレワレハワラワレタイ〜伝説の映像一挙公開〜生まれ変わっても芸人やりますか?』として、年末年始に24時間一挙放送(12月31日23:00〜1月1日23:00)されることになりました!
先日、新たに若手〜中堅を中心とした芸人にスポットを当てるポッドキャスト『ワレワレハワラワレタイ NEXT』の独占配信がAmazon Musicでスタートしたばかりの木村に、本企画への思いや、『ワレワレハワラワレタイ』を通じて改めて感じたことなどを聞きました。
芸人は「幸せな仕事やな」って思いますね
――今回、改めてBSよしもとで一挙放送されると聞いたときはどう感じましたか?
「撮っててよかったな」って思いましたね。『ワレワレハワラワレタイ』はドキュメンタリーでありインタビューでもあるんですけど、その方の歴史を語ってもらうことでその時点までのその方の人生を残しておきたいという思いがあって、もともとアーカイブぐらいの気持ちでもあったので、いつ出してもらってもいいという感じですね。色あせるものでもないですし。
――106組もの芸人さんにインタビューして、改めて“芸人”というものについて思ったことはありますか?
幸せな仕事やなって思いますね。「なんで笑ってもらえたら嬉しいんやろなぁ?」っていう、その喜びのそれぞれの違い……まぁ、共通する部分もあるから微妙な違いではありますけど、そういうのを聞いていくうちに、みんながみんな、ええ大人から若手まで「人を笑わせたい」って思ってる人らが集まってるって面白いなぁって思いましたね(笑)。不思議な商売というか、自分で言うのもなんやけど「いい商売があったもんやな」って。
――木村さん自身も、自分はなぜ人を笑わせたいと思うのか自問自答されたのでしょうか。
そんなに深く考えたわけでもないけど、結局、タイトル(『ワレワレハワラワレタイ ウケたら、うれしい。それだけや。』)にあるように、「ただそれだけや」っていう一言に尽きるんですよね。僕の場合はウケないときもあるから、そういうときは「なんで失敗したんやろ」って考えて、やり方を変えたり、内容を変えたりして探っていく中で、ウケたら嬉しいし、嬉しい反面安心したり、そんな気持ちです。
――多くの芸人さんにインタビューして、特に印象に残っていることはありますか?
やっぱりベテランさんは、ある種犠牲と言うとおかしいですけど、引き換えてる部分があるんですよね。最初は“目立ちたい”とか、“街で人に顔さされたい”から始めたんですけど、それによってプライバシーがなくなってしまったり。日によっては「ちょっと今日は……」みたいなときもあるけど、そこをどう割り切んねんみたいな。やっぱり「芸人になってよかったけど、家族には迷惑かけたかな?」って言われる方もいたしね。
常に人から見られることに対して、開き直りと言いますか、演じてるというのか、それが自然に備わってるのか……。明石家さんまさんは「もう、“明石家さんま”ってキャラになってるからしゃあないねん」ていう割り切りを若いうちからされてるし、坂田師匠は「“アホの坂田”で宝くじ当たったみたいなもんや」って言う反面、母親と一緒にご飯食べてるときに中学生に「アホ」ってイジられたら、母親が立ち上がって「アホとちゃいます!」って言い返してるのを見て、「悪いことしたなと思うけど、やっぱり笑ろてもらいたいから『ごめんな』と思いながらやり続ける」って言うてはったのは印象に残ってるかなぁ。
インタビューの最後に必ず「生まれ変わっても芸人やりますか?」って聞くんですけど、若手でも、苦労がたくさんあって「もうあんな苦労をするぐらいなら次は違う人生を選んでみようかな」っていう子もいるんですよね。僕自身も撮りながら「オレ最後どう言うんやろなぁ?」って思ってたんですけど、最後には「またこの仕事選んで、このインタビューしよう」って思ってましたね。
芸人も変わってきたけど、毎回「仲間やな」って
――インタビューをする上で、常に心がけていることはありますか?
あんまりまとめないようにしようと思ってますね。考えを言い代えたり、まとめたりしないようにして、言葉通り受け取ろうとしてます。決めてくる人おるでしょ? こういう記事にしたいとか。僕はそういうことは思ってなかったし、同じ仕事をしてるから「こんな人やろな」って決めつけたりしないように臨みました。
――先日から『ワレワレハワラワレタイ NEXT』として、ポッドキャストという形で新しく番組が始まりましたが、久々に芸人さんへのインタビューを再開した今の心境はいかがですか?
また新しい人に新しい話を聞けて楽しいですね。僕らの頃とは当然時代も違うし、メディアも変わってきたし、いろんな方法で世に出られる機会も増えてるけど、そんな中でもやっぱり笑ってもらったら嬉しいんだという共通認識があることを確認したり。昔の芸人とは生活も全然違いますけど、そのへんのところも新鮮で楽しいです。
――インタビューしていて、10年前とは違う感覚もありますか?
芸人も変わってきたしね。芸人芸人してる人が少なくなってきたというか、いわゆる芸人の用語をあんまり使わない人も多いし。兄さん、姉さんとかもあんまり言わないですしね、それがいいとか悪いとかではなくて。ただ、違いはあると思うけど、仲間やなという気は毎回します。
――もしご自身が芸人にインタビューされる側だとしたら、誰にインタビューしてほしいですか?
いや、いらないです。自分でしゃべります。自分がもうひとりいれば自分に聞いてほしいですけど(と言いつつしばらく考えて)……でも、鶴瓶さんには聞いてほしいかな、なんか知らんけど。……ややこしいか(笑)。
――(笑)。そのインタビュー、ぜひ聞いてみたいです!
(笑)。
明石家さんまの意識を変えた!?
――先日行われた吉本興業の110周年記念イベントで、木村さんはいろんな芸人さんとの逸話を語る大﨑会長に「(大﨑会長の)映画でも作ります?」と提案されていましたが、会長の映画を作りたいという気持ちがあるのでしょうか?
そうですね。
――映画を作るなら、ご自身が監督をしたいという思いもあるんですか?
やれって言われたらやるけど、まぁひとつのプレゼンですわね、会長への。会長がやれ言うたらやらしてもらおうかなぁ。進めていきたいような気持ちもあるしね、いろんな人にエピソードもらって。映画なのかわかんないですけどね。今は連ドラの方が時間使えるとかいろいろあるから。2時間くらいじゃ終わらないですもんね。
形は別として、いろんなエピソードを、再現を交えながら、失敗談でもなんでもドラマ仕立てにできたらいいなとは思ってます。ドキュメントっぽい映像にしたいというか。それはダウンタウンだけでもできたりするでしょうし。そういえば、最近『誰も知らない明石家さんま』(日本テレビ系)とかやってますけど、あの人もこのインタビュー受けてからですよ、あんなんやり出したの。
――そうなんですか!?
だって、『ワレワレハ〜』のインタビューの中で「なんであんまりインタビューやらないんですか?」って聞いたら「字にしてもおもろないやろ」って言うてはったのに、これに味をしめたのか、いろんなところでインタビューに出てはるし。
――木村さんがさんまさんの意識を変えられたんですね。
変えましたよ! それを言えっちゅうねん(笑)。タトゥーのこと(明石家さんまが「笑」という文字のタトゥーを腕に入れようと思っていたら、木村から「いや、もう彫らんといてください。そのうち体から滲み出てきますから」と言われ、タトゥーを入れるのを思いとどまったというエピソード)は言うてくれましたけど(笑)。
――『ワレワレハワラワレタイ』を通じて、木村さんが受け手に伝えたいと思っていることはなんですか?
これは見てもらうしかないんですよね。あれはインタビューで、作ったもんじゃないから「これを伝えたい」というものはないんですよ。あのまま見ていただくだけで完結するというか。感じ方はそれぞれですし。作品じゃないのでね。
――なるほど。では最後に、番組をご覧になる視聴者の方にメッセージをお願いします。
面白い人たちが面白いことをあまり言わない映像です。お楽しみください。
番組概要
BSよしもと年またぎ24時間特別企画
『ワレワレハワラワレタイ~伝説の映像一挙公開~生まれ変わっても芸人やりますか?』
放送:BSよしもと
放送日時:12月31日(土)23:00~1月1日(日)23:00
出演:笑福亭仁鶴、西川きよし、桂文枝、明石家さんま、ダウンタウン、木村祐一ほか
視聴放送:
【TV】 BS265chで無料でご覧いただけます。
【スマホ・PC】 BSよしもとホームページで無料でご覧いただけます。