芸歴52年目を迎える西川のりお・上方よしお恒例の全国ツアー『のりおよしお主義~漫才師の主張~』の追加公演が、1月29日(日)に東京・八王子芸術文化会館で開催されることが決まりました。いまをときめく人気の若手芸人らが出演し、漫才はもちろん、NGなしのムチャぶりトークでも話題のこの公演。そこで今回はツアーの主役である西川のりおに、このツアーのこと、過激なトークコーナーのこと、そして若手芸人に伝えたいことなどを“のりお節”全開で語ってもらいました!
2018年の初開催以来、博多華丸・大吉、和牛、かまいたち、マヂカルラブリーなど人気コンビが続々と出演し、のりお・よしおから“芸人としての薫陶”を受けてきた『のりおよしお主義』。今年は吉本興業110周年という冠を引っ下げて、7月から全国6カ所をめぐる公演を実施。追加公演には、レギュラーゲストのへびいちごに加えて、とろサーモン、霜降り明星、ロングコートダディ、マユリカの参戦が決まっています。
トークコーナーで若手芸人が餌食に!?
――『のりおよしお主義』を始めたきっかけを教えてください。
僕は、単独ライブとか仰々しいものは嫌いなんですよ。だから、この仕事を52年やってきて、このツアー以外には、いっさいしてこなかったんです。でも、4年前に(吉本興業の)社長が「若い者を連れて回ってくれないか?」と。「のりお・よしおが頭になりながら、後輩を引き連れて全国を回ってほしい」とおっしゃっていただいたんで、ありがたくやらせてもらうことになりました。
――このツアーは、漫才はもちろん、最後に全員で繰り広げるトークコーナーも話題になっていますね。
僕らクラスのものが若手を引き連れてツアーをするということで、けっこうカタい舞台をやると思われるんですけど、僕はこういうタイプなので、ざっくばらんにやろうと。トークコーナーは『アメトーーク!』(テレビ朝日系)みたいなチョロいもんじゃないですよ。なんでかというと、放送も配信もありませんからね(笑)。
最近の芸人はヘンにプライベートを隠したりするけど、「そこ喋らんかい!」っていうのが僕の主義です。世の中って不都合な部分がおもしろいんですから。恥ずかしい話も都合の悪い話も堂々と言えないで、なにが芸人だと。それをこのライブでは叩き込みますよ。
――のりお師匠からのムチャぶりで毎回、若手漫才師たちがたじたじになっていますね。
11月の東京公演では和牛(水田信二、川西賢志郎)を餌食にしました(笑)。川西が最近、結婚したというんですけど、写真を見せてくれるわけでもないし、「お前、本当に結婚したのか?」と。「結婚したことにしてるんちゃうか。お前とダイアンの西澤(ユースケ)は怪しいぞ!」とね。水田にも「楽屋での態度が悪いぞ」って舞台上で注意したら、ミキ(昴生、亜生)あたりも「そうや、そうや」って入ってきて。そんな感じでテレビではしないような話を、ざっくばらんに繰り広げています。
「仕事が減りだしたら漫才がおもしろくなる」
――1月の八王子追加公演の見どころは?
これが今回のツアーの最後になるので、このあたりで霜降り明星(粗品、せいや)をと。最近、仕事が減ってきているみたいなんでね。仕事が減りだしたら、漫才がおもしろくなるんですよ。
――仕事が減り出すと、漫才がおもしろくなる?
いっぺん名前が売れた人間が、仕事が減ってきて世の中のイヤなことを見る。イヤな思いも砂噛む思いもすると、人間味が出てくるんですね。言葉に味が出てくるんですよ。よく染み込んだおでんみたいにね。
同じことを喋っても、この人が喋るとおもしろいなあってあるじゃないですか。それは“味”なんです。一方で、若いときはネタをテキストみたいに覚えて、上っ面でセリフを吐き出してしまうからね。僕もそうでした。僕らも味がなかったですね。
――のりお師匠からすると、若手漫才師たちはまだまだ味が足りていませんか?
味がないのは若さ故なんですよ。それはええことなんです。でも、さっき言った通り、おでんで言ったら、まだ出汁が染み込んでいない状態で食べていただくようなもんですよ。
有楽町あたりの40~50才くらいのサラリーマンのインタビューはいいですよね。背負うものが出てきて、大きな子どもがいて、家のローンも払ってね。給料はそんなに上がっていないのに、割り切って働かないと仕方ない。そういうところに哀愁が帯びるんですよ。それが“味”です。
だから漫才って人生なんです。人生そのものを反映していますから。人生観が出る漫才師になってきたら、もう“ほんまもん”ですよね。
――『のりおよしお主義』では、味のある“ほんまもん”の漫才師を育てたいと?
それがこの『のりおよしお主義』をやる理由ですね。漫才師はいま、僕らの時代と比べるとものすごい数がいてますよね。でも僕の経験上、ほとんど消える。テレビやネットってじつに無責任ですからね。レギュラーが減ってきたらすぐに「もう終わりちゃうか」って言われだす。でもそんなウワサに振り回されて、その通りにいなくなっていくのなら、そいつらは“ほんまもん”の芸人じゃないんです。それでも残っていく、酸いも甘いも知った芸人になってくれということです。
“味”が出てきている若手は…!?
――味が出てきていると感じる若手はいますか?
とろサーモン(村田秀亮、久保田かずのぶ)なんかは、いちばん芸人っぽいですね。久保田がぐちぐちグチってるときはおもしろい。ほんまに世の中がおもしろくないんでしょうね。それが、あいつの自然体なんですよ。
博多華丸・大吉(博多華丸、博多大吉)なんかも、やっぱり軽いからおもしろいですよね。達観して、飄々としているじゃないですか。いま売れているけど、彼らは仕事がなくなったって一緒やと思います。なにも狙っていなくて、気持ちがほぐれていますよ。
要するに、自分の自然な姿を、どううまくネタに反映するかなんですよね。漫才は狙ったらダメなんです。狙わないからおもしろいんです。スポーツ大会で、男が女の子を意識しすぎていいプレーができなくなるのと一緒です。笑いってリラックスですから。
――のりお師匠はM-1グランプリに否定的だということですが。
漫才って1回勝負のものではないんですよ。サッカーみたいな競技ではない。1回勝負で気合を入れて、舞台袖で握りこぶしをつくってやるもんじゃなくて、気持ちゆるゆるにして、抜いてやるもんだというのが僕の考えです。
漫才に勝った・負けたはないんです。あるとすれば、長くやったもんが勝ちや。トータル、延べで評価しないと。M-1で勝ったからといって、おこがましいけど、そんなら僕らみたいに70歳までできるのかということなんですよ。芸人は、仕事がある状態でどれだけ長くできるかが勝負なんです。
――そうした自分の考え方を、ツアーに出演する若手に伝えているのでしょうか?
言っていますね。「賞レースは対象にする必要はない、長くやったヤツが勝ちや」と。そうすると「ホッとしました」って言うのがいるけどね。もちろん若いうちは、戦わないとダメなんですよ。僕がいつも言うのは、「戦うときは戦っとけ」と。僕も若いころは『THE MANZAI』で戦ってきたからね。
でも、戦う時期を過ぎてから漫才で残っていけるかどうかということが、僕がこのツアーで(若手に)伝えたいことなんです。仕事は、あるときの1ページだけを切り取ってもしゃあないですからね。
――このツアーで、若手に芸人としてのイロハを叩き込む、と……。
このツアーには、けっこう平等なお客さんが来るんですよ。年配の方も家族連れも、若い人も来る。ここで笑わせられたら、ごく一般的にウケるということだから、芸人として食べていけるということだと思います。
霜降り明星なんて、まだ20代の後半やからこれからが長いですよ。名前は売れているから、いまさら別の仕事はできないでしょう。「いっときだけ仕事があったんです」という漫才師にはなってほしくないですね。
夢を買うとか、そういうのは僕は好きじゃない。夢では生活はできないですからね。きれいごとは抜きにして、食べていける漫才師になってほしい。『のりおよしお主義』に出たもんには、「漫才で生計を立てています」とずっと胸を張って言えるようになっていってほしいですね。
公演概要
『吉本興業110周年感謝祭のりおよしお主義~漫才師の主張~2022全国ツアー』
【追加東京八王子公演】
日程:2023年1月29日(日) 13:00開場 14:00開演
会場:八王子市芸術文化会館 大ホール
出演:出演者:西川のりお・上方よしお、へびいちご、とろサーモン、霜降り明星、ロングコートダディ、マユリカ
チケット:前売4000円
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